2013/2/6  <筋肉をニュートラルな状態にする>

2013/2/6 <筋肉をニュートラルな状態にする、腰・腹・丹田、腸腰筋>

 

ここしばらく自分の立ち方を調整しているうちに、小臀筋から始まって様々な筋肉のつながりや筋肉の在り方が気になっていた。筋肉についても多少勉強したりして試行錯誤しながら、懸案の站樁功についても多少理解が進んだ。

 

「太極拳は腰が命」という。

太極拳において腰は、足が地面を踏むことで生まれた力を圧縮、倍増させて上半身に伝える役割をする。いうなればターボのような働き。

この場合の「腰」は何も腰痛になる背中部分だけを指すわけではない。”ターボ”として働く以上、ここでの「腰」は、腰・腹を含めた下腹部一帯を指している。 日本語で「腹の据わった」とか言うときの「腹」もきっと同義で、丹田も「前丹田」は臍、「後丹田」は命門、「中丹田」は関元、「下丹田」を会陰奥、として、これらがつながると下腹部一体が大きな丹田になるのだから、腰、腹、丹田はほとんど同じ意味になってきたりする。

 

さて、太極拳の練習は①気を溜めて②循環させる、という二点に尽きるのだが、まずは気を溜めて身体に力を漲らせることが②の循環の前提となる。気を溜めることは身体の原動力、パワーをつけることであり、内臓の働きも良くなり、免疫力も上がる。そしてその気を溜める場所、それこそが丹田であり、腹であり、腰になる。

 

ここで站樁功に戻ると、站樁功の第一の目的はまさにその「気を溜めること」。

身体の中で気を溜められる場所は上で説明した下腹部のみで頭や手脚に気は溜められない。

そして忘れてはならないのは、「気」は意識の行ったところに動くという性質。だから腹部に気を溜めるためには意識を全てをそこに集中しなければならないが、その集中しやすい場所が丹田になっている。もし身体の別の場所を意識していたり、考え事をしていては気は溜らない。

だから如何に快適に立って丹田以外のことは忘れられるようにするか、言い換えれば、如何に”身体を忘れられるように”立てるか、が大事になってくる。

重力のある中で、どれだけ重力に逆らわず、無駄な力を使わず立つことができるか?

そこから站樁功の立ち方の様々な要領が引き出されてくる。

そのような要領は通常、太極拳用語や経絡やツボで説明するのだが、少し筋肉で考えてみた。

 

上の図では屈筋(関節が曲がる時に収縮する筋肉)を赤、伸筋(関節を伸ばす時に収縮する筋肉)を緑で示した。

無駄な力を使わない、ということはどの筋肉もニュートラル状態にあるということ。

それは、それぞれの関節に関して拮抗関係にある赤の屈筋と緑の伸筋が、どちらか一方が強すぎることなくバランスがとれた状態で適度に張っている状態だ。例えれば、バイオリンの弦をゆる過ぎもきつ過ぎもなく、ちょうど良いハリをもたせたところに調整するようなものと言える。

こう見ると、「松(ソン)」という概念も、便宜的に「脱力」とか「リラックス」と説明したりするが、厳密には、きつ過ぎず(=力まず)、ゆる過ぎず(=だらけず)、といったその間のバランスのとれた状態、中庸の状態を指すというのが分かってくる。

 

ここで、腹、腰の要領に関し新たな発見。

以前1月25日の站樁功に関するメモで説明した、”股関節を緩める”と”腰椎を伸ばす”のせめぎ合いのお話だが、これを筋肉の観点から考えてみた。

 

上の図で、股関節における屈筋は腸腰筋という筋肉。これは股関節を緩める(曲げる)時に作用する筋肉で、この力のベクトルは腹から下向きに、骨盤を前傾させるように働く。このまま骨盤が前傾させていくと腰が反ってしまうことになる。

一方、站樁功の時のように背骨を真っ直ぐ積み上げて立つためには、命門を開いて腰椎を伸ばさなければならない。これは脊柱起立筋や腰方形筋が下方に伸びなければならないということだが、これらの筋肉を下向きに引っ張っていく力は骨盤を後傾させるように働く(尻尾を巻き込んだようになる)。

この二つの対立する方向に働く力をうまく調整して立つところ、これが実に微妙なところで、この感覚が取れるようになることには大きな意義があり、私達の動き全てを左右することになる。実はこの対立する力によってに、腹腔の中に一種の圧力のようなものが生まれるのだが、これがまさに丹田の感覚になる。

 

左は1月25日のメモの図。

 

まず図1の普通の立った状態から図2の命門を開けた状態にするのだが、この時、往々にしてお腹が引っ込んでしまう。最初は”臍で背中を押せ”とも言ったりして、腹筋をギュッと背中に押し付けるようにして命門を押し出し、背骨を真っ直ぐにするようにするので仕方がない。この図2の状態では、骨盤が後傾して(尻尾が巻き込まれるような方向)いるのだが、これだと骨盤を前傾させる「腸腰筋」が眠ってしまっていて働く余地がない。、すなわち図2から図3に移行する鍵となるのは腸腰筋になってくる。

それには、徐々に腹筋の締めた力を抜いて腹に息を落とし、その腹圧で内側から腸腰筋を張り出していくことが必要になる。腹に息を落とすにあたっては股関節を緩めて(曲げて)骨盤をやや前傾させることが必要になってくる。

(もちろんこれらは一朝一夕にできるわけがなく、30代の男性で毎日1時間の站樁功を100日間継続する、というのが目安になっている。)

 

「インナーマッスル」である腸腰筋の開発は難しいというが、太極拳はまさにその部分を使う。腸腰筋が発達してくるとお腹が”ポンポコリン”になって少し骨盤の前傾しお尻が上がってくる(しかし腰は反っていない)。黒人や幼児の体型のようになる。

 

『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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