冬、なぜ動くと寒くなるのですか?

 ある友人から、站樁功や動功の時はそうでもないのに、早朝ジョギングをすると指がかじかむ、どうにかならないか?という質問があった。

 站樁功の時は身体が暖かいのに、動功や套路をし始めると寒くなった、というのは冬の練習では皆がよく感じること。

 普通は、動くと身体が温まると思われるが、冬の戸外での練習時、じっと立っている方が断然身体が温まる(実際零下数度でも大丈夫!)。最初は不思議に感じるが、理屈が分かると、とても納得できる。

 上の図は、站樁功、動功、ジョギングの時の丹田の状態と熱(気)の伝わり方を図で示そうとしたもの。

 お腹の赤い★は丹田(中丹田と下丹田を一体として)を表している。

丹田はエネルギー(気)を作り出す場所。だから、丹田の気(エネルギー)の量が多ければ多いほど、身体は暖かく感じる。

 (蛇足だが、だから、カイロを貼る時には、お臍の下(前丹田あたり)と、背中側のお臍裏の後丹田あたりに貼ると効率的に全身が暖かくなる。ちなみに、中丹田は、自分の手の親指を覗いた4本の指の幅を3寸とした時、臍下1寸、身体の内向きに3寸の位置、下丹田は男性の前立腺、女性の子宮口の位置。)

 

 そして、丹田のエネルギーを作り出す機能を作動させるには、「集中」、すなわち、意念を集中し、全身の気(エネルギー、力)を丹田に集めてこなければならない。

 その具体的な方法が、肩を落とし(沈肩)、胸を少し後ろかつ下方に引く(含胸)ことで、肩から胸の力を腹の底の方に落とし込み、かつ、会陰や肛門をやや引き上げ気味にする(栓をする)こと。胴体の上方と下方から挟みこんで圧縮する要領で丹田を”発火”させる。これを経典では、「心臓の火を降ろし、腎臓の水を上げることにより、発火させる」というふうに表現している。

 

 結局、この丹田で産出された気が必要とされる部分に流れて使われていくこのであるが、身体が暖かくなったり寒くなったりするのもそこから説明ができる。

 

 ①は站樁功の時の身体の中の様子。

 全身の気を丹田に集めることにより、丹田での気の産出量が最大になっている。しかも、身体が少し丸めに「合」の形をとり、動きがないため、対外に熱をもらさないようになっている。立ち始めた時は、体中の気が一旦丹田に引っ張りこまれるので手先が冷たくなることがある。そのうち丹田に気がたまり、それが全身の隅々に向かって流れるようになると次第に手足の先も暖かくなってくる。

 

 ②は動功の時の状態。

 身体の動きを絶えず意識しながら動くことにより、丹田の気が身体の隅々まで流れていく。そのため、丹田の気の量自体は減っている。しかし、その気が届いた場所には暖かさが出てくる。ただ、外気がとても冷たかったりすると、手先から熱が奪われ、丹田からやってくる気が間に合わない時もある。冬の動功練習は夏季と異なり、身体を小さくコンパクトにまとめ、対外に気を極力漏らさないようにしながら、丹田の気を体中に巡らすようにする。手先も多少丸めにする。そして、站樁功の時のように、丹田への集中を維持することにより、丹田で気を産出させながら、動く(気を循環させる)ことができるようになる。

 

 ③はジョギング時の状態。

 丹田を何も意識せず、身体を楽にゆるゆるにしてジョギングした場合、丹田のエネルギーはジョギングに必要とされる身体の部位(足腰、背中、腕など)に使われ、間もなく枯渇する。その後は、全身の筋肉運動によって発する熱により身体が暖かくなってくる。ただ、ジョギングに使われない部位にはなかなか気が回らない。しかも、身体をゆるくして走った場合、身体が「開いた」状態なので、そこから外にエネルギーが散っていく。夏季のジョギングはそれでよいが、冬の場合は、身体を小さく丸くまとめて、対外に漏らす気の量を最小限に控えるのが正解。手は軽く拳を握り、丹田を意識して、できるなら、丹田を刺激して下っ腹に膨張感が生まれるように走れれば、身体の内側から暖かくなってくるはず。

 

以上をまとめると、丹田で産出する気の量<対外に出ていく気の量、だと身体は寒く、丹田で産出する気の量>対外に出ていく気の量であれば、身体は暖かくなる、ということ。

 

なんだか、貯金と同じ、簡単な算数のような・・・・。

 

<付け足し>

上の緑色で書いた、丹田に集中する方法は站樁功、動功、套路、生活上、常に必要とされる修錬。身体、精神ともに放っておけば散漫になるところを、一つの核にまとめるためのもの。東洋医学では、丹田の気が枯渇したときに死を迎えると表現するように、丹田の気を保持することは生命を保持することともいえる。身体を開いていると気が漏れる。内側に収斂させることで幹を作る。

 

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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