2022/6/27 <身体の開発とは? ループの書き換え>

 

  腰の王子の体の使い方は劉師父と似ている。というか、同じだ。

  腰の王子の動画を知ったのは腱鞘炎やバネ指の治し方を検索していた時だった。様々な整体師が様々な治療法を紹介していたが、腰の王子の、「よ〜しよしよし」と腕を摩る、というこの上なくシンプルなやり方を見て試した時、この方法だけが問題の根っこの解決を図っているのが分かった。しかも、「よ〜しよしよし」と摩る動作自体がそこらの整体師とは違う、只者でない・・・そう直感した。腰の王子というネーミングに苦笑しながら、その他の動画をどんどん見ていくと、なんだ、この人は修行者なのだ、と分かって納得した。

 

  修行者というのは、その道に徹していてその他のものを切り捨てている(というより関心のない)人。一直線のシンプルな生き方でブレがない。私自身はすぐにいろんなところに興味が移ってしまって全く修行者とは言えないが、もし男だったら修行者になっただろう・・・だからか、修行者かどうか、というのは無意識的に嗅ぎ分けている。今では中国でも修行者と言えるような太極拳の老師は少なくなってしまったが、日本でこんなところに修行者がいたとは・・・それも一風変わった現代版で・・・と興味津々になった。

 

 

  修行によって内側が開発される。

  太極拳ならタントウ功や座禅の静功をし、気を使って内功をする。

  内側から外側を開発する。

  ただの筋トレやストレッチとは異なるのはそこにある。

  体の内側の”気”を運用することで骨や筋肉のアライメントが変わる、変えられる。そのためには、骨や筋肉を動かせるほどの”気”の量と圧力が必要だ。だから静功でしっかり気を蓄積させて内功で練っていく。これが太極拳での「体の開発」の方法だ。

 

  と、これをやったことのない人に説明してもポカ〜んとするだけ。何の話をしているのか分からない。けど仕方がない。それが分かる人はそれを経験している人だけ。

  が、腰の王子が、「『体の開発』は『運動神経を書き換える』ことだ」と言っているのを聞いて、なんだ、そうだったのか、と合点がいった。

  太極拳での丹田や気を使った静功や内功は、とりもなおさず「運動神経を書き換える」メソッドだったのだ。

 

  自分の祖母は100歳で亡くなったが、最後の方は会話をしていても返事が5パターンくらいになっていた。何を聞いても、なぜか答えが同じになっている。私の若い姪はそれを聞いては大笑いしていたが、実は私たちの頭も同じ轍をぐるぐる回っている。若いうちは脳内に新しいループがどんどん形成されるが、あるところから、新しいループはほとんど形成されず使い慣れたループだけを使って脳が働くようになる。

  体も同じようなもので、子供の頃は使えば使うほど使えるところが増えていくのだが、20歳を超えてくると使えるところを使って運動するようになる。体に癖、歪みというものだ。が、本人は無自覚なのでどうしようもない。相当良いプライベートコーチでもつけない限りは運動すればするほど癖や歪みは助長される。

  歳をとって腰を痛めたり膝を痛めたりするのは、筋肉が弱くなったからではなく、体の使い方、使う路線を間違えて使い続けているからだ。が、正しい使い方=正しい路線をどのように身につけるか、というと、ちょっと気をつけたくらいでは身につかない。脳の運動神経を正しく書き換える必要がある。

 

  脳に書き込まれた情報を書き換えるというのは、いわば、頓悟的なものと漸悟的なものがある。つまり、悟りの方法と同じだ。一気に悟るか(書き換える)、それとも時間をかけて徐々に悟るか(書き換える)か。

  丹田に気を溜めてそれを内側から流して体の意識(神経系)を徐々に書き換える、というのはよくあることだし、時に一気に気が流れて、バキッと音がしてそれまで知らなかったところが開いて瞬時に使えるようになってしまうこともある。いずれにしろ、体の中で使ったことのないところが使えるようになった、つまり、運動神経が通るようになった、ということだ。

  神経が開通していないと筋肉は動かない。どれだけ筋トレやストレッチをしても境地は変わらない。

  これを腰の王子は立腰体操というシンプルだがとても変わった体操で実現させようとしている。

 

  立腰体操はとても精密に計算されて作られている。

  修行者が座禅や内功で得る境地をあの体操で得させようとまで考えて作られている体操だ。あんな体操でそんなバカな・・・と最初は思ったが、中身を深く知れば知るほど、さもありなん、王子が言うように、修行者が10年15年かかって到達するところを1年(は無理かなぁ)2、3年?で到達するかも? エッセンスは詰まっている。が、、問題は、あの体操を王子がやるように再現できるか?

   私が生徒さん達に立腰体操をやってもらって気づいたのは、羞恥心が邪魔して声がきちんと出ないこと。動きが正確でないこと。もちろん、それを毎日繰り返して脳に新しいルートをインプットさせ続けることも必要だ。

   笑ってそれで終わり、だと運動神経は書き変わらない。

 

   ヨガをやり込んでいる友人に立腰体操を紹介したら、「それを本当にシラフでできるのか?」という反応があった。私の生徒さんの中にも、「もう少し真似しやすい体操にしてくれればいいのですが・・・」と言う人がいた。

  腰の王子は、天才は、真面目の中にアホが必要、と言っているが、自分の中で使っていない部分を開発するには、「羽目を外す」必要があるのだろう。羽目が外れず、理性で制して体を使うと体は同じ神経系統を使ってしまう。太極拳のタントウ功や座禅で入静状態に入る必要があるのは、それによって大脳皮質(中でも前頭葉)をお休みさせるため。大脳による拘束を解くことで体に新境地を与える。

  腰の王子の口に出しにくい言葉や顔の表現はそんな大脳の枠をとっぱらう役割があるのだろう。そして発声によって内側に気を通すから、発声は王子の声色、声のトーンを真似る必要がある。六字訣と同じ作用を狙っているので、最初は大きな声ではっきり、慣れてくれば小さな声、無音でもできるのだろうが、そのためには、その音によって体の内側のどこが開くのかをしっかり知っている必要がある。

 

  立腰体操は誰がやっても効果がある体操として作られているが、これを最大限に使えば秘伝とされている太極拳を含めた武術や武道の身体の内側からの開発ができるだろう。

  が、「これをシラフでできるのか?」

  できないなら、地道にタントウ功をして内功をするのかなぁ・・・

  どちらの方法をとっても、一般人から見れば極端な道。修行者の道だ。

 

  太極拳を学び出したころはただ套路を覚えて動くのが楽しい。が、それでは使っている運動神経の使い回しで真の”身体の開発”にはならない。知らないところを使う、ということは頭でどう頑張ってもできないのだ。それを可能にしようとしたのが気や丹田を使った練習、そして一見奇妙な立腰体操。脳のループを書き換えるのが解脱に向けての修行。

  結局、ループの書き換え、これを超える人生の課題、目標はないだろう。

  

 

2022/6/22 <体幹部から動くための放松 くねくね 股関節と骨盤の関係>

 

 太極拳から学べることはいろいろある。

 技も学べるし、丹田、経絡、気の溜め方、運用の仕方、そして中医学、中国文化・・・と広がるが、その中核にあるのは、人間の本来的な体の使い方、だろう。

 ひっくり返していえば、私たちは人間の本来的な体の使い方をしていない。それに気づかず、今までずっと動いてきた。小中高、そして大人になってからもスポーツを楽しんできたけれど、それは自分勝手な動き方でやってきた。使えるところを使って使えないところは使えないまま。真の意味での体の開発はできていなかった。

 

 今の師に出会って、それまでの運動に対する理解が根こそぎ変えられてしまった。

 まず、力を抜け!(放松)というのが驚きだった。

 力を抜いてどうやって動けというのか? 力を抜いてどうやって打てというのか?

 気を溜めろ、というのも理解不能だった。何のために? 丹田を作ってどうするんだろう?

 そしてくねくね動く内功。

 日本では腰をくねくね動かすのはご法度。ダンスならOKだろうが、日本武道で腰フリフリはありえない。そもそも文化的に背骨は動かさずにまっすぐなのが正しいとされているようなきらいがある。

 が、中国武術はくねくね。くねくねを学んで次第にそのくねくねを隠すようになっていく。

 

 今ははっきりわかる。私が師から教え込まされてきたのは、「体幹部から動く」ということ。それができれば太極拳の技は難なく習得できてしまう。逆に、「体幹部から動く、動かす」ということができなければ、技を学んでも習得はできない。体幹部から末端までを内側で繋ぐ経路を開発することが太極拳には不可欠だ。これが体の開発、と言われるもので、そのために放松や丹田、くねくねが必要になるのだ。丹田や放松は内側のネットワークの開発のために必要となる要素、それら自体がゴールではない。

 

 腰の王子はその体の内側のネットワークの開発のためのメソッドを「立腰体操」という形で確立させたようだ。太極拳を学んだことのない人からするとなんともふざけた体操だ、と思えるかもしれないが、太極拳の内功をやってきた人から見れば、これはあれと同じだ、とどの体操からも接点が浮かんでくる。この体操は太極拳とは無関係?と思えた体操も、ひとたび師父に見てもらうと、一言で、これは太極拳の開合法と同じだ、とか、これは大椎穴を通す練習だ、と言ってくれる。やはりどれもそうなっている・・・。

 

 「股関節の外旋には骨盤の後傾が、股関節の内旋には骨盤の前傾がセットになっている。」by 腰の王子。

 なるほど、この連関がうまくいっていないと股関節や膝に負担がかかる。

 太極拳の套路の重視移動の際、右股関節が外旋、左股間節が内旋しているような場合(例えば雲手の左から右への重心移動)、右側の骨盤は後傾、左の骨盤は前傾している。もちろんそれには仙腸関節の動きが必要になるが・・・。

 太極拳で重心移動を練習する時は同時に股割り(仙腸関節で左右に割ること)をやっている、と気づく人はどのくらいいるだろう?

 私は上の命題を腰の王子から知ったことでそれに気づいた。

 が、そもそも、骨盤の右と左で、片や後傾、片や前傾になるなんて考えたことがなかった・・・。

 

   改めて第22式平心捶の初めにある穿心肘の動きを見ると

 

これが馮老師。

 

左から右への重心移動

左股関節は内旋、右股関節は外旋になるような動きの箇所。

 

馮老師のお尻を見ると、

重心移動の終わり、左右のお尻の形が違うのがわかる。左のお尻は高く右のお尻は下がっている感じ。

 

下の二人の老師の動きと比べてみる。

 

 

 馮老師と比べた時の明らかな違いは、二人の女性の老師はどちらも下半身(脚)の力が上半身に連動していないこと。

 馮老師は体重移動が終わると同時に発勁。下の老師達は重心移動が終わってから発勁をしている。つまり、重心移動が下半身だけで行われていて上半身と連動していない(肩や胸だけで肘技をしているから重さがない。し、威力がない。)

 

 そしてこの下半身と上半身の連動は、骨盤の後傾、前傾運動と多いに関係ある。

 一番左に馮老師の一番弟子の陳項老師を加えてみた。

 股関節が内旋する左側の骨盤は前傾、股関節が外旋する右側の骨盤は後傾している(左のお尻の方が右側よりも持ち上がったような感じ)。骨盤が前傾した側の腰は反り気味に、後傾下側の腰は塌腰になる。(骨盤後傾気味にすると気は足の方へ降りる。前傾気味にすると気は足から頭の方へ上がる。) 左側の骨盤を前傾させて股関節を内旋することにより、左足裏で地面を押した力が右肘へと繋がることになる(左下から右上への斜めの連関:四隅勁)

 対して、二人の女性の老師は四隅勁ができていないため、上下は分断し、中正が崩れ、肩も上がってしまっている。穿心肘の形だけ真似ると最初は皆こうなる・・・内側の繋がりを見つけないと正しい形にはならない。

 

もう一度馮老師の形を見ると、まあ、なんて歪んでいる(くねっている)のになんて真っ直ぐ!

簡化太極拳では許されなさそうな形だ(苦笑)

 

お尻の”かたちんば”感が半端ない。

が、これが正しい連動。

動物、って感じがする。

 

(腰の王子のフィジカルタイプ論でいえば、左写真の馮老師の左半身は女の子:骨盤前傾の連動、右半身はおじいちゃん:骨盤後傾の連動。頭蓋骨の連動(左は前傾、右は後傾)までできているようなのがさすが馮志強大師!と思うのでした。)

 

2022/6/20 <腰の王子から太極拳を見直す 歪みをとる=節節貫通>

 

 目下、腰の王子の立腰トレーナー養成コースで体の歪みの正体、そしてその解消の仕方について学習中。太極拳の練習では経絡やツボを手がかりにやっていたが、どこかもやもやしたところがあった。自分自身の体の左右差は自分では気になっていても外からはなかなか見えない。師父も様々なアドバイスをくれたのだが根本解決にはならず、パリに滞在中はバレエ整体やその他整体師の動画などで体の構造、つながりなどを学んでいた。

 そして数ヶ月前に知った腰の王子。知りたかったことが学べる、とすぐに飛びついた。

 左右差があるのは私だけではない。生徒さん、とりわけ、長年太極拳を学んでいる生徒さんほど左右差を訴える。太極拳をやったから左右差が広がった、というよりも、太極拳を学ぶとそれまで気づかなかった歪み、左右差に気づくようになってくる。初心者のうちは体が塊になっていたため左右差に気づかなかったのが、体を緩めてバラバラにして内側の練習をしていくと左右差が明るみに出てくる。

 

 で、どうするか? 

 腰の王子曰く、歪みがあるのが普通、歪み(左右差)がなくなれば達人! 健康で疲れも残らない。

 そう言われてみると、馮志強老師や師父など、太極拳や内家拳の師たちは独特の地味な練習をしていたが、それはまさに、歪みをとる練習だ。毎日毎日歪みをとる。歯磨きをするようなもの?

 

 腰の王子の解明した理論により、人の体は驚くほどシンプルに理解できることが分かった。なんと、2タイプしかなかった。

 一人の体は左右に分かれ、どちらかがA求心性、どちらかがB遠心性になっている。生徒さん達の体で調べてみても皆そうなっているし、街ゆく人の歩き方を見てもそうなっている。Aの側をBに近づけ、Bの側をAに近づけるような体操をすれば徐々に左右差は減ってゼロの状態に近づく。

  2が1へ。この世は2の世界。男女、左右、大小、天地・・・陰陽の世界。これが1になったらこの世のものではなくなる。差をとったら”差とり”=”悟り”になる、と腰の王子は言うが、陰陽の世界から太極の世界へ、というのも似たようなところがある。

 

  太極拳の節節貫通、というのは、関節を貫いてエネルギー(気、勁)が通っていくということ。歪みのない状態だ。子供の時は当たり前だった節節貫通が、大人になる頃には局所的に力を使う癖がついていて使いたくても機能しない箇所がたくさんあってそうはできなくなっている。体を無理やり動かしていることにも気づかない。力を使うたびにこわばってしまう。歪んで固まった体が当たり前、それをまた節節貫通状態に戻して技に生かすのが太極拳。だからこそ養生法、健康法としても成り立つのだ。

  

  腰の王子の2つのフィジカルタイプは全身の関節の連動が2タイプあることを解明したもので、その2タイプの連動がうまくできれば体は自由自在に動かすことができるというものだ。面白いのは、それが、求心性と遠心性、太極拳で言えば、開合(開が遠心性、合が求心性)ということ。合(求心性)であれば、骨盤後傾、股関節内旋、肩関節内旋、足首背屈・・・と連動する。(開(遠心性)ならその反対) それを身体中の関節で調べていくと、例えば、骨盤が後傾(斂臀)しているのに(注意:骨盤後傾は腰がまっすぐな状態のまま骨盤が後傾)頭蓋骨が前傾していたら(鶏のトサカを立てるように)連動がうまくできていない(首関節に負担がかかっている)ということになる。太極拳の老師達でさえ首の連動がうまくできている人はとても少ないのが実情(私も含めて)。ましてや普通の大人は・・・。首が自然に立たなくなるとそのうち猫背、腰痛、そして膝痛、と次第に年寄りの姿勢になっていく。首がうまくたっているうちは姿勢は崩れない、そのためには肩甲骨や肋骨が固まらないこと、手を使う時には肩甲骨や肋骨が動いていることが大事。そんな内功が太極拳にはあるし、腰の王子の体操の中にもあるのはただの偶然ではないだろう。

 

  腕や手の不調を訴えるのは圧倒的に女性が多いと思う。

  腱鞘炎はピアニストに多いが、これも、関節の連動がうまくできていない時に起こる症状だ。

  マッサージをしたり、腕を捻ったり、と様々な方策があるが、根本解決は、手を使う時に手首と肘、肩関節の連動を取り戻すこと。例えば、パソコンでマウスを使ったら肋骨や肩甲骨が微妙にでも動くように。なんなら、肩甲骨と肋骨を少し回しながらマウスを回せばよい。小手先(肘から先)で作業をすると体は固まる。小手先はそのままにして、肘より根本を頑張って動かせば体は緩む。これを腰の王子は江戸人の体の使い方、と呼ぶが、太極拳の丹田回しはまさに体の中心を回すことによって手を使うことを体に教え込ませている。丹田は体の中心にある架空の関節のようなもの。これを回せば身体中の関節が連動して回るような仕掛けを作っている。

  腰の王子の示範でもそうだったが、関節を連動して使う練習では必ず円運動を行う。円運動をしようとすると体は放松せざるを得ない。筋肉を使おうとするご体は硬直しやすいが、関節を使おうとすると緩む。

 

  下は江戸時代の人たちの体の使い方・・・太極拳の内功の動きにそっくり(笑)

  台所仕事しながら(お風呂で体を洗っていても)太極拳の内功が活用できてしまうと目から鱗でした。

2022/6/15 <噛み合わせと下顎の調整>

 

 私の生徒さんの中に武術バカと言ってもよいくらい武術好きの若い男性がいたのだが、彼は今ではりっぱな歯科医になっている。あまりにも多忙で練習には来られなくなってしまっていたのだが、ある時、咬合調整を受けてみませんか、と連絡が来た。話を聞くと、彼は、咬合(噛み合わせ)の臨床研究の第一人者、丸山剛郎氏(大阪大学名誉教授)の下でマウスピースを使った下顎を正しい位置に戻す治療を学ぶとともに、その他にも様々な咬合調整の手法を学んでいるらしい。

  通常の歯科治療を行いながら、それに加えて咬合のスペシャリストになろうとしている?何故? と不思議に思ったら、彼曰く、「噛み合わせや顎の位置が整うと全身のつながりが良くなるし威力も出る。武術の練習をする時間がない代わりに咬合の面から武術を考えることもできるから楽しいです。」 

  

  第一回目の診断の際、私の口の中を見てから、爪楊枝のようなものを取り出し、私の左の犬歯の奥あたりに置いて噛むように言われた。それから私は両手を上げ、彼が私の上げた腕を上から押さえつける。私の両腕はビクリともしない。が、爪楊枝を口から外して同じように両手を上げ、それを彼が両手で上から押さえつけると、ものの見事に私の両腕は落ちてしまった。

  爪楊枝を噛んだだけでこんなに体に差がでるとは!と一瞬驚いたが、奥歯が一本失われると片足立ちが不安定になる、という話をどこかで聞いたことを思い出して、噛み合わせが体に相当大きく影響を与えるのは不思議ではない、とすぐに納得した。

  きちんと調整するには歯型をとって、そこからどこをどう調整するのか分析する必要がある。上の歯と下の歯がしっかり合っていないところはそれを合うようにすると、噛んだ時にこれまで入らなかった横っ腹に気が入る(丹田がさらに広がる)ことが分かる。逆にいうと、噛めていない、ということはその分腹に力が入らない、ということだと気づく。老人になって歯がカタカタしていたら腹はすっからかんになるだろう・・・

 

 私の生徒さんがまず行ったのは下顎の位置調整。これは噛み合わせとはまた違う。筋肉でぶら下がっている下顎をマウスピースをつけることで正しい位置に戻し、徐々に筋肉のバランスを変えていく、という手法だ。できあがったマウスピースをつけるといつもと下顎が異なる位置に調整される。が、その位置の方が鏡で見た時に顎はまっすぐになるし、なんといっても首や肩がよく緩む。

 

←あごのずれについての丸山氏の記述https://www.jio-maruyama.info/appearance/detail02-6.html

 

「下顎は頭蓋骨にぶら下がっている。

顎がずれるとまずは首こり、肩こり、あるいは目眩や耳鳴り・・・

そして頚椎→胸椎→腰椎と次々にねじれがおこり、バランスをとろうとして腰の筋肉が緊張したりする。」

 

  私自身、タントウ功をしていると頭が少し右を向いて顔が左に傾いていたりする。師父にも何度か調整された。が、意識していないとまたその位置に戻ってしまう。ひょっとすると自分がまっすぐ前を向いているつもりで、そうではない? 左目に乱視があるのはそのためか?

  頭蓋骨の位置調整は腹に気を溜めるよりも難しいと思う。

  頭蓋骨は上丹田の場所で神経の源。とてもデリケートでとても微妙な場所だ。

  

  上の記事にもでているような「アウアウ体操」でも下顎の位置調整は可能だという。

  

  マウスピースでの治療はしばらく時間がかかる。が少しずつ左右差が減っている感じがある。そしてある時の診察時に、奥歯の奥(喉に近いところ)をぐっと奥に押されて、「力を抜いてください」と言われ、わけがわからないまま抗する力がふっと抜けたとたん、胸鎖乳突筋から首の付け根が緩んで胸が広がったのは感動的だった。喉は内側から開く、というのはオペラ歌手たちのトレーニングとして聞いたことがあったが、実際にこんな風に喉の奥に手を突っ込まれて内側から筋肉を押すことで喉や胸が開くという経験は初めてだった。含胸というのが、実は胸が開いた状態だと気付いたのはこれがきっかけだった。

 

  今日の診察ではマウスピースの調整と合わせて、私の上下二本の歯を数秒、ほんのちょっと削ることで噛み合わせを変えてしまった。首筋左右の感覚がそれだけで揃ってしまう、なんて簡単な調整! と感動したが、どこをどのくらい削るかを見極めるのが”技”。

  診察に行くたびに新しい手法を身につけていっている彼がとても頼もしい。40を前にして意欲的に取り組んでいるのが分かる。咬合から全身のつながり、アナトミートレインまで学んでいると言っていたなぁ。

 

 

  噛み合わせや下顎の位置の大事さは昨今いろんなところでとりあげられている。

  例えば下顎について https://style.nikkei.com/article/DGXKZO24955340S7A221C1W10600/

 

 太極拳の「下顎内収」という要領はとても簡単そうだけど、下顎を引いてただの二重アゴになっているようだと「内収」にはなっていない。これは「含胸」へと繋がるための大事な要領。「下顎内収」とともに喉や肩、胸の上部(の内側)が一緒に動く必要がある。これも顎がズレが大きくて首の筋肉が硬直しているとやりにくだろう。

 

まずはアウアウ体操がおすすめ。

・正しい姿勢で立つこと。

・歯を合わせないこと。

 

「肩こりにはアウアウ体操が良いよ」

https://www.tefutefusanpo.net/entry/2017/01/23/

 

 

 

私の生徒さんが診察治療を行なっている歯科医院 https://odc-3.com/treatment/adults/occlusion/

2022/6/14 <ハムストリングスと背骨、腹圧の関係>

 

 太極拳の画像検索をすると、ほとんどが前腿に乗っかった形になっている。股関節、ハムストリングスをしっかりつかって太極拳をしているような姿は少数派だ。おそらく、太極拳が体操化したり、あるいは競技化した時に、”背骨はまっすぐ”と規定され胴体を固めてしまったのが根本原因ではないかと思う。本来、太極拳を含めた中国武術の背骨は柔らかく作られている。太極拳はそれを”弓”と呼んだ。弾力性のある背骨、ジャッキーチェンのような動きは中国武術の典型。太極拳も柔らかさ、弾力性、中でも腰の柔らかさは特に重視される。というのは、腰が柔らかくないと活きた丹田が作れないから。

 

 私の生徒さんの一人、70歳を越えているという女性の生徒さんだが、最近になってハムストリングスを使って動けるようになってきた。それまでは典型的な前腿タイプ。裏腿を使うように導こうとあれこれやってきた成果がやっと現れてきた。

 裏腿(ハムストリングス)を使って動けるようになってきた彼女の最も大きな変化は、上半身の動きが柔らかく、力が抜けた、ということだった。「なぜ急に彼女の動きがこんなに柔らかくなったのだろう?」と不思議に思ったら、彼女が立ち位置が裏腿を通ったライン状に変わっていた、そういうことだった。

 

 その生徒さんに尋ねたら、裏腿に体重を乗せようと随分頑張ったようだった。使ったことのない筋肉を使って筋肉痛にもなったらしい。ただ前腿から裏腿に体を乗せる位置を変えようと努力をしていたようだが、その結果、体は緩み、上半身と下半身の連動が起こるようになったのには私も驚いた。なるほど〜、そういうことだったのか〜。

 

 冒頭に書いたように、背骨をまっすぐに立ててしまうと、ハムストリングスに乗ることはできない。ハムストリングスに乗ろうと後ろに重心を移していってもハムストリングスには乗れない。背骨は緩めなければそうならない。背骨を棒のようにまっすぐ立てると前腿に乗ってしまう。太極拳には「背骨をまっすぐ立てる」という要領はない(はず)。あるのは、虚霊頂勁、下顎内収(頚椎)、含胸抜背(胸椎)、塌腰(腰椎)、敛臀(仙骨)。頭頂から脊椎を後方に押し広げながら下方へ垂らしていくような動きだ。これが弾力性のある背骨をつくり、ハムストリングスへと繋がっていく。弓のような背骨とハムストリングスは一繋がりになっている。頭頂から背骨、ハムストリングスを経て足裏までで大きな弓となる。

 

 ハムストリングスを使えるようになった生徒さんは腹圧が高まったとも言っていた。

 いや、ハムストリングスを使おうとすると腹圧が必要で、頑張って努力していたら腹圧が高まった、ということかもしれない。

 ハムストリングスを使うには少なくとも腰椎を後方に押す必要がある(命門を開く)から、そのための腹圧が必要になる。逆に、ハムストリングスを使っていれば腹圧が維持される、とも言える。腹圧は丹田と置き換えることも可能だから、ハムストリングスと丹田はセットだとも言える。

 前腿に乗っているうちは、本当の腹圧、丹田が得られていないだろう。

 

  

 下は最近紹介されて見たYuRuMu整体院の腹圧についての動画の一つ。動画の中のイラストがとても分かりやすい。腹圧は腹の前の方に作るのではなく、思ったよりも後方に作る・・・これが命門を(内側から後方へと)開ける、と言われているもの。タントウ功の最初の関門だ。腹から腰の方にむけてぐっと押し込んだ感じ。ここに腹圧がかかればハムストリングスが使える。前の方では無理だ。 

 ついでに、骨盤底筋に着目した動画も役に立ちそうなので載せておきます。

 

2022/6/13 <ハムストリングス、股関節、膝上げと腿上げの違い>

 

   前腿はブレーキ筋、後ろ側のハムストリングスはアクセル筋。

 人間も四つ足動物と同様、前進する時は後ろ足のハムストリングスが主導になる。太極拳の弓歩での重心移動、進歩(前進)も同様だ。前足の前腿は緩んだまま。

 しかしながら、特に日本人は前腿主導の歩き方をする。歳をとると”膝歩き”のようになるのも元をたどればハムストリングスで歩いていないからだ。

 

日本人の歩き方の拙さを指摘する人は多い。例えば https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83154?page=5

では左のようなイラストを交えて、世界標準と日本人の歩き方を解説している。

 

しばらく海外にいて日本に戻ってくるとその姿勢と歩き方のおかしさに驚くのだが、そのうち見慣れてくると違和感がなくなってくる。しかし、頼りない体はさまざまな問題を引き起こす。太極拳を学ぶと、正しい姿勢、歩き方も学べることができるはずなのだが・・・。

 

  上のイラストは前足が地面に接地する時点(イニシャルコンタクト)を描いたもの。

  世界標準では、後ろ足が地面を推してからだを前方に推し出している。前足は体が前方に押し出されたことで振り出される。踵が地面に着いた時にはその上に頭を含めた体が乗っかっている。

  ポイントは、まず頭、胴体(丹田)が前方に動き、それに伴って後ろ足が地面を推し、前足は前に振り出される。

  これに対し日本人の歩き方は、頭、胴体(丹田)が止まっていて、脚だけで動こうとするから、まず前に足を出さなくてはならない。静止状態から片足を前に出そうとすれば太ももを上げてしまう。太ももを上げて前方に一歩出せば、膝に着地してしまうのは必至。日本人の前足の膝が上のイラストのように曲がっているのはそのためだ。肝心な後ろ足のハムストリングスは緩んだまま。歩けば歩くほど脚は短く膝を痛めてしまう。

 

  (少し説明)

   太極拳のレッスン動画を見ていると、「股関節から脚を動かして!」と言いながら、太ももから脚を出している先生がとても多い(簡化の場合はほとんどそうなっっている?)  

 

 股関節=太ももではない。

 股関節は骨盤と太もものつなぎ目。  

 意識としては骨盤(=腹、腰)を使って脚を操作しようとすることによって、初めて股関節が起動する。(どの関節にも共通するが、その関節を使うにはその関節を構成する二つの骨の体の中心に近い方を動かそうとするとその関節が起動する。例えば、肘関節を使いたいなら上腕を、肩関節を使いたいなら胸を。太ももから脚を使うと膝関節を使うことになる。)

 股関節を使うなら、腹や腰から脚を動かそうとする必要がある。

 

 「股関節から脚を上げて下さい」と言われた時に、とっさにどんな風に脚を上げるのか?街角で実験してみると面白いかもしれない。ちなみに、私の友人はとっさに雄犬のおしっこのポーズをした。私だったら、膝を上げるかなぁ。

 

 →膝上げ、についてさらに脱線

 提膝=膝上げ、は股関節を起動させるもの。

 太ももを上げると股関節は起動しない。

(ここで起動と書いたのは、股関節の、屈曲・伸展、内転・外転、内旋・外旋という単体の動きではなく、これらが複合的に行われた時に起こる、くるくる回るような動き。骨盤の前傾と後傾をもたらすような回転。解剖学的にどう説明されるのかはよくわかりません。)

    ↑四人の『提膝』。が、『提膝』になっていないのが二人。その二人は”膝上げ”ではなく、”腿上げ”になっている。

  膝上げなのか、腿上げなのか、その違いは骨盤、腰を見れば分かる。

  

  膝上げをすると股関節が回転する(膝関節を操作しようとすると嫌でも股関節を使わざるを得ない。股関節を使おうとすると、骨盤や腰が動かざるを得ない)

  つまり、膝上げをすると連動して骨盤が後傾し腰は丸めになる。

  これに対し、腿上げをすると股関節は回転しない。連動が起こらないから骨盤も腰も影響を受けない。胴体は固まった箱のまま。

 

  馮老師の18の球の説明と同様、関節が回転することによって全身が連動する。太極拳はその関節の連動を使った動きを習得するためのもの。節節貫通、というのは関節の回転を前提としている。丹田はそれら関節の回転の親玉のような役割を果たすものだ。(腿上げでは丹田は無関係。膝上げには丹田の回転が使われる。上の左上の馮老師は丹田の回転を使っていると思われる。が、右上の老師の場合は、膝上げになっているものの腹筋を固めて膝を上げている感がある。腰が落ちて姿勢が崩れてしまっているのはそのためだろう。)

 

  最近ハムストリングスを使えるようになってきた生徒さんは、それに伴い上半身が緩んで動きが随分変わってきた。それは頑張ってハムストリングスを使うようにしたことで、関節の連動が起こるようになってきたからだろう。その話についてはまた書きます。

2022/6/11 <腹圧 心で体を内側にまとめる> 

 

  抱拳礼をすると腹圧が”キマった”感じがする。けど、とんがりコーンは”キマった”感じがしない、ただのギャグか子供の遊びのポーズのようにしか思えない・・・

  としたら、その違いは『腹圧』にある。

  ”キマった!”と感じる時は腹圧がかかっている。普通は無意識で気づかないけれども、注意してみれば気づくことができる。

  

  手と手を合わせるようなポーズは腹圧がかかりやすい。お祈りのポーズも何気で腹圧がかかっている。息をこらえてしまうと胸でとまってしまうが、静かに息を通せば腹に気が落ちて腹圧が高まる(丹田に気が溜まる)。初心者は胸の前で両手を合わせてタントウ功をすればいい、と師父が言うのはそのためだ。

  その手の圧を最大限に活用したのが、太極棒を使った捻る動作。これだと誰でもを腹圧がしっかりかかるのを実感できる。

 

  太極拳の動きの随所に両手が交差する瞬間があるが(eg.太極円を両手で描くと必ず両腕が交差する。)この両手が交差した状態を「十字手」というが、この「十字手」は「万能の手」と言われるそうだ。両手を掴まれた時もまずはその掴まれた両手を交差させる。それから手首を回せば簡単に相手の手を外すことができる(上歩七星)。まあ、なんて不思議、と思うのだが、よく見れば、手を交差させると丹田の力が簡単に使えるのが分かる。両手を並行に前に差し出すのと、交差させて前に差し出すのでは腹の力の使え具合が全く違う。それをうまく使っているのが太極拳の巧みなところ。

 

 話を戻すと、抱拳礼だと両手を合わせる分、丹田が作りやすい。丹田が作れると両脇も締まり腕がしっかりする。腕は胴体と一体化する。

 これに対し、とんがりコーンやウルトラマンのポーズ(先日載せたもの)では両手が合わさっていないためうまくやらないと腹圧が酢っこ抜け丹田が作れない。ちょっと間抜けなポーズになってしまう。

 

 ただ、とんがりコーンのときには、「眉間に意識を集める」、「真剣な面持ちで」、そして「とんがりコーン!」と言う時の声は低く、軍隊の号令のように短く速く発声させるよう腰の王子は指示している。そう、これは抱拳礼のような改まった気持ちでやるポーズなのだ。それによって意識せずとも腹圧が高まって腕と胴体の連携、ひいては全身の連携がとれるようになることを狙っている。心を一つに集める、これは腹圧を高める上でとても大事だ。心を一つに集めてシャキッとしなければどんなに形をうまく真似ても内側のエネルギーは生まれない。一瞬にして心が体を一つに纏める。心身統一、ってそういうことなのかな?と今更ながら思ったりします。

 

 太極拳はもともと武術だから、本質的にはシャキッと鋭い感じがある。ただ、放松とゆっくり動く練習を強調するがあまり、心まで流れてしまって舞踏のようになってしまう危険性がある。あるいは、表演を意識するがあまり心が外向きに出てしまい、内側で体を取り纏めるのを忘れてしまったりする。

 心が内側から体を一つにまとめる、という感じは祈り(お願い事ではありません!)の時に感じられるのではないかしら? 抱拳礼の時は一瞬心は内側に入り体をそちらへ引き込むような感覚がある。(まさか抱拳礼の時にお願い事をする人はいないはず)この時、エネルギーは内側に戻り、丹田に気が溜まる(腹圧が高まる)。

 

 腹圧を高めるとか丹田を作る、ということを分析して練習する方法もあるけれど、本来はそんな風にできた時にその感覚を覚えて蓄積していく、それが王道。必要なのは、「そう、今がそうなっている!」と気づくこと、もしくは気づかせてくれる指導者なのかもしれない。

 

 

 

2022/6/7

 

  前回のとんがりコーンのポーズ。うまく感覚がとれない生徒さんには抱拳礼をやってもらった。

 ←カンフーでおなじみのこのポーズをとれば脇下に力が入るのが分かるはず。

脇下が広がる、という感じとも言える。

これが腕と胴体が繋がっている、という印。

 

 前回のウルトラマンのようなポーズでは、脇下がスカスカでまぬけな感じがする。肩甲骨が上がってしまっている。こうなると腕は胴体から分離し、足が地につく感じが失われる。

 

 丹田、という感覚から言えば、抱拳礼をすると瞬間的に気が丹田に集まる感じがするだろう。ウルトラマンのポーズでは丹田が作れない。肩甲骨が上がって気が上がってしまうからだ。沈肩は丹田形成には不可欠だと分かる。

 (注:抱拳礼で腹の丹田が形成されるのは太極拳や内家拳、外家拳系の人なら胸に気が集まる感じがするかもしれない。下丹田を腹、中丹田を胸、上丹田を眉間にとる流派は圧倒的に多い。いずれにしろ、礼や祈りは少なくとも上丹田と胸の丹田を作動させる。腕の付け根は胸だから、胸の丹田が起動すれば腕は胴体の一部となる。)

 

 腰の王子のとんがりコーンのポーズは「真剣な面持ちで」「意識を眉間に集める」ということにより、無意識的に丹田を形成し腕を胴体と一体化させることを狙っている。実際、抱拳礼で丹田に気が集まる感じがあるのは、”礼”という意識、上丹田への無意識的な集中が大きな役割を担っている。馮老師によれば、上丹田は上肢を操る要だ。が、上丹田の”意”を息気(エネルギー)として感じるには息が不可欠で、それは胸や腋のあたりに感じられるようになる。

 

 なお、とんがりコーンをしたあとに、「あ〜、スッと下ろして・・・」と続けば、確実に気は下丹田まで下りることになる。気沈丹田、の完成だ。

 

 腕と胴体の一体感は太極拳だけに必要なのではなく、日常生活においてとても大事だ。胴体を固めて腕だけで作業をしていると腕や手だけでなく固めた腰側にも支障が出てくる。腕と手を胴体とつなげて(肩甲骨や肋骨、胸とつなげて)正しく使う、という練習は日常生活で行える。それが癖になってしまえば、太極拳でも正しくできてしまう。套路の動きで腕と胴体の繋がりを会得するのは非常に難しいだろう・・・

 

 正しい腕の使い方のメルクマールは脇下の広がり、ハリだ。抱拳礼でその感覚を得られたら、とんがりコーンで試してみる。それでできたら、その脇下の張りを維持したまま、胸の前でボールを抱えるようなタントウ功に移動してみる。

   

 ↓脇下の張りを失って腕の力で腕をあげてしまっているのはどの画像か?

 結局、脇下の張りを失うことは丹田を失うことに等しい。

 

 

 通常の套路でいきなり調整するのは難しい。

←https://youtu.be/-ROY_4BCXv0

 

 中国のチャンピオンといっても、通常は内功や実戦を経ずに套路だけを練習しているので気や力の感覚が育たない。腕が胴体と分離していることに無自覚なまま。

 左のような形ではすぐに腕をとられてしまし、拳にも威力がない(打たれても痛くない)。

 腕が繋がっていないということは胴体の塊が下半身に乗っかってしまって下半身が重くなる。股関節や膝に負担がかかる。

このような選手は胴体に対して太ももが異常に太く硬くなる。故障につながる危険あり。腕を胴体と一体化させることを学ぶと中正がとれ四肢の連動も可能になる。故障の心配もなくなる。そういう意味でタントウ功などで繋がりを取得するのはとても大事だ。

 2022/6/3

 

   膝を痛めている生徒さん。体調もすぐれない。そこで座ってできる腰の王子の立腰体操を少し教えてみた。立腰体操は学べば学ぶほど深〜い知恵が詰まっているのが分かる。太極拳で学んでいるものを別のアプローチから教えてくれる。私にとっては目からウロコの宝庫だ。

 今日やってもらったポーズの中にまた発見があった。

 これまでも他の生徒さんたちと何度かやってみた「とんがりコーン」のポーズ。(https://youtu.be/6_niwIZwXfM    https://youtu.be/iY9jSL6NQSs

 これを「大腿骨はだいたいこのへん体操』の後に行う。(https://youtu.be/RYFOfcAYCok)

 

 子供ウケするポーズだというのは分かる気がする。ウルトラマンか何かで使いそうなポーズだ。

 

と、今日の生徒さんのこのポーズ、何度やっても「とんがっていない」。裾野が広がりすぎている。そういえば他の生徒さんたちも腕が広がっていて王子のポーズのような収束感がなかった。どうしてだろう? とよくよく見てみると、肘がない! 肘がない、というのは語弊がある。肘が分かっていない、意識できていない、というのが正しい。

  そんな腕ではその先の体操が100%活かされない・・・

 

 ウルトラマンに似たポーズがなかっただろうか? と探したらウルトラマンセブンにちょっと似ているのがあった。王子のポーズと比較してみると違いがはっきり。

 

腹 ウルトラマンの腕の上げ方は武術では有り得ないもの。スキだらけだ。もし推手でこのように肘を相手に持ち上げられたらもう逃げられない。一方、王子の肘を持ち上げてもすぐに躱されてしまう(化勁されてしまう)。スキのない姿勢だ。

 

 パッと見てそんな感じは分かるかもしれない。

 それを分析的に言えば、ウルトラマンは肘、上腕が使えていない=肩甲骨が使えていない=体幹が使えていない。肩甲骨が上がってしまって気が上がり、丹田に気が沈んでいない=足に根付いていない。

 一方王子は、肘、上腕が小手先(前腕プラス手)を支えている=肩甲骨・肋骨が支えになっている=腰・腹が支え=下半身が根付いている。つまり、足から手までが繋がっている。

 

 今日の生徒さんにこのとんがりコーンの正しい腕を教えたら、直ちにこれが腹やら内腿やら足裏、つまり全身に連動してしまった。「これはすごい!」と唸り声をあげたのには私もびっくり。「今日のレッスンはこのポーズを教わっただけでも十分かも」とまで言われて私の方がたじろいた・・・

 そう言われてやってみると確かにポーズが決まれば全身がつながる。いや、全身が繋がったから、キマった!と思うのか?

 生徒さんにしてみれば、これまでタントウ功をしても得られなかったものが思いもよらないポーズで得られたのがとても嬉しいようだった。実際、このとんがりコーンのポーズは上丹田に意識を集めて上腕、肩甲骨の連鎖から腹に気を沈ませて肚腰、下半身をどっしりさせる作用がある。

 

 レッスンの後で冒頭に引用したコマネチスリスリのyoutube動画を見たら、とんがりコーンの時の指の付け方、両手をおでこからどのくらい離すのかを具体的に細かく指示していました。その指示通りやればキマる、かな? 大事なのは腕を上げる時に王子をよく見てその真似をすることかな(表情も含めて)。お手本の動きを真似するだけでなく、その雰囲気、声色も真似するのが大事。雰囲気は気、声色は息、これを真似できると体も似たような動きをしやすくなります。

 

 とんがりコーン、では、「とんがりコーン」と素早く真剣モードで言って、サッと両手を眉間に集める。つまり、上丹田に急速に意識と手を集めることで勝手に肩甲骨やら腹(丹田)やらが作動する。ゆっくりたらたらやると腹に力は入らず肩も上がってしまう→上腕や肘も使えない。

 肩が下がらないと腹に力が出ない(沈肩→気沈丹田)と思っているけれども、意識を使うと、意識によって真っ先に気沈丹田が起こり、それによって肩も下がり、そこから連鎖反応が起こる、というのもあるのだという発見あり。

 

2022/5/30 <背骨の前側 腹圧と丹田>

 

 背骨の前か後ろか、の話で思い出した。

 

 

私は大学生の頃まで寝っ転がって本を読んだりノートを書いていたことがあった。

左のイラストのような体勢だ。

この姿勢でテレビを見ていることもあった。私にとってはごく普通の姿勢。

 

娘が受験勉強を始めた頃、椅子にずっと座っていて腰が痛いと言い始めた時のこと。私は、それなら、寝っ転がって勉強すれば?と気軽に答えた。うつ伏せになると腹圧も高まるし腰への負担が減るだろうし、と思ったのだが、娘は、そんな体勢になったらもっと腰が痛くなる、と即答。

えっ?と驚いて、ちょっとだけその姿勢をとってもらったら、「無理無理、腰がヤバイ。」、とギブアップ。その時初めて”反る”には腹圧が必要なことを知ったのでした。

 

 

例えば左のようなポーズ(コブラのポーズ)。

このように”反る”動作をする時に、

 

お腹側を伸ばすのか?

それとも

背中側を縮めて引き上げるのか?

 

それが大問題。

通常それは無意識に行われます。

 

 

 私たちが赤ちゃんの頃は誰もがこの反り姿勢をしていた。

 この時私たちはどこをどう操作していたのか?

 

 赤ちゃんは背中の筋肉を収縮させるようなことはまだできない。

 赤ちゃんは腹に力を入れて伸ばしているだけだ。

 つまり、腹圧で腹を伸ばしている。

 

  大人になって同じような姿勢を作ろうとした時、無意識で背中に力を入れたとしたら腹圧が減っている証拠。背中(腰)に力を入れて反らしたら腰が詰まって腰が痛くなりそうだ。

 

 反る時は脊椎の腹側(緑のライン)を上方に伸ばすようにする。背中側のオレンジのラインを使って背中を外らせようとすると椎間板が潰れて腰に問題が起こる原因になる。

 

 

 

 逆に、腰のカーブをなくすには、これまたやはり、腹側の緑のラインを、今度は下方に伸ばす。これが通常立つ時の姿勢だ。緑ラインを腹圧で押しながら下向きに伸ばしていくと足に気が降りてしっかりするし、命門も開いて上半身と下半身が連結する。

 

 

  腹圧で背骨を操作する、というイメージ図。

 

  太極拳だとこの腹圧が丹田にあたる。

 

 

  太極拳では直接背骨を操作することはない。丹田を使って背骨が押される。つまり腹圧が第一だ。

 

 お尻を入れるのも、お尻(仙骨)を動かすのではなく、丹田(腹圧)によって仙骨が動く。

 (昨日のマイケルジャクソン、ポー!だと腹圧で仙骨の位置が変わるのが分かるはず。仙骨をダイレクトに動かすと腹圧が減って元の木阿弥。)

 

 背骨の操作は腹側から、というのは、取りも直さず、丹田第一、ということでした。丹田(腹圧)なしに背骨の位置を変えても体が硬直するだけ。 注意が必要です。

2022/5/29 <骨盤を立てる マイケルジャクソン、ポー!と敛臀>

  忘れないうちにメモ。

 太極拳を習った人に多い勘違いの一つ。
 「お尻(仙骨)は入れなくて良いのですか〜?」
 いわゆる『敛臀』の要領です。
 『敛臀』はあくまでも会陰を引き上げて骨盤底(胴体の底)の面を水平にするもの。

 決してお尻の肉を締めるものではありません。
 お尻の肉がキュッと締まって三角形のお尻になってしまったら歩くのも走るのも大変。前モモ、膝に直撃です。

 要は『敛臀』は骨盤をニュートラルにするための要領。骨盤、仙骨を立てる、というのがニュートラルです。骨盤を寝かせるのが『敛臀』ではありません。

 

 ↓腰の王子の下の動画前半、 ”マイケルジャクソン、ポー!”体操の説明が参考になります。

  (仙骨は後ろ(背中側)から入れるのではなくて、内側から引っ張って入れる感じですね。命門を開けるのも同様です。結局、丹田を使って脊椎を操作する、ということです。マイケルジャクソン、ポー!でお尻が入ると下腹が張るけれど、ただ後ろからお尻を押してお尻を入れるとお腹が凹む。前者ではお尻は割れるが、後者ではお尻がくっつしてしぼんでしまう。どっしり座れるのはどちらか、違いを確認してください。)


 

  

  仙骨は後ろ(背中側)から入れるのではなくて、内側から引っ張って入れる感じですね。命門を開けるのも同様です。

  結局、丹田を使って脊椎を操作する、ということです。

  マイケルジャクソン、ポー!でお尻が入ると下腹が張るけれど、ただ後ろからお尻を押してお尻を入れるとお腹が凹む。前者ではお尻は割れるが、後者ではお尻がくっつしてしぼんでしまう。どっしり座れるのはどちらか、違いを確認してください。

 

  下の図に違いを示してみました。背骨は前から推す。すなわち、丹田、腹圧で操作します。背筋では押しません(硬くなります)。また、背骨で立つことはありません。背骨の前側に中心軸が通るようになります。

  意識を背中側から内側に向けようとした時点で意識は外に出てしまう。

  意識は内側から外向きに使う。そうしないと気が通せないし感覚もとれない。

  当たり前といえば当たり前なのだけど、自身の経験からすると無意識で後ろ側に意識を回していることがしばしばあります。これは要注意です。

 

2022/5/24 <スネを見る?>

 

 スネを見る? 本当にスネを見ているわけではないにしても目線は足元まで包み込む。

目は意。目が達することは意が達すること。

 頭を天頂に掲げていなければならない、と思い込みすぎて下半身に目線が及ばなくなる。上半身が箱のように固まってしまうのはあまりにも”型”に気を取られすぎているからだろう。

 

 実際、活きた太極拳の動きを見ると目の動きも活きているのが分かる。頭頂を失わずに足元まで目線を落とせるのは体幹(肋骨)が柔らかいから。

 これまで気づいていませんでした・・・

 「イチローの肩入れストレッチ、は肩入れじゃない。スネを見ている」と言う、腰の王子の「スネはまっすぐでスネ〜 体操」で気づいた事実。(肩を動かさず)スネを見ようとしたら嫌でも肋骨が動かなきゃならない。太極拳の「含胸」は胸郭を動かすための要領だったのだ。胸郭が柔らかく動けば、頂勁を失わずに(頭頂を失わずに)目線を広範囲に広げることができる。胸郭が動けばしゃがむのも楽々だ。

 

<以下、検証>

 

←大鵬の土俵入り

下を向いてる

 

 

 

 

 

↓冒頭の「金刚捣推」の一時停止画像

 

 

左は師父の動き。

やはり下を見ている。

 

上の馮老師は目が手よりも先を進んでいる。眼法が徹底している。

 

上の女性たちは習った通り(セオリー通り)なのだろうが、胴体が固まってしまって股座が開かず前太もも、膝に乗ってしまっている。太極拳の大会でいい評価を受けたとしても臨機応変な動きが必要な実践、日常生活での動作には発展しない。

 

 

一度、しっかり下を向いてしゃがんでみて、そのしゃがみやすさが体感できたら、徐々に頭を上げていってそれでも同じようにしゃがむにはどこをどうしなければならないのか、それに気づけば練習の仕方が変わるはず。

 

2022/5/20

 

  最近は腰の王子の動画を見たりセミナーを受けて見たり。体の動きについての研究を極めている王子の話はストンと太極拳の動きに落とし込める。師父が言っていたことはこういうことだったのか、と、王子の説明で分かることもしばしばだ。

 

  例えば今日見たのは肋骨で手を使うお話。

 拭き掃除を手だけでやればかさかさ、肩甲骨からすれば少し摩擦が出る。が、肋骨から圧をかければ・・・

  これは太極拳で手が重くなる原理だ。私くらいのレベルでも、手を合わせるとなぜこんなに重いのか、密着するのか、と男性生徒さんからも不思議がられる。

 実際、推手で手を合わせた時(搭手)、相手の手(腕)に重さがあると、最初からもう敵わない、と分かってしまう。

 手が重くてベタ〜っとした感触になるのは、「放松して気を下に降ろしているから。」と説明したりするけれども、もっとフィジカルな言い方をすれば、より体幹部に近い部位の筋肉まで総動員しているから、ということなのかもしれない。

 

 上の王子の動画ではバイオリンを例に出しているが、ピアノでも同じだろう。腕で弾いている人は一般的、肩甲骨を使っていれば上手な方、もし肋骨まで使えていたらとても微妙な音が出せて、かつ、指の器用さがさらに増すだろう。

 

 太極拳だと筋肉の話はせずに、その内側にある内気、もしくは経絡やツボで説明をする。

肋骨が使える、というのは、下部肋骨なら中丹田、胸より上の肋骨なら「含胸」をきちんとすれば使えるようになる。肋骨を動かす意識がなくとも、内側の気を使うことで肋骨が動いてしまう。

 逆に言えば、「含胸」ができないと上部肋骨は動かないし、中丹田の気を鳩尾まで広げられないと下部肋骨は動かない。

 けど、王子のメソッドでは、肋骨を動かそうとするうちにいつの間にか「含胸」や中丹田の気を使えるようになるのかもしれない。

 

 肩甲骨を動かす時も、肩甲骨の裏側(肩甲骨と肋骨の隙間)から動かす必要がある。同様に、肋骨を動かすには、肋骨よりも内側に意識を置いて肋骨を動かす必要がある。動かせない時は、その”内側”に意識をとれないからだ。が、頑張って動かそうとしているうちに内側に神経が伸びて動かせるようになったりする。それにも訓練が必要だ。

 (私は耳が動かせないけど、耳が動かせる人は耳の内側から耳を動かすような通路を持っているはず。私が耳を動かそうとすると意識が耳の周りを巡ってしまい耳の内側に入り込めない。これに対して、人差し指を動かそうとするとすぐに人差し指の内側に意識が入って内側から人差し指を動かすことができる。)

 

 全身が一つの気で繋がってしまっていたら、手を動かそうとしたら肋骨が動いてしまってるだろう・・・

2022/5/16 <マスクの中を涼しく保つ呼吸>

  

   メモが追いつかない。

 忘れないうちに一つ。息の話。

 この前、ハミングとリップロールのことを書いたけれども、その延長線上にある話。

 

 暑くなってくるとマスクがやっかいだ。

 パリの夏は湿気が低いので何も感じずに過ごしていたが、こっちは湿気が多くてマスクの中がこもる。4月に入ってからマスクに覆われた鼻の周辺の皮膚がムレて赤くなってしまった。人がいない場所ではマスクをズラすことにした。

 ムレない夏用のマスクをいろいろ購入して試しているが、ちゃんとウィルスを遮断するようなマスクはやはり暑い。スースーするマスクは見せかけマスクでマスクの意味はない・・・

 

 と、この前、マスクをつけて道を歩きながらリップロールに挑戦していたが、マスクをつけているとうまくできない。よけいマスクの中が湿っぽくなってしまった。どうしたらマスクの中を涼しく保てるのかしら? と、マスクの中が暑くならないように気をつけて息をしてみた。

 「鼻から吸って鼻から出せばよいのでは?」

 鼻から吸うのは簡単。

 問題は鼻から出す時。

 マスクをしていると、鼻から息を出す、というのが普段よりずっと厳密になる。口の息が混ざるとマスクの中の温度が上がってしまう。

 鼻だけで吐くにはかなり注意深く息を細く長く保たなければならない。丹田(腹)の溜めがかなり必要・・・・ん?これは丹田呼吸? 

 ほとんど息をしていないかのような息になっている。

 鼻から吸って、鼻から吐こうとすると、吸いながら吐いているよう。逆に、鼻から吸う時も吐きながらすっているよう。

 やはり丹田呼吸だ。

 丹田呼吸の時は、鼻だけの呼吸になっているのだと初めて気づいたのでした。

 

 それからマスクを外して、鼻から吸って鼻から吐いたら、鼻から吐いた息の中に喉からの息が混ざってしまっているのが分かってしまった。喉からの息が鼻から出ると丹田は起動しない。喉からの息を混ぜずに、ただ鼻からだけの涼しい気を鼻から出そうとするといやでも丹田が必要になる。

 なんて面白い!

 気配を消す時の呼吸だ。

 感覚的には、眉間から股間までの長い距離を息が入ったり来たりするようだ。

 

 実際に体の中で何が起こっているのか厳密なことは分からないが、きっと横隔膜と骨盤底筋が動くのだろう。

 この息をすると、頭がはっきりして体がスッキリする。

 そんなことなら、マスクをつけた時はこの息をすればいいじゃん、と思うのだが、急いでいたり犬を連れていたりするとなかなか落ち着いて鼻から涼しい息を出すことができない。やはり、落ち着いて気を鎮める必要があります。

 

 マスクの中を涼しく保つような呼吸を試してみると普段気づかないことに気づくかも。オススメです。

  

2022/5/12 <胸から腕を使う>

 

   腕の付け根は胸鎖関節、あるいは胸骨。

 

 練習では、まず肘が使えるように練習する。肘が落ちないようにする、ということだ。師父は肘の”ポン”と表現する。肘を張ったように使う感じだ。肘が落ちてしまうと二の腕が使えない。肩も使えない。腕が胴体から離れてしまう。『墜肘』というのはその張った肘をほんの少し下向きに墜落させる、ということだ。前提として肘が張れなければならない。

 

 肘が起動すれば自ずから肩が起動する。

 腕を胸から使う、というのは、その先の話だ。

 師父は何度か私に両手を広げさせて、手と胸の関係を教えてくれた。

(←https://hochi.news/articles/20180723-OHT1T50293.html)

私の大好きな池江璃花子選手が両手を広げた姿。

そこに三本のラインを引きました。

喉のラインが親指、その下が中指、一番下のラインが小指ライン。

 

 任脈上のツボで言えば、親指は天突、中指は華蓋、小指はだん中。(この3つのツボはよく使う大事なツボな。指もそれらのツボと対応させて覚えると簡単。)

 

 こんな風にならってきたことが腰の王子の動画でさらに理論的に説明されていた(といっても冗談いっぱいだが)。↓の動画

 

 いつものことだが、腰の王子の説明を聞くと、師父が教えてくれたこと、しゃべっていたことがよく理解できる。ああ、そういうことだったのか〜、とその時にわからなかったこと、テキトーに聞いていたこと、見ていたことが、はっきりくっきりとするのだ。

 

 最近ブログの整理をして見たこの画像もその例。胸から腕を回している馮老師と肩から回している弟子との違い。これは体幹力の違いとしても現れてくる。

 一般的な太極拳の老師は肩から腕を使っているのが今の太極拳界の現状。套路だけ練習していても胸から腕を使うようにはならないだろう。内功や推手(形式的でない本当に推し合う推手)の練習が必要だ。

 

  胸から腕を使うのは少し前に紹介した護身術でも同じだ。

  そして日常生活でもその癖をつけるべき・・・と私も手を使う時に意識的に行うことを心がけるようにした次第。

  実際、胸から腕を使っている人の仕草は自然で美しい。そんな動きに私は惹きつけられる。

  

  ホロビッツの姿勢は太極拳の大師のようだと昔から思っていた。虚霊頂勁で身体が放松している。お尻がどっしり。そして腕は真ん中からついている・・・肩がない。胸からの動きだ。

  ランランは頭が前に出て猫背気味。お尻のどっしり感がない。肘が使えないのもそのためかも。が、肘から先が非常に器用だ。中村紘子氏は今見ると肩が上がって腕の筋肉で弾いているよう。ピアニストも胸から弾ける人はそんなに数は多くないようだ。

 

  そして仕草といえばお茶。気になって裏千家の前家元、千玄室のお点前を見たら、あ〜、ドキッとする動きだ。これも一般的な師範の動きと比べると差が歴然とする。違いは、片や胸から、片や肩から。動きの柔らかさが全く違う。

  上の千玄室の柄杓を置く手の動きが感動的で、普通の人はどうやっているのだろう?と見たのが右側の女師範の動き。千玄室が柄杓を収める時、腕は動いても上体は立ったままだが、女師範の動きを見ると、腕と一緒に上体がお辞儀している。千玄室の動きは胸の内側の動きだ。

  お茶を点てる時も、千玄室のブルブルは胸、体の内側から始まっている。だから指先にしっかりと力がある。女師範は腕だけで茶筅を回しているから手首が硬直している。飲んでみたいのはやはり元家元の点てたお茶かなぁ。掻き回しているのではなく、練ってるよう・・・ 片や、心から、片や、丁寧に・・・丁寧にやっても必ずしも心からやっているわけではない、というのが面白い。

 

  これらの画像を見ていくと、胸から腕にするにも、やはり正しい姿勢、上虚下実、沈肩や含胸が必要。ただ、私たちが本当に心を込めて何かを捧げもつ時、知らず知らずにそのような仕草になっているように思うのだ。心を込めて歯ブラシを持って、心をこめてブラッシングしたら、きっと胸から使うことができる、のでは?試してみよう♪ 

2022/5/10 <ハミングとリップロール>

 

  頭部の”虚”の感覚は、「頭が上から紐で吊られているように」といったイメージだけでは得られないだろう。内側からのアプローチ=息が必要だ。

  私は昔「頂勁」の感覚を得るために、サッカーのヘディングをイメージして内気を操作してみたことがあったが、それでは頭に血が上ってしまって決して”虚”にはならなかった。

『虚霊頂勁』・・・虚(そして霊:機敏に動く様)であってしかも頭頂まで勁が達している、とはどのような状態なのだろう?

 

 本当は、タントウ功や套路を練習している時にそうなってしまっていた、というのが正道なのだろうが、首から上の要領については声楽家たちがものすごく研究をしている。彼らの知恵、テクニックを借りるのも有益だと思う。

 

 実際、私はある一本の動画を見て、一連の謎が解けた。

 なぜ腹の丹田を上丹田よりも先に作る必要があるのか、なぜ上丹田(頭部)には軽く涼しい気が(息)が入るのか、端的に言えば、腹と頭にある気の関係、だ。

 そんな理屈に関心がなくても、一度下の動画を見ながらエクササイズをしてみると、息の扱いが今よりもレベルアップするはずだ。

 

 

 力を抜いて〜リラックス〜

 

 鼻から吸って鼻から出す〜

 鼻から吸って口から出す〜 決して力まない

 それから、その調子で声を出す〜 ハミング〜 鼻を響かせる〜

 そして、リップロール、唇を合わせてブルブルブルブル〜〜〜

 

 あれっ?ブルブルができない? 子供の時あんなに簡単にやっていたのに。

 と、最初の1回目、私は焦ったのでした。

 それから動画を見ながら先生の動きを真似る・・・この動画の先生は寛容そう。ゆったりとしたテンポも好きだ・・・

  なんとなくできるようになって一安心。

 

 それからしばらくは道を歩いている時にリップロールを練習したのでした。ちょうどパリがコロナでロックダウンの頃。マスクをつけてリップロールはし辛い。けど、しばらくは気づいたらやっていました。

 

 気づくかしら? リップロールをするには、腹に息を押し込まなければならない。腹に息を押し込むのと同時に軽い気が唇の方に上がる。へぇ〜っと面白くて、何度も確かめていました。これが、気を下に一寸下げると三尺上がる、とかいうちょっと中国的な誇張の入った表現の示唆している現象の一端に違いないと。

 

 ともあれ、ハミングとリップロールがオススメです。特にリップロール。リップロールができれば、涼しい息、頭の中の空間、そして頭の位置も分かってしまう。目立って奥から開いて瞬きなくなります。上丹田は覚醒の場だ。。。

 

 

 

 

 

2022/5/7 <立ち方から頭の「虚」へ>

 

 「正しい立ち方とはどういう感じですか?」とある生徒さんが聞いてきた。なんと壮大な質問! 簡単に答えたら、自然な立ち方、だろうけど、その”自然な立ち方”がどんなものかはなかなか掴めない。自然、ニュートラル、になるために日々努力するのがこの練習。。。

 

 と、答えに詰まってしまったら、「バレエダンサーの立ち方は正しいですか?」と彼女が質問を変えてきた。一般的に見て、舞台上で見せるバレエダンサーの立ち方は”自然”だとは言えない。骨や筋肉でしっかり立っていて硬い感じがする。あれがお手本ではないだろう・・ なら、子供の立ち方を見たらよいのでは? 街にはなかなかお手本になるような立ち姿の人はいない。身近なお手本は子供達だ。それも小学校に入る前あたり。幼稚園生くらいが外れが少ない。その頃の子供達が列をなして歩いていると私はず〜っと見入ってしまう。体のことが全く気になっていない、そんな時代。しっかり立っているけれど決して踏ん張らず、骨が分からないくらい柔らかい。

 そして私が見入ってしまうのはあの首筋から後頭部にかけてのライン。頭がクルンと前回転してうなじがスッと伸びている。(←左の画像参照 はhttps://renbi.com/blog/entry-11392)

 

 首と背中の境目がない。というか、背中からすっとそのまま首になっている様。これが大人にはない。

 

 以前、劉師父に対面した私の生徒さんが、師父の頭のつき方が子供のそれのようだった、とコメントしていたが、確かに、師父の背中から頭にかけてのラインは子供に似ている。肩こりや首こりと無縁、というのも頷ける。

 

 

 

左の画像はイチローが高校球児に教えている場面だが、イチローのスッと伸びた立ち方を見てから球児達と見ると、その差が歴然となる。

 

  自然にスッと立てていると、頭(頭蓋骨の上半分:脳の部分)がフワッと乗っているような感じになる。これが「虚霊頂勁」の「虚」の感じだ。

  脳の部分は涼しく開いた感じになるのがよい。

  逆に、脳の部分が熱く詰まった感じになると、血管が詰まったり切れたりしってしまうから要注意だ。

 

  上の上段の画像はスッと”伸びて”立っている例。これに対し下段の画像は、普通に見かける大人の真っ直ぐ。下に落ちている(たるんでいる)ために、上段の画像のような上下の伸び(引っ張り合い)がない。足が地面を踏んづけてしまうため、気が地下へと抜け切らない。すると頭も「実」になる。頭が「虚」になるには、気を下に流してしまう必要がある。

 

  トランポリンで飛んで跳ね返る時には頭に衝撃はないと思うが、もし、コンクリートの床で飛んで跳ね返ろうとすると頭に多少衝撃が来るだろう。

 頭が「虚」になるには、体のクッション=身体中の関節のクッションが必要だ。そのために脱力の練習をする。股関節やひざ関節だけを緩めても脱力にはならない。関節数が多いのは胴体(80数個とか)。全てを満遍なく脱力できると体のクッションができるのだろう・・・

 

  立ち姿全てを調整するには随分時間と努力が必要・・・ということで、立ち姿について質問をしてきた生徒さんが、「仕事をして頭がいつも重いのですが、それをどうにかする方法はありますか?」と質問を変えてきた。脳の中に涼しい息を入れると良いのでは? とその後は頭部に特化した話になりました。続きはまた後日。

2022/5/3 <肩関節は脱臼しやすい>

 

 肩に関係する関節を一つ一つ見ていくのは面白いけれど生徒さんたちに説明するとややこしくなる。

 要は、”ちゃんと使える”ようになればいいのだから・・・と思い出したのが、肩関節は非常に脱臼しやすい、という事実。

 

←https://www.jnj.co.jp/jjmkk/general/dislocationより

 

小さなお皿(肩甲骨の関節窩)に大きな球(上腕の関節球)。

腕を思いっきり引っ張られたらすぐに腕が抜けそうな構造だ。

股関節のハマり具合とは全く違う・・・

 

そう、だから、腕を使う時の鉄則は、”外れないように使う”ということ。

引っ張られてもそう簡単に外れないような状態にしておく。これが「沈肩」だ。

 

もしこんな風に両手を引っ張られたら? それも全力で。

 

両腕は引っ張られるにつれ肩の高さへと上がっていくだろう。

そしてもし両腕が両肩の高さで水平になってしまったら・・・ほとんど八つ裂き状態。逃げられなくなる。

 

だから私たちは、両腕が高く上がる前に胸をかがめて腕を胸の位置に落とす。胸の奥から腕にするような感じだ。こうすると腕がそう簡単には外れなくなるだろう・・ そう考えていなくてもきっとそのようにする。それは反射的な動きだ。

 

それは子供のイヤイヤの時の腕に似ている。子供のイヤイヤは胸から腕になっている。

 

https://www.jet-kravmaga.com/20180710-3/

 

そしてこの体勢も然り。

ここんなふうに引っ張られて、こんな風に逃げようとしたら、腰を落としている分相手に負荷を与えられるが、肩の脱臼かそのまま引き摺られるか。引っ張られた自分は何もできない。

 

このような時はどのように外すのか?

まずは相手に逆らわず身体を相手の方に近づけて肘を折りたたむのだ。この画像の出所である護身術のサイトに説明されているとおりだ。

 

ちなみに、そのような外し技は混元太極拳24式の第3式懒扎衣の中に入っている。

←この右手の逆チャンスーから順チャンスーになるところで肘を相手の腕に入れ込む。

その時大事なのが、自分の体を相手の懐に入れ込むこと。恐れずに自分の体を相手に密着させていくことだ。

肘(上腕)には自分の体がもれなくついてくる、それを体にインプットさせておかないと技はかからない。

相手に体を近づけることで腋が使えて肘技が決まる。相手から体を遠ざければ腕を引っ張られて脱臼しやすい状態になる。(この技は実地で教わらないと分からないかなぁ。私は何度も師父にやってもらってそれでも自分ではできなかったが、ある時、自分の生徒さんに腕を引っ張ってもらったらなんなくできてしまった。できる時は頭を使わずにできるようになってしまうのかも。)

 

 ともあれ、常に”イヤイヤ”の腕(胸から腕が生えている)であれば、引っ張られたら体が寄って行ってしまうだろう。技をかけるのはそれからだ。

 解剖学的には胸鎖関節から腕が始まる。感覚的には胸。というのは、胸鎖関節を使うにしても含胸が必要だから。「含胸」は腕を胸にいれこみ脱臼させないようにするような役割がある。

2022/4/28 <肩の関節>

 

 生徒さんに教えることは私にとっての課題であるとがままある。

 今週は”腋”。

 腋を深くしないと腕が胴体(肩甲骨)と連動しない。

 腕をしっかり胴体と連結させる、というのは思った以上に難しい。ほとんどの人は”外して”使っている。腕をしっかり”はめこんで”使っているのは何かしらの訓練をしてきた人たちだ。普通の人はただぶらぶらと使っている。

 

 腕を胴体とくっつける(連動させる)ためのレッスンはこれまでにもやってきたが、最近は太極棒を使ったレッスンが多くなり、その中でまた別の視点が生まれた。それが”腋”。

 腋の深く深いところ、「極泉穴」を探ってそこから腕を使う。

 どんな風に腕を使ってもその腋奥深くを外さない。腋奥がはキュッと軽く切れ上がっている。腋の皮膚がだらんと下がってしまったら腕は外れてる。

 この腋の使い方は、体温計の”正しい”測り方の時と同じ(はず)。

https://dot.asahi.com/print_image/index.html?photo=2020111900050_1&image=1

 

 左の画像のように、「腋のくぼみの中央を”押し上げる”ように」挟む。

腋を閉じた後、手のひらを上に向けると腋が締まる。

この”締まった”腋の感じが腕が胴体としっかり密着している証拠。この”締まり”が消えると胴体から腕が離れてしまう。

 

もちろん、肘を伸ばしていくと腋の締まり感は減っていくが、それでも腋の奥に何かは残っていないといけない。それは腋の奥があたかも丹田に引っ張られているような感じ。どんなに腕を広げても腋は内側から丹田に引っ張られ続けている。これがひいては丹田と手の引っ張り合い、もしくは、開の中に合あり、ということになる。

 

 この腋の感覚は太極棒で周天の練習をする時に注意してやれば案外簡単に得られるようだ。

←左の馮老師の動きの中で腋の高さに入るところがポイント。

  

 腋を深くして腕と胴体を一体化させるその動きはちょうどバスケットボールのパスの時の身体の使い方に似ているようだ。

  

  バスケットボールは大きくて重いから、ちゃんと胸に引きつけて腋と胸を使ってボールを飛ばさなきゃならない。腕だけでパスするとコントロールが効かない・・・小学生時代の感覚は今でも健在!

馮老師の上の動きでは左の画像のような位置の時にバスケのパスのように腋奥が起動している。多少指が上向きになって脇が広がっている。

そして、馮老師の目と鼻、口に注目。

→息を胸に通しているのが分かる。

これが「含胸」だ。

つまり、バスケのパス、腕と胴体(肩甲骨)を密着させるにも、「含胸」が必要だということ。

「含胸」をするには、喉の天突穴から胸骨上のツボを引き入れる必要があるが、棒を使うと素手より数倍やりやすい。胸骨の可動域をつける練習にもなる。

 

 脇が落ちてしまうと腕が胴体から分離して、上半身と下半身がバラバラになる。

 

←https://youtu.be/AfTjn5_nqDM

陳項老師と生徒達。

 

下に屈んだ時の姿が老師と生徒達とは全く違う。 老師はどれだけ腕が下に下がっても胴体と腕をつないでいる=肩関節をフル活用している。

 

  上の3人は肩周辺の関節の使い方が異なるがためにしゃがみ方も異なっている。

 

  肩の関節は少なくとも4つある・・・

  

https://yogajournal.jp/photo/4494/33876

 

の画像に少し手を加えました。

 

まず絶対に押さえなければならないのが、①の第一肩関節(肩甲骨と上腕骨からなる関節)

←も少しシンプルな図

https://www.mcdavid.co.jp/sportmed_anatomy/shoulder/

 

図を見て気づいたはず。

そう、肩関節は腋からアプローチするのが正解!

体温計を突き刺す位置に肩関節が存在した!!

と図を見て感動したのでした。

 

だから、肩はまず”腋”。と思って正解。

ここを外すとその他の関節(②、③)も分からない。

ただ、胸にある、胸鎖関節(④)は、①を意識するための前提となるだろう・・・。①が分かるなら④は分かる。①が分からないなら④を確かめてみる必要がある。

 

 太極棒を使ったり、バスケットボールのパスで腋(第一肩関節)が意識しやすいのは、棒やボールが胸(華蓋穴あたり)に位置して含胸をするために胸鎖関節が作動しやすいからだろう・・・

 これら4つの関節を知ったら、上の陳項老師と二人の生徒の肩の使い方の違いがより明確に見えるようになりました。肩、ややこしいけど面白い!

 続きはまた。

 

2022/4/27 <腰の王子から太極拳を見直す>

 

   腰の王子の動きを見ていたら、師父が私に教えようとしていたもの、求めていたもの、がはっきりした。馮志強老師や劉師父の動きでははっきり分からないところを王子がパフォーマンス風に誇張して見せてくれる。股関節のウェーブと使ってポンやリューができるし、肩甲骨を支点にしてリューやツァイもできる。自分が使った箇所が相手の同じ箇所に作用する。不思議だけど本当にそうなっている。技をかけられた人も「え〜、なんで〜?」となる。それが”妙なり”と言われるところ。これがなければ太極拳ではないと師父に教えられてきたが、それは太極拳だけに限ったものではなくいわゆる”武術”に共通するものだったようだ。

 この”妙なり”というのがどういうことかと考えてみると、それは、力で負けたわけではないのに何故か倒されてしまう、そんな感覚だろう。力と力のぶつかり合いを避ける、という太極拳の原理はそこからくる。真っ向から力対力で戦うのはプロレスとかボクシングのようなものだが、これらは奇妙さはないのだ。強いものが勝つ、そんな世界だ。

 

 劉師父は腰の王子を天才だと言っていた。「もし彼が太極拳をやったなら、陳家溝とは全くことなる太極拳を作り上げるだろう。身体を痛めることを恐れず鍛えて強くなりたい者は陳家溝のような太極拳をするだろうが、健康になりたい人はこの人(王子)のような太極拳をするだろう。」それが劉師父の評価だ。

 師父によると、中国でも1980年代にはすでに太極拳は形骸化していた。内側よりも外側(形)、柔ではなく剛、気ではなく力(筋肉)、になっていたそうだ。当時でも本物の太極拳の師を見つけるのは困難になっていたという。それより前に太極拳がどのようなものであったのか、それを知る人は本当に少ない。それでも中国で生まれて育つと太極拳の”妙なる”側面を描く書や映像を見る機会も多い。太極拳の師父は一目置かれる存在だ。

 今では太極拳でも強い人が勝つ。試合を見ても大きな人が勝つ。”妙なる”技はほとんどない。格闘技の一種になっている。

 そんな格闘技のような太極拳がある一方で、大衆に広く普及した健康目的の太極拳がある。前者は健康と無関係で、後者は武とは無関係。本来の太極拳が持っていた二つの目的が分離して、戦うための武の太極拳と長生きのための太極拳に分かれてしまった。

 では、武と健康を併せ持った太極拳はどのようなものだったのか?

 それが馮老師や劉師父の路線の太極拳だ。力ではなく気を通す。身体の内側を開ける内功、静功をベースとするものだ。そして今回知った腰の王子もその路線。そのように関節を開けて柔らかく作った身体は健康的だしかつ技にも使える。

 

 「陳家溝の老師達も彼(王子)のような身体の動きは真似できないだろう。」と師父が一言。日本にも師父が感嘆するような人が存在していたのがなんだか誇らしい。

2022/4/26 <柔らかい体は静功が作る→柔らかい体を作るような静功が必要>

 

  腰の王子の動画、こういうのもある。

 

 とてもコミカルにやっているけど、これらは太極拳の力(勁力)の使い方。

 太極拳では体全部を連動させて力を出すこともできれば、一部分だけで使うこともできる。パーツパーツが独立して動くような体を作っているからこそできる技。

 「肩だけで済む時になぜ全身を使う必要があろうか?」と師父に教えられたのが2年前。要は肩甲骨だけで発勁しろ、ということだったのだが、当時、肩甲骨がそれほど自由に動かない私にはとても難しかった。上の腰の王子の動画を見ると、肩甲骨での発勁(化勁)、股関節(胯クワ)での発勁がどういうものかがはっきり分かる。

 

 師父に昨日の立甲四つ足や上の動画を見せたら、「中国にいる老師でもなかなかここまで上虚下実を極めている人はいない。非常好!」と絶賛。

 が、続けて師父が言った言葉は瞬時に理解ができないものだった。

 「彼は静功をよく練習してきたに違いない。そうでなければこんな柔らかい体は作れない。

 

 ん? なぜ静功があのチーター歩きや股関節ウェイブと関係あるのか?

 しかし、師父には言っていなかったが、王子は別の動画で、彼の”修行時代”に壁や岩、大木を全力で1時間から2時間推し続けていた、という話をしていた。これは最大筋力を上げるためのアイソメトリック的なトレーニングとしての例だったが、王子がその2時間の間やっていたことは、推す力に参加していない箇所を見つけてはそこを通すような練習(だから2時間かかった、と言っていた。)タントウ功や坐禅と本質的には同じだったのだ。

  つまり、”通す”(節節貫通)ことなしには柔らかい体は作れない。その”通す”には無駄に動かずに内側の気を通す練習が必要だということだ(体を動かすと筋肉や骨の動きを感じてしまって内側の気の流れが見え辛くなる。)

  師父は、”力が抜けて柔らかい体→静功をしているに違いない” と即答したが、逆に言えば、”静功をしている→力が抜けて柔らかい体” となるように、静功をする必要があるということだ。脚を固めて立ち続けても柔らかい体にはならない。タントウ功に様々な要領があるのは力が抜けて柔らかい体を作るため・・・。

  

 

  と、そのようなことは頭の中で理論的には分かっていたはずだが、王子の体がアイソメトリック的なトレーニング筋肉を伸縮させずに一定の姿勢をキープして負荷をかけるトレーニング)を基礎にしていると知ると、タントウ功や坐禅の見方がまた新たになる。モチベーションも上がる。生きたお手本を見る、とワクワクする(このワクワクも体を柔らかくする大事な要領らしい)。柔らかい人を見ると自分の硬さが分かる。師父が私に常々注意していた点も、立甲につながる四つ足姿勢や王子の動画を見てやっと腑に落ちた感じ。頭で分かっていたレベルから、「ああ、マジでそうだったんだ」と頭を打たれて目覚めた感じになった時、やっと主体的な真のやる気が出るのかもしれない。

2022/4/25

 

  たまたま見つけてしまった「腰の王子」の動画。チーターと立甲、そして立甲のその先・・・

  劉師父に見せたら👍 と一言。 体が『柔』なのが太極拳、といつもいつも言っている師父が評価する体だ。

  

  武術の核心は「持たれたところ以外の関節を動かすこと」と腰の王子は別の動画で仰ってましたが、そう言われてみると、結局太極拳の練習は普通の人が動かせないような部分の関節まで動かせるようになるような練習になっていました。『周身一家』(全身丸ごとで一つになる)というのも、全身が一個の石のようになるのではなく、全身がバラバラに動いてかつ連動して一つになる、ということだということ。腰の王子を見ると進むべき方向性がはっきりした。

 

 ←https://www.youtube.com/watch?v=HNBRM1cuBbc

 

 

 そしてチーターとのコラボ。

 チーターが仲間だと感じているようです。

2022/4/23 <四つ足姿勢(四足脱力体)に関する質問から>

 

  四つ足姿勢の練習はやる度に発見があるのだけど、生徒さんたちからはこんな質問をもらった。

 

 ①Q:頭は上げておくのか、下げるのか? 

 高岡氏の本のお手本画像は頭が下がっている。赤ちゃんやヒョウは頭が上がっている。

 腹を垂らすようにするには頭を下げた方がやりやすいが・・・どうでしょう?

 

 A:高岡氏の本によると、四つ足になるメリットの1つは身体、特に背骨周りの筋肉を緩められること。立位では背骨を立てるために背骨とその裏側にある筋肉が硬直しやすく、背骨は常に上下から圧迫された状態(椎間板が潰される方向の圧迫がかかっている。)四つ足になると背骨周りの筋肉を緩められるから腹が垂れるようになる。

  私が試したところ、四つ足状態では頭を上げても下げても、背骨周りの筋肉を緩めて腹を垂らすことができる。ただ、呼吸が異なるようだ。頭を上げると吸気で、頭を下げると呼気で緩めることになる(試してみてください!)吸っても吐いても丹田を膨らませられるのと同じことのようだ。

 実際、丹田に気を溜めるにはまず腰を緩める、というのが鉄則だが、腰を緩める、というのは、背骨を緩める、ということと同義だろう。背骨周りの緊張を緩めないと丹田が形成できない。この道理が四つ足練習だとより分かりやすくなる。

 また、高岡氏の本にのっている四足体の男性の写真は頭が下がっているが、これはその写真が「立甲」の練習のものであるため。立甲(肩甲骨を立てる)するには頭は落とす必要がある。

 

 ②Q:四つ足の時はつま先を折って床につけておくべきですか?

 

 A : 私はこの点を注意していなかったが、指摘を受けて試したところ、つま先を追って床につけて四つ足になった方が股関節(お尻)が緩んで歩きやすい。膝で這うと股関節の伸びに欠ける。

 四つ足で緩めた腹を鼠蹊部に向かって引き込んでお尻が上にとんがるようにすると股関節が緩む。それから足指を使って歩いてみると、足指の力がお尻の底あたり(坐骨や座面=裆)に伝わるのがわかる。座面の伸び(恥骨から肛門に向けてストレッチさせる感覚=泛臀)があればあるほど足指との連動が明らかになると思う。(これも試してみて下さい!)

 

 ③Q:四つ足で沈肩が分かるというのはどういうことですか? 立位で斂臀して中丹田を作れば既に沈肩になっているのでは?

 

  A:確かに中丹田を作ろうとすれば沈肩しなければなりません。が、高岡氏の提唱する背骨や肩関節と股関節の緩んだ四足動物的な四つ足姿を練習すると、沈肩が通常の沈肩では足りないことに気づきます。そもそも、沈肩に限らず、墜肘、含胸、松腰、などの太極拳の要領は、単純に、できた、できない、という二者択一的なものではなく、全くできない状態から、すこ〜しできるようになり、気づいたら、案外できるようになっていたりする。つまり、”できる”と言ってもその程度はグラデーションがあって、なかなかマックスで”できる”ところには達さない。つまり、最初「沈肩」ができるようになったと思っていても、練習を重ねるうちに、あれ、昔よりもっと「沈肩」ができるようになった、とその程度が深まり、それまでの「沈肩」では足りなかったことに気づく。「放松」も同じです。

 

  自分では「放松」できていると思っても、自分よりもっと「放松」できている相手に出くわすと自分の「放松」がまだ足りなかったことに気づく。『谁松谁赢』(より放松した者が勝利する)という言葉があると師父が教えてくれたのを思い出しました。

 おそらく、「沈肩」が完璧にできると「立甲」になるのだと思います。今回のパリでの二年間の練習の大きな課題はそこでした。肩甲骨が剥がれないと真の意味での「沈肩」にはならない、が、そこに到達するまでに、少しずつ、できる範囲で「沈肩」をしていかなければならない。

 ←劉師父の立甲

 ちゃんとした武術家ならできておかしくないと言っていました。

これができれば肩こり、首こりとは無縁(師父は肩は凝らない、らしい)。強いパンチができるようになるより、首こり肩こりと無縁になりたい私・・・

 

 そして、高岡氏の四つ足姿勢はその「立甲」を念頭においたもの。背中を緩め腹を垂らし、肩関節、股関節を緩めるところから初めて、最終的には立甲を可能にさせていく・・・

これは、体幹トレーニングなどでもよく見る四つ足姿勢。

ちょうど四つ足の机のようになっている。

 

四本の手足はしっかり胴体に接着していて一個の机のようにひとかたまりになっている。動きのセンター(中心)は一個。

 

これに対し、高岡氏の想定している四つ足”脱力”姿勢は左のようなもの。

④本の手足がそれぞれ別々に動く。

加えて、胴体も独立して動く。センターは5つ。

 

 これが動物の動きに近い・・・

と、検索したら、これに近いロボットの画像があった。ザ・チーター型ロボット!https://wired.jp/article/this-cheetah-robot-taught-itself-how-to-sprint-in-a-weird-way/

 上のチーター型ロボットには胴体の軸がなさそうですが・・・

   下が本物のチーターの歩き方。立甲して肩甲骨と前足、股関節と後ろ足がそれぞれ突っ張ったようにして使われているのが見えます。https://www.youtube.com/watch?v=N62OiZXWsOU

 胴体がしっかり緩んでいるからしなやか〜

 腹の膨らみが鼠蹊部に向かって切り上がっていく(押し込まれていく)・・・それが下丹田=股関節を緩める秘訣・・・というのが今回の最大の発見なのでした。

 この姿勢を作るにはかなり”前のめり”になる必要あり。続きはまた書きます。

2022/4/22 <中丹田VS下丹田→四つ足姿勢で解決へ>

 

  4/16のメモで「大発見!」と豪語して書きたかったこと、その本題に未だ入れないまま、随分前置きが長くなった。

 前置きが長すぎて私自身がうんざりしてきたくらい(苦笑)

 いい加減このあたりで結論を書いてしまわないと、毎日次々と現れる新しい発見のことを書けずに流れてしまう・・・

 

 これが日記なら簡単なメモで済むのだろうけど、ちゃんと読んで理解してくれようとしている生徒さんたちがいると思うとついつい書き過ぎてしまう。

 今日は一気に結論に向かうぞ〜!

 

 

 これまで説明してきたことをまとめると、

 

 ①お尻を”少し”入れると腹に力が出る=中丹田に気が集まる

 お尻を出すと腹が緩む=中丹田の気が逃げる

 

 ②尾骨を巻くくらいお尻を入れると股関節にロックがかかり動けなくなる=下丹田が潰れてしまう

 

 ③ ①と②の矛盾を解消して、腹も股関節も同時に使えるようにする=中丹田と下丹田ともに気を蓄える、のが非常に大事。

 (教えていて気づくことは、中丹田に気を溜めるのが得意な人は下丹田に気を下ろすのが苦手:腹を緩められない/ 気を下ろして低姿勢になることが上手な人は腹が緩みがち(中丹田が弱く、上半身と下半身が連動しない)。 人はどちらかのタイプに分かれる傾向あり。)

 

 ④中丹田だけに気を溜めるのであればお尻をいれて腹をタイトにすればよさそうだが、これでは身体が緊張して動けない。しかし、順序としてはまずは中丹田。腹と股関節を多少タイトにして腹に気を集め、十分に集まったら徐々に緩めていく→緩めると気が下(丹田)の方に落ちていく→中丹田の気が抜けないように核心部分の気を保持しながら外周の方から徐々に緩めていくのが大事

 

 ⑤ ↑の④が通常のタントウ功の仕方。が、これはなかなか独習が難しい。

 

 ⑥ と、ここで、中丹田と下丹田をつなぐような練習方法があることに気づいた。

  それが、高岡英夫氏が提唱していた「四足姿勢」の練習。

   ↓高岡氏著『上丹田・中丹田・下丹田』より

 

  

 

 ポイントは、肩甲骨から腕、手を一直線に、股関節から膝までを一直線にして、腹を垂らすようにすること。

 右の画像のような普通の”四つん這い”とは異なることに注意。

 

 四つん這いは背中が緊張していて、このまま歩いてもテーブルが歩いているようになる(老人の歩き方)。これに対し、上の男性のように肩甲骨と股関節(お尻)が出て腹が垂れている四つ足で歩くと、動物のような(背骨のうねった)歩き方になる。赤ちゃんのハイハイの時の姿勢も同じ類だ。

 

 

 このような腹が十分緩んだ四つ足の練習・・・昔はこれがそんなに意味のある練習だとは思っていなかったが、今回やってみてびっくり。ここには沈肩の要領が隠れていて、それができないと腹が緩まない、ということに気づいた。

 これを自分の生徒さんたちにやらせてみたら、この姿勢をとるだけでもキツイ!というのが感想。ましてやこれで前進しようとすると・・・

 

 そして、この姿勢を作ることで、「ズルズルっと垂れる」という感覚が得られるのが貴重だと高岡氏は書いている。この「ズルズルっと垂れる」というのが「放松」だし、最近の流行りの言葉で言えば、「筋膜が剥がれる」感覚だ。

 上の④で、「中丹田の気が抜けないように核心部分の気を保持しながら外周の方から徐々に緩めていく」と私が書いたものも、言い換えれば「(中丹田の)外側からズルズルっと垂らしていく」ということだ。その「垂れ」感は立位よりも四つ足の方が断然得やすい。(高岡氏が言うように、四つ足体の方が力を抜きやすい。二足で立ったとたん身体が緊張するのはある程度仕方のないこと。)

 

 

 この腹の垂れた四つ足姿勢を立位にすれば中丹田も下丹田も使える身体になりそうだ。(ハイハイの後立ち上がった赤ちゃん、幼児の姿勢がまっすぐなのと同じ?)

 

 注意するのは四つ足姿勢では肘を突っ張っているが、もし肘を曲げたなら脇がしまって肘が体側に沿うようになる。腕立て伏せ、というより、胸たて伏せ、という姿勢だ。 

 肘を曲げた状態から腕を伸ばすと、ジーになる。が、その時の動作は、腕ではなく胸や肩甲骨の力で行うことになる。

 立甲に向かう道へとつながる”垂らす”練習。

 家の中でチーターやトラをイメージして四つ足で垂らす姿勢をとる。私はそのまま拭き掃除をしたり、犬猫の相手をしていました。脇と鼠蹊部が開いて緩み、肩甲骨やお尻がズルズルっと剥がれる感覚がある。その後立つと気が腹底に落ちているのが分かります。家の中の練習にはもってこいです。

2022/4/20 <骨盤模型で仙骨の上部と下部の違いを確かめる 中丹田と下丹田の違い>

 

 これまでのメモで言いたかったのは、「お尻を入れる」とか「仙骨を締める」という表現は誤解を生みやすいということだった。”感覚的”には「お尻を入れ」たり、「仙骨を締め」たりする感じだとしても、それを鵜呑みにして尾骨まで巻き込んでしまうと骨盤が後傾し、お尻はぎゅっと中央に寄って足が動かなくなる。これはやりすぎだ。

 実際には、「お尻を入れる」とか「仙骨を締める」という表現で示しているものは、腰椎と仙骨の上半分を後弯させる動き。それより下の部分を”入れ込む”と股関節にロックがかかってしまうので注意が必要だ。

 

  このあたりは誤解が多く、しかも理解が難しい部分。

  解剖学的に検証してみよう!(と自分に言っている)

  

背骨を見る時は背中側の棘突起を見るのではなく、腹側の方から竹のような節になったものを見るべし! 

(背骨で立とうとして背中で立ってはいけない。背骨の前側で立て!=丹田で立て、と言われる所以)

 

 で、そう見て見ると、仙骨が最も背中側に飛び出ているピークは仙骨の2番目から3番目の穴のあたり。

 ここが後弯から前弯への転換点。

 念のため、後ろから見てみても、やはりそうなっている。(左の画像はhttps://youtu.be/mL8eCHbLFCU より)

 

 自分の仙骨を触ってみると一番出っ張っているのはやはり仙骨の真ん中らへん。

 

そしてその部分を手持ちの骸骨人形で検証・・・

 

およ?

これまで意識したことがなかったが、仙腸関節(仙骨と腸骨のつなぎ目)は仙骨の上半分だけ。下半分はフリー。

 

そして注目したのは股関節(寛骨臼)の位置。

その高さはおよそ仙骨の半分の位置にある・・・

 

 

 

左のような筋肉のついた模型で見ても同じ。

 

股関節は埋もれて見えないが、その位置はおおよそ赤の横線を引いた高さ。

 

赤線より上は胴体部、股関節ラインの赤線より下は下肢部だ。

 

左の図を見ながら、「もしお尻を入れたら」「もし仙骨を締めたら」どうなるか?とイメージしてみると・・・

 

赤線より下の部分が前滑りするように動くだろう。それは股関節にロックがかかる動きだ。

 

 それはきっとこんな立ち方?

 https://shogokoba.com/blog/archives/1428

 

 (股関節を回転させずにただ)骨盤を後傾させると、腹がギュッと締まり、鼠蹊部がタイトになる。股関節にロックがかかるから、脚が動かず、ある意味しっかりしたような感じがある。(お尻はしょぼくなる)

 

 

 左の写真は、骨盤後傾の問題点を指摘したものだが、タントウ功の一コマに見えなくもない。

 もしこれがタントウ功だとしたらどこが問題なのか?考えてみるのも面白い。

 

 大きな問題点は、左のような立ち方だと足が動かないこと。武術で忌み嫌う”居つく”という立ち方だ。およそどのようなスポーツでも”動けなくなるような立ち方”はしない。動いてこその運動・・・(弓道は?と聞かれるとどうなんだろう? 動かないからと言って骨盤を後傾させるとは思えない・・・骨盤後傾させると上半身の開きが狭まるから。)

 

 前から見ると上のようになる。

 内丹術では、中丹田と下丹田を上の図のように区別している。

 中丹田は胴体、下丹田は下肢だ。その境目は股関節ラインにある。ツボで言えばへそのツボ(神缺穴)が中丹田の中心、関元穴が下丹田の中心だ。

 

 以前、NHKの『古武術から学ぶ身体の使い方を学ぶ』で教えていた「正しい立ち方」は初心者にわかりやすいように、骨盤を後傾させて下半身を締める立ち方を教えていたが、実は単純に骨盤を後傾させてはいけないような言葉遣いもしていた。(下はテキストの一部https://www.nhk-book.co.jp/detail/000062288282022.html

 テレビ番組の放映では、「骨盤を後傾させて脚をしっかりさせる」ように教えていた(お尻が入って鼠蹊部が多少ロックされる感じ)。が、テキストでは、言葉遣いが微妙になっている。

 ”正しい骨盤の後傾” ・・・ただ骨盤を後傾させたのでは正しくないということ

 つまり”仙骨を下方向に引っ張りながら少し内側に入れる”・・・下方向の引っ張り、そして”少し”入れる。仙骨のストレッチが必要。そしてほんの少し入れる。

 ”ゆるやかに後傾”・・・この”ゆるやかに”にはは、”仙骨の下半分、尾骨を入れ込まないように”という意味が含まれているのだろう

 

  それでも、上の写真での模範の立ち方は太極拳的に見ると、前クワ(鼠蹊部)の緩みが少ない。この先生の四股踏みや壁に向かってしゃがんでいく姿を見た時に股関節の開きが不十分だと感じたのはこの立ち方のせい(骨盤後傾気味で股関節が潰れてしまっている)かと思った。師の甲野先生の立ち方を見てみたかった(和装ではなくトレパン、できるなら短パン姿、いや水着姿で見せてほしい・・・苦笑)

 

  ただ、骨盤後傾気味に腰椎と仙骨の上部を内側に入れると腹に力が出ます。タントウ功の最初の段階はこれで中丹田に気を溜める。股関節はちょっと締まったままでも構わない。最初から股関節をガバッと開いて立つと気が抜けてしまって腹に気が溜まらない。

  今日はそんな話をオンラインの内功のクラスでしていました。その話はまた後日書きます。今日はここまで。

  

2022/4/16 <仙骨を締めるのか? 背骨を引き伸ばす要領>

 

   オンラインの個人レッスンをしていてまた発見!

 それは一連の発見だったので、今日はそのプロローグ部分だけのメモ。

 

 その生徒さんはなかなかハムストリングスが使えず前腿に乗っかってしまうという(太極拳をする人にありがちな)課題があった。その大きな原因となるのが、臀部、後ろの股関節が使えていないことだ。

 

 

 ハムストリングスを主導で使っているか否かはお尻の形を見れば大体わかる。お尻は丸くて持ち上がっている。

 が、私たち日本人の多くは骨盤が後傾してお尻が平べったく下がっている。そのためブレーキ筋の前腿が発達してアクセル筋のハムストリングスが使い辛くなっている。

 

 こういう現実を前提にすると、太極拳で「お尻を入れなさい」と注意をされたのを鵜呑みにすると本来の身体の使い方ではない間違った練習を推し進めることになる危険性がある。昨日の生徒さんにまずはっきりと理解してほしかったのは、いわゆる”仙骨を締める”(斂臀)だけでは身体が固まって自由に動けなくなるということだった。

 

 「お尻を出さずに入れなさい!」というのはバレエの基本レッスンでも注意されることだ。ここで「お尻を入れなさい」というのは「出っ尻で腰を反ってはいけない」ということで、背骨を上下に引き伸ばして身体の軸を通すための要領の一つだ。。

 

 背骨を引き伸ばす(脊椎の間隔を開ける)と背骨のS字カーブはなだらかになる。

 

 私が持っている吉田始史著『仙骨姿勢講座』には右のような図がある。

 

 この図で示されているように、太極拳の時に必要とされるのは右端の点線の矢印で示されているようなS字カーブがなだらかになった引き伸ばされた背骨。(それはなぜ? と改めて問うべき?)

 

 なお、前提として背骨にちゃんと背骨のカーブがあること。平腰の人がそれ以上腰をまっすぐにしようと仙骨を締めると骨盤の後傾がひどくなる。(まずはS字を取り戻すような練習が必要?)

 

 

 上の本では「仙骨を締める」と「仙骨を返す」という言葉を使って対比させている。

 

 そして「仙骨を締める」ことを”うんこ我慢の姿勢”として推奨している・・・

 

 が、左図のような背骨の生理的弯曲をよ〜く見ると・・・(https://tk-reha.hatenablog.com/entry/spine-physiological-curve

 

 頚椎と腰椎は前弯

 胸椎と仙骨は港湾

 

 これを踏まえて太極拳の立つ姿勢の要領では、

 

 百会を天に向けた状態から、

①舌を上顎に付けて下顎を内収

→頚椎の前弯を解消してなだらかにする

 

 ② ①で頚椎をまっすぐに立てようとするとそれに連動して胸椎が前に滑ったようになる(前弯気味になる:上図のサイトにあるスウェイバック姿勢のような感じになる)。そこで次に含胸をして胸椎が前弯しないようにする。

 

 ③ 腰椎の前弯は命门を開くことで解消する(=塌腰)。中丹田の気が必要。

 

 ④  腰椎の前弯を解消すると尾骨の後弯はきつくなる(尻尾を股に巻き込んだようになる)。そこで尾骨を上げる方向の力を使う=园裆:骨盤底筋のハンモックをストレッチして広げる

  

 园裆には会陰を引き上げて骨盤底筋まで気を落とす必要がある(下丹田をしっかりつくる)。(結果的に恥骨と坐骨の引っ張り合い(骨盤底筋の前後のストレッチ)、左右の内胯のストレッチが起こる)

  これによって下肢が十分に使えるようになる。

 

  <右写真>背骨が貫通して真っ直ぐ。アジの開きのようになったイチロー。

 腰は真っ直ぐ。お尻は左右に割れてハムストリングスがしっかり使えている。

 

上の仙骨を締めることを推奨していた本では「尾てい骨を股の中に押し込むようにする」と書いてあったが、それでは運動はできない(負け犬の体勢、もしくは、犬が進みなくないときの姿勢)。

会陰を上げると尻尾(尾骨)は上がる方向に作用するが、それを上げすぎないようにすることで足に向かう下向きの力が生まれる(ジャンプする時は尻尾を一気に上げる)。

 

解剖学的には左図のように見るのが正確だろう。仙骨の骨はもともと5つの骨から成り立っている。その上半分は腰椎と合わさって前弯、下半分は尾骨とともに後弯。

  だから、仙骨の上半分は「命門を開ける」という要領(上の③)に包含され、仙骨の下半分は园裆(上の④)に包含されるのだろう。

  ③はいうなれば”締める”感じ=斂臀、④は”返す”感じ=泛臀。

 

  が、言葉で表現すると誤解を生みやすい。師父が「斂臀でもないし泛臀でもない」という一方で「斂臀でもあるし泛臀でもある」と言ったのはそういうことだろう。

  そのことを言葉でどう表現したとしても理想とする状態はみな同じだ。

 

太極拳の基本の要領(上の4つの要領)は全て身体の前面側からのものだ。

背中側から操作するものはない→斂臀や泛臀という要領は核心的な要領ではない。

それは太極拳では”気”を操作することによってその状態を作り上げようとするからだ。

気は身体の空間、スペースに在る。

空間をつなげることで身体を一つにする。

背骨が引き伸ばされるのはその”結果”だ。

(これが冒頭の「なぜ背骨を引き伸ばす必要があるのか?」という問いに対する一つの答えかな? 自問自答しています・・・)

 

今日はここまで。

2022/4/11 <骨盤のアーチから园裆のイメージを掴む>

 

  园裆は骨盤のアーチ構造を考えると納得しやすい。

  上半身の重さををどう股関節に分散させて足まで伝へと流すか=上から下向きへの流れ。

  足に流せて初めて足が地面を踏んで得られる反発力を上半身に伝えることができる=下から上むきへの流れ。

https://www.1up-chiro.com/2020/06/01/1011/

 

 

詳しくは上のサイトの説明を参照。

(左の図には下向きの矢印を私が付け加えました。)

 

 

 

←もっと精密な骨盤アーチの説明は

https://ameblo.jp/eni4/entry-12690903680.html

 

 

ここでは深入りせず、

 

 

最初のサイトに載っていた、こんなアーチのイメージを頭に刻み込もう・・・

 

 

このアーチをよ〜く覚えておいてから

下の馮老師の動きを見てみると・・・

  

  骨盤・股部分にアーチに見えないだろうか?

  なんて弾力性のある力強いアーチ・・・

  これが理想的な园裆。 

      お尻がオムツをしている子供のように見えたりする。

  腰の柔らかさ、股関節の柔らかさが骨盤のアーチを起動させている。股(裆)がしっかり体を支えてるから体が落ちない。

  

 

←翻花舞袖(180度回転して打つ技)。

馮老師はこの体勢からジャンプし始める。

 

まだ右足に体重が乗り切ってないのでは?と思うが・・・

脚力だけに頼らず、裆・骨盤のアーチの力をうまく使っている。

 

←https://youtu.be/pTdEDLCKCJQ

 

太極拳というより外家拳的な動きに見えるのは胴体の内気ではなく脚力に頼っているから。

馮老師に比べ着地も硬い(腰が硬く膝や股関節に衝撃がかかる)。 

 

 二人の跳び始めの体勢をみると違いが分かる。

 脚に頼って跳ぶか、全身のバランスで跳ぶか。

 

 脚に頼るとその力を使うために身体を落とさなければならない。中正も失われやすい。

 骨盤や裆の力が使えると不必要に身体を落とす必要がなくなる→実践では優位。

2022/4/10 <骨盤を立てる:骨盤の胴体部と下肢部に分けて考える>

 

   日本では敛臀VS泛臀の話をあまり聞かないが、中国ではよく論じられる話のようだ。結局は、これを論じても意味がなく、体得して初めて知る、ということらしいが・・・

 では一体、”何を”体得するのか?と言えば、それまたはっきりと書かれてないが、現代風に言えば、骨盤を立てる、仙骨を伸ばして立てる、ということに他ならないだろう。それができた時に、ではその時自分のお尻はどうなっているのか?と見てみれば、中に入れているようであり(斂臀)かつ後ろに張り出ている(泛臀)と思えるかもしれないし、そのどっちでもないと思えるかもしれない。

 

 私が思うに、目指すのは、敛臀でも泛臀でもなく、骨盤を立てること=仙骨を立てること。仙骨をストレッチして立てようとすると、腰から繋がる上部は内側に入れ、尾骨に近い下部は外に引き出すようになる。

 

 ①骨盤(仙骨)を立てるにはその前提として腰椎が下向きに引き伸ばされていることが必要(塌腰)。塌腰のためには、その前提として含胸をして胸椎を引き伸ばしておく必要がある(抜背)。

 これら、<含胸・抜背・塌腰>で骨盤の上部までが伸ばされる。(この時におこる感覚が斂臀)

 骨盤の上部までは胴体部。胴体部の引き伸ばしの要領は⤵️そうなる。

 

 ②そして股関節のある骨盤下部は下肢部。

 骨盤下部を引き伸ばす要領は胴体部とは少し違う。上から下への要領ではなく、下から上へ(⤴︎)の要領となる。

 すなわち、<曲膝・园裆・松胯>で骨盤の下部(仙骨下部、尾骨、坐骨)がストレッチされる。この現れが泛臀になる。

 

 そして、順番としては①を行ってから②を行うことになる。(②をしてから①をしても骨盤は立たない。仙骨が縮まってしまうはず。)

 

 ということで、②は①を前提にしているため難易度が高い。

 曲膝、松胯は注意してやる人が多いけれども、なかなか分からないのが”园裆”では?

 そして园裆こそが骨盤下部、骨盤底筋、恥骨坐骨部の要領で、これが泛臀を作ることになる。

 

 

 ↑私の生徒さんがいろいろな中国の老師の写真を用意してくれたので、これらを師父に見せて、どの人が”园裆”か尋ねてみました。

  どの人がそうか分かりますか?

 

 

2022/4/8 <敛臀と泛臀の臀の位置の違い 塌腰は敛臀を含み、 园裆は泛臀を含む>

 

 骨盤を立てる、ということは、仙骨を立てる(ストレッチする)ということだが、これは太極拳の要領の中ではどう扱われているのか? というのが当初の疑問だった。

 骨盤の前傾、後傾というのはよく聞かれる言葉だが、これを太極拳の言葉で言えば、前傾=泛臀、後傾=敛臀ということになる。

 骨盤が立つ、というのは前傾でもなく後傾でもない状態。同様に、太極拳では泛臀でもなく敛臀でもないのが最も理想的な状態、というのが師父の回答だった。

 

 が、面白いのは、この、「泛臀でもなく敛臀でもない」というのは、「泛臀でもあり敛臀でもある」というのと変わらないということ。

 一度その感覚を知れば、どちらの表現を使うかはその人次第で、たとえ私が「泛臀でもなく敛臀でもない」思っていても相手が「泛臀でもあり敛臀でもある」と言えば、確かにその通りだ、と、自分と相手が同じ感覚を共有していることが分かるのだ。そういうことは師父と私、私と生徒さんの間でしばしば起こることで、外の人たちが聞いたら変な会話だと思うだろう。言葉が違っても言ってることは同じだ、とはっきり分かる感覚はとても面白い。内側の感覚を表す言葉は多彩だ。

 

このあたりの話を整理するなら、左のような図を考えるとよいだろう。

 

そもそも太極拳のタントウ功の要領の中には泛臀も敛臀も含まれていない。

胴体の要領は

<含胸→抜背→塌腰>

この3つだ。

ざっくり見ると、含胸は胸椎上部、抜背中は胸椎下部、そして塌腰は腰椎と仙骨上部の要領だといえそうだ。

つまり、敛臀は塌腰に含まれていると考えることができる。

 

また、下半身の要領は

<曲膝→园裆→松胯> だ。

膝を曲げることで、内腿を引き伸ばし园裆を作る。(园裆は内腿のストレッチの結果であることに注意)。そうすると会陰がさらに引き上がりお尻が持ち上がるような感覚になる(お尻の皮膚がストレッチされる感じ?)これが泛臀だ。恥骨、骨盤底筋、坐骨をつなぐラインのストレッチ、これが园裆で、泛臀は园裆に含まれるとも言える。

 

 上の図で見るように、泛臀と敛臀と言っても、二者ではその”臀”の位置が違っている。

 骨盤上部は腰の延長で内側に入れる感覚、骨盤の下部は後方にお尻が引き出される感覚だ。

 

文章で書くと難しくなるが、タントウ功や坐禅で丹田を回す練習をして得られる感覚を使うと分かりやすいだろう。結局、順回転と逆回転の合体で、上の図のような力が働くようになる。(左の図参照)

 

丹田を回す練習が太極拳の核心につながるということがここにも現れている。

丹田回しは太極図を表現したもの。それなしには太極拳は成り立たない。

立円、竪円、平円で四正勁が現れ、4つの斜円で四隅勁が現れる。掤、履、挤、按、采、挒、肘、靠、の八法もそこから生じる。

丹田回しが万能だということに気づくようになるまでにはそこそこ練習時間がかかるが、それが分かり出せば太極拳の門に入ったということ。外側の要領が丹田の動きで説明できるようになる。

  師父が「我々は筋肉の話はしない。気や経絡で話す。」というのはそういうことだと今は分かる。

 

 

2022/4/4 <陳家溝の”泛臀”>

 

   ”泛臀”の”泛”(fan)は「くつがえす、ひっくり返す」と言う意味で、同じ発音の”翻”(fan)とほぼ同義だ。

 

 ”泛臀”、すなわち、お尻がひっくり返る、という表現で表しているのは、お尻の終わりの部分が垂れずに引き上がっている様。(左の図参照)

 要は、垂れ尻ではなくて、お尻と太ももの境目がはっきりしている桃のようなお尻だ。

 

 日本にも生徒さんの多い陳家溝の陳正雷老師のHPには、泛臀について陈鑫の《太极拳图说》における記述を引用して下のように説明している。

http://www.zltjsy.com/tjwh/tjql/1660.html

 

 

陈氏太极拳对臀部的要求是要“泛”。陈鑫在《太极拳图说》中,曾多次提出臀部要“泛起”,要“翻起”。他说:“屁股泛不起来,不惟前裆合不住,即上体亦皆扣合不住。”在塌腰、合腹、开胯、圆裆的配合下,臀部向后微泛,有利中气贯于脊中,有利于腰劲、裆劲、腿劲的运用。泛臀绝不是撅屁股,不是突臀。泛臀是塌腰、合腹、圆裆、开胯、合膝的必然结果。“前裆合住,后臀自然翻起”。有的太极学派提出了“敛臀”,就是臀部微向里收的要求。敛臀固然可以防止撅屁股的毛病,但是,如果只注意臀部向里收敛,则前裆大开,后裆夹住,裆劲不能开圆,这会影响身体转动的灵活性。

 

 <上の文章の要点>

 ①”泛臀”は塌腰、合腹、开胯、园裆、合膝の自然な結果として、臀部が後ろにわずかに翻ること。

 ②それによって、中気が脊髄を貫いたり、腰勁や裆勁、腿勁をもたらす作用が得られる。

 泛臀はお尻を持ち上げる(出っ尻にする)ものではない。塌腰、合腹、开胯、园裆、合膝の自然な結果である。前の裆が合することにより後ろのお尻は自然に翻る。

 ④ある太極拳学派は”斂臀”ということを言う。それはお尻をわずかに内側に入れる、というものだ。”斂臀”には出っ尻を防ぐ効果はある。しかしただお尻を内側に収斂することだけを注意するならば、前の裆が大きく開いて後ろの裆が狭まり裆勁が円く開かない。そうなると身体の運きの素早さが失われるだろう。

 

  

    上の文章で示されているのは、<斂臀・泛臀>と<前挡・后裆>の関係。

 私にとってはまた新たな視点だ。

 

 

上の説明では、

泛臀は前挡を合にすることで自然に后裆が開いたものだ、とする。これによって体の運動性が高まる。

 

しかし、もし斂臀を意識的に行うと、前裆が開いて后裆が狭まってしまいがち。お尻がすぼまってしまうとハムストリングスが使えなくなり運動性に支障がでる。

 

 

 

 

陈鑫(陳家溝)の斂臀のイメージはきっとこんな感じ。

 

実際、こんなお尻で太極拳をしているような流派も多い。

挡に力がないから下半身が重く身体にバネがない。運動選手としてはあり得ない体・・・太極拳が養生法になったところから誤差が出てきたのだろう。

お年寄りはこのようにせざるを得ないにしても、これで大会に出るなど根をつめると膝や股関節を痛める原因になる。

 

 陈鑫(1849-1929),

陈氏第十六世,陈氏太极拳第八代传人。

清末岁贡生,近代中国武术史上著名的太极拳理论家

 

<斂臀・泛臀>と<前挡・后裆>、そして骨盤を立てる、ということについて次回はも少し整理する予定です・・・

 

 

 

 

2022/4/2 <蹲墙功の検討 塌腰/敛臀➕泛臀=骨盤が立つ>

 

 蹲墙功をきちんとやるとその途中に骨盤が立つ=仙骨が立つ=仙骨が引き伸ばされる、瞬間が分かる。腰に効く〜!そんな感覚だ。腰痛予防、だるい腰に効く。

 それはタントウ功でまず探る場所。

 よく観察すれば、腰、仙骨が引き伸ばされる時、その前側には丹田が作られているのが分かる。腹に力がないと腰が伸びない。

 腰を松する=松腰とはゆるゆるの腰、だけれども、それは前側に丹田があるからだ。

 腹も腰も緩いと体は”松”ではなく”松懈“(力がなく腑抜けの状態)になってしまう。

 腹が緩く腰が硬いと腰痛になる。

 理想は腹腔が気で満ちていて腰が柔らかい状態だ。腹筋を固めても必ずしも腰は柔らかくならない。

 

 そのあたりの感覚は蹲墙功で理解できるかもしれない。

 

↑子供の蹲墙功。(http://doc.xuehai.net/b8485198bd56e4307435b3185.html)

 しゃがみ始めは腰が丸くなり(塌腰 敛臀)、そのあとお尻が引っ張り出される(泛臀)。

 塌腰が腰椎だけでなく仙骨の上部まで含むのなら、敛臀は塌腰の一部になる。

 その後の泛臀(お尻がひっくり返る?)はお尻の下部=仙骨下部の動きだ。

 この二つの動きが重なると、仙骨が引き伸ばされ骨盤が立った感覚が得られる。

 それより下にしゃがむと尾骨が内側に入ったように伸ばされる。

 

←これも同じだ。(https://m.sohu.com/a/432495182_668077)

塌腰/敛臀➕泛臀=骨盤が立つ

 

下はそれを説明したもの。

  骨盤を立てるということは中丹田と下丹田を連結させ腹腔全体を丹田にする、ということに等しい。

  塌腰/敛臀では中丹田を作れるが下丹田は作れない。

  それに泛臀を加えることで下丹田が形成され足裏がしっかり地面に貼りつく(踵と股関節がダイレクトに連動する)。

  体が落ちてしまう人は塌腰/敛臀もしくは泛臀ができていない可能性が高い。

  

←https://youtu.be/np4idCIA1xM

 

この人の場合はつま先が壁にくっついていないために蹲墙功の正確さが欠けている。

丹田が作れないために骨盤が立つ瞬間がない。

が、腰が固くてしゃがめない人はまずこのように練習して可動域を増やすことが先決。つま先が壁につくようになると骨盤が立つ感覚が得られる。

 なお、太極拳だと両足は幾分広めに開いて、膝を横に出すようにして降りるように練習した方がよいかと思う(前回のメモで紹介した古武術の林先生のような動きです。今日の蹲墙功の検討の後で改めて林先生の動きを見ると、塌腰/敛臀をせずに腰を沿ってしゃがんでいるのが分かります。中丹田を作っていない。だからかなぁ、キツそうなのは。日本の武道では塌腰を嫌うようなイメージあり。日本の武道の丹田はヘソ下と決めてしまっているからかもしれない)。

動画適宜アップ中! 

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『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

   馮志強老師著

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

発表の抄録、資料はこちら