2023年1月


2023/1/29 <胯と裆の違い 動画後半>

   
  間が開いてしまいましたが、前回の動画の続き(後半)をアップしました。
  動画は撮っていたのに、編集ソフトの扱いが上手くいかず下手に時間を使いました・・・
  編集してテキストを追加してみると、自分の説明のアラに気づきます。
  編集しながら私自身も理解を深めているようなところがありました。
  撮りっぱなしの動画よりは伝えたいことが伝わりやすいと思います。
 今回の動画の面白さは、ストレッチの動作を使って裆を使うことの効果を明らかにすることで、何気なくやっている弓歩、そしてその重心移動を見直すことができることです。圧腿も見直すべきです。使える体とは連動する体。連動には裆が不可欠。動画からそのような理解が生まれると嬉しいです。
  

2023/1/21<胯と裆の違い 動画前半>

 

  裆と胯(股関節)の違いについて動画を作ったのでここに貼ります。

  編集で試行錯誤して気を消耗した感あり(苦笑)

 

   

 上の右列の簡化の形は、いずれも腰を締めているので気が骨盤底筋まで落ちず(円裆にならない)、胴体と脚が一体化しない。股が使えないから前腿に乗ってしまうのは仕方がない。が、これを続けると故障が出てくるので要注意だ(特に右側の画像の方は腰の締めがキツく膝に乗り込んでしまっているのでとても危険)。

 

 腰を締めない=命門を開く=弓にする

 

 この背骨の操作、背骨の丸さがないと気は骨盤底筋まで落ちない→円裆にならない

 

 そして、円裆にならないと足はぺったんこに潰れて踵の力は発揮できなくなる。

 

 裆と足には密接な関係がある。

 

 裆というのは骨盤底筋がピンと張って会陰や肛門が引き上がった状態。内臓が引き上がった状態だ。

 もし円裆でないとしたら内臓が下がっている。

 そのような胴体が脚に乗っかると脚は速くは動けない。

 歳をとると次第に胴体を引き上げる力が弱くなり脚への負担が増える。股関節や膝を痛める主要な原因だ。

 

 太極拳の要領の中で、体を引き上げる方向に使われるのはどれだろう?

 

 虚霊頂勁は引き上げる作用があるのは明白だ。

 

 沈肩や含胸、塌腰,敛臀 などは気を上から下向きに落とす作用がある。

 

 そのほかに引き上げる作用のあるものは?というと、舌を上アゴに貼り付けること、会陰や肛門を引き上げること、そして足の土踏まずを引き上げること(足を扣にすること)がある。

 

 先週末から少しずつ足の要領について生徒さんたちに教えている。

 足の要領は、一人ずつ足の大事な部分を触ってあげながら教えるのが最も効率がよいのだが、今日はオンラインで同時に4人の生徒さんに教えてみた。

 一人一人が自分の足の状態を感じて、今自分の足が

<ぺったんこ>なのか、それとも

<立ち上がっている(扣になっている>のか

それを確認できるようになれば第一関門は突破。

この違いが自分ではっきり区別できないと、いつまでたっても<足>が開発できない。

 

 ぺったんこの時は会陰が上がっていない

 足が盛り上がって足首がしっかりしている時は会陰が引き上がっている

 

 これもすぐに確認できることだ。

  

 各自、毎日気づいた時に足を立体にする。落ちていたら引き上げる。

 これを繰り返していると、いつか癖になってくる。

 すると、下のような2枚の写真を見た時に、あ〜、足が違う! と見えるようになるのだ。

 左は足が立体的、足首が立っている。右は足がペタンコだ。

 左は地面からの反発力を受けている足、右は地面を踏んづけた足(反発力が得られない)。

 

 

 

  反復横跳びをしようとすると胴体をこじんまり纏め、かつ、胴体を軽くして足を運ぼうとする。これは丹田に気を沈め『合』になった体勢。弓のカーブが最大にきつくなる。

  それから体全体で動き出す。脚が胴体の一部のように動けた時に最も速く動ける。

 

 上の動画のような速く動ける人たち動画を見ると、みな上体は一かたまり(背骨の弓)、股が開いたまま(円裆のまま)動いているのが分かる。逆に、胴体がゆさゆさ上下に動いているような人は股関節から動こうとしている。俊敏には動けない。

 

 背骨の弓の下にはは裆(股座、骨盤底筋)がある。

 体重をそこまで下ろした時に(円裆になったとき)、足はとても使いやすくなる。

 円裆は股関節を自由に操作するには必須の要領だ。

 

 私が2020年に撮った動画の中に、既に円裆で重心移動をすることを説明しているものがあった。(https://youtu.be/NS7p4z_Asy4)

 上は駅に貼っている四谷大塚のポスター。毎日のように目にするが、見るたびにいろいろ考えてしまう。

 

 この4人の中で最もダッシュが速そうなのは誰?

 きっと皆、一番手前の男の子だと答えるだろう。

 じゃあ、なぜ、そう思うのか?

 

 比較していってみよう。

一番右端の大きな女の子はどうだろう?

 彼女は真剣に走ろうとしていない。楽しく走る姿を写してもらうことを意識している。ある意味、演技だ。それは表情からも分かるけれど、体が立ち上がって気が上の方にあり、足にまったく蹴る力がないこと真剣にダッシュしようとしていないことが分かる。

 

  彼女と手前の男の子を比べると、男の子の気はお尻あたりまで落ちていて、足首がしっかり折れ、足裏が本当に蹴っているのが分かる。上虚下実の状態だ。(女の子は上実下虚)

  そして、女の子の上体は立ち上がっているので弓になっていないが、男の子はしっかり頚椎から仙骨尾骨までが弓になっている。頭頂から足裏までが一つに纏まっている。運動神経がとても良さそうな少年だ。

 

  手前の男の子と、左端の男の子を比べるとどうだろう?

  この二人の目をみると、手前の子はキリッとしているが、左端の子はぼやっとしている。目が入っていない、ということは、上丹田まで気が達していないということ。つまり頚椎がうまく使えていないということ。左端の男の子は完全に顔を上げて正面を見てしまっている。顔を上げた時点で頚椎は折れる。手前の男の子は、顔を上げずに目を上げている。頚椎に気が通せている、ということは、仙骨まで気を下げられている、ということだ。(頚椎を立てるには仙骨まで気を通す必要がある。)

  左端の男の子の足が手前の男の子の足ほど地面を踏めていない(足首や足裏に力強さが足りない)のは、仙骨まで(下丹田まで)気を降ろせていない証拠だ。

  タントウ功で、帯脈(臍、ウエストの位置)から下丹田(仙骨や膀胱の位置)まで気を降ろす練習をするのは、それができないと足裏に気が降りず、かつ、首も立たないからだ。

  

  男の子二人の背骨の弓の状態をみると、手前の男の子は全身が弓状になって体全体にバネ力が蓄積されているのに対し、左端の男の子にはバネが感じられない。それは、首が折れてしまって胸椎と腰椎だけで背中を弓状にしているからだ。胸椎と腰椎だけで背中を丸くするとすぐに猫背になってしまう。体は下方に落ちていくから、脚が重くなる。脚が重いと上げづらくなる=走るのが遅くなる。 

  手前の男の子が軽々と足を上げて上体に引きつけられるのに対し、左端の子の足が全く上がっていない(上げられそうにない)のはそんな理由だと思う。

 

  上虚下実、というのは脚を重くするものではない。脚を鈍重にすると身軽に動けなくなる。上虚下実によって気が足に落ち、脚が素早く動けるようになるのが本当だ。脚を太くするのが下実ではないのは言うまでもない・・・

 

  最後に一番奥の小さな女の子。この子はそこそこ良い感じ。子供らしくバランスが取れている。

 

  一つ大事な点を付け加えると、なぜ手前の男の子が一番速く走れそうかという理由は会陰が一番よく引き上がっているからだ。体がこの子のように頭のてっぺんから足裏まで一つの弓になるには会陰が命門に向けて引きあがらないと無理だ。

2023/1/9 <背骨の弓 命門 腹圧との関係>

  

   背骨を弓にする、というのは何も太極拳に限ったことでなく、私達が運動する時はそうなってしまう。弓にすることで体にエネルギーが集まる。力を発散する時には背骨の弓が伸びて弾けるようになる。

 

↓スポーツでは背骨を弓にして動くのが当たり前。

 

 背骨の弓が動作の速さ、強さを決める。

 

 下の二枚の画像。

 いずれも推手の場面だが、それぞれ二人のうちのどちらが優勢か、背骨を見れば分かるはず。(風貌を見れば明らかに片方が師で片方が弟子だが、それにとらわれず、背骨を見るだけでもどちらが師でどちらが弟子かが分かる。逆に言えば、師というのはそのような背骨の持ち主。)

 

  

 今日のレッスンではいろんなことをやってもらったが、最も大事なことは命門を開くこと。命門を開けば、脚は腰(帯脈ライン)から動かせるようになる。脚は股関節から動かす意識では足りない。腕を肩から動かす意識では足りないのと同じだ。腕はせめて胸奥から動かす。本当は丹田から動かす。脚も同様、股関節から動かすのではなく、腹腰=丹田で動かす。そのようにすることで、一度丹田を動かせば腕も脚も一緒に動いてしまうようになる。

 

 《太极十三式歌》の中にある有名な句

“命意源头在腰隙,刻刻留意在腰间”

 は、常に腰の隙間、あるいは腰の間に注意を向けるように言うが、ここで言う「腰の隙間」や「腰の間」は命門を表す、というのが通常の理解だ。

 

 

 では命門をどうやって開けるのか?

 どのような方向に開けるのか?

 

 実は内功の第一歩は命門を開けること。

 

 来週のオンラインレッスンは命門を開けて背骨を弓にすることに挑戦してもらおう!

 

 <追記>

 今日のレッスンでは脚が腰からついていることを分かってもらうために、足を上げて前→横→後ろへと動かしてもらったり、一本足になったりしてもらったが、足を上げる練習(圧腿)や開脚、前屈、などは「基本功」だ。あまりにも股関節が硬かったり背骨が硬いと、どんな運動も制限をうける(怪我をしやすくなる)。気を通そうにも通らない。

 開脚、前屈、などは、毎日欠かさずやること。こればかりは要領云々の問題ではない。継続あるのみ。

 ここにも同じような違いが・・・

 

 解説は後回しにするが、私がここから学んだのは含胸の重要性。含胸ができないと頭が立たない。メッシは常にしっかり含胸をして足先まで気を下ろしている。全身が一つになる。

体幹部の強さ、伸びはそれに伴う脊椎の回転(ねじれ)から生まれている。

 太極拳でこのような体の使い方の原理が学べる。

 加齢とともに肋骨の可動域が失われますます含胸が難しくなるのも事実。すると気が胸に止まり腹底まで沈まなくなる。教える側としては、気が腹底まで沈んだ感覚をできるだけ早く体幹させることが大事だが、それにも個人差がある。

 

 気が上がっている、気が落ちている、など、気がどこにあるのか自分で自分を見る練習も必要だろう。

 上の画像では、メッシの気はしっかり腹底=骨盤底筋まで沈んでいる=足先まで気が届いている。 他の選手達は胸に残っている→軸足の太ももに体重が乗っている=前方方向に進む力にストップがかかっている。 メッシの場合は気を完全に沈めているので前腿に乗らずダイレクトに足裏に体重が乗る→ストップがかからないから体が凹むことなく前に出ていける。

 

<下の画像で単純な解説>

 

左:胸が出て、腹が凹んで前腿に乗る

右(メッシ):胸が凹んで、腹が凸、足裏に乗る

 

 右は全く減速なしに蹴っている

 左だと蹴る時に減速する

 

 右は中正がとれている

 左は軸が途中で切れている(右を見てから左を見ると体が暴れているように見える:一つにまとまっていないように見えないか?)

 

 メッシの体の動きがこんなに美しいとは知らなかった。どの画像をみても中正がとれていてきれい。太極拳を学んだらすぐに上達しそう。

 

 

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『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

   馮志強老師著

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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