2022/12/8

 

  簡化の動きと本来の太極拳の動きの違いを動画で説明してみました。

  結局、丹田・腸腰筋の話に戻ってくるようです。

2022/12/6 <簡化24式とは? 外形から勢い、威力へ>

 

 以前、私に対して「本当の簡化24式とはどういうものか、お手本を見せて欲しい。」と言ってきた人がいた。その時はあまり真剣に取り合わず流していたのだが、今になって少し興味が湧いた。

 簡化24式は25年くらい前にスポーツクラブで習った。私の太極拳との出会いだ。北京体育大学出身の先生達が教えてくれていた。形を覚えた後、もっとその先を知りたくなって、先生に「意と気の運用の仕方を習いたいのですが」と言ったら、「それはスポーツクラブでは教えられないから私たちのクラブに来なさい。」と言われた。が、当時は子供が小さくて東京まで習いに行けなかったので諦めた、という経緯がある。

 今考えると、たとえクラブに入ったとしても果たして簡化24式で気の運用を学べたのかどうかは疑問だ。その他の気功法(内功)を学ばなければならなかっただろう。

 

 簡化24式を改めて見直そうと動画を検索したら、中村げんこう先生という方がとても多くの動画を配信していた。一式一式丁寧に教えているものもある。体格が中国の太極拳の老師風でゆったりとしているのが気に入って動画を見ながら24式を少し真似をしてみたりした。中村先生は示範しながら細かく動きの説明をして下さっているのが特徴的。ポイントになるところが的確に押さえているのが分かる。この指示に順って動けば24式の動きは会得できるだろう・・・ゆったり最後まで通して動くとなんとなく気持ち良い。

 

 一通り通した後、では、もし私が普段のような体の使い方で24式をしたらどうなるのだろう?と、今度は動画を見ずにいくつかの簡化の動きをやってみた。そして気づいたのは、簡化で指示されるように体を使うと”打てない”ということだった。形は正しいのだが、力が出ない。”威力”がでないのだ。

 なぜ力、威力が生まれないのか? それは二種類の体の使い方をしてみて分かったのだが、それについては後日何らかの形で説明できたらと思う。

 

 簡化は楊式ベースのものだが、ここで、楊式太極拳宗師の楊澄浦(1883~1936)の定式と簡化24式の中村先生のものを比較してみると、威力だの、勢いの違いが感じられると思う。(中村先生の動画https://youtu.be/M3H6e7dm06Uhttps://youtu.be/-jX7PfrW4C4)楊澄浦の体はまさにエネルギーの貯蔵庫と化している。

 

 本来の楊式太極拳から簡化24式を作った時、簡略化にしたのは必ずしも”形”ではなく、それは”体の中身”だった・・・体の中身のハリ(ポン:膨らむ力)=内気の膨らみ:これが力(打撃の威力)になる。これは入門の簡化の範疇外。

 外形から入って次第に内側、核心へと進むと勢いが増し、威力が出てくる。エネルギーが満ち溢れてくる。精気神が中核となる。

 

 

2022/12/4 <腸腰筋と蹴り その3 威力へ>

 

  ワールドカップが盛り上がっている。サッカー選手の動きを見ると”ザ・若者!”という感じで気持ち良い。歳とって太極拳を始める人はいるが、歳とってサッカーを始める人はいないのがよくわかる。

 よく怪我をしないなぁ〜なんて感心してしまう。

 走って蹴る、これはバッドやラケットで球を打つよりもキツイ。体のうねりがそのエネルギッシュな動きを示している。躍動感がずば抜けている。

 足で蹴るということが実は足だけで蹴っているのではないのが選手を見ているとよくわかる。腹、体幹部がまさに全身運動、全身が一つ(周身一家)になった結果の蹴りだ。

 

 私は犬とボール遊びをする時にしばしばボールを蹴っているけれども、それはほとんど「はないちもんめ」の蹴り・・・

 

 サッカー選手のお腹を見ると蹴りにどれだけお腹(上半身)を使っているのかが分かります。中でも腸腰筋がボコッと出ているのは特徴的。

 ↓https://inoinori.hatenablog.com/entry/2014/10/01/172738

 これまでにも書いたように、太極拳でもこの腸腰筋はとても大事。

 ここを使わないと上半身と下半身が連動しない。

 丹田を最初に形成するのはまさにこの腸腰筋の部分を起動させるためだろうと思う。

 

 10代、20代なら丹田をわざわざ作らなくても元気(元々の気)が足りているのでそのまま運動しただけで腸腰筋が使いやすい。年齢が高くなるにつれて腹の気が減ってくると、腸腰筋をあまり使えなくなりその分、大腿部や腕など、所謂”四肢”に頼った動きになりがちだ。体幹部を主導にした動きを取り戻すにも丹田を使って腸腰筋を起動させるのは有効だと思う。(丹田が膨らむと腸腰筋が使いやすい。お腹にハリがない(ぺちゃんこorぶよぶよ)だと腸腰筋が使いづらい→使えないからお腹がさらにぺちゃんorぶよぶよこになる。)

 

 今日はレッスンの最後旋風脚の練習をしたのだけど、太極拳の旋風脚には高さよりも重さに重きがあると思って間違いないだろう。拳も他の拳法よりも重く作っている。1発でダメージを与えるような拳、蹴りだ。重くなるのは”放松”のたまもの。

 

 馮老師が旋風脚の実践を教えている画像がある。

 これと、メディアにもとりあげられるカンフーの達人、宗麗老師の演舞を比べてみると面白い。

 私も30代前半は宗麗老師のようなカンフーの動きに憧れていたものだ。

 スポーツクラブの太極拳では飽き足らなくて少林拳を習い始めたのもアクロバティックなかっこよさに惹かれたからだった。その頃は上の馮老師の動きには見向きもしなかった。

 が、37歳の時に鄭州で開かれた武術大会に団体出場した時に、転機が現れた。

 少林拳、長拳などのアクロバティクな拳法は20代がピーク、30代から次第にキレがなくなり重くなり、40代はどうにか、50代になると足がもたついて悲しい結末に。一方、太極拳は、年齢が上がるごとに深みが増す・・・そんなことがさまざまな選手の演舞をみて感じとれたのだ。

 太極拳が内面とどう関わるのか、それを知りたくて太極拳に転向、結局今まで続けてしまった。

 

  上の馮老師の旋風脚、何度見ても笑えてしまう。

  蹴られた王風鳴老師は馮老師の娘婿だったが、馮老師は気に入ってはいなかったとの噂がある。(その後王老師は離婚してフィンランド、それから米国に移住します。)

  馮老師の蹴り方がなんともリアル。王老師のこと、本当に気に食わなかったのではないかと思うような蹴りだ。思いっきり放松してガン!と蹴る。

  宗麗老師のような演舞は見せる(魅せる)演舞だが、馮老師は見せる見せない御構いなしのスタンス。このあたりが太極拳の内面性かと私は勝手に思っている。

  

  そして馮老師の蹴りはかなり痛そうだが、それは老師が腹腰で本当に蹴るつもりで蹴っているからだ。サッカーの選手がボールを蹴る時と同じだ。

  演舞になると、本当に蹴る、という意識よりも、足を高くあげようとか、腰をこう使おうとか、かっこよく蹴ろうとか、なんやかんやと意識が散漫になりがちだ。ただここを蹴る、という一点に全てを集中できない。

  馮老師の凄さはその一点集中度だ。意が一点集中すると気(エネルギー)もそこに集中する。威力が出る。

  威力が出るような練習、という観点で考えて見るのも面白そうだ。

 

2022/11/28 <腸腰筋と蹴り その2>

 

  そもそも蹴りとは足の突き。手の突きとメカニズムは同じだ。

  丹田の気が急速に膨らむ(爆発)することで蹴りや突き(拳)が起こる。

 

 

つまり、ただ片足を上げても蹴りにはならないということだ。

 

蹴る時は軸足も地面を蹴っている(=踏みこんでいる)。そして、両手も打てるようになっている。

 

太極拳の蹴り技は常に手の打撃が同時にセットになっている。相手を打ちながら蹴る、肘技をしながら蹴る、など、上下同時に攻撃、あるいは、腕は防御に回っているが足は蹴っている、というようなことも多々ある。

 手足が同時に使えるというのが太極拳の妙でその特徴となっているが、それは上の図のようなメカニズムで打ったり蹴ったりするからだ。

 腹の気は爆発することで四方八方に広がる。

 

 昨日のブログの最初の馮老師の蹬脚の画像はまさに上の図のようになっている。

 

   このような体の使い方は太極拳に共通するのだが、最も普及している楊式太極拳ではそれが見られるのは希な印象がある。ともすると蹴りは足をただ高く上げるのを追求しているよう。足を高く上げて伸ばしても蹴りにはならない。

 

 昨日載せた蹬脚の画像を分析してみると・・・

これは体操競技?と思う動き。

なぜ武術に見えないのかと細かくみると、まず、曲げた足をただ伸ばしても勁は貫通しない。太腿前面の筋肉が強く収縮してしまうからだ。

腕でも同じだが、曲げた肘や膝を伸ばす時は必ず肩や股関節の回転運動を入れる。関節の回転運動は太極拳では必須。関節の折り曲げは気の流れを止める。節節貫通ができない。

 

 そして、もう一つ気になるのは、彼女が右足の膝を上げる時に軸足が浮いてしまっていること。片足が上がれば上がるほど軸足は地面を押し込んでいくはずだが、上げた足につられて軸足も上がり、全体的に気が上に上がってしまっている。手は手、足は足、と、手足の連動が起こっていないから仕方がない。

私が驚いたのはこの老師。

楊式で節節貫通している動画を見たのは初めてかもしれない。

この蹬脚を見た時、あれ?他の楊式の人たちと違う!と思い、この老師の全体の演舞を見ました。冷先锋老師という香港の有名な先生らしい・・・実は陳式の老師のよう。

 

手と足が完璧に連動している。

右足を上げて蹴り込んだ時に軸足の左脚も地面を踏み込んでいる。

 劉師父に見せたら、とても柔らかい拳だ、とのコメント。上下相随すると動きが柔らかく見える。

 

→冷老師の陳式の蹬脚の説明

https://youtu.be/SdKHcGUdo-w

 とても自然な動きだ。

 

やはり太ももの力で足を上げている。

全身の連動がない・・・

と直感的に分かるのだが、具体的にどこでそう分かるのだろう?と見てみると

 

まず、右足を伸ばして蹴り込んだ時に、軸足の膝が曲がったまま。それが連動が起こっていないのを露呈している。

 

そして、どこか不自然なのが背中と腰。両手と足を広げる時、まず腰が開く。胴体が膨らんで手足が伸びる(最初の図参照)。

  胴体運動ではなく四肢運動になっているのは最初の女性と変わらない。

  足を伸ばして行く時に息が詰まりそうな感じがするのは四肢運動のせいだろう。冷老師の息は体の中を”通っている”。動きも楽チンな感じ。

 

  最後に、今日の話題に関して、腸腰筋と蹴り、床を押すことの関係が分かるように編集した動画を載せておきます。

2022/11/27 <腸腰筋と蹴り その1>

 

  腸腰筋は蹴り技の時には必須だ。

  腹から蹴ることで威力が出る。サッカーでボールを蹴る時と同じ原理。

 

  まず馮老師の蹬脚を見てみる。

  

バネのように蹴っているのが分かる。

 

蹴った時には手足が全て同時に開く。

というのは、腸腰筋の位置にある丹田が爆発することで蹴りが起こるからだ。

 

左足は相手を蹴り、軸足の右足は地面を蹴っている。両手も突いている。

四方八方に発力する。

これが蹴りの原理だ。

 

サッカー選手が全身で蹴っているのと同じ。

 

←蹴りの中心は腹腰!

サッカー選手の腸腰筋が特に発達するのはこのため。

 

 ←https://youtu.be/-wdK24OjKug

が、太極拳の登竜門の簡化式では蹴りも腿で行なうことになっているようだ。腿で足を上げると全身の連動は起こらない。発勁はできない(本当には蹴れない)。

 

解説の中で「脚がぷるぷるします」と言っていたけれども、腿で足を上げずに腹から勁を通して足を上げると腿はぷるぷるしません・・・

 簡化は初心者用に表面的な動きで規定されているので仕方がないのだけれども、太極拳の醍醐味を味わいたかったら簡化を早く卒業してその先に進むべきでは?発勁をする流派なら勁を通すことを学べるはず。

 最も普及している楊式はほとんど発勁をしない分、簡化の延長になっているような印象がある・・・と、楊式の老師たちの蹬脚を見ていましたが、その中で、一人、あれ?と思う老師がいました。

 下の3人の老師の違いが分かりますか?

(左:https://youtu.be/LRgjzMeK-2U  右:https://youtu.be/8CgaLuguBQI

 下段:https://youtu.be/REHX60UGgio)

 

 この中に一人、発勁につながる足の上げ方をしている老師がいます・・・ <つづく>

 

2022/11/25 <园裆と腸腰筋 Vラインの弾力性 骨盤を立てる>

 

 腸腰筋についてはきっと過去にも何か書いたはず。

 が、最近の大きな発見は”鼠蹊部”(Vライン、コマネチライン)でした・・・

 

 太極拳では『曲膝』『松胯』(股関節を緩める)、という要領があって、これを、”股関節を緩めて膝を曲げる”という風に習うことが多いのではないかと思う。

  しかし、師父が言っていたように、本当は、『园裆 曲膝 松胯』。

  『园裆 』をして『曲膝』になってから『松胯』をする

 

  cをせずに松胯をしようとすると実際には松胯にはならない。股関節を緩めたような気がしてもそれは膝曲げにしかなっていない。というのは、股関節の屈曲には腸腰筋という腹の筋肉が必要なところ、园裆なしには腸腰筋はほとんど作用しないからだ。

  

 园裆は会陰が引き上がって骨盤底筋のハンモックが張った状態。股がスカスカではなく弾力のある状態だ。コマネチラインはストレッチされて力がある(力が使える:発勁ができる)。

 

  そう言えば腸腰筋が張った時もコマネチラインに力が出る。

  ということは、园裆と腸腰筋は関係があるのでは? 

 

  試して見ると、园裆を作るには丹田の気を骨盤の底まで沈めなければならず、腹はキューピーさんのように膨らむ。腰を反ったり猫背にすると园裆にはならない。腰が内側から張り出している(命門が開いている)。腸腰筋は自分で使っている意識をとれないのだが、形状的にはまさに腸腰筋が起動している。

 

  開脚で試すとそれが良くわかる。開脚で骨盤を起こすと裆が左右前後に開いて园裆になる。骨盤が寝ていると開脚をしても园裆にならない(前後の伸びがない)。

  開脚で骨盤を立たせようとするとVラインをぐるっと前回りさせなければならない。(横に引き伸ばすのではなく、回転させる)。Vラインの弾力性が問われる。

  また、開脚で骨盤が立った時腹がキューピーさんのようになってVラインがはっきり浮き出てくる。胴体がしっかりして手足が連動する。

 

  Vラインは太極拳の技でもよく狙われる箇所。ここを押されて倒れるようではいけない。自由に動かして相手の力を削げるように。そして、このVラインは発勁ができる箇所でもある。

  今、ちょうどサッカーのW杯をやっているけれど、サッカー選手のVラインは特に活躍しています・・・

 

 実は腸腰筋は丹田と重なる根幹的な課題になるので、整理して教えるのはさらに難しく感じる。生徒さんの様子を見ながら色んな角度から試してみるしかないかも。

  目指すところは<骨盤を立てる>ということにする。骨盤を意識的に立てられるようになれば腸腰筋・丹田の操作はできていると見なせるだろうから。

 

  ↓腸腰筋について<骨盤を立てる>という角度から動画を撮ってみました。

 

2022/11/23 <腸腰筋の起動のさせ方 その1>

 

 太極拳は腸腰筋を使うものだが、逆に言えば、太極拳で腸腰筋を鍛えることができる。

 タントウ功で丹田を作って気を溜めるのは、まさに腸腰筋を使えるようにするためではないかと思う。腸腰筋はコアマッスルなので意識的に使うことが困難だ。それを丹田というエネルギーの球を腹腔に作って伸縮させることで、関節的に腸腰筋の収縮運動をさせているようだ。

 

 まっすぐ背骨を伸ばしたまま長座ができないとしたら腸腰筋は使いづらい状態にあるだろう。

 両足を前に投げ出して座った時に背中が丸くなってしまうのは骨盤が立っていないからだが、骨盤を立てるには鼠蹊部を引き込んでお尻を持ち上げる必要がある。

 逆に、骨盤を立てようとすると腰が反ってしまうとしたら、腰が反らないように腰の方に息を入れて下方に引き下ろす必要がある。→下の画像参照

 

 

https://yogajournal.jp/1936

 

このサイトには腸腰筋の基本的なことが書いてあります。

 

 

左の画像の①の動きは周天の逆回転。松胯 泛臀の動き。

③は周天の順回転。含胸 塌腰 敛臀の動き。

 

内功では丹田を使って周天の順回転と逆回転を練習することで骨盤がしっかり立つようにする。これができないまま太極拳の套路をすると腸腰筋がしっかり使えないので下半身と上半身が一体化せず、脚の曲げ伸ばしが膝の曲げ伸ばしになってしまう。

  腸腰筋を使っているとコマネチラインがしっかりしてくる。

  太極拳では下の男性たちほど表層筋がムキムキにはならないが、腸腰筋の発達によってコマネチラインはくっきりしてくる(一番下のGACKT程度?)。コマネチラインがくっきり出てくると脚が切れ上がって長く見えるようになる。


←馮老師

 

股が引き上がって、コマネチライン、腸腰筋がはっきり出ているのが分かる。

(馮老師は来日中の温泉で、睾丸を動かせるのを確かめさせてくれたというエピソードあり。)

 

鼠蹊部を引き込む際に会陰が上がる(提会陰)。もしくは、会陰を上げることによって鼠蹊部が引き込まれる(胯の松)。

提会陰と松胯はセット。会陰を引き上げずに股関節を緩めてしまうと体が落ちて太ももや膝に乗ってしまうので要注意。

 

 左の画像の中の生徒さんは股間が引き上がっていない。提会陰をしないまま股関節を緩めているので腸腰筋が起動せず上半身が下半身に乗っかってしまっている。

 

 下段右側の画像は左足で地面を踏んで左脚が伸びる瞬間だが、馮老師は左足で地面を踏んだ力がそのまま腕へと貫通しているが、生徒さんの場合は膝で止まってしまい、上半身に届いていない。

 

 腸腰筋の終点は内腿なので、足で地面を踏む時は内踵(内くるぶしの下)を使って、そこと内胯(内腿の付け根)を連動させる。

 その実際の練習方法については次回紹介します。


2022/11/22 <伸縮=開合と腸腰筋 股間の引き上げ(伸び)>

 

  結論から言ってしまえば、四股とプリエは腸腰筋を鍛える練習。腸腰筋を鍛えることで床がより強く押せてより身体が伸びる(推進力が増える:前進する力、手で推す力、ジャンプする力などが増える)。

 

  <身体を縮めてから伸ばす>

  この伸縮運動は動物の動きの中核だ。

  細胞の運動自体が伸び縮み。

  蛇の動きにもチーターの走りの中にも伸び縮みが見て取れる。

  私たちの体も同じ。

  ジャンプする時だけでなく、歩いたり、走ったりする時にも伸び縮み運動をしている。

  ピッチャーがボールを投げる時、サッカーでボールを蹴る時、泳ぐ時も伸び縮みしている。 

  この<伸び縮み>を太極拳では『開合』と表現している。  

  

  

←<合(縮み)>

エネルギーの蓄積

吸気


←<開(伸び)>

エネルギーの発散(発力)

呼気


  四股もプリエも開合運動に他ならない。

  これに対してタントウ功の場合は外見的には緩やかな合の姿勢に止まり、外形は動かさないことで体の内側(丹田)の開合(伸縮)を養う。

 

  この<開合>の要になるのが腸腰筋。

  上半身と下半身をつなぐ筋肉だ。

 

  胸椎12番や腰椎1番、2番辺りから始まり、大腿骨の内側の小転子で停止する。

 

←腸腰筋の位置は鳩尾の裏から恥骨の少し下まで。

 

 道家の修行法で使われる中丹田と下丹田を合わせた位置と一致する。

 

 

 注目すべきは、この腹にある腸腰筋が最大の股関節の屈筋だということ。

 つまり、脚の曲げ伸ばしは腹で行う

ということだ。

 

 股関節を動かす時に無意識で腹を使えていればよいのだが、多くの大人は股関節を使う時に腿の力を使っている。

 

例えば、左のように椅子に座っている場合、ここから立ち上がる時に腸腰筋を使うのは不可能だ。腹に力が入らない。このまま立ち上がると腿や膝に異常な負担がかかる。

一度体を前に倒して両足を椅子に近づけ、鼠蹊部の折り込みをしっかりしてから、立ち上がる必要がある。

 

が、長年腹を使わずに立ち座りをしていると腹をキューピーのように張らせることができなくなる。立ち座りの時にぐっと腹が膨らめばよし、もし腹がペチャンコのまま立ち上がっていたとしたら、腸腰筋を使わずに脚の筋肉だけで立ち上がっている。膝を壊す最大の要因になる。

 

  <脚の曲げ伸ばし>が単なる<膝の曲げ伸ばし>になるのか、それとも<腸腰筋を使った体の曲げ伸ばし>になるのか、ここが、<足で地面を本当の意味で押せるのか否か>の分かれ道。

  きちんと押せないと力が体のどこかに止まってしまう。ちゃんと押せれば押した力は体を貫通する。

 

  そういえば、子供の頃にやっていたラジオ体操第一の最初の運動、これも単なる膝の曲げ伸ばしではなく、実は腸腰筋を使った動きだったのかもしれない・・・

 

↓左は NHK https://youtu.be/feSVtC1BSeQ

 右は かんぽ生命 https://youtu.be/_YZZfaMGEOU  

 上は『手足の曲げ伸ばしの運動』と言われるが、それは太極拳なら『開合運動』だ。体の中の伸縮運動(=丹田の膨らみと縮み=腸腰筋の伸び縮み)が手足の曲げ伸ばしとして現れることになるだろう。

 

 

 NHKのお姉さん達は脚は脚、手は手。そんなものだろうと思ってはいたのだが、もう一つのかんぽ生命の動画のお姉さんは、膝を伸ばした時に胴体までぐい〜んと伸び上がっていた。この足で地面を踏んだ力が胴体から腕へと繋がっているような動きが見える。

 

 この違いは股間の引き上げ、内腿の引き上げ時の伸びにも現れている。

 腸腰筋を起動させるにはその終点である鼠蹊部や股間の伸び縮み(弾力性)が必要だ。

 

  腸腰筋を使う時にはその終点である大腿骨の小転子(内腿の付け根)をうまく使う必要がある。内腿の付け根は股間にとても近い。

 よ〜く見ると、ポンポンとかんぽのお姉さん達はしっかり踵を上げて伸び上がっていて股間に力がある。NHKのお姉さん達は

 NHKのお姉さん達にバネが少なく見えるのは股間に”挟んで引き上げる”ような力がない、即ち、腸腰筋を使っていないからだろう。

  踵を上げる時に内踵(内くるぶしの下)と股間(鼠蹊部の中央側、小転子)を繋いで内腿を引き伸ばして使えれば、腸腰筋が働く。若いうちは意識せずに使っていた腸腰筋は内踵と鼠蹊部の連携が切れるとともに歳をとると使い辛くなる。膝を痛めやすくなるのもそれが大きな原因だ。

 

 太極拳で股関節の”松”が要求されるのは、股関節の表面的なこわばった力を抜くことによって内側から股関節を伸び縮みさせるようにするためだ。本当に力を抜いてしまって腑抜けにしてしまったら人体の最大の関節である股関節のパワーは発揮できない。

 股関節の前側は鼠蹊部。前胯と呼ばれる部分だ。ここは腸腰筋

 

 

 太極拳では腸腰筋が要中の要だ。というのは丹田そのものが腸腰筋を起動させるためのものだからだ。タントウ功の様々な要領は結局、腸腰筋を使えるようにするものだ。含胸、塌腰 は腸腰筋の起点を、敛臀、园裆(股間を丸く作る)は腸腰筋の終点を使えるようにする。

 

 次回解説をつける予定だが、下のようなピチパン姿の馮老師の股間の使い方は一見の価値がある。膝を曲げた状態から伸ばす時=縮(合)から伸(開)になって地面を踏んだ時、その踏んだ力が上半身を通じて手まで繋がっているのが見えると面白い。

 股間、股関節の使い方は武術における秘伝中の秘伝。ダブダブのズボンを穿くのはそれを見せないため、という説もある。

 

 ↓左上:第3式懒扎衣  右上:第4式六封四闭

  左下:第5式单鞭    右下:第9式前蹚拗步

 

2022/11/20 <床を踏んで膝を伸ばす 脚を伸ばすために脚を曲げる 腸腰筋へ>

 

   四股とプリエとタントウ功。

 これら中腰姿勢での鍛錬で養っているのは『床(地面)を押す力』。

 

 問題はこの『床(地面)を押す力』の意味。

 ひょっとして勘違いしている人がいるかも?と思ったので確認。

 『床を押す力』が必要になるのは、膝を曲げた状態(しゃがんだ状態)から脚を伸ばす時。

 

    ↓バレエのプリエならしゃがんだところから立ち上がる時。  

 

  上の図の前半のしゃがんでいく動作は、後半で床を押すための力を蓄積させるためにある。

  床を押して立ち上がっていくことでその反発力として体を上に引き上げる力が得られる。そうすると、最後に立ち上がった姿勢は、最初の立ち上がった姿勢と、外形はそっくりでも内側の力が全くことなるものとなる。

  必要となる内力は地面を押す力と体を上に引き上げる力の均衡。天地人と呼ばれる状態だ。その状態をつくるためにバレエではプリエの基本訓練を欠かさずおこなう。

 

 大事なのは、しゃがんで行く時には床を押す意識よりも上体を引き上げることを意識すること。ここで床を押す意識が強いと上体が重く下半身にのしかかってしまう。結果として後半立ち上がって行く時に思いっきり腿の力を使わざるをえなくなる。腿の力で立ち上がると床を押した感覚はなくなる。意図した結果は得られなくなる。

 

 四股の場合はどうだろう? 

 と調べたら、四股で大事にされている要領は「軸足を伸ばすこと」だった。(例えば https://youtu.be/RVRIgqL0Iqg 参照)。おっと、それは私も知らなかったが、なるほど、やはり、”伸ばす”ところに鍵がある。

  実際には、軸足だけでなく、上げた脚もまっすぐに伸ばす。つまり、上のバレエのプリエと同じで、脚を曲げた状態からそこで得られたエネルギーを使って両脚を伸ばす(それによって片脚を振り上げる)、そんな運動になっている。素人目で見ると、ドン!と足を下ろすところばかりに着目してしまうが、実際にそのために必要なのは伸ばした脚・・・

 

←https://www.youtube.com/watch?v=JdXCr4GIrhs より双葉山の四股。

 

軸足がしっかり伸びている。というより、両足ともにしっかり伸びている。

 

 脚を伸ばして高くあげると両足の接点はみぞおち辺りになる。これを維持して足を下ろして腰を下げ股を割る。両脚の付け根はみぞおちだ。

 

 最初のバレエのプリエにしろ、相撲の四股にしろ、両脚の付け根は股関節よりもずっと高い位置にある。これが上半身と下半身をつなぐ要になる。

 

 ”股関節を使う”と言うと、股関節より下(=脚)から使う人が多いが、股関節は腹筋群と大腿骨のつなぎ目だから、股関節を使う時は腹や腰を使う意識が必要だ。そしてその中でも要中の要になるのは『腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)』だ。

 

腸腰筋は股関節を操る筋肉であり、まさに体幹部のコアマッスル。

 

プリエも四股もタントウ功も腸腰筋を鍛えるものだといっても過言ではない。

 

太極拳で丹田を作るのもこの腸腰筋を使えるようにするため。この筋肉が起動しないと上肢と下肢は連動しない。床を押すこともできない。

 

巷で見る簡単な太極拳ではほとんどこの腸骨筋が使われていない。膝や股関節、腰を痛めるのはこの腸腰筋がうまく起動していないせいだろう。

 

 

 膝の裏がきちんと伸ばせるようにするのも腸腰筋の作用

 歩いている時に膝が伸びないのは腸腰筋が使われていないから・・・

 

 次回はこの腸腰筋を使う要領について書けたらと思います。

2022/11/17 <床を押すとは? 四股とプリエとタントウ功の共通点>

 

  どんなスポーツでも股関節の柔軟性はとても大事だ。股関節の可動域が狭くてもスポーツで遊ぶことはできるが、やりこむならそれなりの体を作るトレーニングが必要になる。この”トレーニング”は太極拳でいう”功”だ。

 

  野球が好きだからといってただ野球だけしていれば良いわけでない。様々な方法でトレーニングに励む。可動域を増やす”功”もあれば、瞬発力をつける”功、パワーをつける”功”もある。”功”のメニューは競技によって様々だし、選手が独自に”功”を編み出すこともある。

  

  四股は相撲の有名な”功”法だ。これによって柔軟な股関節、強靭な足腰を作る。バレエのプリエも四股に似た作用がある。足でしっかり床を踏む力をつけ全身を繋げる。

 そして実は太極拳のタントウ功も似た作用を有している。

 

 <柔軟な股関節→足で床を踏む→床からの反発力を使って全身をつなぐ>

 

  四股、プリエ、タントウ功はある意味同じグループの功法ではないかというのが私の持論。どこか体の一部分を鍛えるというものではなく、重心を下ろす動作・姿勢によって体の中を開けて『周身一家』にする。(『周身一家』というのは体全体を一つの家にする、という表現だが、私のイメージとしては、家の中にいくつもの部屋があるところを、すべての部屋のドアが開いて家の中が一つの部屋になってしまう、というもの。体の中には様々な器官、部位があるが、すべての隔たりが消えて、体がひとつの袋になってしまう。)

 

  四股、プリエ、タントウ功はそれによってしっかり足で床を押せることができるようにするものだ。

  ”足で床を押す”というのは、単純に言えば そのままジャンプができる状態、もしくはダッシュができる状態だ。それには①足裏まで気を下ろす、という作業に加え、②(足裏まで気が降りた時に)足裏が腹腰とつながっている、という要素が必要になる。

  ただ①足裏まで気を下ろした、というだけでは床を押せない。ダッシュがきれない。

  椅子から立ち上がる際にも、ただ足に気を下ろしただけでは立ち上がれないのと同じだ。椅子から立ち上がるには足裏に意識を下ろして足で床を踏んだと同時に腹や腰が持ち上がる必要がある(足裏と腹腰が繋がっている必要がある)。

 

  太極拳や相撲、バレエで必要とされるのは、①②が時間差なく同時に行われること。すなわち、腹から足裏までが一つに繋がることが必要とされている。これをタントウ功なら丹田を作ってその気を下ろしたり膨らましたりすることで行うし、相撲は震脚をつかって行い、プリエは股関節の外旋をつかって体を薄く伸ばすことによって行なっている。

 

 

https://youtu.be/xpVTRP5Rovk

 

プリエはしゃがむ動作そのものよりもそれによって床を押して均等の速度で立ち上がってくるところに重点がある。

”床を押して”立ち上がる。

これがジャンプ力をつける練習になる。

体のバネをつける練習ともいえる。

←四股

https://chums.jp.net/climbing-413より

 

左のような四股も床を踏む力(=反発力を得る力)をつける作用がある。

床を踏めなければ相撲もバレエも始まらない。それは太極拳も同じだ。

 

 

←タントウ功https://geolog.mydns.jp/heartland.geocities.jp/kikounogensan/kikou/baho.html

 

ここで問い。

プリエ、四股、タントウ功、どれも中腰(しゃがむ)姿勢をとるが、なぜこの姿勢をとることが床を押す訓練になるのだろうか?

 

結局、床を押せるようになるように練功すれば正しいということになる。

もしいくらやっても床を押せるようにならないならやり方が間違えている。

 

 タントウ功で丹田を作るのも床を押せるようにするためだ。

 四股にはそのための四股の要領があるし、プリエにもそのための要領がある。

 単純な動き(姿勢)に見えても、こうしてはいけない、ああしてはいけない、とうるさいくらい条件が課されるのも、そうでなければ床を押せないからだ。床を押せなければバレエや相撲やタントウ功の”技”を実現することは不可能になる。

 太極拳の技はまず床を押せることを土台にしている。いくら腕の動きが素晴らしくても、いくら開脚ができても、床が押せないことには技にならない。「一に功夫、二に胆力、三に技術」というのはそのことを言い表している。

 

  ・・・問いに戻る。

 四股やプリエやタントウ功のどこが床を踏む力を養う要になるのか?

 

 私なりの回答は次回書きます・・・

2022/11/11<内撑外裹 男性は内撑重視 女性は外裹重視>

 

 前回の『内撑外裹』に関して注意と捕捉。

 

内撑外裹』は「中心から外側に張り出す力=内撑」と「外から中心に向かって締める力=外裹』という意味。本当は内旋、外旋、という意味ではない。

 

 空気で膨らましたボールは、内側から外向きに空気が膨張する力(内撑の力)が外からかかる重力(外裹の力)と均衡を保っている。内側の膨張力が少なくなれば、外から押し付けてくる重力に負けてボールは潰れていく。私たちの体も、重力に均衡するような内側から張り出す力があることで均衡を保っている。もし重力が何十倍にもなったら私たちの体は潰れてしまう。

 

 丹田にも『内撑外裹』の現象がある。

 内撑が優勢の時は丹田は膨らんでいく。外裹が優勢になると丹田は小さくなっていく。

 練功で丹田を大きくしたり小さくしたりするのは内撑外裹の練習だ。

 「大よりも大きく、小よりも小さく」・・・馮老師が度々そう言っていたように、2つの相反する極を行ったり来たりするのが太極拳の核心だ。それが陰陽太極図で表されている。    

 丹田を最大に大きくすれば(内撑を大きくすれば)体の範囲を超えてしまう。自分の気場が広がる。丹田は消えたようになる。反対に、丹田を最小にして米粒のようにしてしまうと(内撑を減らすと、これまた丹田がなくなる。その場合は気配がなくなる。

 厳格に言うなら丹田は内撑の作用をしている。大きくして拡散させるところから、小さくして米粒状態にしてしまうところまで、自由自在に操るのが本来の太極拳の理念だっただろうが、現在では流派によってその大きさが固定されているような気がする。

 

 そして、丹田は骨盤も含むので、骨盤の内撑外裹にはとても注意が必要だ。

 これは以前私が随分疑問を感じていたことだが、太極拳の練功方法は元来男性用のものなのに、これを女性がそのままやって良いのだろうか?というのは、骨盤の使い方の問題だった。

 最終的にこの疑問は、性は内撑を重視する、女性は外裹を重視するべき』という師父の一言で解決した。

 男性の骨盤は小さくなかなか開かない。開脚も女性ほど簡単にはできない。だから練功では内撑を意識して、骨盤を開くように練習する。

 これに対して、女性は骨盤は広く筋肉も柔らかいのである意味”開いて”しまう。内撑を頑張ってやると、股関節が緩くなって股関節を痛める可能性がある。あるいは、腸骨の位置や仙骨、恥骨の位置がずれて骨盤の形状がずれる可能性も高い。だから、女性は外裹を忘れずにやる。骨盤ベルトをつけるような意識だ。

 

 前回載せた脚の内撑外裹(外旋内旋)も、実は骨盤の内撑外裹の現れだった。

 脚の内旋外旋などのチャンスーの原点は丹田(骨盤を含む)にある。

 

 男性は内撑が苦手なので外旋を少し多めに練習

 女性は外裹が苦手なので内旋を少し多めに練習

 

 体を締めながら開く

 体を開きながら閉める

 

 このあたりの感覚がつかめると、体がポンプになるのが実感できる。太極拳の醍醐味の一つだ。

 

2022/11/8 <三角筋 内撑外裹 内旋と外旋の両立>

 

 上腕、とりわけ上腕上段が使えるようになると三角筋も柔らかくなって後ろに移動しやすくなる。所謂、肩が落ちる、肩がなくなる、沈肩、の状態だ。

←https://yogajournal.jp/13254

 

三角筋が硬いと肩の可動域が減る。肩こりの原因にもなる。「肩抜き」という時はこの三角筋をすっと落としている(チャンスーで躱す時には必須)。

 

 前肩、猫背になっている時は三角筋が前の方に移動してしまっている。三角筋は前部(腕を前に上げる時に使う前面部分)、中部(腕を横に上げる時に使う側面部分)、後部(腕を後方に上げる時に使う後方部分)に分けられるが、後部が前方へ引っ張られないようにするのは特に大事だ。肩をかなり後ろに引かないと三角筋は正しい位置にこない。三角筋が正しい位置にくれば胸椎上部や首筋がスッと伸びる。「沈肩」になって猫背とおさらばになる。

 

 腕の回転を使って次第に上腕上部まで回転がかかるようになれば三角筋や前鋸筋が動いて腕が正しい位置に矯正される。私たち大人の中で腕、肩が正しい位置にある人は稀だ。

 

 腕、肩が正しい位置に近づくと、自然に股関節や脚も正しい位置に近づいてくる。

 腿裏が使えないのは前肩、猫背が原因のことがほとんどだ。

 上半身を変えずに下半身を変えることは難しい(というより、不可能だろうと思うようになりました)。

  膝を痛めるのも上半身が原因、決して脚の筋肉が衰えたからなどという単純な理由ではない・・・

 

  練習の仕方としては、ある程度上半身をやってから下半身、そして下半身と上半身の連動を確かめてまた上半身・・・と順繰りにやっていくのだろう。

 

  そして下半身!

  生徒さんたちがどうやったら腿裏や内腿、裆を使えるようになるのか? いつまでも脚で体重移動をしている感覚では太極拳の醍醐味が分からない。

 

  結論から言うと、脚は内旋と外旋が同時にかかった状態の時に地面を押せるようになる。太極拳の言い方だと『内撑外裹』(neicheng waguo)だ。

 

 

 

『内撑』というのは内側から外向きに張り出す力。外旋の力と言い換えられるだろう。

 

これに対し『外裹』というのは、外から包み込む力。(中国語で小包のことを「包裹」という。纏足をすることを「裹脚」という)

 

左の馮老師のように立てれば内旋と外旋が釣り合って「定式」(気沈丹田の状態)になる。(「定」の時は動けない。)

 

この懒扎衣の定式から左に重心移動をする際は、

まず、①一旦更に右に移動して丹田の気を右足に下ろし、それから、②右足で地面を押して左に移動することになる。

(★丹田に気を溜めている定式の状態では動けない。動くには一旦、どちらかの足に気を下ろす必要があることに注意)

 

 脚の内旋、外旋の観点から言えば、

 ①の定式からさらに右に移動する時は、外旋(内撑)の力を加え、

 ②の右足で地面を踏んで左に移動する時は、(①の外旋を保持したまま)内旋(外裹)の力を加えることになる。

 

 ①の外旋に②の内旋を加えることにより、右足裏がしっかり地面を踏んで右脚全体が伸びながら突っ張り棒のようになる。

 

 このような脚の使い方は太極拳に限ったものではない。外旋と内旋が同時に入った脚の使い方はいろんなところで見られる。(例えばhttp://www.namiashi.net/article/13453820.html

 上の引用したブログにも書いているが、股関節の屈曲伸展、内転外転の動きには股関節の外旋、内旋を加えることが合理的な身体の操作には必須だ。(腰の王子も肩関節の動きの説明で全く同様の発言をしていた、)ただの曲げ伸ばし(屈曲、伸展)、という運動は存在しないということだ。曲げ伸ばしは”捻りながら”行う。套路にはそのような動きがちりばめられている。というよりも、そうしないと勁が繋がらず、太極拳の技が成立しなくなる。

 

<以下、参考までに>

 

上段左:高い架式(歩幅の小さいもの)は腰(命門)が開きにくいので股関節の内旋外旋が非常に難しくなる。多くの場合ただの膝の屈伸になりがち。高手(大師クラス)向き。

上段中:股関節の屈曲(前足)と伸展(後ろ足)のみ。内旋外旋なし。円や球を原理とする太極拳ではない。

上段右:腰(命門)を開かずに股関節に座りこんでしまっている。脚に外旋内旋がかからない。地面に沈み込んでいって地面からの反発力が生まれない。

中段左:外旋(内撑)の力が足りない。

中段中:内撑外裹

中段右:体が開き過ぎ。「開の中にも合あり」になっていない:内旋(外裹)が足りない。

下段左:内撑外裹

下段中:内撑外裹

 

2022/11/4 <推手の役目>

 

 腿裏を使っているか否かも推手で手合わせするとすぐに分かる。

 太極拳の練習には推手が必須となっているのは、それによって自分の体の使い方をチェックできるからだ。相手が老師なら老師がどこをどうすべきか導いてくれるだろうし、生徒同士ならお互いにお互いの直すべき点を指摘し合ったり、あるいは、ああでもない、こうでもない、と模索しあったりすることもできる。

 

 とはいえ、その推手も表演用に規定されたものになる、ただ手を触れ合わせるだけで肝心な体の内側を通る”勁”を感じ合う練習にはなっていないようだ。”知彼知我”(相手を知ることで自分を知る)というのが本来の推手だが、表演用のものは相手に”合わせる”(随)ことで終わってしまっている。”知彼知我”の境地には程遠い表面的な接触に止まっている感じだ(中高校生のフォークダンス程度の接触?)。

 

 その一方で技をメインにした推手もある。技をかけて相手を負かしたい、という態度でやってしまうと自分の内側を忘れてしまい、これまた”知彼知我”にはならない。

 ちゃんとした老師が生徒に技をかけるときはその生徒に合わせて技をかける。生徒は倒されても学ぶことができる。

 

 残念なのはコロナが広まって推手もし辛くなってしまったこと。

 太極拳は套路と推手が両輪だ。

 套路で体の使い方を覚え、推手で体の使い方を修正する。そしてまた套路に臨む。その繰り返しだ。

 相手なしには自分の力がどういうものかは分からない。

 自分の力が強いのか弱いのかも相手と力を交えることでわかってくる。

 師と呼ばれる人と手合わせすれば、なぜその人が”師”と呼ばれるのかが体で分かる。内側の強さ、外側の柔らかさ・・・だから、放松、と言うのか・・・と、”放松”の理解もまた変わってくる。

 

  表演や試合のための太極拳は道を外す危険が高い。

  というのは、太極拳はバレエのように見る人を楽しませるものではなく、体操競技のようにスコアをつけて争うものでもないからだ。

  太極拳は単純に自分の体の力を蓄え、体を合理的に動かせるように修練し、昔ならいざとなったら戦うことができるようにするものだった。今では、”戦う”という側面が消え、その準備となる、”体を強くし正しく動けるようにする”という”健身”目的が主となっている。

  ”体を強く正しくする”ための練功は人に見せるものではなく、どちらかといえば隠れてするものだ。私にも音楽に合わせて団体で”踊る”と楽しいという時期があったが、それを過ぎれば、音楽も余計なものになる。

 

  試験勉強をする時に、教科書以外に参考書と問題集というものを使うが、参考書を丸暗記しても試験には受からない。大事なのは問題集を解くことだ。問題集を解いて解けない問題があれば、そこから教科書や参考書に戻ってそこを学び直せばいい。推手はまさに問題集のような役目がある。様々な推手があるからそれらを一つ一つやりながら内功や套路との接点を見つけることができる。自分の内気の乏しさに気づけば内気を増やす練習を積極的にやることになるだろうし、腰の伸びが足りないことに気づいたら、帯脈回しやその他の練習をとりいれたり、日々の練習で気をつけるべき点が明らかになるだろう。

 

  冒頭の腿裏を使うという点に関しては、腿裏を使って推すのと、腿裏を使わずに脹脛以下を使って推すのと、二種類の力がどのように違うのかを生徒に実際に受けて感じてもらえば、おそらくその生徒はある程度その二種類の力を再現できるだろう。そうやって体で覚えていくのが本来の練習の仕方。理屈はどうしようもない時に使う・・・(ブログは理屈ばかり 苦笑)

 

2022/11/1  <腿裏が使えない理由 背骨の弓化>

 

  今日撮った動画の2本目。腿裏を使うには?

 

  太極拳で腿裏を使えずに膝に乗ってしまう人はとても多い。太極拳で腿裏を使うのがなぜ難しいのか? それは背骨では?

  背骨を弓にする。背骨を弛ませない! この要件は必須です。

 

←頸椎から尾骨までを弓化する。

猫背とは違う。

骨盤を立てて背骨を弧にする。

それには気を股間近くまで押し下げる必要がある。

 

2022/11/1 <肘の曲げ方 沈肩墜肘が必要な理由>

 

  今日撮った動画の1本目。肘の曲げ方。

  上腕を使って肘を曲げる、すなわち、沈肩・墜肘が前提となった肘の曲げ方だ。

  腰の王子が「前腕を上腕に近づけるのではなく、上腕を前腕に近づける」というものと同じ。丹田を作って腕を繋げるようになると自然にそうなるのだけど、もし、それをいささか手っ取り早く教えるならこうなるかなぁ?

  沈肩・墜肘は気沈丹田のために必須だが、これがそのまま腕の使い方に反映されます。

  前腕主導の太極拳から、体幹部を使った太極拳へ。その鍵の一つは上腕にあるようです。

それは2022/10/30 <沈肩で鎖骨を腕化する>

 

  沈肩をきちんとすれば鎖骨が腕になる。

  逆に言えば、沈肩をしないと鎖骨が腕化しない。

 

   街で歩いている人を観察すると、肩先から下が無造作にぶらぶらしていて、”肘”がある人はまずいない。それは鎖骨を腕として使っていないからだ。

 

解剖学的には腕は①の胸鎖関節から始まる。

(肩甲骨と鎖骨で作られる輪っかに上腕がぶら下がっている。)

鎖骨は腕部の構成要素だ。

 

が、猫背になったり姿勢が崩れると①と②の間にある鎖骨は固定されてしまい動かなくなる。胸鎖間接、肩鎖間接が固まってくる。

そうすれば②の肩関節の動きも悪くなる。

 

私たち大人のほとんどは通常②の肩関節より下を腕として使っている。

 

ここから本来の腕の姿を取り戻すのが、沈肩、だ。

師父は、肩を放松すれば良い、というが、その放松の仕方が”沈”と言う言葉で表されている。

 

沈肩が十分にできると、鎖骨が腕の一部になる。感覚としては、鎖骨の下=鎖骨と上部肋骨の間、に隙間ができて、その胸骨からその隙間を通って脇(図の★)に抜けるようなものになる。王子はその隙間を”懐”と呼んでいる。

←私のお気に入りの馬龍選手

胸鎖間接から腕が生えているように見える。腕が長く見える(”放長”という現象。沈肩をすると腕は長くなる。)

沈肩と含胸がセットで使われている。

 

 なお、腕を操る意識は左の画像に書き込んだ青線のあたりにあるはずだ。

ある意味、ここが”肩”のライン。

 

上の骨格イラストのは脇の一打が、師父はそこを”肩”と当たり前のように言う。私が、えっ?肩? と聞き直したら、「下の肩だろう!」と答えたことがあった。

 太極拳では脇のライン、馬龍の画像の青のラインあたりを腕として動かす。拳で打ち出したりジーやリューをするのもこのラインが多い。人間にとって腕を使いやすい高さだ。しかしながら、黄色のライン(肩の峰)を”肩”としてそこから腕を無意識的に操っている人はとても多い。その意識を沈肩で変える必要がある。推手の練習はその意識を変革するのに非常に有効だ。

 

  ↑懒扎衣の定式。

  左の馮老師をよ〜く見てから右の老師の形を見ると、沈肩(+含胸)が甘いことに気づく。鎖骨や脇の意識よりも肩の峰の意識が強い。それは右の老師の左手の指が馮老師のように覚醒していないことから裏付けられる。腕が胸鎖関節からきっちり作れると肩関節、肘関節、手首の関節がくっきり浮き出てくるため、指先まで覚醒するようになる。(指で突いても突き指しないような感じになる。)

 

  加えて、この肩、腕部の作りは体感を通して下半身にも影響を与えている。

  右の老師は背骨が伸展しないまま体が下に”落ちて”しまった感じだ。。

  この老師はおそらく背中の弓(脊椎の伸展)が形成されていない→园裆にならずにダイレクトに太ももから膝に乗ってしまっている。足裏に地面からの反発力を得られない。馮老師の形を目に焼き付けてから左の老師の形をパッと見ると全体的な違いがわかりやすいかもしれない。

  右の老師のような太極拳が今は主流になっている(民間派ではない大学派の太極拳の特徴のようだ)。丹田をしっかり作っていない(腸腰筋などのインナーマッスルを使えていない)ところに根本的な原因があるのだが、このような股関節に乗っかってしまうような姿勢は膝や股関節を痛めやすいので要注意だ。

ついでに書くと・・・

←このような練習が出回っているようだが、膝や股間節にとても悪いので避けるべき。そもそもこのような重心移動で素早く動けるはずがない。太極拳の試合だけで通じる演舞用の形?

 太極拳は円、球がシンボル。”角”がない体であるべき。膝が角張っているのは太極拳の形ではない。

 まずは肩や胸、背中を放松・・・

←2022年7月のメモに載せたもの。

 

この技も胸鎖関節から腕にしていないと技がかからない。

肩から腕のチャンスーをかけてもこんな風にはならない。

 

ただ、太極拳の老師には胸鎖関節の意識もないはず。丹田から、もしくは足裏から腕をつないで使っている。

 

胸鎖関節から腕を使おうとすると、いやでも胸を使わざるをえない。その”胸”はその下の”腹”の力で突き動かされる。

 つまり、上のgif画像で馮老師が見せているように、胸腹の折り畳み運動で腕のチャンスーがおこることになる。

 ←馮老師も馬龍もなで肩・・・

 

 馮老師は太極拳のマスターだから当たり前。

 馬龍は卓球の選手の中でも特に沈肩を保っている。肩甲骨の回転で打つスタイルでも体幹がブレず、フットワークが人一倍良いのも沈肩と関係が深そう。


2022/10/26 <なぜ上腕骨の回旋が必要なのか? 分回し体操との比較>

 

   このメモは私が生徒さんに向けて書いているように見えても、自分自身に向けて書いている部分も多い。できてるようでできていないと気づいたこと、やっていたとしてもその意味がわからずにやっていたこと、教えている過程で気づいたこと、そんなことだ。

 

 上半身、特に肩や腕の使い方は前回のパリ滞在で劉師父からかなり仕込まれた。最初は師父が何をさせようとしているのか分からず、ただ、言われるがままに動いていたが、今になってみると、それは教科書的な上半身下半身別々の動き方から上半身と下半身が連動する動き方へと変貌させる練習になっていた。腰の王子のセミナーを受けることで、師父の教えてくれたことの理論的な裏付けができるようになっていっている・・・

 

 王子は、「肩甲骨ブームはもう時代遅れ、今や肋骨・・・と思うかもしれないが、それももはや時代遅れ、今や”上腕骨ブーム”の到来だ!」と声を大にして言う。

 太極拳では肩甲骨をどうしろという話を聞いたことがない。肋骨については『束肋』ということばがあるくらい。しかもそれほどメジャーな言葉でもない。が、上腕骨=『肱』という言葉は技の名前に登場するくらいメジャーだ。太極拳で大事な肘技はまさに上腕骨の技だ。套路の中には至る所に肘技が隠れている。肘がいつでも操れるような腕が必要だ。

 

 街ゆく人々を観察すれば分かるが、私たちは普通、上腕と肘に無自覚だ。肘から先の”小手先”(前腕+手)の意識がとても強く、腕を折り曲げる時も前腕を上腕に近づけている。もし、上腕を前腕に近づけて腕を折り曲げる人がいたとしたら、それは子供か、あるいは、特別な身体開発をしている人だ(王子は、江戸時代の人たちはそのような身体意識があったと言う)。

 太極拳の場合は、上腕を前腕に近づける、というそんな意識はないが、常に丹田と手を繋いで丹田で手を引っ張るように使うため、結果的にそんな風な現象が起こる。

 

 結論を言うと、手を使う時は必ず上腕を回旋させること。王子は「回軸」という言葉を使うが、上腕の骨の軸が回るようにする、ということだ。

 太極拳は丹田を回すことで背骨の軸が回旋→その連動として上腕骨も回旋、となるのだが、これを逆に、上腕骨を回旋させることで、背骨の回旋に連動させることも可能だ。

 

  王子が、上腕骨の上段、の回旋にこだわるのは、上腕骨の中段や下段を回旋させても体幹部に連動しないからだ。上腕骨の上段を回せば肩関節の回旋(内旋・外旋)が起こる。

  肩関節が回旋すれば、胸鎖関節や肩甲骨も動き、次々と連動が連鎖していく。

 

 上腕骨の上段を回旋させるには沈肩が不可欠だ。

 沈肩をせずに回しても上腕の根っこは回らない。

 沈肩をしていない状態は胸鎖関節と肩関節をつなぐ鎖骨が腕として使われていない状態。

 沈肩をして初めて腕の付け根が胸鎖関節になる。

 胸鎖関節から腕を動かせると上腕が回旋する。

 

文章で書くと難しそうですが、こんな風にやってみると簡単かも。

https://www.instagram.com/reel/CU_LJxdBVK9/?utm_source=ig_embed&ig_rid=09bdffcf-8293-4a73-a4e9-8c6a04169b4c

 

 

 

 

 

胸鎖関節を片手で押さえて、そこから腕が回るようにします。

鎖骨の奥から脇にかけて空間が感じられれば更に良い→懐、というものが形成されている(風通しの良い感じ)

 

 上の画像では、腕を鎖骨の高さに上げて回転させているので簡単だが、腕を下に垂らした状態だと胸鎖関節から回旋するのは難しくなる。沈肩と含胸が必要になります。

 

 ・上のように上腕を回旋させれば肩関節は回旋する(肩関節の球が回っている感じ)。

 ・上腕を回旋させてるつもりでも肩関節の球が回っていないのでは不十分(上腕の上段が回っていない)。

  

  腕を胴体と一体化するには肩関節を回旋(内旋・外旋)させるように使うのが必須。

  肩関節の屈曲、伸展、外転、内転では腕が胴体から切り離れてしまう

 

  肩関節の屈曲、伸展、外転、内転の組み合わせで動く運動を「分回し運動」というらしい。初耳の言葉。とても興味部会のでその動画を下に貼ります。

 

←こんな運動ですが、太極拳では使わない。この運動では投球もできない・・・(と腰の王子は皮肉っていた。)これではゴルフも無理、水泳も無理。合理的な身体の使い方には必ず肩関節の内旋、外旋が含まれる。

 

 

 太極拳では腕で円を描く基本功があるが、そこで練習しているのは何か?

 初心者のうちは適当に円を描いていてもよいが、中級者以上はその際の肩関節の球、上腕骨の骨の回旋に注意をして練習していくべきだろう。

 

 今日のオンラインのグループレッスンでも言ったが、上腕骨が使えると、下半身の弓歩の動きが全く変わってしまう。連動が起こるからだ。分回し運動では連動は起こらず、中腰になるとすぐに前ももや膝に乗っかってしまう。上半身と下半身の連動は「上下相随」と言うが、それは決して雰囲気的なものではなく非常に理論的なメカニズムによるものだ。連動がなければ太極拳はただの体操になってしまう。上腕の回旋は脱体操への一つの鍵になる。

2022/10/23 <沈肩 その2 内旋外旋するには?>

 

   まずは放松。そしてそれが(肩が)沈んで重くなる。これが「松沈」。

 肩を沈めないと、肩は自由に動かない(霊活)。

 しかし、巷での肩の運動は、動かすことに重きが置かれて、沈めることを軽視している感がある。

 腰の王子は、しばしば「だら〜〜」という言葉を使うが、これはまさに「松沈」を狙っている。

 

 ←おなじみの(?)「ここからクルン♪体操」。

 

 左画像のポーズの時に、思いっきり肩が沈んで腕が「だら〜〜」となっていることがこの体操のミソだ。王子の場合は肩がなくなりかけている。

 多くの場合は隣の弟子のようになりがちだ。これは「沈肩」をせずにただ腕を巻いている。

 

 違いがどこに現れるかというと、沈肩をしてから画像のように”真剣に手で股間を隠すように”すれば(と王子は指導します。これは太極拳で言う所の「护裆」です。)、肩関節の”内旋”がおこる。沈肩をせずにそうすると上それは、肩関節の”内転”になる。

 つまり、上の王子は肩関節を内旋、弟子は内転をしている。

 肩関節を内旋すれば上腕骨も内旋、軸に沿って回旋する。(床屋のクルクルのようになる。)

 これに対し、肩関節の内転では上腕骨は回旋しない。

 

 

 内旋と内転では全体的な身体の使い方が全く変わってくる。

 なぜなら、内旋は、関節球を回転させる必要がある→関節を回す意識、であるのに対し、内転では、腕を動かす意識で足りてしまう=骨を動かす意識。

 関節を回せば骨の末端から末端までが動き、次の関節に連動する。

 骨を動かす意識ではその骨の運動のみで終わってしまう。

 

 全身を「節節貫通」させる、つまり、関節を次々と貫通させて全身を一つにつなぐ、には、関節を動かす意識は不可欠だということだ。関節は骨と骨の”隙間”。丹田も隙間のようなもので、太極拳が”隙間”を重視するのはそんな理由からだ。

 

 

 肩関節の動きは上の図で示されているように分類されている。

 腰の王子も指摘していたが、世の中の人はほとんど、屈曲・伸展、外転・内転、この4つの動きで暮らしている。内旋と外旋がとても少ない。

 が、実際に重要なのは、内旋、外旋だ。

 屈曲伸展外転内転を、内旋と外旋で行うようにすれば身体の使い方はガラッと変わってしまう。

 上腕骨が回旋するのは肩関節の内旋・外旋のみだ。

 他の四つの動きでは上腕骨は回旋しない。女性で”振袖”と呼ばれる現象が起こるのも、内旋・外旋不足だ。(同様のことは、股関節にも当てはまる。)

 

 そして最初の話に戻るが、肩関節の内旋、外旋をするには、まず、沈肩をして、肩関節の場所=上腕骨の骨頭の位置が分かるところに身体をセットしておく必要がある。これをせずに腕を動かすと、関節を動かさずに腕を動かす動きになってしまう。内旋外旋しているつもりで内転外転を屈曲伸展になっていることはよくあることだ。

 このあたりの動きはパソコン作業をしている時、マウスを動かしている時、果たして自分は肩関節を内旋外旋させているのか? 皿洗いをしている時は? 歩いている時は? と確認してみるのがよいと思う(私はそうしています。)

 歩いて手を振る時も少しは外旋、内旋が入っているはず。太極拳のポンもただの肩関節の屈曲ではない・・・

 

 にしても、まずは、沈肩して関節のありかを掘り出しておかねば・・・。

2022/10/22 <沈肩について その1>

 

 「肩を無くす」というのは「沈肩」の極みだ。

 「沈肩」と言っても、様々な程度がある。功夫が上がれば上がるほど、「沈肩」の程度が高くなる。

 

  まず1番目の「沈肩」は、肩が上がらないように肩の峰を下方に下げること。これは肩を上げたり下げたりの体操でやるような動きだ。が、これでは一時的に下がってもすぐに上がってくる。沈肩の程度も足りない。

 

  次に、肩甲骨を下げるということ。これは肩甲骨を自分で動かせる、という条件がある点で、上の1番目よりも高度だ。が、肩甲骨を自分でグッと下に引っ張ったまま維持すると緊張状態になり放松ができない。

 

 そこで、太極拳では、「沈肩」をするために「肩井穴を下ろす」、という方法が使われる。

←①、②は表面的な筋肉の操作。

 ③はツボを身体の内側から引き込む必要がある。

 

 ツボを身体の内側から引っ張ることができると筋肉を緊張させずに(放松を保ったまま)沈肩を保っておけるようになる。

 

少し丹田が形成できるようになれば、含胸をすることによって肩井穴を引っ張れるようになる。

 

 (順番としては、外形的な沈肩、外形的な含胸をして多少でも丹田に気を下ろして溜める→それから、丹田に溜めた内気の力で胸の気を更に丹田へと引っ張り下ろす(丹田を使って含胸をする)→更なる含胸によって丹田の気がさらに多くなる→丹田で胸よりも上、すなわち肩井を丹田で引っ張り下ろせるようになる。)

 

 まずは、ここまでできるようになるのが「沈肩」の第一歩。

 以前出産後のママ達を教えていた時の経験からすると、丹田で胸の気を引っ張るところまでは導けばその場でできるようになるようだ。胸まで引っ張れるようになれば、肩井穴まで引っ張れるようになるのは時間の問題かと。

 

 つまり、

 ちょっとだけ沈肩、ちょっとだけ含胸→丹田に少し気が溜まる

 →その少し溜まった丹田の気で更に含胸、更に沈肩

 →さらに丹田に気が溜まる

 →更に含胸、更に沈肩

 →更に丹田に気が溜まる

 →更に含胸、更に沈肩

 

 これを繰り返しているうちに、いつか丹田が身体の中で大きく広がって周天が始まるようになる。

 周天が始まれば肩は足で引っ張れるようになる・・・

 

 師父によれば、まず、肩の放松、それから松沈、そして、霊活(自由に動く)。

 腰の王子の肩が自由自在に動く、その前提に、松沈、つまり、沈肩があるということだ。

 沈肩ができていなければ肩を自由自在に動かすことはできない。

 それはなぜでしょう?

 

 続きはまた書きます。

2022/10/17

 

 腰の王子の新着動画は「肩透かしの術」と銘打っていたけれども、これは太極拳の『周身一家』に他ならない。「節節貫通」(全身の関節を貫通させる)をして足やお尻の重さと手を引っ張り合いで使うようにする。師父の言葉だと、内三合と外三合、そして対拉(引っ張り合い)の力だ。動画の最後の王子の腕立て伏せは『周身一家』の完成形・・・

 

 太極拳も全く同じような力の使い方をするが、そのために必要なのがやはりタントウ功?

 そう思ったが、腰の王子はタントウ功はしていない様子(注)。が、師父が言っていたように、20代に練功をするならタントウ功(静功)はそれほど必要ない。若くて気の量が随分あるからだ。(←注:とはいえ、腰の王子はタントウ功もどきの壁押しや、釈迦の瞑想法=坐禅を無茶苦茶やってきています。)

 30代後半に入ってから練功をする場合はタントウ功は不可欠。でないと、気が丹田にしっかり沈まない。胸の気が解けて胸の中が開く(含胸)にも沈殿の時間がかかる。肩がなくなるほど沈肩するには、含胸と丹田で引っ張る力が必要だ。

 

 (見た感じ)小さな力で相手の体を動かしてしまうと皆びっくりする。実際は、普通の人は体を分断して力を使っていて、無意識的に相手も同じような条件で力を使ってくると思っている。しかし、こちらが全身を繋げて力を発揮すると、想像していないところから力が加わってくるように感じるため体が対応できず(神経が対応できず)重心を狂わされてしまう。私が女性相手にそれをやってもそんなものかと思われるかもしれないが、私より体のずっと大きい男性を引き摺り回したり倒したりしたら驚かれるだろう。が、体の中が繋がってくればそれは全く不思議なことではないのが分かるようになる。実際、自分の体の中が繋がってくると、推手をしながら、相手の力がどこから出てくるのか、肩なのか、胸なのか、腹なのか、腰なのか、股関節なのか、足なのか、というのは言えるようになる。推手の面白さは、どちらがより体に意識をめぐらせられるのか、というのが分かるところだ。が、本当にレベルが上がってくると、どこにも意識がなくて、どこから力がくるのか分からない、という状態になる。丹田や腰、あるいは股関節、または足から力を出しているのが明らかな人よりも、どこから力を出しているのかが分からない人の方がずっとレベルは高くなる。

 

  私にとって不思議なのは、自分の体で分かる範囲内で相手の体の中が分かるということ。なんでそうなのか分からないがそうなっている。これが推手でいうところの『知己知彼』かと思う。

 

  王子の動画の中で王子の腕などを握っているのはほとんど男性だが、これを女性に変えて、しかもゆる〜く持たせると、技はかからなくなる。まあ、それは当たり前。ゆるく放松して持てば相手の力は自分に連動しない。だから、太極拳などをする人は相手をぎゅっと握るようなことは絶対にしない。が、生徒さんに自分の力の使い方を教えるためには「しっかり握ってください」とかいわざるを得ない。特に女性の生徒さんの場合は握り方が弱すぎてこちらがそもそも技をかける必要がない場合があるので。以前親交のあった陳式19代の老師も女性相手の時にやりにくそうにしている点でした。男性は普通力でギュッと握るのでかえって技がかけやすい→引っ張り合いの力が使いやすい、というところがあります。

 

  技を学ぶのは楽しいけれど、本当はそのベースにそれを可能にする身体:王子が言うところの「身体開発』された身体が必要になる。太極拳ではタントウ功が身体開発のためのメインのメソッドだったのだろう。

2022/10/12 <高岡英夫氏の腕ぷら〜ん体操>

 

  昨日の私の試し撮り動画で紹介した「腕ぷらぷら体操」なるものは、最近、劉師父に勧められたものだが、そう言われてみれば昔から劉師父はそんな動作をやっていた。そして、その動作は、直近の腰の王子のセミナーでも王子がやっていたのを思い出した。そして高岡英夫氏もそんな動きをやっていたなぁ〜・・・

 

  王子のセミナー動画は公開できないが、高岡氏の体操は公開されているだろう・・・と調べたのだけど、本人の動画はほとんどなかった。代わりに弟子のような人が高岡氏の立甲メソッドを紹介している動画があったので紹介します。

  「腕ぷらぷら体操」は肩甲骨を肋骨から引き離すこと(立甲)が一番の狙い。その点は王子も同じです。肩は内旋にするのがポイント。肩甲骨が内側に寄るのを防ぎます。

 

  7分9秒あたりから「 腕ぷら〜ん体操」が始まる。

  実は高岡氏の体操と王子の体操はそっくりなものが多くある。

  上の動画の前半の、腰をくねくねしなたら手や腕をさする動作は、王子のものとそっくりだ。腕ぷら〜んぷら〜ん、もそっくりだし、そのあとのおじぎ体操(ここではお辞儀の姿勢で腕ぷら〜んぷら〜ん、で腿裏を開発)というのも王子のメソッドと全く同じだ。たまたま同じになったのか、王子が高岡氏を参考にしたのかは謎だが、身体開発の大御所二人が推すメソッドだから説得力がある。(しかも、太極拳の放松功やチャンスー功にもなじみやすい)

 

 ←高岡氏の歩き自体が、腕ぷら〜んでした。

 

 

 肩甲骨が肋骨から離れることで、上腕がしっかり使えるようになる。

 肩甲骨が肋骨にへばついていると、上腕の根元(上部)が使えない=肩関節の回旋が十分にできない。

 

 肩甲骨っが肋骨から離れると、上腕が根元から使える→上腕がニョキッと現れてくる=”肘”がはっきりします。

 

 ”肘”がはっきりするとレベルが格段に上がります。上腕は肘でもあり肘は上腕・・・日々の動作から上腕や肘を使うことを意識するのが大事。がんばりましょう。

 

 

2022/10/11

 

  ジーなど、手を前に出す時はその前に肘を回しておくことが大事。

  肘を回すことによって上腕が回転し肩甲骨や鎖骨、肋骨が連動→胴体と腕が一体化する。

  

  問題は肘の回転が肩関節の回転につながるかどうか。

 

  この問題を解決するのは、「ひたすら松!」胸や肩や腕の脱力、そう師父は言う。

  放松して肩が沈めば自ずから連動する・・・・

 

  馮老師と劉師父の動きを取り出したみた。

 

  腕を後方に引いた際の肘回し、これは、ジーや打撃の前の「合」の動作として随所に現れてくる。単推手でも使われる。

  これがあるから、発力の時に胴体の力が拳や掌に伝わることになる。

  これがうまくできないと腕だけの力で打つことになってしまう。

 

  この肘回しがうまくできるようにする簡単な功法について散歩途中に試し撮りをしたのをそのままアップします。前半で言いたいことは言ってしまっています。後半は回内、回外の話になって説明がごちゃごちゃになっている感がある。大事な点なのですが・・・。も少し整理できるようにしたいところ。

 

2022/10/10 <前腕の回外、回内で上腕を使う 肘の屈伸にはチャンスーを加える>

 

 上腕上部を使うということは腕と胴体を繋げるためにはマストだ。

 太極拳では関節を連動させて回転させることによって使いづらい上腕上部を使えるようにしている。

 

  馮老師が生徒さんを教えている動画を見るのはとても参考になる。(https://youtu.be/p8B9YyaDSCk

 

<第10式掩手肱锤>

  ↓画像①(左)と②(右)

  生徒さんは空手風。腕で打っている。一方、馮老師は?

  

 

 

←画像③

馮老師は拳がピストルの弾のように回転しながら出て行くこと(=チャンスー)を教える。

 

 

 

← 画像④

が、それでもうまくいかず、打撃の構えにいたる部分についても細かく指導

 

 

 

 

 

 

 生徒さんのどこに問題があるのか?

 それは、チャンスーがかかっていない、の一言に尽きるのだが、手首、肘、肩関節が一斉に回転していないため、胴体と腕が切り離れてしまっている。肘から先だけで打っている感じだ。

 馮老師はというと、上腕で打っているのが見て取れるだろう。

 

 生徒さんは肘がただの屈伸運動(曲げ伸ばし)になっている。

 が、太極拳では、肘が曲がったり伸びたりする時は必ず上腕と前腕が回転している。(肩肘手首の関節が常に回転しているからそうなってしまう)

 

 

 

上の画像②の速度を少し落とした画像。

拳が回転する時に上腕と肩関節も回転している。

 

もう少し正確に言えば、前腕の回内動作(手のひらが上向きから下向きに変わる)の際、上腕、肩関節まで内旋している→肩甲骨や脇、胸も連動している。

 

上の画像④で両手で大きな円を描いて構えた際にも、直前に円を描いた時にチャンスーを欠けて手首から肩関節までを一斉に回転させているのが馮老師。生徒さんの方は構えのみに意識が向いていて、なぜその直前に両手で大きな円を描いているのか、その意味が分かっていない=チャンスーで拳と胴体をつなぐチャンスを逸している。

 

  前腕の回内や回外の動作の時に肘や肩の回旋を連動させるのは太極拳のみならず武術一般的な常套手段だろう。それが体の力をうまく使う方法だからだ。小手先(前腕と手)のみで動作を行うことはない。すべて体幹と結びつけている。(周身一家)

 

  少し前の動画で取り上げた、腰の王子の「キミもパーフェクトボディ」と弟子のそれを比較しても上のケースと同じような違いがある。(https://youtu.be/5Oa_UGYHQAk)

  上には前腕の回外の動作が含まれているが、弟子の方は前腕を回した際に前腕の筋肉を締めてしまっているため、肘関節が回転せず上腕に力が伝わらない。王子は腕を十分放松させているので、指や手首の回転が肘、肩関節の回転と連動する。上腕が回転しているのも見て取れる。弟子の上腕は固まってしまっている。(何のために王子が中指を使わせているのか・・・そこが分かっていないのだと思います。)

  実際には、王子は肩を支点に体幹部の力で手首を回転させている。弟子は肘から先だけの動きだ。

  王子の腕のような動きをすると、そのまま手の甲で鞭のように相手を打つことができる。

 このような手、腕の使い方は太極拳の基本=チャンスーだ。

 

  上の馮老師の動画の中で、馮老師が生徒さんに丁寧にチャンスーを教えている場面がありました。これは推手の時に練習する動きで、最後に肩の靠(カオ)をしています。

  上腕上部まで回転するように何度も教えているのが印象的。上腕と肩は一体なのが馮老師の動きから見て取れます。しかも、胴体もうねる。

  チャンスーは対練で練習するのが最も効果的なのですが。

2022/10/6 <上腕上部を使うということ>

 

  昨日最後にさらっと書いた、上腕を上中下に分けて動かすという試みは私にとってとても興味深いもの。なるほど、そういうことだったのか・・・といろんなことが繋がった。

  

左のような筋肉模型を見ると分かりやすいが、上腕上部には肩甲骨や脇、胸と繋がる筋肉がある。

 

つまり、上腕上部を動かす、ということは、胴体に繋がる筋肉を動かさなければならないということだ。

ここを使うことで腕は胴体と一体化する。

 

逆に言えば、この上腕上部を使えないと腕と胴体は離れてしまう。上腕中部にも脇からくる筋肉が見られるが、上部の比ではない。もし下部しか使えていなかったら腕は完全に胴体から離れてしまう。

 

  チャンスーはこの上腕上部を使いやすくする作用がある。

  が、チャンスーをかけずとも、肩をしっかり沈められれば(沈肩)上腕上部が使えるようになる=脇が使えるようになる。

 (「上腕上部が使える」ということと「脇が使える」ということは同義だ。「脇が立つ」という言葉もある。腕を使った時に脇がついてこなけければ連動が切れてしまう。腕は脇を経て腹腰、下半身へと繋がることになる。)

  

 上腕の上部を動かすのは難しい。腕をだらりとして上腕の上部だけ回転させようとすると胸の奥から動かさなければならないはずだ。それに比べて上腕の下部を回すのは簡単だ。

 上腕上部を回転させられると股関節も回転する。股関節を緩めることなしに上腕上部を回転させることはできない。

 全身の連動には不可欠な要素だ。

 これができている人の動きはとても美しくなる。

 

  このブログで最近使った画像から上に書いたようなことを確かめることができる。

 

  ↓7/23のメモから

  左の馮老師と右のインドの少年(クリシュナ役)、二人は上腕上部がしっかりしていて上腕中部下部はぶらぶらだ。この二人はお腹が出ているように見えるが、実は、脇が立っている。全身が一つになった姿勢だ。

  ちなみに、左の画像の弟子は腕は放松しているものの、上腕中部がメインで上部は開発途中。脇が立っていない(体側から太もも側面=胆経が通っていない。)

 

 ↓7/5のメモより

  上腕の動きを見れば二人の違いは明らかだろう。

  右の馮老師は上腕が巻き巻きしているが、右の老師は前腕に意識があってそれを動かしているだけ。上腕は全く無意識で肩関節の旋回もない。胴体と腕が離れている典型的な形だ。腕が胴体と離れているならば脚も胴体と離れているだろう(肩関節と股関節は連動し合う)。

 

 ↓7/15のメモより

   左の武原はん、今見ると、傘を上腕上部から胴体で支えているのが分かる。

  それに比べ、右の女性は、前腕で傘を持っている。前腕は小手先、と腰の王子は言うが、小手先を使っている人は体幹部が使えない。体の動きのしなやかさの違いはそんなところから見ることもできる。

   

   また、太極拳でも言えることだが、小手先を使った四肢運動を行うと、体幹部を不自然に垂直に立てなければならなくなる。まっすぐだと思って四角く固まった胴体を作ってしまうと、”軸”は通らなくなる。

  武原はんや、その上の馮老師の動きからは、本物の活きた”軸”が見てとれるだろう。

 

 ↓そして最近のこれ

 これも上腕上部に着目すると違いが歴然となる。

 王子は上腕上部を巻いているから、腕を広げた時に上腕だけではなく脇や肩が波打っている=胴体が巻き込まれている。 弟子は上腕中部から巻いているから胴体部がほとんど影響を受けない。

 

 肩関節の内旋の時は思いっきり腕の付け根、腋深く、もしくは胸奥から内旋をかけること。そうすれば外旋は意識せずともついてくる。(内旋で巻いたものを外旋で解くから)

弟子は、内旋の時に小手先(前腕と手)を主導でやっているのが残念なところ。

←「キミもパーフェクトボディ」

腕を出すところのみならず、指を立てるところも上腕上部が使われている。

 

指を立てる動きは肘を回して前腕を回外させる動作だが、回外がちゃんとできると上腕が外旋する(肩関節の外旋が連動する)。 

回外、回内、も面白い論点なのでにまたいつか書きます。

<付け足し>

もしや・・・と思って検索したら、「キミもパーフェクトボディ」を弟子がやっている動画がありました。https://youtu.be/5Oa_UGYHQAk

案の定、回外動作がうまくできていない。

肩関節連動させられるくらい上腕を放松していなければならないのだけど・・・

王子が何のために中指を立てさせたのか・・・あらら

2022/10/5 <背骨の伸展と上腕のチャンスー>

 

  今日のオンラインのグループレッスンで確かめたこと。

  チャンスーを体の中からかけると背骨が伸展する。脊椎と脊椎の間が伸びるのだ。

  太極拳ではこの背骨の伸展がとても大事になる。伸びたり縮んだり。これが開合になる。手を広げたり閉じたりするのが開合ではない。

 「結局、生物の動きは”伸び縮み”なのです!」 

  と言ったのは、テーラワーダのスマナサーラ長老だったが、細胞は伸び縮み、ミミズも伸び縮み、この伸び縮みが生物の根本的な動きだ。この伸び縮みが生命の活発さを決める。

 

  太極拳で一番大事なのは何ですか? と聞いた時に、師父が一番に上げたのは、「弾力性」だった。弾力性とは伸び縮みの力に他ならない。

  

  ゴムの伸び縮みで考えるとよくわかるかもしれない。

  伸縮性のないゴムはどんなものか?

  まずは、硬くて伸びないゴム。硬いゴムは解さなければならない。無理に伸ばすと切れてしまう。そして伸びきったゴム。これは伸びないゴムより少しやっかいだ。収縮力をつける必要がある。

  体もゴムに似ている。

 

  背骨の伸展力というのは、背骨の伸縮力だ。伸び縮みができるということ。

  背骨の伸び縮みを丹田の動きへと圧縮すれば、丹田の伸び縮み(丹田の膨らみと縮み)となる。丹田が膨らめば背骨が伸展したようになる。これを”開”という。逆に、丹田が小さくなれば背骨は元の状態に戻ったようになる。これを”合”という。この”開合”は息と合っている。

   

 

 さて、今日レッスンで久しぶりに太極棒を使ったので、ちょっと復習。

 

 左の馮老師の逆チャンスー(纏絲)の動き。

 これは9/27のメモの冒頭で紹介した「螺旋後伸」のチャンスー功と基本的に同じ動きだ。

 

 この馮老師の動きと下の老師達の動きを比べるとどうだろう?

 

   馮老師は肩関節から肘、手首へとチャンスーをかけているが、下の二人の老師は肘関節からチャンスーをかけている。

 と、この前までならそんな説明で終わっただろうけど、この前の腰の王子のセミナーを受けたら、ああ、そういうことか、と目から鱗。

 

左は双葉山のwikiに載っている画像を加工させてもらったもの。

ポイントは、上腕骨の上中下。

セミナーでは上腕を三つの部分に分けて動かす練習をしたのだが、実は、チャンスーがその通りだった。

上腕をどれだけネジネジできるか・・・

3回ネジネジ(螺旋3周)できれば完璧。

 

上の馮老師の右腕(上腕)のチャンスーは3周しているように見える。上中下、全ての位置でチャンスーがかかっている。

左腕(上腕)は2周? 上部のチャンスーが欠けているような?

 

  これに対し、上の二人の老師達は肘からチャンスーをかけているため、上腕の下部だけ巻いている。上腕の上部、中部にはチャンスーがかかっていないため、腕と胴体が切り離れている。背骨の伸展がないのは腕のチャンスーが背骨(肩甲骨、肋骨経由で)に連動していないため。

 

 

この点、左の陳項老師のように全身を巻き巻きすれば肩、上腕上部にもチャンスーがかかりやすい。

これだけ巻き巻きすれば腕が背骨に巻きついたようになり腕で背骨が伸展できる。

しゃがんだり、立ち上がったりするのが腕主導でできるようになる。

 

ただ、後部の女性達が陳項老師のように全身の連動がおこらないのは、基本となる立ち姿ができていないから。膝に体の重みがかかってしまうようだと腕のチャンスーが下半身に連動しない。腰から下をどうにかする必要がある。今日のレッスンでも、最後は弓歩の問題に突き当たってしまった。この画像を見てもほとんどの生徒さんの下半身の動きはかなりひどい。脚のチャンスーを教えてみるとうまくできるようになるのかも?

2022/10/3 <開合、旋腰、松沈>

  

   太極拳の流派はいろいろあるけれども、タイプとしては、①開合重視、②旋腰(纏糸)重視、③松沈重視、という3タイプがある、という話を師父から聞いた。この三つの要素はどれも太極拳にとって重要なものであるけれども、その中のどれを重視するかで太極拳の風格は変わってくる。

 陳式太極拳から派生した楊式太極拳は①の開合と③の松沈重視と言えるだろうし、陳式の中でも小架式は②の旋腰重視だろう。

 一人の師を見ても、年代によってその風格の変遷があったりする。

 日によって上の三つの要素の比重も変わったりするし、それを変えて練習することもある。

 

 二路の炮捶の中には一路と同じ動き(技)が出てくるが、実は一路と二路では上の三つの要素の混ぜ混み具合が変わってくるのだと知った。

 一路では、開合と旋腰、松沈は一つ一つ学ぶ。

 二路ではこの3つを同時に行うことを目標にするらしい。

 一路は二路の基礎を築くもの。二路は統合的な動きになる。

 

 ↓一路と二路の『掩手肱捶』(前半) 左が一路、右が二路

 

 左の一路は一つ一つの動作がはっきり。背骨もピンと伸びた感じ。

 右の二路は全ての動作が繋がっているような感じ。流線型。姿勢も丸さがある。

 言うなれば、左は楷書、右は行書もしくは草書?

 ↑『掩手肱捶』(後半)

 上と同じような違いがあるが、これを冒頭の①開合 ②旋腰・纏絲 ③松沈 の観点から見ると、馮老師の一路の動きは明らかに①の開合重視だ。大開大合で伸び伸びとした動きになっている。

 

  右側の二路の動きにはうねりが感じられる。これが②の旋腰・纏絲だ。一路の『掩手肱捶』ではあまり感じられない。(一路の中でも旋腰・纏絲が顕著に見られる式もある。例えば第13式の『青龍出水』。)

 

  そして、③の松沈の観点から見ると、一路よりも二路の方が重心が落ちているのが分かる。つまり、松沈(脱力して重心が下がる、重くなる)の度合いは一路よりも二路の方が大きい。

 

  これらをまとめると、二路は①の開合だけでなく、②の旋腰・纏絲、③の松沈が、同時に顕れた動きだと言える。

  開合と松沈、旋腰と松沈、もしくは、開合と松沈、など、3つの中の2つを同時に顕すような拳を打てるだけでも凄いことだが、これら三つを統合した拳を打てる老師は滅多にいない。「馮老師の拳を見ると、その後で他の老師の拳を見る気が失せてしまう。」というのは、馮老師の拳がその3つを併せ持っているからだろう、と師父は言っていた。

 

  最近はチャンスー(纏絲)に焦点を当てていたが、そのチャンスーの幹は「旋腰」であり、その旋腰は開合と結びつく、つまり、①と②は比較的容易に結びつく。

  

 

先日紹介した王子の「ここからクルン」も、そう見ると、①の開合と②の旋腰・纏絲の組み合わせだ。

 

旋腰(=転丹田)と同時にチャンスー(関節の回転の連動)をかければ、開(中心から末端に向かってエネルギーが流れる)と合(末端から中心に向かってエネルギーが流れる)が起こる。 つまり旋腰・チャンスーは開合を引き起こす。(逆に、開合は必ずしもチャンスーを引き起こすわけではありません。)

 

 「ここからクルン」の時の王子の動きをみると腹腰、胸、肩関節、肘関節、手首が順番に動いているのが分かる。これは旋腰・チャンスー。それにしたがって、手は開いたり(開)、閉じたりする(合)。師父に王子のこの動作を見せた時、「開合法の練習だな」と言ったのは印象的だった。「立甲法」、肩甲骨を動かす練習だとは思いもよらないのだろう。

 

  先日この画像を紹介した時に同時に載せた王子の弟子と思われる人の「ここからクルン」は旋腰やチャンスーがないのと同時に、開合もなかった。ただ、腕を前後に動かしていた。このあたりが、師と弟子の違い・・・

 

  王子が「ここから”クルン”」と名付けたこの”クルン”の中には、体の中からできるだで多くの関節(隙間)をクルンと回す、というチャンスーの意が隠れているはずだ。クルンと回すのは肩関節から先だけではなく、肩関節よりさらに胴体の内部だ。前回のメモの螺旋チャンスー功を試してみると体の内側のチャンスーが感じられるはずだ。

  松沈は開合やチャンスーの完成度を高めるもの。ただの放松だけではなかなか松沈の感覚が掴めない。松沈は時間をかけて丹田に気を沈めて蓄積させていくもの。別格だ、と師父は言っていた。

2022/9/27 <上腕内旋と立甲>

 

  昨日のメモで紹介した螺旋単推手の中の動き(斜め下へのジーの動き)は、左のようなチャンスー功で練習することができる。(https://youtu.be/IQKjQGyYNbI の中の『16 螺旋後伸』)

 

 

 

 

 上の画像は、

 <一番左>①馮老師が肩関節の内旋をするところ

 <真ん中>②肩関節の内旋を終え上腕が内旋して肘まで螺旋の勁が達したところ

 <一番右>③肘を抜けて指先へと流していくところ(チャンスーが解けていくところ)

 だ。

 

 最も重要なのは①の瞬間で、この時に手首のチャンスーを使ってしっかり肩関節を内旋させること。この時、肩が上がったようになっているのは、王子のいうところの”肩すくめの術”、あるいは、”正しい肩の挙げ方”。肋骨は下がったまま肩甲骨と鎖骨の輪っかが上がる。丹田に気を沈めたまま肩より上に腕を上げようとするとこうならざるを得ない。息をぐっと胸の奥に沈めている(含胸)。

 ①でちゃんと肩甲骨をひっかけて内旋ができればその後、上腕から肘にむけて螺旋の勁が走る。肘まで達すれば、そこで一休みできる(②)。この②では、丹田だけでなく、肩関節、肘関節、手首の関節、にエネルギー(気)が蓄えている状態。

 その後、肘から前腕も螺旋を描きながら手首へと勁を落としていく(③)。この功法では徐々に手首を緩めて指先から勁を逃している。→丹田、肩関節、肘、手首に蓄えられていた気が指先から抜けていっている。②の時の馮老師のお腹の丸みに比べると、③ではお腹が凹んでいるのが分かる。

 

 と、これらの画像を見たら思い出したことがあったので、参考までに紹介すると・・・

これは高岡英夫氏の『肩甲骨が経てばパフォーマンスが上がる!』の中のもの。

上の馮老師のポーズとそっくりだ。

 

 これは立甲の練習の一つ。

 つまり、肩甲骨と肋骨を引き離す練習だ。

 

チャンスーをかけると肩甲骨と肋骨の間に隙間ができると思っていたが、チャンスーをかけずにこのようなポーズをとっただけでもある程度そうなる。

 

 

 

 

左は王子の『ここからクルン』体操。
https://youtu.be/S3FC6pv0H0g

 

腕を後ろから前下に降ろしてくる動作の中には上の肩関節内旋がマイルドに含まれている。

(最近の王子はこの内旋時にも発声を伴って焦らしながら動作を行なわせている。溜めをつくって内旋を行わせることで肩甲下筋や広背筋を連動させようとしているのだと思う。サラッと内旋してしまうと、肩甲骨と肋骨がくっついてしまってそのあたりの筋肉が起動し辛くなる。)

 

    この内旋の動きを王子はさらっとやっているが、実は真似をするのはそんなに簡単ではない。実際、王子の生徒さんの動画(https://youtu.be/b4GKo1gHG-M)と比較すると・・・

 

  お弟子さんの方は上腕だけをくるりと回したような感じ(腕が横から回ってくる感じ)。王子は肩甲骨をひっかけているので、最後に肩がグッと沈んでいるのが分かる。

お弟子さんはおそらく三角筋メインで上腕の内旋をさせている模様。肩が上がっているのは肩甲下筋と広背筋が使えていないから。

 

  全身に連動をかける形で肩関節の内旋(上腕の内旋)をするには肩甲骨の連動は不可欠。内旋がしっかりできると、下の王子の画像で見えるように、小指が立つ!(小指が覚醒する)

  小指が立つくらいチャンスーがかかっているのは、体の芯からチャンスーがかかっている証拠。冒頭で書いた、肩すくめの術、が使われています。つまり、肩甲骨と肋骨の隙間を開けている、ということ。

  だから、王子はこの動作の練習をする時に、「手と股間の間にはスペースがなければならない」、と注意していました。お弟子さんのような腕の使い方だと、振り下げた手が簡単に自分の股間を打ってしまいかねない。脇を開けて脇の奥から内旋をする感覚をとる必要があります。脇の奥は肋骨と肩甲骨の隙間の入り口です。

2022/9/26 <肩関節の内旋と肩甲骨と肋骨の間の隙間>

 

 今日は螺旋の逆チャンスーのおさらいをしてもらい(前回の動画の中で紹介したチャンスーの動きです)、その最初の肩関節内旋の際に、肩甲骨と肋骨の隙間を開ける要領を教えてみた。結果は、すんなりできた生徒さんもいれば、なんとなく、の人、イマイチ手応えのない人、などいろいろ。

 

 チャンスーに限らず、太極拳でとても大事なのは肩甲骨と肋骨の間に隙間を開けておくこと。実はこれが”立甲”にあたる。肩甲骨と肋骨がへばりついてしまうと、腕を動かすと肋骨が連動して動いてしまい体軸が形成できない。ロボットのような塊の体になってしまう。どこに重心があるのかも分からない体、虚実不明になってしまう。肩甲骨と肋骨が一体化してしまうと『上虚下実』ではなく『上実下虚』になってしまい、気を沈めるのがとても難しくなる。

 

 肩甲骨を動かして肋骨から剥がすような体操は腰の王子もいろいろ紹介してくれている。「ここからクルン♪」体操はその代表例だ。

 

 太極拳でも意識的に内功をすれば肩甲骨と肋骨の隙間が開けられるようになる。それにはある程度の内気の量が必要だ。

 

 ”隙間を開ける”というのが果たしてどんな感じなのか? その一瞥を味わいさせたくて、今日はチャンスーの動きを使って生徒さんたちを相手に試してみたのでした・・・

 

 教えながらはっきりしたのは、肩甲骨と肋骨の間の隙間を開ける機会が、肩関節の内旋時にあるということ。

 上腕を内側に捻る動き、すなわち、肩関節の内旋、が、理想的に行われていれば肩関節と肋骨の間に隙間があくことになるのだ。

 

 ここで、知識として知っておくとよいと思うのは、肩関節を内旋させる筋肉がどこについているのか?ということ。なんとなく、上腕の上の方についている・・・と思っている人は多いのではないか?私がそうだったように・・・

 https://www.styleb.co.jp/seminar/note/shoulder-medial-rotation-muscle/

 このサイトを参照すれば、肩関節を内旋させる筋肉が5つほどあることが分かる。

 その5つの中で、太極拳的に見て(体の連動という観点から見て)、非常に大事だと思われるのが、肩甲下筋と広背筋だ。

 

 5つ挙げられている筋肉のうちの大胸筋と三角筋。これらを使って肩関節の内旋をしてみると、局部的な運動にとどまり、他の部位に連動が起こらない。

 

 

https://www.fitnesslove.net/training/16417/2/

 

そして広背筋と大円筋。

大円筋の作用は肩関節にとどまるが、その下の背中の広範囲に広がる広背筋を使えると、その連鎖は仙骨まで及ぶことになる。内旋時に是非とも使いたい筋肉だ。

https://diamond.jp/articles/-/242236

 

そして問題の肩甲下筋。

肩甲骨の裏側(肋骨に面した側)についている筋肉だ。

これが使えるか否かが肩関節の内旋の良し悪しを決める。

上のサイトは一見の価値あり。

巻き肩の人はこの筋肉が硬くなっている。

肋骨と肩甲骨の癒着となる原因の筋肉だ。

 

 

 実際、チャンスーの肩関節内旋をする際には、肩甲骨と肋骨の隙間を狙っている感がある。隙間を開けずに肩関節内旋をしてしまうと、そのあと、チャンスーがするっと解けてしまって決まらない。

 

 ここでは、前回紹介した螺旋チャンスーを使った推手の動画で検証をしてみます。

(https://youtu.be/-xQd1zxkAy8 の「2螺旋単推手」より)

 

 上の動画の馮老師とその弟子の動きに差があることは一目瞭然だ。よく見ると肩関節の内旋に大きな違いがあるのが分かる。

↑拡大して見て下さい。

 

取り出したのは、肩関節内旋時の馮老師とその弟子の動き。

<上段の馮老師の肩関節の内旋>

 腕を上から下へと巻きながら下ろす時に、肩甲下筋(肋骨と肩甲骨の隙間)をひっかけている。すると、その姿勢から広背筋も連動して使えるため、老師の姿勢が最後まで崩れず、含胸、抜背、斂臀になっている。

<下段の弟子の肩関節内旋>

 肩関節内旋、というよりも、上腕を捻る意識の方が強そうだ。脇の意識がかけているため、肩甲下筋がひっかかっていない(肩甲下筋は脇の奥にある。脇からアプローチすると肩甲骨と肋骨の隙間は意識しやすい)。 肩甲下筋が抜けているから広背筋も使えていない。

弟子の肩関節内旋は大円筋と三角筋と大胸筋で行われているようだ。すると体軸が形成されず体が崩れてしまう。

 

  ポイントは肩甲下筋と広背筋を使って肩関節の内旋をすること。肩甲下筋を使えれば広背筋も使えるし、逆に、広背筋を使おうとすると肩甲下筋も使えるだろう。いずれにしろ、息を一旦胸奥に含む(まさしく「含胸!」)ことが必要になる。この胸の奥の息を逃さないように腕を伸ばしたり縮めたりすることが立甲のポイントかもしれない。

  

  なかなかそれを教えるのは難しいと思うのですが・・・

  腰の王子の「ここからクルン♪」体操で、『ここから』の”から”を裏声のような声でやらせているのも胸に息を含ませるためかもしれない・・・なんてふと思いました。含胸を正しくできれば肩甲骨と肋骨の間に隙間ができるのではないか? 含胸をして肩甲骨が肋骨に貼り付いてただの猫背になってしまうのは、まだ正しい含胸ではなさそうだ。肩甲骨と肋骨に隙間ができるような含胸をすることで、胸郭と骨盤(胸と腹)が別物として連動することが可能になると理解が進みつつあります。

2022/9/21

 

  『一流の腕使い』はチャンスー(纏絲)だ・・・と文章で説明するのはとても大変そうなので動画で説明を試みました。

  太極拳を練習する人たちならそこから入ると理解しやすいかも?

  逆に、一流の腕使いをやることで、何気なくやっていたチャンスーの意味が深掘りできるようです。

  関節を順々に互い違いに動かしていく(順逆順逆・・・) 

  これで全身の連動が起こる 王子のフィジカルコードもその原理に基づいているようです。

  陰陽陰陽の繰り返し  開合開合の繰り返し  太極拳の太極拳たるところでした。

2022/9/19 <『一流の腕使いとは?』の質問から その1>

 

  先日ブログの読者の方から、腰の王子の『一流の腕使い』の動画で見せる肘のくるくるの動作は一体どういうことなのか説明してほしい、というメールをもらった。

 

その動画は

https://youtu.be/NhIoI-9ahaw

 

左がその中で見せる肘くるくる♪だ。(動画はぜひ見て下さい!)

同様の動画は他にもあって、私も随分前に私自身の生徒さんから同じような質問を受けた。

 

私は完璧ではないものの、右腕は肘を少し曲げれば似たような動きはすぐに真似できた。左腕は右腕ほどスムーズにできない。腰の王子のセミナーでも、この腕使いができるように少しずつ努力するように言われていて、参加している人たちも頑張っているようだった。

 

  さて、これは何なのか?と聞かれても、説明がし辛い。

  感覚的には、肩関節、肘関節、そして手首の関節を全て連動して通している感じ、しかも、それをしようとすると、含胸・拔背・塌腰 ・敛臀を上から下へとことごとくクリアしていかなければならない感じだ。

   劉師父に王子の動画を見せて、できますか? と聞いたら、「できない」と単純に答えた上で、「まあチャンスーだな」と無造作に言った。(のちに、「できない」と言った師父の意味がわかることになるのだが)

 

  師父のあまり興味なさそうな返事で、私もそれ以上この腕のことを考えるのをやめてしまっていたのだが、冒頭のようなメールをもらってしまった。どう返信しようか? と困っていたところで、偶然に大きな手がかりを得てしまった。

 

  それは、コマネチすりすり体操の最初に、「とんがりコーン」をするのは、通常私たちがこの「肘くるくる」ができないためだ。ということ。

  もし、この「肘くるくる」ができるのなら、「とんがりコーン」をせずに、いきなり鼠蹊部に手を置いて「ス〜リ、ス〜リ」とやれば足りる。が、ほとんどの人は直接鼠蹊部に手を置くと、肩甲骨が肋骨にビッタリ貼り付いてしまい肩関節の運動が損なわれてしまう。

 

  実は、私が生徒さんたちに「コマネチすりすり体操」を教えた時に毎回気になるのはその腕の動きだった。どの人も、肘が後方に流れてしまう。王子は「肘は後ろではなく横へ!」と注意するから私もそう言うのだが、それでも後ろに行ってしまう。王子の腕をよく見ると、手首がしっかり折れている。「とんがりコーン」で降ろしてきた手でスリスリした時に、手首は折れ曲がらなければならない、と私は理解していたが、最初は皆、手首をまっすぐにしたままスリスリしてしまう。すると当然肘は後ろに流れる。

  数十人教えてもやはり肘をしっかり横に張れる生徒さんがいないところをみると、ずいぶんこれは難しいのだなぁ、と思っていた矢先、冒頭の質問が実はこのスリスリの腕使いと関連していることを知ってしまったのだった。

 

  検証のために公開されている動画を比較してみた。

 ↓左は腰の王子 https://youtu.be/6_niwIZwXfM

  右はお弟子さんと思われる方 https://youtu.be/y0NkrS8zhbc

  

 二人の肩のラインが全く違うのが分かる。

 

 王子の肩は曲線で下がっている。これは「沈肩』だ。

 そして肘は横に張った上で堕ちている(「墜肘』)

 手首は折れ曲がっているが、実はこれは手首の中が空洞になっている。以前書いたことのある「おばけの手」=「松腕」だ。

 すると、手の中の骨も開いて、力を抜いているのに指先まで気が通る。(指先がしっかりして突き指しなさそうな指になる。)これは「垂指』。

 

  一方、お弟子さんの方は、肩が真っ平ら。肩に力が入っている。

  だから肘のありかがはっきりしないし、手首もぼやけている。

  つまり、王子のような、沈肩→墜肘→松腕→垂指の連動がない。

 

その違いがはっきり分かるのが、「ス〜リスリ」で体を立てた時の両手のポジション。

王子は手のひらがピタッと合っているがお弟子さんは掌が内側を向いたままダラんとなっている。指まで気が通っていない証拠だ(沈肩から始まる連動がない)

 

 動画をアップしている別のお弟子さんとも比較してみた。(https://youtu.be/3nIWbTH3Go8

  このお弟子さんもやはり沈肩からの連動がなく、両手を伸ばした時に上のお弟子さんと同様、手のひらが体のほうに向いたままダラんとしていた。

  横からのアングルで見ると、王子の肩関節がしっかり内旋し、その上で前腕がしっかり回外しているのが分かる。

  しかしお弟子さんの方は、肩関節が内旋せずに外に開いてしまっているため、肩甲骨の動きが制限をうけ(両肩甲骨がセンターに寄っているはず)肘以下の関節も連動しなくなっている。胸椎の反りの柔らかさがない大きな原因は肩甲骨が寄ってしまうからだ。

  肩甲骨をセンターに寄せる、ということは太極拳でもご法度だ。

  肩甲骨は開いておかないと体が自由に動かない。

  かといって、肩甲骨を開いてそれがべったり背中にくっついてしまうと猫背になって、これまた体の連動ができなくなってしまう。

 

  両肩甲骨を引き離して、かつ、肩甲骨と肋骨の間に隙間をとる、これが本当の『含胸』だ。

  つまり、王子は「スリスリ体操」のチューの時に胸を反りながら『含胸』をしている。

  反りながら含胸をすることで、胸椎は伸展する。(胸椎の椎骨間の隙間が広がる)

  ただ反ってしまうと、弟子のようになって肩甲骨が寄ってしまう。

 

  肩甲骨が寄ってしまうのを防ぐための胸、肩、腕のポジションを取らせるために、腰の王子は「とんがりコーン」を使っている。つまり、とんがりコーンの「あ〜、スッと腕を降ろして〜」では、笑顔にさせることで胸椎の伸展(含胸)を狙っている。この胸椎の伸展(含胸)がきちんとできていないと、スリスリを始めた瞬間、とんがりコーンをしなかった時と変わらない腕のポジションになってしまい、王子が狙った胸椎上部の伸展ができなくなってしまう。頚椎だけが折れたようになってしまうのは、肩甲骨が寄ってしまって胸椎上部が伸展しないため。ここをクリアするのがとても難しく、教える方も苦労するところだ。

 

  コマネチスリスリ体操をずっとやり込めばいつか、含胸から始まる沈肩以下の連動ができるようになるのだろうか?

  何も知らずにこの体操をやると、通常、気は口や肩、上方へ上がってしまう。すると、肩甲骨は寄ってしまうだろう。

  私は丹田に重しを残す太極拳の癖のおかげで、この体操でもすぐに王子の真似ができた。気を丹田に沈めておかないと含胸はできない。

  そういえば、冒頭の一流の腕使いの肘くるくる♪も、やろうとすると丹田に気を沈めて含胸にする必要がある・・・

 

  と、そこまできて、あれっ、これは確かにチャンスーだ、とある功法を思い出したのでした。

  どおりで・・・と、劉師父はあんな対応だったんだ。だって、太極拳では決して腕を完全に真っ直ぐ伸ばしてチャンスーをすることはないから・・・

 

 

 

  『一流の腕使い』は実は太極拳の『螺旋纏糸功』と基本は同じ。

https://youtu.be/IQKjQGyYNbI

 

これをやりこむと理屈がよく分かるかと思います。全身をつなげるとても重要な功法です。続きはまた時間のある時に。

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『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

   馮志強老師著

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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