2017年10月

2017/10/25 <粘黏连随と丹田お腹の大きさ>

 

 先日、自称武術バカの若い男性生徒さんから、呉式太極拳の馬岳梁大師の推手の動画を紹介された。これまで見たこともないくらいの柔らかさで、腕が相手に吸い付いているようだった。

 推手の要領の『粘黏连随』がこれほど見事に見て取れるものだということに感動しながらも、そのネバさ、くっついて離れない一体感などの出どころが、まさに大師の丹田にあることが分かってしまった(ことに驚いてしまった)。

 

 

 逆回しして考えてみた。何故、丹田→→→『粘黏连随』なのか?

 

 まず、腹の丹田の気を煉って気の量を増やしていくと丹田が気の球のようになっておおきく膨らんでくる。そしてその気の球が身体全体を包むほどになってしまうと、身体全体が一個の大きな丹田のようになる。(探れば最初の丹田の”一粒”に還元されるのだが、身体全体に膨らましているときはその最初の粒が感じられない。粒を見れば極小に向かい、身体全体、それ以上、に膨らませば極大へと向かう。)

 丹田がどのような大きさであれ、その中身は”気”。丹田を身体全体に膨らませているときは身体全体ば気球、空気のクッションのようになっている。

 

 このような空気クッションの身体(手足を含めて)を作ると、相手に接している面がすべて相手にべちょっ、とくっついて隙間ができなくなる。そして動いてみると、どこまで推しても、どれだけ引いても、全ては膨らんだ気球の空気の移動に過ぎないから、度を越して動いて気球が破れてしまわない限りは、その中でいくらでも形を変化させ続けられる。いつも”隙間”がある状態。

 この丹田(身体丸ごとの気球)の形の変化が、外には”動き”として見えている。そしてその動きを形容すると『粘黏连随』。

 外の『粘黏连随』の実体は、内の丹田気球の形の変化、に違いない。

 

 これを相手側から見ると、面でべたっとくっつかれているから、どこに力があるのか、どこから力が出てくるのかが分からなくなってしまう。力が探れない、気配がない。

 

 太極拳の最も高い境地では、身体が”空”になる、とか、気配が消える、とか言われるが、この馬大師の推手を見たことで、それが神秘的な話ではなく、この練習の延長線にあることがはっきり見えてきた。

 動画の中には馬大師の丹田がどれほど力があるのか、といったデモンストレーションがある。やはり、それほどの丹田がないと、ああは粘れないだろう、と納得。(ただ、動画内の弟子を飛ばすところは、弟子がそのように掴み、そのように受け身をとる、といった約束事もあるので、そのあたりは表演として見た方が良いと思う。ゆる~く掴めば飛ばされない・・・)

 

 ・・・本当はここからが本題だったのだが・・・・

 

 このような動画を見ると、時々男性生徒さんの中に、丹田力をつけようとして腹を大きくしようとする人がいる。過去には、毎日ビールを飲んで腹を育てています、という男性もいて、呆れてしまった(しばし練習して去っていきました)。

 腹に過度の脂肪をつけても身動きがとれなくなるだけ。

 最近の中国の太極拳家には重量級が多いが、それはリングという決められた空間、試合のルールの中で戦った場合、体重が重い方が有利だから。太極拳の全貌ではない戦い方をせざるを得ない。

 陳発科のお腹は出ていないし、陳長興も細いし、その他お腹の出ていないスリムなすごい武術かは過去にいくらでもいる。

 が、太極拳家でも歳をとると基礎代謝量が落ち、運動量も減ってきて、次第に太る老師も多くいる。強いのは強いが、若い時のようには飛んだり跳ねたりできない。

 

 私達が通常練習している太極拳は、簡化24式、と言って、太極拳の基礎の基礎の動きに過ぎない。それも実は、運動のあまり得意でない、老人や身体の弱い人向けに作られている。

 もし元気で身体に特に問題のない若者や中年がこれだけしか練習しなかったとしたら、一桁の足し算を習って終わってしまっているのと同じ(?)かもしれない。

 簡化では、ゆっくり、力を抜いて、少し中腰で、腕を適当に動かしながら、水平に動く。そして少し足を上げ、少ししゃがむ。これだけ。速く動いたり、跳んだり跳ねたり、蹴ったり、打ち抜いたり(八勁)がない。動物の動きとしてはかなり不十分。

 いつまでも斂臀ばかり練習していては腰も伸びきってしまい、ジャンプができなくなる(し、お尻が下がって見た目も若さがなくなる)。

 尾骨をひっくり返して上げるような氾臀も練習しなければ、平腰の人は太極拳の練習によって腰を痛めてしまう。

 『閃展騰挪』という武術の基本的な要求は太極拳でも非常に重要。

 (①閃:躱す ②展:引っ張り開く。身体を開いたり、足を開いたり ③騰:跳ぶ、跳んで越える ④挪:移動、歩く)

 

  少し前にある記事で、なぜ中国の軍人は痩せているのか?、という記事があった。

 中を読んだら、国によって軍人の体型が違う、という内容で、米国の軍人の典型的なタイプは上半身が大きくマッチョ、これに対し英国や中国は、重い荷物を背負っていくらでも山道を歩けるような(できれば食糧は少しでもずっと歩けるような)細身の筋肉質の軍人を育てている、とのことだった。

 素人が考えても、太っていると持久力がない。ただ一瞬の爆発的パワーはありそうな気がする。

 スポーツ選手を見ていても、やるスポーツによって体型がかなり異なる。

 では太極拳は?というと、太極拳の発祥地は陳家溝。農民が農作業をしながら自衛するための拳法。拳法の練習がそのまま農作業に使える。とても合理的であるいみ”普通”。日常生活とのバランスが取れたもの・・・と私は解釈しているので、やはりバランスの取れた(農作業のできるような)中肉中背が良いと思っている。(たまに出動するための身体ではダメだということ)

 痩せ過ぎも良くないし、太り過ぎも良くない。

 太って丹田の力をつけよう、なんて全くナンセンス(笑)

 師父も言っていたが、腹がでて良いことは一つもない。腰は動かなくなり(腰痛になる)、脚の力もなくなる。

 師父の師である王長海老師は、『認練筋長一寸、不可練肉厚三寸』(練習はスジを一分(3ミリ)長くするように行うべき。肉を三寸(3センチ×3=9センチ?)も厚くしては絶対にいけない)と言っている。

 

 秋冬は脂肪が付きやすいので、太りやすい人は要注意。

 

  

2017/10/16 <腰は腹で守る、腰は空、勁を育てる、勁をつなげる>

 

 先週後半の練習で印象深かったことのメモ。

 この週の赤坂クラスは曜日変更したこともあり、常連男性3人のみの参加。

 うち一人がぎっくり腰になりかけているとのことで、まずはそれに対処するための練習。

 

 腰がヤバい時は”回す”が常識。が、回し方にもコツがある。

 腰(背中側)で回さず、腹(丹田)で回す。

 

 『腰は空であれ!』 これが指標。

 腰を”実”にしてはいけない。(腰に力を込めてはいけない。込めると硬くしてしまう)

 理想は、子供の時の身体。小学生の頃、先生が”腰”を回しなさい、と言っても、私には背中としか思えなかった記憶がある。背中があって、その一番下にお尻がある。腰が分からない、意識できないというのが良い腰の状態。腰なるものが意識できるようになった、ということは腰の硬化が始まったということに等しい。故の、腰は空であれ。

 

 二人で膝下を組み合わせて脚をグルグル回す纏糸練習は、次第に脚から腰の纏糸へ、そして上半身の纏糸へとつながってくる。最後は全身が纏糸運動になってくる。

 二人の脚が”粘黏连随"(*推手の要領=ねば~くくっついて離れないまま相随って運動する様)になるにはお互いに相手の力をよく"聴いて”、離れないように身体を操作しなければならない。

 とても神経をつかうのだが、これ(聴)をしようとすると、皮膚感覚を研ぎ澄ませるために余分な力を抜かなければならないことになる(松することになる)。また、相手の力に随って動こうと自分の身体をコントロールしようとすると、丹田が充実して丹田で堪えなければならないことも分かる。

 

 実は一人で腰回しをする時にも、そのような皮膚感覚と松、そして丹田で回す感覚が必要になる。このように、内側の力(丹田の力)で内側から外向きに腹腰を押し広げる(=帯脈を押し広げる)ように動くのが”内功”。単に、腰をカラカラ回すのはただの(体操でやるような)腰回し。

 風船のような丹田を腹内部で膨らませたり縮めたりしながらゴロゴロ回して内側から腰をマッサージする術を身に着けると、腰に自信が持てるようになる。丹田がない状態で硬い腰を回しても腰は柔らかくはならない(し、腰痛のある人は怖くてそんな回し方はできないはず)。

 

 腰は腹(丹田)が守る。

 腰の悪い人、弱い人は腹の力(丹田)が弱い。日常生活の動きの中で意識的に腹を使うことを覚えると、めきめきと腹は強くなる。まずは無意識だったことに気づき、そこに意識的な動きを加え、身体にその新しい動きを覚え込ませていく。日常的な動きでそこそこは日常的な動きに必要な身体づくりはできるはず。特別の肉体労働やスポーツをする人にはプラスアルファのメインテナンスが必要になるだろうが。

 

 と、ぎっくり腰になりかけていた生徒さんには二人で脚回しをしながら腹の使い方を再度復習してもらった。丹田と腰の関係が内側で意識できるようになれば腰は丹田が守ってくれる。(実のところ、丹田は腰が緩んで初めて現れるから、松腰→丹田→松腰→丹田→松腰・・・・と循環してしまうのだが、巻けば巻くほど内側の勁は太くねばくなっていくのは何故だろう?)

 

 こんな練習をした後で、なんの流れだったか、起式の練習をした。

 ポン、リュー、ジー、アン。

 ポンで手を上げる時に、肩関節を巻き込んで上げた際の腕の強さ、腰まで巻き込んで上げた時の腕の強さ、股関節、膝、そして足首・足裏、と、徐々に腕で巻き込む関節の数を増やしていくと、最後に持ち上げた(ポンした)時の腕が鋼鉄のような強さになっていくのが分かる。(腕を上げている本人にはその強さが分からないのだが、その腕を触っている他者には明白に分かる。)

 この原理を使って、生徒さん達と起式のポン、リュー、ジー、アン、を勁をすべてつなげるように、慎重にゆっくり行ってみた・・・・とてつもない集中力が必要だったが、その場にいた3人全てがクリア。こんなに難しい起式の内側の勁をここまで見事に繋いでできるとは、と私も驚いてしまった。(後々思えば、数年コンスタントに練習してきた生徒さん達だからこそ可能だった。自分で意識できるような”勁”を育てるにはやはりそこそこの年月が必要。コツではどうしようもないことがある。)

 腕で腰まで巻き込んで腰から勁を繋げることができれば、上半身の纏糸勁はクリアできたことになる。足裏からすべて巻き込めれば全身の纏糸勁が形成される。途中の関節がすべて開通する必要があるが、大まかには分かってきたよう。

 分かればさらに先に進めて私もさらに面白くなる(笑)

 

 

2017/10/10 <腰=腎、腎を養う>

 

 先日NHKスペシャル『人体 神秘の巨大ネットワーク ①腎臓が寿命を決める』を見た。

*これまでの放送

 9/30プロローグ(人体の臓器間が情報のやり取りをしているという話)

        https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586927/index.html

 10/1『腎臓が寿命を決める』

  (腎臓が脳の働きにも匹敵するような身体の司令塔の役割を担っているという話)

         https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586928/index.html

 

 臓器間が会話をして情報交換を行っているというのはまさに中医学の見方そのもの。

中医学は五行(木火土金水)と五蔵を対応させて臓器間の関係を論じる。ここに西洋医学の科学的見地からの説明が加われば私達も納得し易くなる。

 

 腎に関して言えば、腎は先天の気の宿る場所。腎=腰というところから太極拳では最も重視されている器官といっても言い過ぎではない。

 この番組を見ると、腎臓が如何に繊細かつ精密に作られていることかが分かり、普段練習で”腎”の大切さを強調している私でさえも、腎臓を大事にしよう!という気持ちになる。が、残念なことに、西洋医学的な見地から作られたこの番組では腎の養い方についてまではカバーされていない。

 臓器をどう養うかは、”養生”を中心に据える中医学の得意分野。その基礎の上に立つ太極拳は、当然のことながら、臓器を養う練功法となっている。(故に、気や丹田が分からないと練習にならない・・・)

 

 (なお、中医学でいう五蔵六腑の蔵は臓とは書かない。それは腎の蔵には腎臓以外にも腎の経絡、腎気も含まれるからだ、という説明を聞いたことがある。腎臓を養うためには、腎経の面倒をみる必要もある。太極拳は経絡運動だから五臓六腑を養うことができるのだが、この経絡運動の側面についてはここでは割愛。以下腎の気を養うという観点から腰に注目してみた。)

https://nice-senior.com/doc/2652/
https://nice-senior.com/doc/2652/

 

 太極拳は腰。”太極腰”という言い方もある。

 

 そして腰は腎のある場所。日本人の思う骨盤のあたりではない。

 中国語の腰がどの位置を指すのかよく理解していないと練習を大きく間違えてしまう。

 

 腰は5つの腰椎がある場所。

 右図で見ると分かるように、腎臓の位置は胸椎12番、腰椎1番~3番の高さにある。即ち、腎臓は腰に位置する。日本人の感覚ではそこはきっと”背中”・・・。

 

 念のため。命門は腰椎2番と3番の間。腰陽関は腰椎4番と5番の間。

 

 この腰椎部分をどれだけ柔軟に動かせるか、が太極拳での動きの滑らかさを決める。

 ここが硬直していては丹田を自由に動かすことはできない。(丹田を作るだけなら多少硬くてもできるが、丹田が固まってしまっては気を全身に送り届けられない。)

 

 

 太極拳の練習で最も重要視するのが腰=腎だとすれば、腰を養う、即ち腎を養う のが太極拳の練習、といっても過言ではないようだ。

 ”腰の隙間”だの、”腰の際”など、先人がその要領を伝えようと苦心して使ったそれらの言葉はそまさに”腎”(おそらく臓器の腎臓よりも多少下に広い範囲を含む)を指すと思われる。

 

 太極拳の基本運動は命門と腎の運動だとも言える。

 命門は後丹田。その両側に位置するのが左腎と右腎。

 命門は火で腎は水。火と水を”相済”(正反対のものが互いに助け促しあう)することで気(エネルギー)が発生する。

”腎で呼吸するように”(両腎を交互にパクパクさせるように?)腰を使うのが太極拳の特徴。

 

 凡そ、中医学における内臓の養い方の鉄則は、臓器どうしが癒着しないように、体腔の中に十分な隙間(空間)をとること。気で満たされた空間の中に臓器があれば、臓器も自由に呼吸ができるし、かつ、下に垂れ下がってしまうこともない。

 体腔を気で満たすようになるには、まずは小さな丹田を作って毎日こつこつと育てて、いずれはそれを体腔に広げられるようにならなければならない。身体がパンパン、赤ちゃんのような身体になるのが理想だとされる。

 

 タントウ功ではまず命門を開ける作業をする。

 これは心の火を下げ、腎の水を上げる、といった要領で命門を内側から開く。

 心の火を下げるには、含胸にして息を肺から腹に降ろすようにすればよい。でも

 そして腎の水を上げるには、会陰を命門に向かって斜め後ろ上向きに引き上げる。会陰と命門をつなごうとするといやでも腰は丸くなるはず。会陰から気を吸い上げて命門、腎のあたりを下から膨らます。これは腎を養うとても良い方法。腎が喜ぶはず。

 

 

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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