2023/11/28 <腹の緩みは腰の緩みから生まれる 丹田の素 膝と足首の連動>
今日のグループレッスンの振り返り。
一人の生徒さんから、「先週の四つ足でお腹を緩める練習がいまひとつうまくできない。」との声。
高岡英夫氏の言うように、チーターのように四つ足になれば、二足で立ち上がる時に硬直してしまう腰や背中が緩み、”体幹部が垂れ下がる”(腹が垂れ下がる)。この垂れ下がった”腹”が、太極拳で言うところの丹田の素。気の集まりだ。
立位でも、まず腰を緩めるのが、丹田の素を作る要領。
立位で腰が緩まない人は、四つ足の方が緩むだろう・・・と思ってやってもらった四つ足姿勢。けれども、腹は垂れ下がらず、垂れ下げるには、背中を思いっきり反らせなければならない、と悩んでいた。
先週のレッスンの最後の結論は、肩甲骨、肩に問題があるということだった。実際、ある程度”立甲”ができないと(肩甲骨が肋骨から離れないと)背骨が緩まないから腹も緩まない→腹が凹んでしまい丹田の素が作れない。
そこで、今日は、四つ足ではなく、正座で腹を緩める練習をした。
要領は、「トイレに行きたくてなかなか行けない、やっとトイレがあって便座に座ってほっとした」というシナリオで、その「ほっとした」状態を演技してみる。腹が出て緩むのが分かれば大成功!
あとは、この腹の緩み、撓みを頼りに身体を動かしてみる。
腰の王子の「コマネチスリスリ体操」はまさに、この腹の緩みを使った体操だ。
いや、コマネチスリスリは股関節の屈曲を”しっかりさせる”=腿裏とお尻をしっかり伸ばす、練習なのだが、この「股関節の屈曲」や「腿裏やお尻の伸び」には<腹の緩み>が必要なのだ。実際、コマネチスリスリで前に乗り出して行く時に、腹の緩みがなくなった瞬間に腰の伸びがなくなり背中が丸くなる(股関節の屈曲が止まる)。王子は、チューの口を使うことで自然に息が抜けるようにして、腹の膨らみが最後までなくならないような仕掛けを作ってくれているが、それに気づく人は少ないだろう。息を抜くというのは息を腹に届け続ける、ということで、私的に言えば、丹田に息を注ぎ続けているということだ。
腹の緩みはいかなる時もなくさない。これが丹田を守り続ける、ということ。
それができれば、股関節の屈曲も楽ちんになる。膝に乗ることもなくなる。
腹の緩み、膨らみを先に作っておいて、その膨らみでしゃがむとどんな感じになるのか、膨らみを作らずにしゃがむとどうなるのか、その違いをはっきりと身体で認識してもらった。
混元太極拳の中では、その鼠蹊部の上にできる腹の膨らみは、「下丹田」。下丹田は下肢を操る。
股関節で足を操れば失敗する。下丹田で操ればうまくできる。
問題はその丹田を維持できるか?それだけだ。
左は王子の「野生動物運動法』https://youtu.be/733qTLgqZxw?si=-m2CWiR3pZ87Shxa
この動きは、まさに、四つ足で背骨から体幹部を引き離して、垂らして、たわませることで生まれる動きだ。
後ろの生徒さん達は皆、背骨を動かそうとしている。背骨を動かそうとしたところでアウトだ。動かすのは背骨の前側の身体の空間=丹田だ。
中丹田は腰、背中、下丹田はお尻から下を動かせる。胸、肩や含胸の領域だ。
これをバラバラに練習させるのが、太極拳の内功の中にある、<抖dou>という練習。
https://youtu.be/-5X5pBx8nUE?si=gnrrIIP2f1i0DfIy
これは膝の抖
これは胯の抖
そして全身の抖
抖は王子のチーターの動きを高速で微細にしたものだが、その前提として、背骨と体幹部の間に隙間があることが求められる。
練習の仕方としては、馮老師がやっているように、まずは、膝関節から始めるとよさそうだ。
というのは、今日のレッスンで、膝回しをさせたら、予想に反して太ももから回している人がちらほら見受けられたからだ。膝は股関節と足首の中間にあり、両方と連動する。ただ、股関節から膝を連動させようとすると、脛が入らない。正しいのは、足首を回して膝を回すようにすることだ。すると脛が立ち、膝の力が抜ける。
脛を立てるには足首と膝の連動が必要だが、まずこれを立ててから、しゃがんだり、馬歩になるべきだ。
上の馮老師の内功では、まず足首と膝を連動させて膝をdouさせ、それから、その足首と膝の連動を前提として股関節をdouさせ、それから、足首から股関節までの連動を前提にして胸から腹までのdouをさせている。
下から積み上げている。
というのは、連動をかけていくのに足裏の力=地面の反発力がマストだからだ。
試しにいきなり胸や腹から振るわせようとすると身体がバカバカして背骨が浮き出てこないだろう・・・
あと、膝を回したり振るわせたりする時に意識するとよいツボは、胆経の陽陵泉。
太極拳をする時にも大事なツボなので、覚えておくと良いです。
足指の薬指の方につながっていきます。
しっかり立つ時には足の薬指が効いています。
←https://www.mdn.co.jp/art-culture/kikou/5724
2023/11/26 <足首のくびれ その2>
昨日の話は、足首の折り込み、言い換えれば、くびれ。
使用した画像をまとめるとこんな感じになる。
左3枚は立位、右2枚は椅子に座った時の足。
ポイントは足首の折り込み、くびれ。
折り込むことで、踵が操れるようになり、指が自由になる。
立位下段、座位下段の2枚は、のっべらぼうの足。べた足だ。足裏全体にべたっと体重が乗っている(立位)、もしくは全く乗っていない(座位)椅子に座っている時はお尻だけでなく足裏も使って座ると骨盤が立つ。右上段の腰の王子の座り方はそのようなものだ。
↑これら3枚は両足を広げて足裏に体重をかけた時の形。
左の2枚、赤ちゃんと腰の王子の足首は似ている。
右側はのっぺらぼう。足裏まで気が通っていない、膝で止まっている。
やはり、足首のくびれのあるなし、だ。
左は小学生の足。
足首がしっかりくびれて、足裏・指で地面をしっかり掴んでいる感じだ。
私が持っているリトルブッダの足も同じ↓
これらを見てから太極拳のマスター達の足を見てみると・・・
やはり、足首のくびれがちゃんとある。つまり、腰の王子の言うところの、「脛骨直下点」で立っている、ということだ。
が、それにはかなりの脱力が必要。
一般的な老師だとその点はかなり甘い。
左上先頭にマスター(楊澄浦)をお手本として置いた上で、他の老師達を見てみると、皆
足首が締められず、つま先の方向かって力が流れているのが分かる。赤ちゃんのように足指が器用に使えない。
最も、足首や足裏、足指は、その上に乗っている身体全体の現れ。
足で自分の身体を調整する、と師父は言うが、その域に達するには、まずは身体を足首を含めた足に投影する必要がある。つまり、足裏まで気を落とす必要がある。足が手のように敏感になり、細かな動きが可能になると、その上の身体も足によってコントロールできるようになってくる。 足をただの台、塊のように使わない。足も足首も筋の束だ。筋をコントロールする。
2023/11/25 <足首の折り込み 扣 >
赤ちゃんの足使いは見飽きない。足の指一本一本が動いて、小さな指の先までが行き届いている。なんとも精緻な作りだと思う。それがだんだん雑にしか動かなくなっていくのが哀しい・・・
赤ちゃんが立った時の足首も注目するに値する。
私たちが失ったものが分かるからだ。
↑ 足首が折り込まれている! 角度がほとんど直角!
これが、脛骨直下点で立つ見本だ。
すると甲が盛り上がって足指の先端まで勁が通る。
一方、私たち、大人の足首はなかなかそうはならない。
左はインソールの広告。
重心を正しい位置にもっていくためのインソールだが、これをつけても、赤ちゃんのバランスでは立てない。
足首が足首として起動していないからだ。
あの、赤ちゃんの足首の折り込みが必要・・・
大人は大概、左の画像のように、足首に”折り込み”や”締め”がない状態で立っている。
(https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/report/experience005/)
そしてこのサイトでは、この男性の立ち方を、ある方法を使って矯正しているのだが、その結果、正しく立った時の足首や足は、左のように変化する。
足首が硬いのでまだ十分にはできていないが、赤ちゃんの時の立ち方に近付いているのが分かる(下の画像の矢印参照)
これが、師父が何度も教えていた、「足は扣(kou)にする」という意味だ。
扣(kou)というのは、お椀を伏せたような形、を示す。それが冒頭の赤ちゃんの足の形だ。が、その形を作り出すには、足首がしっかり”入っている”必要がある。()(上の画像の赤矢印の力が大事。ただ足指を丸めても扣にはならない)
問題は、私たちの足首が硬すぎるということ。
本来、足首は股関節とセットで使われるところなので、足首が固ければ股関節の動きも阻害される。
腰の王子の面白いサイトを見つけてしまった。https://www.karadane.jp/articles/entry/news/006732/
立腰体操の大腿骨は大体このへん体操が解説されている。
が、モデルさんが問題だ。王子はそこは放っているが、私はとても気になる。座った時に、すでに足首が外れている。(足を置く位置が合っていない)
この座り方で既にアウトだ。
というよりも、足首が折り込まれていないからちゃんと座れていないのが分かってしまう。
これだと足がちゃんと地面についていない。足の裏が地面を押せていない。足から骨盤を支えられていない。
これは、骨盤が立っていない証拠にもなる。
腰を反らせて腰の力で骨盤が立っているように見えるだけだ。
ここから立ち上がることはできない(足はもっと近くに置く必要がある。)
大腿骨は〜 で前に乗り出した時に、体重が足首(脛骨直下点)に乗っていない。
上半身が前に倒れただけの姿勢。
腰は伸びるが、王子が狙っている腿裏は伸びない。腿裏を伸ばすには足裏→アキレス腱から伸ばす必要がある。
それも、最初の足の位置が悪いせい。
結局、体操の最後のポーズは右のようになる。上半身だけの体操。
本当は、足裏から頭まで貫通する体操なのだけど・・・最初の時点で、足、足首が全く意識されていないのが残念。
(実は、王子はこのことを気づいていて、「足の裏ペタジーニ」と言うだけの体操を作っています・・・)
王子の動画のサムネイルにこんなのがありました→
足首、足をよく見ると、赤ちゃんの足になってます。
足首の折り込みが完璧!
太極拳のマスター達も同じです。(続く)
2023/11/20 <帯脈沿いに気を移動させていく練習>
今月になって師父からやってみるように勧められた練習法を生徒さん達にも試してもらった。
師父は私に、「あなたならできるはず」と勧めたが、さて、生徒さん達に突然やらせて大丈夫だろうか?
師父が教えてくれた練習法は、帯脈に時計のように目盛りをつけて気を移動させていくというもの。
帯脈というと、帯脈穴、という胆経のツボがあるが、師父など太極拳の世界の人たちが帯脈という時は、奇経八脈の帯脈(下の左図)をさらに単純にした、臍と帯脈穴と命門を結んだ、いわゆる、ウエスト(腹囲)を指していることが多い(下の右図)。
動功で『帯脈回し』というのはまさにこのラインだ。
この帯脈を前提に、臍の位置を時計の12時、命門を6時、以下、下の図のように目盛りを想定する。
そして、まず、臍(12時)の位置に気を集める。
12時に気が集まったら、1時の位置に移動させる。
移動できたら、2時に移動させる。
そして3時。
難しいのは4時。4時が通過できれば5時にいけるだろう。そして6時の命門。
その後、7時、8時、9時、と移動させられたとしたら、関門は10時だろう
この週末のレッスンで生徒さん達とゆっくり一緒にやってみたのだが、生徒さん達は思った以上に頑張っていました。完全にできなくとも、しらずしらす、気を集めるということをやっていたようだ。
どうやって気を溜めるのか、とか、どうやって気を動かすのか、という説明をするよりも、「はい、これから気を集めて、動かしていきますよ〜」、と一斉にやった方がうまくいく。
実際、これまでも、全く初心者の生徒さんが、”気”や”丹田”のことを知りたくて私のところに練習に来て、最初はいろいろ考えて分からない様子だったのが、気を動かす練習(動功)を皆と一緒にしているうちに、いつしか、”気”や”丹田”について尋ねなくなる、というのが常だった。疑問が解けてしまうのだ。かといって、「気って何ですか?」とか「丹田って何ですか?」と尋ねると、答えることはできない。答えは言えないのだけれども、何となく感覚的に分かっている、そんな状態だ。
私が思うに、電気が一体何なのかは分からないけれど、電気は使えればよい。分からなくても使えればよい、というのが、修行系の特質。わかろうとするのは学者の世界。知らなくても使えれば自分自身については事足りる。
帯脈沿いに気を動かす(水平円を描く)のは他の2つの円(立円、竪円)より難しい。それはなかなか気が中丹田に充満しないからだ。でも、まずは臍のあたりに集めて、それを移動させようとすると、知らず知らずのうちに中丹田の気が増えてくる。集中力が必要だ。
この練習をしたのち、帯脈を使ったいくつかの動功をしたが、それについてはまた時間があれば書きます。
2023/11/16
明日17日(金)は港区の公共施設の和室にて少人数のレッスンをします。
中丹田の位置を確認し、中丹田を使うことによって股関節の位置が正しくなり、結果として全身のつながりが出てくることを少しでも実感できるようにしたいと思っています。
若干空きがありますので飛び入り参加したい人は今日中に連絡を下さい。
レッスン料は2000円です。
2023/11/15 <尿活エクササイズ追記 引き上げの重要性>
会陰を引き上げる要領が分からない人は、まず尿道と肛門から始めてみて下さい。
どちらにしろ、”引き上げる”感覚を掴むのはとても大事。
余計なところに力を入れず、そこだけ引き上げられるようにします。
紹介したサイトではさらっと大事なことを言っているので、指示通りに尿道と肛門のエクササイズを試してみて下さい。下丹田の感覚を掴む入り口にもなります。
←https://www.kissei.co.jp/urine/activities/training.htmlより
尿道エクササイズ、肛門エクササイズ、ともに、その要領は非常に大事です。これができないと体が落ちてしまって腿に体重が乗ってしまいます。前腿の力が抜けない大きな原因の一つです。
養生の観点からも非常に大事。加齢とともに緩んだり固くなる部位です。
師父は私に、大小にかかわらず、用を足した後は九回引き上げてからトイレを出るように、そして日中も気づいたら引き上げること、そして寝る時も横向きになって腰を丸め、引き上げたまま寝るように、と指導したのを覚えています。
タントウ功である程度体が緩んだら、引き上げの練習をします。(体が緩んでない時に引き上げの練習はさせません。体が硬直して頭の方に気が上がってしまいます。)
引き上げの練習は普段から、気づいたら引き上げて、落ちているのに気づいたら引き上げる、というもの。癖になるまでやり込みます。
女性の場合はお尻周辺がどうしても重くなりがちですが、しっかり下を引き上げて、お尻を太ももから引き離して軽くなるように頑張ります。(お尻と太ももの境目がはっきりさせられるようにするのが目標。)
引き上げると内臓も引き上がる(落ちてこない)ので、養生法としても大切です。そして、もちろん、丹田に気を溜めるにも不可欠の要領。冷えなくなります。
タントウ功、内功、套路、引き上げはマストです。
2023/11/12 <尿活のエクササイズから 下丹田の感覚を掴む>
今週のレッスンの中で、一人の(男性)生徒さんから、「会陰を引き上げると丹田が消えてしまうんですが...」という話があった。
目を引いて内側から腹の方を見ながら立っていくと気は次第に腹の方に集まってくる。そこで息をして腹(臍のあたり)が膨らんだり凹んだりするのを暫し見ている。呼吸が次第に深くなり整ってくる。常に息を見守る...
タントウ功の入り方だ。
この段階ではまだ会陰云々の話は出てこない。
両脚はおそらく殆ど棒立ち、もしくは固まっている(前腿に乗っている)
ここで、命門、腰を開けることを指導する。
それには"下から"開ける作業が必要になる。
そこで、「会陰を命門に向けて引き上げるように」というアドバイスを加える。
このアドバイスを男性に伝える時は注意を要する。なぜなら、会陰を引き上げようとして身体が緊張してしまうからだ。
冒頭の男性の発言はまさにそのことだった。
彼が、丹田が消えてしまう、と言ったのは的を得ていた。私は彼の質問から、彼が既に丹田の感覚を掴んでいるのを知って驚いた。というのは彼は練習に来始めてまだ間もなかったから。内側を見るのが得意な人だ。
で、私は彼にどうしたら良いのかを教えなければならない。
その時、私は、会陰を引き上げたら、胞宮と呼ばれる子宮あたりの場所を気が纏ってほわっとする感覚がある、という話をした。それは衝脈の流れと大いに関係するのだけども、大事なのは理論ではなく、感覚。彼は、そのほわっとする感覚をその場で少し見つけたようだった。
その日、彼のストレートネックが、あれっ?と、直ってしまったかのようになって私も彼本人も驚いたが、もしかしたら、会陰と命門を繋いだことと、子宮辺りをほわっとさせたことが効いたのかも。
彼も大喜びで、レッスンが終わった後も、まだ一人で練習を続けると言って公園に行きました...(その日は室内練習)
そしてここからが本題
会陰を引き上げた時の感覚は、尿活のトレーニングの中の尿道エクササイズで膀胱がストレッチされる感覚と似ています。⇨ https://www.kissei.co.jp/urine/activities/training.html
タントウ功や太極拳をする時も、女性の場合は正確には会陰を引き上げられないので、尿道を引き上げたようにした方が上手く行きます。膀胱がストレッチされた感覚が分かれば下丹田の感覚を掴めます。
併せて、肛門を引き上げて同じように内側がほわっと膨らませられれば命門が開きます。
気温が下がってきても、その要領で子宮や膀胱、腹の中をほわっとさせられれば暖かくなり、腹の中にカイロを入れているかのようになります。まさに、丹田!(丹を煉る場所)、です。
2023/11/8
今日も腰の王子。(腰の王子の広告塔のよう?)
タントウ功とは何かを正確に説明しています。
ずっと動いている・・・それも超高速。
タントウ功をすると、内側が常に動いているのが分かる。
外を止めると内側が動いているのが明確になる。
その内側の動きを決して止めない。止めたとたん外側は固まる。
内側の動きをじっと見ていると次第に腹のあたりに収束してくる。
収束してもその中で(収束してきたあたりを丹田と呼ぶのですが)、まだ何かが(気が)沸々と動きまいている。気は一瞬たりとも止まらない。気の動きが大きくなるとそれにともない丹田の位置や大きさも変わってしまう。
丹田は決して固定的なものではない。
丹田は時に一粒の砂より小さく、時に宇宙より大きい・・・極少から極大の幅がある、と言ったりする。伸縮自在。
放松が必要になるのは、外側の体の力を抜かないと内側が見えないから。
一旦内側を見出したら、放松を論じることは無意味。
放松しよう、と思った瞬間、もうその人は外にいる。
あたかも、夢の中で放松しよう、と思ったとしたら(思おうとしたら)その瞬間に夢から覚めるのと同じ。
内側にいる時に放松しよう、とは絶対に思えない。
意識を内側に置きながら外側の世界を見ているのが武術、武道の世界。
一昨日紹介した眼の運動に関する動画、眼法も内側にいれば自然にそうなるものだ。
王子が丹田があると動けない、丹田は動かないためのものだ、と説明する時の”丹田”は、高岡英夫氏が言うところの”拘束丹田”だ。ギュッと力を集めて作るような丹田。
座禅で気を溜める時、短時間で丹田に気を溜める時にはそのようにして丹田を作るが、いざ動く時は、それを溶かすようにして丹田の領域、境目をあやふやにしなければならない。実際、丹田に気を溜めて全身を巡らす(周天)させる時は、丹田をゆっくり動かしていく。動かす時は丹田の形はアメーバーのように変わっていく。小さなボールのような丹田が動いている、そんなことはありえない。
ともあれ、丹田を作る最も基本の作り方は、外側の力を抜いて、不安定になったところでバランスをとろうとし続けることだ。
2023/11/7
オープンキネティックチェーンとクローズドキネティックチェーン。
検索をかけたら、Tarzanの記事もあった。
https://tarzanweb.jp/post-268561
私は王子の動画を見るまでそれらの言葉を知らなかったが、そう言われてみると、ラジオ体操など、いわゆる”体操”は体幹部を固めて四肢を動かしている。これはOKCメインの運動だといえるだろう。
私のイメージでは、体操は四肢運動、ダンスは体幹運動だ。といっても、ダンスの中でも、OKCとCKCの割合は踊り方によって変わるだろうけど。(参照↓ ダンサーとアイドルの踊り方の違い)
8/14のメモでとりあげたアトラス君。
アシモ君からかなり進化したけれど、やはりOKCの運動様式だ。
改めて見ると、アトラス君は腿を上げて股関節を屈曲→OKC。しかも、屈曲したまま走っている! 股関節の伸展をしていない。だから膝下で走っているように見えるのだ。
これに対してボルトは体幹部が腿を操作している(CKC).股関節の伸展がしっかりできているのが特徴的。股関節伸展は腸腰筋の作用が高い。つまり、0KCでは腸腰筋は使えない。腸腰筋を使って脚を操作すればCKCになる。
同じ日に載せた下の画像もOKCとCKCの比較になるだろう。
2023/11/7 <目玉と頭蓋骨は別々に動く>
クローズドキネティックチェーンの論理が目にも当てはまる。
もちろん、太極拳では(というよりどんなスポーツ、そして子供も)こちらです。
眼法を間違えると軸は通らない。
下の動画で王子が紹介しているメソッドは凝神の練習になります。
眼をどうやって後ろに引くのか分からない人は助けになるかと。
下を見た時に目が落ちてくるような目の使い方は御法度。
頭と目玉は別々にズレて動く。内側から動く人の共通点。
2023/11/6 <正しい股関節の屈曲の仕方>
↓腰の王子の動画参照。
どちらも股関節屈曲。
太極拳の動きはクローズドキネティックチェーンを使っています。
体幹部が迎えに行く。
だから"丹田"から動きます。
王子はこな動画の中で、大半の太極拳愛好者が間違えている点を簡潔に説明してくれています。
太極拳をやればやるほど故障が増える。その核心的理由。
馬歩、弓歩を見直すべき。
入り方で決まります。
https://youtu.be/ac0CV5jt_T0?si=KNmPfShFD95Fi9eg
2023/11/4 <呼吸と肋骨 含胸の正体>
今日見た腰の王子の動画を貼り付けます。
いかに酸素を取り入れることが大事なのか、を論じています。
肺は酸素を取り入れられないし、二酸化炭素を吐き出さない。
では、酸素を取り入れる器官はどこか?
そんな考察から、肋骨の柔軟性、可動域を高める話になります。
昨日のブログとの関連で言えば、いつも俯いて息を吐いていれば肋骨は固まります。
正しい位置に立つことで肋骨も動きやすい位置に置かれる。
太極拳の時も、『束肋』と言われたりするのは、意識的にそうでもしなければ肺にいっぱい空気が入って肋骨の前面が上がりそうになるから。
私は昔、『束肋』は、肋骨を束ねたように固めた状態にすることかと思っていましたが、師父に尋ねたら、「それは肋骨が膨らむから束ねたように感じるのだ」と言われて、よく理解できなかったことがあります。
師父の言った意味が分かるまでに暫く時間がかかりましたが、かいつまんで言えば、丹田に気を落とす時は肋骨も拡がっている。胸に空気を"含んでいる"状態になる。あー、だから『含胸』なんだ、と理解を改めた覚えがあります。『含胸』は決して胸を凹ませることではない... けど、ちょっと凹ませないと空気が入らない、肋骨が拡がらない。そういうこと。
昨日載せた太極拳の老師達のうち、息を吸っているように見えた2人の老師は胸も緩やかに膨らんでいます。吐いているだけの老師は胸を張り出しているか、胸がぺたんこ、脇に 拡がりがありません。
正しい位置に立つには、頭を思っているよりもかなり後ろに引いて立つ必要がありますが、その位置で立つには肋骨が緩む必要があります。肋骨が弛まなければ後ろに倒れてしまいそうになるので、結局、その位置では立てません。
肋骨を緩めないと正しい位置に立てず、正しい位置に立たないと肋骨が拡がりにくい(注:この場合の肋骨とは前面の下部肋骨ではなく、前面上部と背面の肋骨です)。
息は背中側にたくさん入ります。
2023/11/3 <軸と呼吸の関係>
軸が通る時は必ず目が入っている。目が入らずに軸が通ることはありえない。というのは、目は背骨の上端だからだ。
が、大人の場合は大抵、頭は正しい位置にない。頭は前に出ている。つまり、頚椎に負担がかかったまま暮らしている。そのままでは軸は通り得ない。大幅な矯正が必要だ。
首は立てるのではなく、立つようにする。
首を無理に立てると首が硬直する。
左の画像のようなスマホ首(ストレートネック)も、ただ顎を引けば立つ、という簡単なものではない。
頚椎だけで立てようとすると、下の写真のように頚椎が硬直する。
結局、頚椎の下の胸椎1番、2番、3番が動かないとならないのだ。ここで、含胸の必要性が現れる。それができないと、首は胸椎とつながらない。このあたりは、腰の王子が重点的に教えている箇所だ。
胸椎上部と頚椎が繋がって、首が背中から生えていると感じられると頭は自然に立つ。
虚霊頂勁がやっと分かるようになる。
実際には、胸椎上部と頚椎が繋げられるためには、仙骨が立ち上がる必要がある。そして仙骨が立ち上がるには腹圧(丹田)が必要だ。このあたりは並行して練習する必要がある。
首が通れば、息はとて入りやすくなる。
自然にしていて息がどのくらい入るか、は体の質を決める重要なファクターになる。
生徒さん達に簡単に実験してもらうことがある。
真っ直ぐに立って、そこから後ろへと後退りしてもらう。その時、呼吸はどうなったか?
そして、それから反対に、直立から前方へ歩き出してもらう。息は吐いただろうか、吸っただろうか?
座った状態からうつ伏せになろうとする時の息は?
そして仰向けに寝ようとする時の息は?
分かったと思うが、前に進む時、うつ伏せになる時は呼気だ。
反対に、後ろに進む時、仰向けになる時は吸気だ。
真っ直ぐに立った時、ほとんどの人は呼気優位の姿勢で立っている。
つまり、幾分前に倒れている。
そこから、頭を後ろに引いていって、後ろに倒れそう、と思った瞬間に息は突然入ってくる。吸気に切り替わる。
うつ伏せから仰向けに移行する時に、呼気から吸気に移行する瞬間、そこが、バランスのとれた真っ直ぐの場所だ。
そうすると、立ち位置は随分後ろだと気づくと思う。
こんな後ろでは到底立ち続けられない、と思うはず。
だから、腹のおもりが必要になる。含胸が必要になる。子供のような立ち方になる。
下は「おむつCMで出てくる赤ちゃん」達の画像。
息が自然に入ってくる位置、息が吸いやすい位置に立っているのが分かるだろうか?
そして、そもそも、うつ伏せ時代にはしっかり胸椎を反らせて、息が入ってくるような姿勢を練習している。
バランスをとって立っている時は、呼気よりも吸気が強いようだ。
それに対して、左の画像の中の男性達の息はどうなっているだろうか?
ほとんど吐いている、呼気が優勢だ。
呼気が優勢になるのは軸が前に倒れているということ。
ここで再度、馮老師の画像を見てみよう。
息はどうだろうか?
ん? 吸ってるかも? と思われるような姿勢。
呼気と吸気の転換点あたりに立っているようだ。
そしてこの女性。
吐いている。
楊式太極拳宗師の楊澄浦。
馮老師と同じ。
吸っているような吐いているような。
吐いている。か、止めている?
中国の検索サイト百度で『太極拳 单鞭』と画像検索しててきた画像のほとんどは、左のように息を止めているようなもの。
鼻から自然に息が入っていくような立ち位置よりも、前に立っている。軸が通っていないと息は通らない。
馮老師の陳発科の画像も見てみた。やはり、吸える位置にいる。
自分で立って前後に体の軸をずらしてみて、どこで吐いて、どこで吸うのかを確認して、普段、できるだけ、吸える位置に近いところに頭の位置を定める訓練をするのも有益。私が現在実践中。
自分がやると、人を見て、吸っているのか吐いているのか分かるようになります。
スマホを扱うとどうして息は吐きがち。かといって、胸を張ってもそんなに息は入ってきません。鼻が眉間まで通る必要があります。
息が通る道を通せば軸は通り、正しい姿勢になる。
軸を見つけるのに息は欠かせません。
2023/11/2
そう言えば、師父は”軸を通す”という言い方をしたことがない。
きっと、『搓骨』((糸を撚るように)骨を両手で擦り合わせる)といってやらされた練習が、軸を作るためのもの。
軸は真っ直ぐ立っていても現れない。
動きの中で現れてくる。
まずは捻ることで軸がはっきりする。
それを積み重ねることで、次第にど真ん中に柱のような空間が貫通するようになる。
最初から中央にドカーンと軸を通すことはできない。いや、そもそも、軸は通せない。軸は現れてくる。
・・・それは地道に練功するしかないのだが
以下では、太極拳の動作に現れた捻り、軸について、画像で考察しようとしたもの。
自分のためのメモ。
←左は馮老師の单鞭。
あれ?少し前に取り上げた、ヨガの英雄のポーズに似ていないか?
右はヴィシュワジ先生。
よく見ると不思議な姿勢だ。
体はこちらを向いているのに頭は完全に左を向いている。
真似してみるとこうはいかないことに気づくはず。
左上は馮老師。右上は陳式太極拳の教則本の中の挿絵。
二つは似ているが、馮老師の方が頭が右へクルリと回っている。
そして下段。左の女性はどこを向いているかはっきりしないが、頭はほぼ正面。
そして右の男性は頭が前に出ていて体と繋がっていない。
昔は分からなかったことが、今になってやっと分かる。
左の女性と右の馮老師。
首から下は似たり寄ったり、と言う感じがするかもしれない。
が、左の女性の頭をクルッと左に90度回せば馮老師のようになるか? というと、首は絶対に90度回らないのだ。
私はパリ時代、異なる式だが、同じような状況で、顎を持たれて首を回され、「左肩に顎をつけろ!」と言われたが、左肩に顎がつくほど左に頭(首)を回すのは、無理!と思ったことがある。それは、上の4枚の画像の右下の黒い服の男性のようなものだ。
今は分かる。なぜ首がしっかり回らないのか。
それは、背骨の軸が前すぎるからだ。
首を90度回すには頭も首も、その下の背骨もさらに後ろに押さなければならない。
そのとき、ああ、だから含胸が必要なのね、と理解する。そして命門を開く必要があることも分かるのだ。が、その前に、後ろに転けそうになるかも。すると、ああ、丹田の腹の重みが必要だ、と分かるのだ。
実際、よく見ると、上の赤い女性と右の馮老師の腹は全く違う。左の女性の腹は凹んでいて(体が落ちている)、馮老師の腹は凸だ。つまり、背骨の軸を作る時は腹圧が必要になる。それがないと軸は通らない、首は通らない。
(ぜひ写真を真似してポーズをとってみてください。)
やってみて分かるのは、背骨を後ろに推して軸を通している時は、背骨がいろいろと捻れているということだ。背骨を細かく違い違いに回旋させるような感じにすると体が内側から開いて軸が通っていく。冒頭で言及した『搓骨』の練習が、ここで生きてくる。
腹の膨らみの違いに関連して、右の女性は胴体が膨らむのではなく締まってしまっている。手足を広げると体が締まってしまう。これは軸が作れていないということだ。
2023/10/28
今日の保土ヶ谷クラスでは、前回のブログの最後に書いた、股関節の屈曲と膝関節の屈曲の違いを説明。
・膝関節の屈曲
ハムストリングスが収縮(主導筋)
大腿四頭筋(前腿)が伸長(拮抗筋)
・股関節の屈曲
腸腰筋が収縮(主導筋)
大臀筋とハムストリングスが伸長(拮抗筋)
これで気づくことはないだろうか?
そう、ハムストリングスは膝関節と股関節の動き、両方に関わっている。
膝関節の屈曲では収縮、股関節の屈曲では伸長
太極拳の基本姿勢(所謂中腰姿勢)では、ハムストリングスは縮むのか、伸びるのか?
私自身の感覚では、ハムストリングスは伸びている。
左画像のような前屈の姿勢は典型的な股関節屈曲の形。
この時、腸腰筋が縮み(青線:下っ腹が引き上がったようになる)、ハムストリングスの付け根が伸びる(赤線)のが分かる。
赤のラインは、「腿裏」だが、その上のお尻下部分(大臀筋)も伸びる。
この部分が硬直して伸びが足りないと、前屈が苦痛になる。左の姿勢から膝を伸ばしたりするとさらにきつくなってしまう。
太極拳のタントウ功や基本姿勢でも、この”腿裏”は伸びている。お尻と太ももの境目がはっきりして、その境目の承扶ツボのある筋が地面を蹴った時の大事な発勁ポイントになる。それは短距離走のクラウチングスタートと同じだし、テニスでもバレーボールでも、いかなるスポーツでも同じだ。
高橋藍君!(https://twitter.com/rantakahashi01)
かっこよかった!!
スパイクもすごいけど、レシーブもものすごくうまい。
左のような構えをみると、しっかりハムストリングスを引き出しているのが分かる。
↓下はGoogle「高橋藍 レシーブ」と画像検索して出てきた画像
上体はこんなに弓になっているんだ〜 背骨が伸びて背骨は弓、全体としてボールの衝撃を足裏に抜くことのできる体勢。後頭部から背中から仙骨、腿裏、アキレス腱、そして足裏に繋がるライン(督脈や膀胱経)がしっかり繋がっているのが見える。
腰を入れて股関節をしっかり使った、たるみのない姿勢。
これを見てから下のような画像を見ると、股関節の屈曲と、膝の屈曲の違いが明らかになるのでは?(https://news.cqnews.net/1/detail/1161052628313624576/web/content_1161052628313624576.html)
上半身が箱のように固定されているのが本当の原因かもしれないが、上体の箱が脚に乗っかってとても素早く動けるようには見えない。
現在の中国でもこんな太極拳(のような動き)が普及している・。
会陰の引き上げもなく下がってしまい、股関節の屈曲が使えず、その代わりに膝の屈曲で済ませている。中国のサイトで、「太極拳を練習すると痔になる」といった訴えが出ていたのも頷けるかも。そう、股関節の屈曲(腸腰筋の収縮とハムストリングスの伸長)には引き上げが必要。会陰や肛門が引き上がっていないと、坐骨周りの腿裏が弛まずハムストリングスの付け根が伸びない。ハムストリングスが伸びないと前腿は膝の方に引っ張られ、膝の屈曲に持っていかれます。
今日の生徒さんに教えた手っ取り早い股関節の屈曲の仕方は、ズボンの股、鼠蹊部の部分を両手で掴んで上に持ち上げながらしゃがむ練習をすること。そうすれば股関節でしゃがむ感覚が得られます。あとは、体に覚え込ませる。
2023/10/26
以下、今日の劉師父との会話の一部です。
私:
「生徒さんに膝ではなくて股関節を使うことを教えたいのだけれども、なかなかうまくいきません。なぜうまくできないのか?と考えたら、太極拳では、『松腰・松胯』あるいは『松腰・落胯』と言うように、胯(股関節)を松することと腰を松することはいつもセットだったことを思い出しました。結局、松腰、すなわち、命門が開けていないことが、うまく股関節を使えない理由ではないかと思うのですが、それで合っていますか?」
師父:
「その通り。ただ松胯(股間節を緩める)をしようとすると氾臀になる(出っ尻になる)。命門は閉じたままだ。気は通らない。私が今教えている日本人の生徒はその癖があってなかなか治らない。まず丹田に気を溜めて命門を打開する必要があるが、功夫が足りず高いできないままだ。命門を打開するには横隔膜を下げる必要があるが、一般人は横隔膜の前側を下そうとする。それは間違いだ。横隔膜は背中側を下さなければならない。後ろ側が降りれば命門に気がとおり打開できる(腰が開く)。腰がある程度開いてから松胯するのも落胯するのも思いのままだ。」
私:
「松胯と落胯の違いは何ですか?」
師父:
「落胯の方が松胯よりも背骨が伸びる」
私:「ああ、そういうことですか。」
「まずは、松腰、そして打開命門が必要ですね。」
以上。
ということで、昨日のブログで、膝を使ってしまっていると指摘したケースは、そもそも、腰を緩めて(内気で)命門を開く、という作業を経過していない、さらに言えば、そもそも丹田に気を溜められてい(内気が溜まっていない)という問題でした。
腹と腰がスカスカだと股関節でホールドできず膝に流れてしまう。股関節を自分の中心(腹)に引きつけておくことが必要です。
ちなみに、松腰というのは腰を緩める、ということですが、腰を緩めるのは腹をスカスカにしてしまうのとは違います。腰を緩めると腹に気が溜まる。つまり、松腰は丹田を作る第一歩です。松腰なくして気は腹に溜まらない(腰を緩めないと腹圧は高まらない)。
そして、ジムでは新体操の選手だったトレーナーに、中腰姿勢を股関節ではなく膝でおこなってしまうのは何故なのか問うてみました。
そして分かったことを簡単に整理すると・・・
・膝関節の屈曲の主導筋はハムストリングス
拮抗筋は大腿四頭筋(前腿)
・股関節の屈曲の主導筋は腸腰筋
拮抗筋は大臀筋とハムストリングス
なんと、そうだったのか! と謎が解けました。
股関節の屈曲が苦手な人は股関節の代わりに膝関節の屈曲に入りやすい・・・
<股関節の屈曲の代表は長座、前屈>
長座や前屈が苦手な人は股関節の屈曲が苦手な人。
腸腰筋が伸びず、大臀筋が固まっていてハムストリングスが縮こまっている・・・
デスクワークの人に多い
上のリンク先の記事を一読してもらえば股関節の屈曲の実態が分かると思います。
注目すべきは、左の図で、大腿直筋(前腿)が鼠蹊部の方に引き込まれるように使われていること。
昨日のブログの例にあげた、膝関節を使っている例では、大腿直筋が膝関節の方に引っ張られています。つまり、腸腰筋がお腹をグッと引き上げていない。そして腸腰筋を使うためには腹圧が必要です。
上のリンク先の記事にも書かれていますが、前屈をしっかりするには、まずお腹を太ももにくっつけることが必要ですが、この、お腹を太ももにひっつけるのが、腸腰筋の作用。私の感覚では丹田に気を落とすということです。それができれば前屈は簡単。もちろん、大臀筋とハムストリングスが前屈とともにスルスル伸びてくれる必要がありますが。
前屈はどんなスポーツにおいても基本練習で行われているもので、太極拳では圧腿でおこなっています。カジュアルに言えば、ストレッチです。股関節の手入れは歯磨きと同じで毎日欠かしてはいけない、と言う老師もいます。師父も圧腿は毎日必ずやっています。私より念入りに。歳をとればとるほどサボると取り戻すのが大変です。腰の王子の三種の神器も股関節の可動域を取り戻すことを第一に念頭に置いています。腹圧を使って前屈をする練習が望まれるところです。
2023/10/25 <膝なのか、股関節なのか>
太極拳を長年楽しもうと思うなら、弓歩や馬歩、その他全ての姿勢において膝にテンションをかけないようにすることだ。
先週から引き続き、体を捻ることによって比較的簡単に中心軸が通ることを体験してもらうようなレッスンをしてきたが、それがうまくできるためには、まず、股関節がしっかり回転しなければならない。股関節が捻れない(回旋)しないと永遠に下肢は胴体と繋がらない。
レッスンの内容は多岐に渡ったので詳細は割愛するが、その中で問題だと思ったのは、自分が今、股関節を使っているのか、膝関節を使っているのか、が曖昧になっていることだった。
(上の画像をクリックするとリンク先に飛びます。)
上のような動きは全て大腿四頭筋が緊張している(前太ももがガチガチに硬直している)。本来、大腿四頭筋は膝を伸ばすための筋肉で、坂道を降りる時に活躍するような筋肉だ。これは別名、”ストップ筋”と言われる。前方に歩く時、走る時は、力を抜くべき筋肉。(前方に進む時のアクセル筋肉はハムストリングス)
このような動きをやりこむと、太ももが肥大して素早い動きができなくなるか、膝を痛めるか、あるいは股関節を痛める。股関節を痛める理由は、常に大腿骨が膝の方に引っ張られるため、大腿骨骨頭が骨盤から引っ張り出されるような力が加わり、アングルが悪くなるからだ。
膝を曲げる時に、膝関節を使っているのか、股関節を使っているのか、自分でチェックしやすくなる方法がある。
右のような膝立ちの姿勢から正座をしてみる。
お尻を踵に近づけて行った時に、太もも前面が緊張するなら”膝”を使っている。
正しく正座をするなら、股関節を使ってお尻を踵に乗せるべきだ。
股関節の屈曲をすれば太もも前面は緩んだままだ(つまりハムストリングスを使うということ)
<参考 人工関節ドットコムより>
膝を曲げようとする際には、太ももの後ろにあるハムストリングス(膝屈曲筋)と呼ばれる筋肉が収縮し、逆に大腿四頭筋が緩んで、大腿骨が脛骨の上を後方にすべりながら転がることで膝が曲がります。
股関節の屈曲をするには鼠蹊部に両手を当てておじぎをすれば簡単です。
鼠蹊部をしっかり折り込んで股関節を使えばハムストリングスが起動します。
膝(太もも前面)にテンションのかかる座り方と、鼠蹊部をしっかり折り込んで膝にテンションのかからない座り方を交互にやって、その違いをしっかり覚え込むことが必要。そして普段から、歩く時、椅子から立ち上がるとき、座る時、など、つねに、股関節を使うことを意識する。すると次第に太極拳で前腿(膝)に乗ってしまう癖も改善されていくと思います。
冒頭で使った画像の中国の老師たちですが、いずれも、膝に力がかかって全身のつながりはありません。制定拳の模範がもはやこのようになっているので、それを真似て練習すると膝の故障などにつながるおそれがあります。これらの老師達のように太ももをかなり太くすれば耐えられるかもしれませんが、それは本来の太極拳ではありません。
上の右側の画像に少し書き込みましたが、そもそも股関節がしっかり使えなくなる理由は中丹田(骨盤と鳩尾の間の腹腔)がスカスカで腹圧が抜けてしまっているからです。
インナーマッスルの王様と言われる腸腰筋がオレンジの四角のあたりから出ていることを思い出せば、胃のあたりの気(中気)を充実させる必要があるのは当然。骨盤より上のお腹を捻る(回旋させる)ことで股関節はグンと使いやすくなります。
下の老師はまさにそのように説明してそう動いています。
ズボンの色と背景の色がかぶってしまって見づらいですが、この老師は本来の太極拳の形で動いています。全身を連動させて股関節を使っている。
左の老師も下の老師も、野马分鬃の両手を分ける動作の直前の蓄気の動作をしているが、左の老師はちゃんと蓄気しているが、下の老師は気が膝に落ちてしまい丹田に気が溜まっていない。本来の太極拳は左。下のようなものは、師曰く、太極拳の動きを使った四肢運動(体操)だ。。。内的エッセンスなし。
上の老師が動作を説明している→
胴体の捻り、回転がはいることで、股関節も自然に回転し、全身の連動が起こっている。
太極拳に回転、捻りはマストです。
2023/10/21 <真っ直ぐなのか、捻れているのか?>
先週からずっと<捻る>動きを使ったレッスンをしている。
元はと言えば、足首がまっすぐに立たない生徒さん達のために、腰の王子の”脛骨直下点”に乗るためのメソッドを紹介したのが始まりだった。教えていて気づいたのは、足首をまっすぐに立てて、脛骨の真下に体重が乗るようにするための王子のメソッドは、どれも、体幹部を捻る動きが入っている。ただ両足を真っ直ぐ揃えて立ってもうまくいかない。真っ直ぐ立てるようにするには、体を捻った方がいい、いや、捻る必要がある。捻ることによって体幹部と下肢が一体化する・・・・太極拳でいうところの、四正勁(左肩と左股関節、右肩と右股関節、といった繋がり)だけでは足りず、四隅勁(斜めの繋がり、例えば左肩と右股関節、右肩と左股関節)が必要だということだ。
真っ直ぐに見えるものは実は完璧に捻れている
そんなことを思い出した。
日本の武道と中国武術を比べると、前者は直線的で後者は曲線的だ。
そして中国武術の一つである太極拳は球や円がシンボルになっていて、螺旋の動きが多く、捻りが随所にある。陳式から楊式太極拳が派生し、螺旋や捻りの動きは見え辛くなり、一見動きは簡素化したように見えたが、それは螺旋や捻りを通り過ぎた後の”貫通”した体を前提とした高度な拳だった。
その後、太極拳が中国で国民の健康体操として制定された時、主に楊式太極拳が取り入れられた。動きはさらに簡素化され、結局それは捻りの不要な”体操”になった・・・胴体と四肢の分断はやむを得ない・・・ (以上独り言)
<真っ直ぐに見えるものは実は完璧に捻れている>というのは
太極拳の動きの例で示すよりもヨガのポーズの例で見せた方が分かりやすいかもしれない。
下は「英雄のポーズ」。どう違うだろう?
左:https://youtu.be/3L_zva-VNts?si=eTPtHXzbQo4UY4Gy
右:https://yogajournal.jp/pose/43
パッと見て気づくのは、左の男性は体が真っ直ぐ正面に向いているが、右の女性は体が捻れてる・・・ ポーズとしてどちらが正しいのか、均整がとれているのかは分かるはず。
右:https://www.beachbodyondemand.com/blog/yoga-warrior-poses
今度の右の青い服の女性は上の女性よりも体が正面に向いている。
が、お尻が割れていないせいか、腹から下が正面に向いていない。
ここで気づいただろうか?
左のヨガの男性(ヴィシュワジ先生)は、顔は左へ向いていて体は真っ直ぐ正面に向いている・・・あたかも、古代エジプトの壁画のような姿・・・ちょっと変?(私の主人にこの写真を見せたら、リアルな人ではなくてイラストだと思っていた。あまりにも二次元過ぎる、と。) 真似してみるととても難しい。実は、頚椎から尾骨までをいくつも捻ってこのポーズを作っているのだ。(私も完璧には真似できないが理屈としては)尾骨が右に捩れたら仙骨下部が左に捩れ、仙骨上部は右へ、腰椎は下部は左へ、上部は右へ、胸椎下部は左へ、中部は右へ、上部は左へ、頚椎下部は右へ、中部はが左へ、上部は右へ・・・というように、たがい違いに捻れている。もちろん、本人はそんなことを意識してやっているわけではないが、背骨がバラバラに捩れるようになっていると、こんなふうに体が完璧に開けるようになる。
右の青い女性は仙骨以下が捻れないので下半身が開かない。
冒頭に挙げた赤いタンクトップの右側の女性は、鎖骨付近の上部胸椎(肋骨)や腰椎仙骨が捻れていない。それらが青い服の女性よりも体が開いていない理由だ。
最後にこの女性:https://yandara.com/yoga-poses/virabhadrasana-ii-warrior-ii-pose
この女性は左のヴィシュワジ先生とかなり似ている。
違いは、体が落ちていること(体が重そう)と、首の角度だ。
この首の角度だと後頭部の位置が正しくない。本当は後頭部はもう少し後ろだ。(ヴィシュジ先生参照)。そして、首がこのように硬直している理由は仙骨の下部、尾骨が捻れていないからだ。仙骨の下部や尾骨を操るには肛門を引き上げておく必要があるが、肛門を閉めてしまうと仙骨や尾骨が動かせず首も硬直する。
左のヴィシュワジ先生のポーズはどこにも力みはないが、右側の女性は首に力みがある。(首に力みがあるということは肛門周辺にも力みがあり、体は重くなる)とはいえ、この女性のポーズは上の二人より均整がとれ、完璧に近づいている。見た感じは、そこそこ”真っ直ぐ”だ。
つまり、これらの例で言いたかったのは、”真っ直ぐで均整のとれた姿”の裏には捻りがある、ということだ。このように捻りをかけてから、まっすぐ直立をするととてもきれいに立てるのは確か。
そんな原理を太極拳では採用しているし、腰の王子も使っている。
最近生徒さん達に細かく注意してやらせた、膝を立てて体を捻るポーズも上のような観点からやらせている練習だ。
初心者の人には太極拳との結びつきがまだ分からないかもしれないが、ある程度練習をしている人には非常に大事な練習になると思う。もちろん、私にとっても目から鱗の練習でした。
背骨の貫通も捻りによってまず作る。捻れないと貫通はまず無理。ここで出てくるのが、基本の動功の丹田の水平回し。背骨の旋回の入り口です。私も頑張ろう・・・
2023/10/16 <気を下げるさまざまな方法の例>
今更ながらだけれども、いろいろ教えていて気づいたのは、結局、横隔膜を下げる(気を下げる)ことなしに体の連動は起こり得ない、ということ。
つまり、気を下げられないと、周身一家(体が一まとまりになること)はあり得ない。
基本に戻れば、丹田を作る、ということ自体が、気を下げることだった。
腹に気を溜める、丹田を作る、ということがある程度できれば、すでに気はいいところまで下がっている。
気が上がっているのか、気が下がっているのか、自分で確認できるようになるのが始めの一歩だ。太極拳なら、常に丹田を意識する、ということだ。
話が逸れるが、空手なら「えい!」とか「はっ!」いう”気合い”を入れる言葉。低い音程での「えい!」や「はっ!」は腹に気を落とし、丹田を充実させる。
・・・が、長年空手をやっている主人の話だと、外国人の中には「えい!」と言うところを、「 KIAI!」と叫んでいる人がいるそうだ。それは国際的に出回っている空手の教則本の中で、、「えい!」や「はっ!」という場所に、「KIAI(気合い)」と書かれていたのが原因だそうだ。
←国際松濤館
金澤弘和宗家
口の形は「哈 (ha)」だと思われるが、テキストには <気合 KIAI>と書かれている。
面白いのは、太極拳でも使う「哈(
ha)」は丹田に気を落とす(写真の宗家のように、舌をしっかり口の下に押し付けるのがコツ)が、もし、「気合い!」と言ってしまうと、腹の気は抜けてしまう。松濤館の先生達は後に外国人生徒達の誤解を正していかなければならなかったとか・・・
すごく低い声、バスの声を出そうとすると気は腹に落ちる。
日本の坊さん達の念仏の声はとても低い。これも腹に気を下げる効果がある。
息の使い方がわかりにくければ、声をのせて発声で確認してみると体内で気がどう動くのかがわかりやすい。
下の王子の「とんがりコーン体操」はどうだろうか?
王子が、「ど真剣な顔で!」と注意しているのはなぜか気づいただろうか?
ど真剣な顔つきで、両手を眉間に持っていけば、目線は自然に眉間に集まる。
両目の目線が眉間にちゃんと集まれば、気は腹に落ちる。
つまり、ど真剣な顔で、とんがりコーン、とポーズをさせるのは、腹に気を落とさせるためだ。ここに王子の絶妙な仕掛けがある。
そして、そのあと、「あ〜、すっと下ろして〜」と、口を立てに長くして変な言い方をしているのは?
これは、そのまま、王子を真似て言わなければならない。
すると、息が漏れずに胴体の上から下までパンパンに膨らみ、その中で背骨が伸びる(抜背)のが分かるはず。これが「コマネチスリスリ体操」の準備だ。すなわち、股関節の屈曲が正しく行われるための準備になる。
そして「とんがりコーン体操」や「コマネチスリスリ体操」で大事な眼目となる、上腕(肘)。
結論から言えば、前腕ではなく上腕を使う=肩甲骨・肋骨を連動させる、には、抜背が必要だ。背骨の伸び(上下の引っ張り合い)が足りないと広背筋がうまく使えずすぐに前肩になり前腕しか使えなくなる。
そして背骨の伸びを作りには、まず、気を腹に沈めることが必要だ。
大腰筋を使うにも、まず腹に気を沈めるのが必要。
はしょって言えば、気を沈められれば、そこそこ連動ができてしまう。
王子には王子流のやり方があり、それは素人でも真似しやすいように作られている。真似が上手な人、表情豊かにいろんな声が出せて、さまざまなモードに入れる人にはうってつけのメソッドだ。
太極拳の基本練功として丹田に気を溜めるのは、もっと静かで時間のかかる作業で、常に、丹田を”意識”する必要がある。この”意”を外さない練習を日々欠かさずにできるなら確実に身体は内側から充実する。
外界に向いている目を内側に向ける。
その時間が必要だ。
2023/10/12 <横隔膜を下げる その3>
体を落とさずに気を降ろす、ということに関して、横隔膜を下げると言う観点から動画をとりました。
体を落とすことと、気を降ろすこと、この違いをはっきりと理解することが目標。
自分でその違いを体現できるのであれば完全に理解しています。動画を見る必要はないかも。
その2つがあやふやな人は、動画を見て理解しようとしてみてください。
2023/10/6 <横隔膜を下げる その2>
<続き>
太極拳をする時に横隔膜は下がりっぱなしなのか? 感覚的にはそうだが、師父はどう答えてくれるだろう? 尋ねてみたところ
「そうだ、ずっと下げている。」
そんなの当たり前だろう、というような口調。
上がったり下がったりしているようでは力がでないという。
「だから、普段から、息を吐ききった後、、1、2、3、4、5とゆっくり数えてさらに吐く、そして息を吸った後にも、1、2、3、4、5と数えてさらに吸う、それをやらなければならない。」
「単に吐ききっただけでは、本当の”気”は分からない。そこからさらに吐くことで真の”気”が現れる。吸う時も同じだ。」
ん?話が逸れた?と一瞬思ったが、いや、これは横隔膜を”下げ続ける”ための訓練だ。
私も以前生徒さん達にやってもらったことがある。
息を吐ききった後、そのままさらに我慢して吐き続ける。
うまくできれば、我慢して吐き続けている最中に突然、体の中のモードが切り替わり、急に楽になって更に吐き続けれらるようになるのが分かるだろう。もう吐けない・・・と頑張った瞬間、壁が抜けて腹の下の方が使えるようになる。この転換点が横隔膜が収縮(下降)に切り替わった瞬間。それまでの楽ちんな呼気では横隔膜は弛緩して上がっていっている。そして面白いのは、その転換点で急に骨盤底筋に力が入るようになること。つまり、横隔膜と骨盤底筋のサンドイッチが出現する。この骨盤底筋がミソだ。ここが働かないと横隔膜は下げておけない。横隔膜と骨盤底筋の連関が現れて初めて横隔膜は引き下げておくことができる。そのためには、師父曰く、
「吐く時は、意識的に男性は会陰を引き上げる、女性は陰道を占めて曲骨穴を意識する。吸う時はそれほど意識しなくてよい。」
息を吸う時は横隔膜は下がる。最初のうちはそれほど骨盤底筋を意識できなくても横隔膜は下げておける。
難しいのは吐く時だ。吐く時に、師父が上で言ったような要領を使わず、普通の人の普通の状態でいたら、吐いた息は漏れてしまう。口や体から漏れてしまう。吐いてもできるだけ漏らさない。それが肝心だ。
だから、最初は吐くのに注意してやってみる。吐ききった後に更に吐き続けて、もうだめだ、と思うまで吐き続けると横隔膜や骨盤底筋の動きが見えてくるだろう。そこまで吐けるようになれば吸うのは簡単だ。
これが、王子の言うところの「深い呼吸」で、だから王子は、横隔膜がかなり下まで下げておけるということを自慢(?)していたのだ。横隔膜を強く収縮させたままでいられるということは、弛緩させた時により弛緩させられる、つまり可動域が大きいということだ。ただ、それは骨盤底筋との連携が必須だ。
普通の人の呼吸は、”底に達していない”。つまり、浅い。それは推手をするとすぐに分かる。底に達していないから、鼠蹊部に近い位置を狙うとすぐに体勢を崩してしまう。あるいは、別の例で言えば、底に達していないから前に屈む時に股関節を折り込めない。代わりにお腹を凹ませて腰を丸めてしまう。結果、腰を悪くする。幼児の動きを見ていると、屈む時、しゃがむ時にまず股関節がしっかり屈曲する。これは、息が常に胴体の底=骨盤底筋に達しているからだ。
<ここで横隔膜と骨盤底筋の関係について少し整理>
←https://hare-hari.com/?p=3358
これは、呼吸による横隔膜と骨盤底筋の関連を示す典型的な図だが、太極拳などのスポーツでは横隔膜を下げたままにして体幹部を安定させるので、左のような図は当てはまらない。
当てはまるのは、以前ブログに書いたこともある、腹圧呼吸( IAP呼吸)だ。
ということで、また腹圧呼吸に戻ってきてしまった・・・
そもそも、太極拳で丹田を育てるのは、言い換えれば、腹圧を上げていく作業。流派によっては丹田を作らずに練習するものもあるようだが、歳をとればとるほど腹圧は減る傾向があるから、意識的に育てる練習をすべきだろう。ただストレッチや套路練習だけでは腹圧は育ちにくい。
次は、<横隔膜を下げて吐く>のと、<普通に吐く>のとがどのように違うのか、を、太極拳の動きを例にして説明できればよいなぁ、と思います。
2023/10/4 <横隔膜を下ろす その1>
腰の王子が、「呼吸は長さではなくて深さが大事」と言って、「僕の横隔膜はここまで下げておけるんです。」と臍上あたりに両手を置いてその姿を見せてくれた動画を見た。
なんと・・・そうだったのか!と目から鱗。
それは太極拳の典型的なアン(按)の時の内気の動かし方、つまり、<気の下ろし方>だった。
なんだ、<気を下ろす>と思ってやっていたものは、<横隔膜を下ろす>ということだったのかぁ。
軽いショックを受けて、今日早速師父に電話をして確認。
「気を下ろす、というのは、横隔膜を下ろすことと同じだったのですか?」。
すると師父は
「あなたは賢いな〜。その通りだ。」
それなら、そうと教えてくれれば良いのに・・・と内心思ったのだけど、でも、当時師父に「横隔膜を下げろ」と言われたら、「気を下げろ」と言われる以上に頭を使って考えてしまったかもしれない。「気を下ろせ」というのは、太極拳を学び始めた第一日目から教わることで、それを毎日のように言われ続ければいつかはできるようになる。タントウ功自体が、気を下げたまままでいることだ。沈肩も含胸も、それらをしなければ、気は落ちない。
ただ、生徒さんを教えていて難しいと感じるのは、気を下げて欲しいのに、体を落としてしまうことだ。
実際、制定された太極拳は<体を落とす>ことがほとんど標準になっているようだ。
本来の太極拳は、体は落とさずに、気を下ろしている。
それはスポーツと同じで、体を落としてしまうと素早く動けないからだ。重心を落としても体を落としてはいけない、というのと同じことだ。
が、このあたりはなかなか理解が難しい。
推手をすると、体を落としてしまったら一貫の終わりだと気づく。相手の力を捌けない(化勁ができない)のですぐに倒されてしまう。
でも、套路の練習しかしていないと、自分が体を落としているのか、気を下ろしているのかどうかが分からないこともしばしば。
だから、ここで、<気を下ろす>と言う代わりに<横隔膜を下げる>と表現することを取り入れてみようかと思う。
<気を下ろす>と<体を下ろす>の違いが分からなくても、<横隔膜を下げる>と<体を下ろす>の違いは分かるだろう・・・
<では横隔膜をどうやって下げたままにするのか?>
まず、前提として、横隔膜は
息を吸う時に下がり
息を吐く時に上がる。
→https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/07-%E8%82%BA%E3%81%A8%E6%B0%97%E9%81%93%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%BA%E3%81%A8%E6%B0%97%E9%81%93%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/%E5%91%BC%E5%90%B8%E3%81%AE%E5%88%B6%E5%BE%A1
が、が、が、これでは横隔膜は上がったり下がったり。下げっぱなしにはならない。
でも、太極拳の時は、ずっと下げている感じだ。
実際は、横隔膜はどうなってしまっているのだろう?
そこで、引き続き師父にその点を尋ねてみた・・・
<続く>
2023/10/1 <含胸を作る要領 含胸の効果 横隔膜と骨盤底>
前回のメモの中での問い。
<胸を張らずに、”前に押し付ける>
と、岡田君が言った、それは太極拳で言えば何の要領でしょう?
答えは
『含胸』 です。
私は師父からしょっちゅう「含胸をしろ!」と胸を後ろに引くように押されてきたので、含胸は<胸を後ろに引く>感覚中心でやっていた。
けれども、生徒さんに同じようにすると、胸がぺちゃんこになって立てないか、前肩になって猫背になってしまう。
なかなかうまくいかないなぁ〜 と思うことがしばしば。
含胸になった時の感覚は、胸に空気を含んでいるかのようで、だから『含胸』というのだと納得できるのだけれども、どうやったらその状態を作る要領を教えられるのかが分からない。師父も私に教える時に随分苦労したのだと今になって分かる。沈肩はある程度できるようになっても、含胸はなかなか要領を得ない。
と、ここで岡田君! なんと、「胸を張らずに、胸を前に押し付けろ」と指示。
一瞬、どういうこと?と思ったが、その通りやってみると、あ〜、含胸になる!と納得。
番組を見た人でそれが分かった人はどのくらいいるだろう?
<胸を前に押し付ける>とだけ言うと、おそらく<胸を張ってしまう>。
もし<胸を張らないこと>を条件、<胸を前に押し付け>たらどうなるか?
これが胸に空気を含んだ『含胸』だ。
結局、含胸も、腹の丹田の要領と同じだ。
丹田の場合は、
お腹を凹ませないように腰を膨らませる(腰は折らない)=お腹を引きながら出す=腹腔の圧を増やしている
含胸の場合、<胸を張らないように胸を前に押し付けよう>とすると、一旦胸を引く必要がある。引かないと前に押し付けられないからだ。つまり、丹田と同じように、<引きながら出す>といった、反対方向の力が同時にかかることになる。胸腔の容積は大きくなる。ただ圧力は丹田とは異なり陰圧になっているようだ(吸った感じ)。
以上は、主観的な含胸の感覚だが、これを客観的に示すと下の図のようになるだろう。
https://ameblo.jp/kyakusenseibishi/entry-12391388866.html
目指すのは一番左の状態。
横隔膜と骨盤底筋が水平で平行だ。
こうなることで、しっかりと腹圧がかかり腰の負担も最低限になり、内臓も良い位置に保たれる。(細かい説明は上のリンクのブログを読んで下さい。)
腰の王子も公開動画の中で横隔膜と骨盤底筋の関係について上のようなことを言っていた・・・骨盤底筋は鍛えられない・・・(動画検索・・・ありました!)
確かに、含胸をすると、横隔膜と骨盤底が平行に近づきます。
最初うまくできないのは、胸を操作しても骨盤底筋まで気が届かないから。
横隔膜と骨盤底の連動を意識すればやりやすくなるかもしれない・・・
ちなみに、上の4つのモデル図。
一番左が正しい(目標)として、
左から2番目は反り腰タイプ。横隔膜と骨盤底が反対方向に開いていて、腹圧が抜けてしまっている。このタイプは胸を引く意識をもって含胸をさせるのがよさそうだ。
その隣は、平腰タイプ。背骨のカーブが小さく、横隔膜も骨盤底筋も縮こまっている。日本人はこのタイプが案外多いのでは?この場合は、まず、背骨の可動域を増やす必要がある。立腰体操の三種の神器とか、師父から伝授された動功(丹田回し)とかが有効だ。
そして含胸をする時は、胸を引く意識よりも、岡田バージョン、胸を張らずに前に押し付ける、という感覚をもたせる方がよいかも?
最後、右端は猫背タイプ。かなり肋骨が下がっている。まずは、丹田をしっかり作って腹圧を高め、腰椎を立たせる必要がありそうだ。含胸は背骨がある程度立ってからするべきだろう。
2023/9/26 <岡田君の番組より、姿勢のポイント 胸と足首>
テレビをつけたらたまたまやっていた番組。あら、岡田君〜♪、と見たら、ラグビーの体の使い方を武術的な観点から説明、そして補強しているような内容。慌てて録画しました。
まだ冒頭5分間しか見ていませんが、太極拳に共通するところが多々あります。
例えば、姿勢について・・・(↓6枚の画像が紙芝居のようになっています。)
<説明>
①ラグビーのスクラム。あれだけの全身力を得る秘訣は”姿勢”。
②姿勢の注目ポイントは
③耳、肩、腰が一直線
④これを立位にした場合、問題は、現代人は頭が前に出ていること
⑤そこで、胸を張らずに、”前に押し付ける”
⑥すると 耳、肩、腰、くるぶしが一直線になり、正しい姿勢になる。
⑤がポイントです!
ここでピンとくれば太極拳の練習はかなり進んでいます。太極拳の何という要領ですか?(解答は次回書きます)
そして引き続き番組では、”姿勢”に付随しての”足首”のポイント紹介。(紙芝居形式↓)
<説明>
①姿勢において大事なのが”足首のアングル”
②スクラムの時の足首の角度に注目
③L字型、90度
④正しい角度(岡田君実演)
⑤間違った角度 ふくらはぎで推してしまっている
⑥間違った角度
⑦足首のアングルが正しいと体幹部の力が使える
さあ、これは太極拳の何と言う要領の話でしょう?
これは
『力起于脚跟』(踵から力が出る)の話です。
左の岡田君の踵が美しくて、惚れ惚れしてしまいました。
顔が良いのは知っていましたが、足がこんなにセクシーだとは...
この踵になれば、全身の力が連動します。(ハムストリングスから背骨、頚椎まえ連動する)
最近注目していた室伏長官の踵もこんな風になっているはず。
右のような踵だとハムストリングスや背骨、所謂、体の背面(陽面)が使えません。
足裏が使えていないから。言い換えれば、足底筋膜がストレッチされていません。
左はよくありがちなパターン。
ピンクの実線の部分は使えているのだけど、踵をぐるっと回り込む部分(青い点線部分)が使えていない。
すると、足裏ではなく、ふくらはぎから力を出すようになる。脹脛が太くなるパターン(私自身がそうやって卓球をしていました。)
つまり、踵はL字だということ!
この番組はNHKオンデマンドで10/3まで見られます。https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2023092633611
2023/9/25 <手首の使い方の極意>
9/17の初耳学、TVerでの室伏長官の授業の配信が終わってしまってた・・・ショック!
というのは、TVerではテレビ放映されていない室伏長官のもう一つの授業を配信していて、その中に目から鱗の内容があったので是非皆に見てもらいたかったから。
その特別授業の中には剣道部の学生を指導している場面がありました。
竹刀を持つ生徒に、室伏長官が教えた”極意”・・・(”極意”という言葉を長官自身は使っていませんでしたが、腰の王子なら間違いなく”極意”と言っただろうところ)
それは手首の位置。
剣道に限らず、この手首の位置を間違えてしまうとどんなスポーツも上手くできない、と言っていた・・・(楽器演奏だってなんだって全てに通じること)
室伏長官が指し示した手首の位置を見て、私は謎が解けたのでした。
何故生徒さんたちがうまくチャンスーをかけられないのか、手首がペラペラでちゃんと回せないのは何故なのか。
ああ〜、このポイントを教えてあげれば良かったのだ。気づかなかった・・・(無意識でやっていた)
確かに、そう言われるとそうしている。師達は皆そうしている。いや、そんな意識はないが、そこが確実に回っている。生徒さんたちができないのは、手首を回す時にまさに所謂手首を回しているから。回す箇所の意識を少しずらすだけで、腕肩の使い方が劇的に変わるかも。
この話は今年の6/26のメモの内容と関連します。『手首回しから節節貫通へ』という動画です(https://youtu.be/h_M0I8hqB0A)。
↑左側は手首が回っていないので次の関節(肘関節)に連動しない悪い例。
右側は手首の回転が肘関節に連動する良い例。
この違いを生み出すのを室伏長官は下のように説明していました。
手首の位置は左画像の③。
普通は時計をつける位置、①を手首だと思うだろうが、使う時には③のあたりを意識する。
TVerの特別授業の中で室伏長官は生徒の③の部分を両手で掴んで、雑巾のように絞ってみせ、「ほら、ここは動くだろう?ここが手首だ。」と教えていました。
実際、私の動画を見ると、手首を回転させた時に③のあたりが捩れているのが見てとれるようです・・・
逆に言うと、そこが回せるような手を作る必要があるということ。指の先端まで気を通して手の平の中もコントロールかけられないと③の部分を意識的に動かせないかもしれません。
前腕から指先までをまとめて『手=hand』と言う、と腰の王子がいうように、前腕は指の領域。肘まで五本の指が通っているのを感じられるかどうか。
チャンスーだけでなくて、ポン、リュー、ジー、アン、の時も③の手首を使えるかな?
生徒さんに試してもらおう。