2023年10月

2023/10/28

 

  今日の保土ヶ谷クラスでは、前回のブログの最後に書いた、股関節の屈曲と膝関節の屈曲の違いを説明。

     

  ・膝関節の屈曲

   ハムストリングスが収縮(主導筋)

   大腿四頭筋(前腿)が伸長(拮抗筋)

 

  ・股関節の屈曲

   腸腰筋が収縮(主導筋)

   大臀筋とハムストリングスが伸長(拮抗筋)

 

  これで気づくことはないだろうか?

  そう、ハムストリングスは膝関節と股関節の動き、両方に関わっている。

  膝関節の屈曲では収縮、股関節の屈曲では伸長

  

  太極拳の基本姿勢(所謂中腰姿勢)では、ハムストリングスは縮むのか、伸びるのか?

 

  私自身の感覚では、ハムストリングスは伸びている。

  

 

 

  上体はこんなに弓になっているんだ〜 背骨が伸びて背骨は弓、全体としてボールの衝撃を足裏に抜くことのできる体勢。後頭部から背中から仙骨、腿裏、アキレス腱、そして足裏に繋がるライン(督脈や膀胱経)がしっかり繋がっているのが見える。

  腰を入れて股関節をしっかり使った、たるみのない姿勢。

 

  これを見てから下のような画像を見ると、股関節の屈曲と、膝の屈曲の違いが明らかになるのでは?(https://news.cqnews.net/1/detail/1161052628313624576/web/content_1161052628313624576.html)

  上半身が箱のように固定されているのが本当の原因かもしれないが、上体の箱が脚に乗っかってとても素早く動けるようには見えない。

  現在の中国でもこんな太極拳(のような動き)が普及している・。

  会陰の引き上げもなく下がってしまい、股関節の屈曲が使えず、その代わりに膝の屈曲で済ませている。中国のサイトで、「太極拳を練習すると痔になる」といった訴えが出ていたのも頷けるかも。そう、股関節の屈曲(腸腰筋の収縮とハムストリングスの伸長)には引き上げが必要。会陰や肛門が引き上がっていないと、坐骨周りの腿裏が弛まずハムストリングスの付け根が伸びない。ハムストリングスが伸びないと前腿は膝の方に引っ張られ、膝の屈曲に持っていかれます。

 

  今日の生徒さんに教えた手っ取り早い股関節の屈曲の仕方は、ズボンの股、鼠蹊部の部分を両手で掴んで上に持ち上げながらしゃがむ練習をすること。そうすれば股関節でしゃがむ感覚が得られます。あとは、体に覚え込ませる。

2023/10/26

 

 以下、今日の劉師父との会話の一部です。

 

  私:

  「生徒さんに膝ではなくて股関節を使うことを教えたいのだけれども、なかなかうまくいきません。なぜうまくできないのか?と考えたら、太極拳では、『松腰・松胯』あるいは『松腰・落胯』と言うように、胯(股関節)を松することと腰を松することはいつもセットだったことを思い出しました。結局、松腰、すなわち、命門が開けていないことが、うまく股関節を使えない理由ではないかと思うのですが、それで合っていますか?」

 

  師父:

  「その通り。ただ松胯(股間節を緩める)をしようとすると氾臀になる(出っ尻になる)。命門は閉じたままだ。気は通らない。私が今教えている日本人の生徒はその癖があってなかなか治らない。まず丹田に気を溜めて命門を打開する必要があるが、功夫が足りず高いできないままだ。命門を打開するには横隔膜を下げる必要があるが、一般人は横隔膜の前側を下そうとする。それは間違いだ。横隔膜は背中側を下さなければならない。後ろ側が降りれば命門に気がとおり打開できる(腰が開く)。腰がある程度開いてから松胯するのも落胯するのも思いのままだ。」

 

  私:

  「松胯と落胯の違いは何ですか?」

 

  師父:

  「落胯の方が松胯よりも背骨が伸びる」

 

  私:「ああ、そういうことですか。」

    「まずは、松腰、そして打開命門が必要ですね。」

 

 以上。

 

 ということで、昨日のブログで、膝を使ってしまっていると指摘したケースは、そもそも、腰を緩めて(内気で)命門を開くという作業を経過していない、さらに言えば、そもそも丹田に気を溜められてい(内気が溜まっていない)という問題でした。

 腹と腰がスカスカだと股関節でホールドできず膝に流れてしまう。股関節を自分の中心(腹)に引きつけておくことが必要です。

 ちなみに、松腰というのは腰を緩める、ということですが、腰を緩めるのは腹をスカスカにしてしまうのとは違います。腰を緩めると腹に気が溜まる。つまり、松腰は丹田を作る第一歩です。松腰なくして気は腹に溜まらない(腰を緩めないと腹圧は高まらない)。

 

 

 そして、ジムでは新体操の選手だったトレーナーに、中腰姿勢を股関節ではなく膝でおこなってしまうのは何故なのか問うてみました。

 そして分かったことを簡単に整理すると・・・

 

  ・膝関節の屈曲の主導筋はハムストリングス

         拮抗筋は大腿四頭筋(前腿)

 

  ・股関節の屈曲の主導筋は腸腰筋

         拮抗筋は大臀筋とハムストリングス

 

  なんと、そうだったのか! と謎が解けました。

 

 

  股関節の屈曲が苦手な人は股関節の代わりに膝関節の屈曲に入りやすい・・・

 

  <股関節の屈曲の代表は長座、前屈>

  長座や前屈が苦手な人は股関節の屈曲が苦手な人。

  腸腰筋が伸びず、大臀筋が固まっていてハムストリングスが縮こまっている・・・

  デスクワークの人に多い

 

2023/10/25 <膝なのか、股関節なのか>

 

  太極拳を長年楽しもうと思うなら、弓歩や馬歩、その他全ての姿勢において膝にテンションをかけないようにすることだ。

  先週から引き続き、体を捻ることによって比較的簡単に中心軸が通ることを体験してもらうようなレッスンをしてきたが、それがうまくできるためには、まず、股関節がしっかり回転しなければならない。股関節が捻れない(回旋)しないと永遠に下肢は胴体と繋がらない。

  

  レッスンの内容は多岐に渡ったので詳細は割愛するが、その中で問題だと思ったのは、自分が今、股関節を使っているのか、膝関節を使っているのか、が曖昧になっていることだった。

 上のような動きは全て大腿四頭筋が緊張している(前太ももがガチガチに硬直している)。本来、大腿四頭筋は膝を伸ばすための筋肉で、坂道を降りる時に活躍するような筋肉だ。これは別名、”ストップ筋”と言われる。前方に歩く時、走る時は、力を抜くべき筋肉。(前方に進む時のアクセル筋肉はハムストリングス)

 

 このような動きをやりこむと、太ももが肥大して素早い動きができなくなるか、膝を痛めるか、あるいは股関節を痛める。股関節を痛める理由は、常に大腿骨が膝の方に引っ張られるため、大腿骨骨頭が骨盤から引っ張り出されるような力が加わり、アングルが悪くなるからだ。

 

 膝を曲げる時に、膝関節を使っているのか、股関節を使っているのか、自分でチェックしやすくなる方法がある。

 

  股関節の屈曲をするには鼠蹊部に両手を当てておじぎをすれば簡単です。

  鼠蹊部をしっかり折り込んで股関節を使えばハムストリングスが起動します。

 

 膝(太もも前面)にテンションのかかる座り方と、鼠蹊部をしっかり折り込んで膝にテンションのかからない座り方を交互にやって、その違いをしっかり覚え込むことが必要。そして普段から、歩く時、椅子から立ち上がるとき、座る時、など、つねに、股関節を使うことを意識する。すると次第に太極拳で前腿(膝)に乗ってしまう癖も改善されていくと思います。

 

 

 上の老師が動作を説明している→

 胴体の捻り、回転がはいることで、股関節も自然に回転し、全身の連動が起こっている。

 太極拳に回転、捻りはマストです。

2023/10/21 <真っ直ぐなのか、捻れているのか?>

 

 先週からずっと<捻る>動きを使ったレッスンをしている。

 

 元はと言えば、足首がまっすぐに立たない生徒さん達のために、腰の王子の”脛骨直下点”に乗るためのメソッドを紹介したのが始まりだった。教えていて気づいたのは、足首をまっすぐに立てて、脛骨の真下に体重が乗るようにするための王子のメソッドは、どれも、体幹部を捻る動きが入っている。ただ両足を真っ直ぐ揃えて立ってもうまくいかない。真っ直ぐ立てるようにするには、体を捻った方がいい、いや、捻る必要がある。捻ることによって体幹部と下肢が一体化する・・・・太極拳でいうところの、四正勁(左肩と左股関節、右肩と右股関節、といった繋がり)だけでは足りず、四隅勁(斜めの繋がり、例えば左肩と右股関節、右肩と左股関節)が必要だということだ。

  

 真っ直ぐに見えるものは実は完璧に捻れている

 

 そんなことを思い出した。

 

 日本の武道と中国武術を比べると、前者は直線的で後者は曲線的だ。

 そして中国武術の一つである太極拳は球や円がシンボルになっていて、螺旋の動きが多く、捻りが随所にある。陳式から楊式太極拳が派生し、螺旋や捻りの動きは見え辛くなり、一見動きは簡素化したように見えたが、それは螺旋や捻りを通り過ぎた後の”貫通”した体を前提とした高度な拳だった。

  その後、太極拳が中国で国民の健康体操として制定された時、主に楊式太極拳が取り入れられた。動きはさらに簡素化され、結局それは捻りの不要な”体操”になった・・・胴体と四肢の分断はやむを得ない・・・ (以上独り言)

 

  

  真っ直ぐに見えるものは実は完璧に捻れている>というのは

  太極拳の動きの例で示すよりもヨガのポーズの例で見せた方が分かりやすいかもしれない。

  下は「英雄のポーズ」。どう違うだろう?

 今度の右の青い服の女性は上の女性よりも体が正面に向いている。

 が、お尻が割れていないせいか、腹から下が正面に向いていない。

 

 ここで気づいただろうか?

 左のヨガの男性(ヴィシュワジ先生)は、顔は左へ向いていて体は真っ直ぐ正面に向いている・・・あたかも、古代エジプトの壁画のような姿・・・ちょっと変?(私の主人にこの写真を見せたら、リアルな人ではなくてイラストだと思っていた。あまりにも二次元過ぎる、と。) 真似してみるととても難しい。実は、頚椎から尾骨までをいくつも捻ってこのポーズを作っているのだ。(私も完璧には真似できないが理屈としては)尾骨が右に捩れたら仙骨下部が左に捩れ、仙骨上部は右へ、腰椎は下部は左へ、上部は右へ、胸椎下部は左へ、中部は右へ、上部は左へ、頚椎下部は右へ、中部はが左へ、上部は右へ・・・というように、たがい違いに捻れている。もちろん、本人はそんなことを意識してやっているわけではないが、背骨がバラバラに捩れるようになっていると、こんなふうに体が完璧に開けるようになる。

 右の青い女性は仙骨以下が捻れないので下半身が開かない。

 冒頭に挙げた赤いタンクトップの右側の女性は、鎖骨付近の上部胸椎(肋骨)や腰椎仙骨が捻れていない。それらが青い服の女性よりも体が開いていない理由だ。

 最後にこの女性:https://yandara.com/yoga-poses/virabhadrasana-ii-warrior-ii-pose

 この女性は左のヴィシュワジ先生とかなり似ている。

 違いは、体が落ちていること(体が重そう)と、首の角度だ。

 この首の角度だと後頭部の位置が正しくない。本当は後頭部はもう少し後ろだ。(ヴィシュジ先生参照)。そして、首がこのように硬直している理由は仙骨の下部、尾骨が捻れていないからだ。仙骨の下部や尾骨を操るには肛門を引き上げておく必要があるが、肛門を閉めてしまうと仙骨や尾骨が動かせず首も硬直する。

 左のヴィシュワジ先生のポーズはどこにも力みはないが、右側の女性は首に力みがある。(首に力みがあるということは肛門周辺にも力みがあり、体は重くなる)とはいえ、この女性のポーズは上の二人より均整がとれ、完璧に近づいている。見た感じは、そこそこ”真っ直ぐ”だ。

 

 つまり、これらの例で言いたかったのは、”真っ直ぐで均整のとれた姿”の裏には捻りがある、ということだ。このように捻りをかけてから、まっすぐ直立をするととてもきれいに立てるのは確か。

 そんな原理を太極拳では採用しているし、腰の王子も使っている。

 

 最近生徒さん達に細かく注意してやらせた、膝を立てて体を捻るポーズも上のような観点からやらせている練習だ。

 初心者の人には太極拳との結びつきがまだ分からないかもしれないが、ある程度練習をしている人には非常に大事な練習になると思う。もちろん、私にとっても目から鱗の練習でした。

 

 背骨の貫通も捻りによってまず作る。捻れないと貫通はまず無理。ここで出てくるのが、基本の動功の丹田の水平回し。背骨の旋回の入り口です。私も頑張ろう・・・

2023/10/16 <気を下げるさまざまな方法の例>

 

 今更ながらだけれども、いろいろ教えていて気づいたのは、結局、横隔膜を下げる(気を下げる)ことなしに体の連動は起こり得ない、ということ。

 つまり、気を下げられないと、周身一家(体が一まとまりになること)はあり得ない。

 

 基本に戻れば、丹田を作る、ということ自体が、気を下げることだった。

 腹に気を溜める、丹田を作る、ということがある程度できれば、すでに気はいいところまで下がっている。

 

 気が上がっているのか、気が下がっているのか、自分で確認できるようになるのが始めの一歩だ。太極拳なら、常に丹田を意識する、ということだ。

 

 話が逸れるが、空手なら「えい!」とか「はっ!」いう”気合い”を入れる言葉。低い音程での「えい!」や「はっ!」は腹に気を落とし、丹田を充実させる。

 ・・・が、長年空手をやっている主人の話だと、外国人の中には「えい!」と言うところを、「 KIAI!」と叫んでいる人がいるそうだ。それは国際的に出回っている空手の教則本の中で、、「えい!」や「はっ!」という場所に、「KIAI(気合い)」と書かれていたのが原因だそうだ。

 

  すごく低い声、バスの声を出そうとすると気は腹に落ちる。

  日本の坊さん達の念仏の声はとても低い。これも腹に気を下げる効果がある。

  息の使い方がわかりにくければ、声をのせて発声で確認してみると体内で気がどう動くのかがわかりやすい。

 

  下の王子の「とんがりコーン体操」はどうだろうか?

 

  王子が、「ど真剣な顔で!」と注意しているのはなぜか気づいただろうか?

  ど真剣な顔つきで、両手を眉間に持っていけば、目線は自然に眉間に集まる。

  両目の目線が眉間にちゃんと集まれば、気は腹に落ちる。

  つまり、ど真剣な顔で、とんがりコーン、とポーズをさせるのは、腹に気を落とさせるためだ。ここに王子の絶妙な仕掛けがある。

 

  そして、そのあと、「あ〜、すっと下ろして〜」と、口を立てに長くして変な言い方をしているのは?

  これは、そのまま、王子を真似て言わなければならない。

  すると、息が漏れずに胴体の上から下までパンパンに膨らみ、その中で背骨が伸びる(抜背)のが分かるはず。これが「コマネチスリスリ体操」の準備だ。すなわち、股関節の屈曲が正しく行われるための準備になる。

 

  そして「とんがりコーン体操」や「コマネチスリスリ体操」で大事な眼目となる、上腕(肘)。

  結論から言えば、前腕ではなく上腕を使う=肩甲骨・肋骨を連動させる、には、抜背が必要だ。背骨の伸び(上下の引っ張り合い)が足りないと広背筋がうまく使えずすぐに前肩になり前腕しか使えなくなる。

  そして背骨の伸びを作りには、まず、気を腹に沈めることが必要だ。

 

  大腰筋を使うにも、まず腹に気を沈めるのが必要。

 

  はしょって言えば、気を沈められれば、そこそこ連動ができてしまう。

 

  王子には王子流のやり方があり、それは素人でも真似しやすいように作られている。真似が上手な人、表情豊かにいろんな声が出せて、さまざまなモードに入れる人にはうってつけのメソッドだ。

  太極拳の基本練功として丹田に気を溜めるのは、もっと静かで時間のかかる作業で、常に、丹田を”意識”する必要がある。この”意”を外さない練習を日々欠かさずにできるなら確実に身体は内側から充実する。

  外界に向いている目を内側に向ける。

  その時間が必要だ。

2023/10/12 <横隔膜を下げる その3>

 

     体を落とさずに気を降ろす、ということに関して、横隔膜を下げると言う観点から動画をとりました。

  体を落とすことと、気を降ろすこと、この違いをはっきりと理解することが目標。

  自分でその違いを体現できるのであれば完全に理解しています。動画を見る必要はないかも。

  その2つがあやふやな人は、動画を見て理解しようとしてみてください。

2023/10/6 <横隔膜を下げる その2>

 

<続き>

   太極拳をする時に横隔膜は下がりっぱなしなのか? 感覚的にはそうだが、師父はどう答えてくれるだろう? 尋ねてみたところ

 

 「そうだ、ずっと下げている。」

 

  そんなの当たり前だろう、というような口調。

  上がったり下がったりしているようでは力がでないという。

 

 「だから、普段から、息を吐ききった後、、1、2、3、4、5とゆっくり数えてさらに吐く、そして息を吸った後にも、1、2、3、4、5と数えてさらに吸う、それをやらなければならない。」

  「単に吐ききっただけでは、本当の”気”は分からない。そこからさらに吐くことで真の”気”が現れる。吸う時も同じだ。

 

  ん?話が逸れた?と一瞬思ったが、いや、これは横隔膜を”下げ続ける”ための訓練だ。

 

  私も以前生徒さん達にやってもらったことがある。

  息を吐ききった後、そのままさらに我慢して吐き続ける。

  うまくできれば、我慢して吐き続けている最中に突然、体の中のモードが切り替わり、急に楽になって更に吐き続けれらるようになるのが分かるだろう。もう吐けない・・・と頑張った瞬間、壁が抜けて腹の下の方が使えるようになる。この転換点が横隔膜が収縮(下降)に切り替わった瞬間。それまでの楽ちんな呼気では横隔膜は弛緩して上がっていっている。そして面白いのは、その転換点で急に骨盤底筋に力が入るようになること。つまり、横隔膜と骨盤底筋のサンドイッチが出現する。この骨盤底筋がミソだ。ここが働かないと横隔膜は下げておけない。横隔膜と骨盤底筋の連関が現れて初めて横隔膜は引き下げておくことができる。そのためには、師父曰く、

 「吐く時は、意識的に男性は会陰を引き上げる、女性は陰道を占めて曲骨穴を意識する。吸う時はそれほど意識しなくてよい。」

 

  息を吸う時は横隔膜は下がる。最初のうちはそれほど骨盤底筋を意識できなくても横隔膜は下げておける。

  難しいのは吐く時だ。吐く時に、師父が上で言ったような要領を使わず、普通の人の普通の状態でいたら、吐いた息は漏れてしまう。口や体から漏れてしまう。吐いてもできるだけ漏らさない。それが肝心だ。

  だから、最初は吐くのに注意してやってみる。吐ききった後に更に吐き続けて、もうだめだ、と思うまで吐き続けると横隔膜や骨盤底筋の動きが見えてくるだろう。そこまで吐けるようになれば吸うのは簡単だ。

 

  これが、王子の言うところの「深い呼吸」で、だから王子は、横隔膜がかなり下まで下げておけるということを自慢(?)していたのだ。横隔膜を強く収縮させたままでいられるということは、弛緩させた時により弛緩させられる、つまり可動域が大きいということだ。ただ、それは骨盤底筋との連携が必須だ。

 

  普通の人の呼吸は、”底に達していない”。つまり、浅い。それは推手をするとすぐに分かる。底に達していないから、鼠蹊部に近い位置を狙うとすぐに体勢を崩してしまう。あるいは、別の例で言えば、底に達していないから前に屈む時に股関節を折り込めない。代わりにお腹を凹ませて腰を丸めてしまう。結果、腰を悪くする。幼児の動きを見ていると、屈む時、しゃがむ時にまず股関節がしっかり屈曲する。これは、息が常に胴体の底=骨盤底筋に達しているからだ。

 

 <ここで横隔膜と骨盤底筋の関係について少し整理>

     

  ということで、また腹圧呼吸に戻ってきてしまった・・・

  そもそも、太極拳で丹田を育てるのは、言い換えれば、腹圧を上げていく作業。流派によっては丹田を作らずに練習するものもあるようだが、歳をとればとるほど腹圧は減る傾向があるから、意識的に育てる練習をすべきだろう。ただストレッチや套路練習だけでは腹圧は育ちにくい。

 

  次は、<横隔膜を下げて吐く>のと、<普通に吐く>のとがどのように違うのか、を、太極拳の動きを例にして説明できればよいなぁ、と思います。

2023/10/4 <横隔膜を下ろす その1>

 

  腰の王子が、「呼吸は長さではなくて深さが大事」と言って、「僕の横隔膜はここまで下げておけるんです。」と臍上あたりに両手を置いてその姿を見せてくれた動画を見た。

 なんと・・・そうだったのか!と目から鱗。

 それは太極拳の典型的なアン(按)の時の内気の動かし方、つまり、<気の下ろし方>だった。

 なんだ、<気を下ろす>と思ってやっていたものは、<横隔膜を下ろす>ということだったのかぁ。

 

 軽いショックを受けて、今日早速師父に電話をして確認。

 「気を下ろす、というのは、横隔膜を下ろすことと同じだったのですか?」。

 すると師父は

 「あなたは賢いな〜。その通りだ。」

 

 それなら、そうと教えてくれれば良いのに・・・と内心思ったのだけど、でも、当時師父に「横隔膜を下げろ」と言われたら、「気を下げろ」と言われる以上に頭を使って考えてしまったかもしれない。「気を下ろせ」というのは、太極拳を学び始めた第一日目から教わることで、それを毎日のように言われ続ければいつかはできるようになる。タントウ功自体が、気を下げたまままでいることだ。沈肩も含胸も、それらをしなければ、気は落ちない。

 ただ、生徒さんを教えていて難しいと感じるのは、気を下げて欲しいのに、体を落としてしまうことだ。 

 実際、制定された太極拳は<体を落とす>ことがほとんど標準になっているようだ。

 本来の太極拳は、体は落とさずに、気を下ろしている。

 それはスポーツと同じで、体を落としてしまうと素早く動けないからだ。重心を落としても体を落としてはいけない、というのと同じことだ。

 

 が、このあたりはなかなか理解が難しい。

 推手をすると、体を落としてしまったら一貫の終わりだと気づく。相手の力を捌けない(化勁ができない)のですぐに倒されてしまう。

 でも、套路の練習しかしていないと、自分が体を落としているのか、気を下ろしているのかどうかが分からないこともしばしば。

 

 だから、ここで、<気を下ろす>と言う代わりに<横隔膜を下げる>と表現することを取り入れてみようかと思う。

 <気を下ろす>と<体を下ろす>の違いが分からなくても、<横隔膜を下げる>と<体を下ろす>の違いは分かるだろう・・・

 

  <では横隔膜をどうやって下げたままにするのか?>

2023/10/1 <含胸を作る要領 含胸の効果 横隔膜と骨盤底>

 

 前回のメモの中での問い。

 

 胸を張らずに、”前に押し付ける>

 

 と、岡田君が言った、それは太極拳で言えば何の要領でしょう?

 

 答えは

  『含胸』 です。

 

 私は師父からしょっちゅう「含胸をしろ!」と胸を後ろに引くように押されてきたので、含胸は<胸を後ろに引く>感覚中心でやっていた。

 けれども、生徒さんに同じようにすると、胸がぺちゃんこになって立てないか、前肩になって猫背になってしまう。

 なかなかうまくいかないなぁ〜 と思うことがしばしば。

 

 含胸になった時の感覚は、胸に空気を含んでいるかのようで、だから『含胸』というのだと納得できるのだけれども、どうやったらその状態を作る要領を教えられるのかが分からない。師父も私に教える時に随分苦労したのだと今になって分かる。沈肩はある程度できるようになっても、含胸はなかなか要領を得ない。

 

 と、ここで岡田君! なんと、「胸を張らずに、胸を前に押し付けろ」と指示。

一瞬、どういうこと?と思ったが、その通りやってみると、あ〜、含胸になる!と納得。

 番組を見た人でそれが分かった人はどのくらいいるだろう?

 

 <胸を前に押し付ける>とだけ言うと、おそらく<胸を張ってしまう>。

 もし<胸を張らないこと>を条件、<胸を前に押し付け>たらどうなるか?

 これが胸に空気を含んだ『含胸』だ。

 

 結局、含胸も、腹の丹田の要領と同じだ。

 丹田の場合は、

 お腹を凹ませないように腰を膨らませる(腰は折らない)=お腹を引きながら出す=腹腔の圧を増やしている

 

 含胸の場合、<胸を張らないように胸を前に押し付けよう>とすると、一旦胸を引く必要がある。引かないと前に押し付けられないからだ。つまり、丹田と同じように、<引きながら出す>といった、反対方向の力が同時にかかることになる。胸腔の容積は大きくなる。ただ圧力は丹田とは異なり陰圧になっているようだ(吸った感じ)。

 

 以上は、主観的な含胸の感覚だが、これを客観的に示すと下の図のようになるだろう。

 

https://ameblo.jp/kyakusenseibishi/entry-12391388866.html

 

 目指すのは一番左の状態。

 

 横隔膜と骨盤底筋が水平で平行だ。

 こうなることで、しっかりと腹圧がかかり腰の負担も最低限になり、内臓も良い位置に保たれる。(細かい説明は上のリンクのブログを読んで下さい。)

 

 腰の王子も公開動画の中で横隔膜と骨盤底筋の関係について上のようなことを言っていた・・・骨盤底筋は鍛えられない・・・(動画検索・・・ありました!)

 

 確かに、含胸をすると、横隔膜と骨盤底が平行に近づきます。

 最初うまくできないのは、胸を操作しても骨盤底筋まで気が届かないから。

 横隔膜と骨盤底の連動を意識すればやりやすくなるかもしれない・・・

 

 ちなみに、上の4つのモデル図。

 一番左が正しい(目標)として、

 左から2番目は反り腰タイプ。横隔膜と骨盤底が反対方向に開いていて、腹圧が抜けてしまっている。このタイプは胸を引く意識をもって含胸をさせるのがよさそうだ。

 

 その隣は、平腰タイプ。背骨のカーブが小さく、横隔膜も骨盤底筋も縮こまっている。日本人はこのタイプが案外多いのでは?この場合は、まず、背骨の可動域を増やす必要がある。立腰体操の三種の神器とか、師父から伝授された動功(丹田回し)とかが有効だ。

 そして含胸をする時は、胸を引く意識よりも、岡田バージョン、胸を張らずに前に押し付ける、という感覚をもたせる方がよいかも?

 

 最後、右端は猫背タイプ。かなり肋骨が下がっている。まずは、丹田をしっかり作って腹圧を高め、腰椎を立たせる必要がありそうだ。含胸は背骨がある程度立ってからするべきだろう。

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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