2024/9/10 <全てを緩めては行けない 健康法の原点>
あるシニアの友人が子宮脱になったという話を聞いて、最近考えていたことの回答が見つかった。
オンラインで教えている生徒さんの多くは現地で簡化24式を学んでいる。
昨日のレッスンでは背屈・底屈を丁寧に教えていたが、そこから発展して、搂膝拗步の拗步の仕方を細かく見せてもらった。レッスン後もいくつか動画を見てみた。
簡化の教える時には、「腰を緩める」とか「腰を落とす」、そして「付け根を緩める」(股関節を緩める)といった、”緩める”や”落とす”という言葉がよく使われている。
なるほど〜
”緩める”とか”落とす”とだけ言われるものだから、ますます体が落ちていくのかも。
肝心なところまで緩んでいるのだ。
それは、そう、会陰や肛門だ。
ここは絶対に緩めない。引き上げておく。
引き上げができれば引き下げもできるようになる。
引き下げは”緩める”のとは違う。
結局、『放松』の仕方の問題。
私が師父にタントウ功を学び始めたころは、師父は女性の生徒さんには最初から恥骨を持ち上げろ、と言っていた。私は日常生活で気づいたら引き上げる、落ちていたら引き上げる、という練習を癖がつくまで繰り返すように言われた。
ただ当時の師父は男性に対しては、全身がある程度緩んでから、会陰や肛門を引き上げるように教えていた。最初から上げさせると力が抜けない、という理由だった。
が、最近師父と話していたら、今は男性に対しても最初から提会陰や提肛を要求するらしい。そこだけ閉めて、それ以外の全身は緩める。そうすれば丹田に気が溜まる。
実は、『提膝』も一番大事なのは会陰、下を引き上げることだ。
ここが引き上がらないと腿上げになってしまう。
下げたまま太極拳をやると、痔になったり膝や股関節を壊す結果になりやすい。
”緩める”という下向きのベクトルばかりが強調されるが、実は、その反対の”引き上げ”という上向きのベクトルの要領も多いのだ。
先週は、眉毛を上げると提膝が簡単、腰椎が伸びる、と面白おかしく伝えたが、眉毛を上げると会陰は引き上がる。
提膝には足の背屈底屈が正しくできる必要がある、と今週は教えているが、足の背屈底屈も会陰と連動する。もし足首を動かしても会陰の奥が動かないとしたら、背屈と底屈は正しくできていない。
昨夜のレッスンで搂膝拗步をしてもらった時、「踏实」というような要領がある、と生徒さんから教わったが、この足を前に踏み込んで、しっかり踏んだ時は、必ず会陰は引き上がっている。というのは、しっかり踏んで足裏から地面へと気が流れる時は土踏まずは必ず上がっているからだ。土踏まずが下がっている時は会陰が落ちている。夕方になって足がむくんで大きくなるのは、体の力が減って会陰が下がってくるからだ。
簡化でほとんど見られない『圆裆』も、言われてみれば、会陰を引き上げた結果できるものだ。ただ股を開いただけではどれだけ開いても『圆裆』にならない。
上のいわゆる”師”というレベルの人たちは必ず会陰がものすごく引き上がっている。
上の崔老師や馮老師は、ぴちぴちのズボンを履いているから股間が見やすく、キュッと引き上がっていて美しい。下の劉師父は前後開脚をしているが、前後開脚をするには会陰をかなり引き上げる必要がある。
私は以前、馮老師は睾丸を動かしてみせたことがある、と聞いたことがあるが、それを劉師父に言ったらそれは周天をしていれば自ずからできるようになる、と言っていた。私の勝手な憶測だが、男性は股間に意識がいくことが多いだろうが、女性は股間に比較的無意識なのでは?問題があって初めて向き合うようなところがある。日頃から背屈や底屈をしながら内側の筋肉を動かして子宮が落ちてこないようにするのはどうだろう?
加齢とともに内臓は落ちていく。太極拳が養生法と言われるのは、下を引き上げないとできない拳だからだ。会陰の引き上げというのは、健康法の原点だ。会陰を引き上げないでスクワットをしていたら意味がない・・・筋肉をどれだけ肥大化させても内臓を養うことはできないのだ。
放松(力を抜く)というのはただ力を抜くのではなくて、体の内側が伸びるようにすること。それには上向きと下向きのベクトルが必要になる。ただ下に引っ張っても内側の隙間は開かない。
↓先月使った画像。
上段のヨガのポーズ。
左は会陰が引き上がっている。右はほとんど引き上がっていない。やはり左が良い。
(引き上げないと背骨が伸びない。実際、左の方が背骨が伸びている。)
下段の練功服の広告写真。ただの真似っこのポーズだと分かるのは会陰がみな落ちているからかも。
2024/9/8 <『提膝』から学ぶこと>
今週は引き続き『提膝』絡みの練習。
『提膝』を教えようとしていたら、結局、下肢全ての関節を総動員しなければならないことに気づいてしまった。
結論から言えば、『提膝』がきちんとできるなら、
①骨盤(寛骨)と大腿骨を分離して使えている
②膝のお皿が大腿骨と分離して動いている
③足首の背屈と底屈が足の指の力ではなく距骨の動きで行われている
つまり、股関節、膝関節、足関節が全て構造通りに動いている、ということだ。
教えていて気づいたのは、練習をするなら、③の足首の背屈・底屈の練習からすべきだということだ。いきなり①をやろうとすると、そもそもそれができているのかどうかが自分で判断できない、という生徒さんが多い。
面白いのは、「できているのかどうか分からない」という時は、ほとんどの場合ができていない。できている時は、できているのが分かる。(「私は悟っているのでしょうか、どうなのでしょうか?」と聞く人は悟っていない、というのと同じ?)
①ができているのかどうか判断する一つの方法が、②だが、これも、膝のお皿が動いているのかどうか分からない、という人がいる。この場合は、単純に膝回しをしてもらう。普通、膝回しをする時は膝のお皿と大腿骨や脛の骨の間に隙間をとろうとしているはずだ。膝をゴリゴリさせて膝回しをする人はいないだろう・・・
『提膝』は歩行時の後ろ足の蹴り足の動きに他ならない。
上の画像は、私が2024/6/11のメモで使ったものです。
背屈・底屈に着目した場合、ここにでている大人は誰も正しく足首を使えていません。
”足の指を使って蹴る”という意識をもつと距骨はすっ飛ばされてしまうからです。
距骨は踵の骨の上にあります。
踵の中を使うような意識が必要です。
大人達の膝が不自然に伸びているのは足首と膝が連動していない証拠です。
それに比べて、左上の子供が歩いている姿はお手本。
膝が連動で曲がって前に振り出されています。
足首の距骨の運動で膝の屈伸が起こり、それによって大腿骨が振り出されると自ずから大腿骨と寛骨が分離して動きます(股関節が関節として機能します)。
「膝を曲げると膝が前に出る」と言っているのは、「骨盤を動かして膝を曲げると膝が前に出る=膝のお皿と大腿骨が引っ付いてしまう=関節として機能しない」ということ。
「尻を落として打つの武術的」の中の「尻を落として」というのは、「骨盤を立てたまま=仙骨を伸ばして気を下ろして」ということ。「尻を落とす」時は大腿骨を前方に押し出さないこと。大腿骨はそのままで、尻だけ落とす(つまり、骨盤と大腿骨を分離する)ということです。結果、大腿骨の付け根を後方に引いたようになるので、大腿骨の付け根から膝までの距離は長くなります=坐骨、ハムストリングスが使われます。
そして、「お尻を落とした」時、カチッと足首の関節がハマる、といった関係になります。
そういう目でみると、ボクシングの世界チャンピオンの形は本当に完璧です。
今週は、上の①②③をそれぞれなんとかして理解させるのが私の課題。
①が分かる方法は今日の練習で発見したので試してみます。
<追記>
岡田くんと二人で写っている画像の二人の後ろ足をみると、世界チャンピオンの方がしっかり床を蹴っている(推している)のがわかります。岡田くんの後ろ足は膝で少し力が漏れているかなぁ?きっと腰の問題・・・(世界チャンピオンと比べるのは酷ですが、ついでに書くと、チャンピオンは命門(腰)が開いていて、足の力が背骨を貫通しています。岡田くんは命門が甘い。)
2024/9/3
股関節を緩める前には必ず腰を緩める必要がある。腰と股関節は密接な関係がある。師父はいつも腰と股関節をセットで扱う。
それは何故?
腰の王子も、腰痛の原因は股関節がうまく使えないことだ、として、おじぎ体操を推奨する。
今週のレッスンでは、生徒さん達に尋ねてみよう。
なぜ股関節がうまく使えないと腰痛になるのか?
そしてまた、なぜ腰が緩まないと股関節が使えないのか?
自分でよーく考えてみるのも練習になる。
2024/9/2
今週のレッスンの題目。
先週からの流れで 『提膝』がらみ。
提膝というのは、結局『単腿』(片足立ち)。
ただ、”片足立ち”といっても、重心は体の中心。文字通り、”片足だけ”で立っているわけではない。
結論から言えば、左右の腸腰筋が働いて重心を体の中心に通して立っている。
<下の画像>
右 https://mainichigahakken.net/health/article/32-1.php
左 https://ourage.jp/karada_genki/exercise-stretch/346820/
こちらは上に比べて随分安定している。特に上の左側の画像の足のあげ方は足首も抜けていて上半身も放松していてとても良い。このように上げるには腸腰筋を使う必要がある。腸腰筋は左右についているので、右を上げようとすれば左は降りる(連動する)。
ただ、右側の膝上げは、「90度に上げよう」と思ったせいか、膝を上げる軌跡を間違えてしまっている。『提膝』なら膝は胸に近づくように上げる(そうすると腸腰筋が使える)。
左の画像に比べて右の画像の上半身の胸が前に出て放松がなくなってしまったのは、足の上げ方を間違えたせいだ。
『提膝』であれば、上半身は放松したままのはず。
と、このあたりは復習。
気づいたかもしれないが、提膝の時は足首の力を抜くのがポイント。
ここが固まると膝も固まる。膝が固まると膝のお皿が滑ってくれない。
膝が上がる時にお皿が上に滑らないと、寛骨(骨盤)が太腿と一緒に動いてしまう。
寛骨と大腿骨が引っ付いて動いてしまうということは、股関節が使えない、ということだ。