2022年5月

2022/5/30 <背骨の前側 腹圧と丹田>

 

 背骨の前か後ろか、の話で思い出した。

私は大学生の頃まで寝っ転がって本を読んだりノートを書いていたことがあった。

左のイラストのような体勢だ。

この姿勢でテレビを見ていることもあった。私にとってはごく普通の姿勢。

 

娘が受験勉強を始めた頃、椅子にずっと座っていて腰が痛いと言い始めた時のこと。私は、それなら、寝っ転がって勉強すれば?と気軽に答えた。うつ伏せになると腹圧も高まるし腰への負担が減るだろうし、と思ったのだが、娘は、そんな体勢になったらもっと腰が痛くなる、と即答。

えっ?と驚いて、ちょっとだけその姿勢をとってもらったら、「無理無理、腰がヤバイ。」、とギブアップ。その時初めて”反る”には腹圧が必要なことを知ったのでした。

例えば左のようなポーズ(コブラのポーズ)。

このように”反る”動作をする時に、

 

お腹側を伸ばすのか?

それとも

背中側を縮めて引き上げるのか?

 

それが大問題。

通常それは無意識に行われます。

 

私たちが赤ちゃんの頃は誰もがこの反り姿勢をしていた。

 この時私たちはどこをどう操作していたのか?

 

 赤ちゃんは背中の筋肉を収縮させるようなことはまだできない。

 赤ちゃんは腹に力を入れて伸ばしているだけだ。

 つまり、腹圧で腹を伸ばしている。

 

  大人になって同じような姿勢を作ろうとした時、無意識で背中に力を入れたとしたら腹圧が減っている証拠。背中(腰)に力を入れて反らしたら腰が詰まって腰が痛くなりそうだ。

 

 反る時は脊椎の腹側(緑のライン)を上方に伸ばすようにする。背中側のオレンジのラインを使って背中を外らせようとすると椎間板が潰れて腰に問題が起こる原因になる。

 

 

 

 逆に、腰のカーブをなくすには、これまたやはり、腹側の緑のラインを、今度は下方に伸ばす。これが通常立つ時の姿勢だ。緑ラインを腹圧で押しながら下向きに伸ばしていくと足に気が降りてしっかりするし、命門も開いて上半身と下半身が連結する。


  腹圧で背骨を操作する、というイメージ図。

 

  太極拳だとこの腹圧が丹田にあたる。

 

 

  太極拳では直接背骨を操作することはない。丹田を使って背骨が押される。つまり腹圧が第一だ。

 

 お尻を入れるのも、お尻(仙骨)を動かすのではなく、丹田(腹圧)によって仙骨が動く。

 (昨日のマイケルジャクソン、ポー!だと腹圧で仙骨の位置が変わるのが分かるはず。仙骨をダイレクトに動かすと腹圧が減って元の木阿弥。)

 

 背骨の操作は腹側から、というのは、取りも直さず、丹田第一、ということでした。丹田(腹圧)なしに背骨の位置を変えても体が硬直するだけ。 注意が必要です。

2022/5/29 <骨盤を立てる マイケルジャクソン、ポー!と敛臀>

  忘れないうちにメモ。

 太極拳を習った人に多い勘違いの一つ。
 「お尻(仙骨)は入れなくて良いのですか〜?」
 いわゆる『敛臀』の要領です。
 『敛臀』はあくまでも会陰を引き上げて骨盤底(胴体の底)の面を水平にするもの。

 決してお尻の肉を締めるものではありません。
 お尻の肉がキュッと締まって三角形のお尻になってしまったら歩くのも走るのも大変。前モモ、膝に直撃です。

 要は『敛臀』は骨盤をニュートラルにするための要領。骨盤、仙骨を立てる、というのがニュートラルです。骨盤を寝かせるのが『敛臀』ではありません。

 

 ↓腰の王子の下の動画前半、 ”マイケルジャクソン、ポー!”体操の説明が参考になります。

  (仙骨は後ろ(背中側)から入れるのではなくて、内側から引っ張って入れる感じですね。命門を開けるのも同様です。結局、丹田を使って脊椎を操作する、ということです。マイケルジャクソン、ポー!でお尻が入ると下腹が張るけれど、ただ後ろからお尻を押してお尻を入れるとお腹が凹む。前者ではお尻は割れるが、後者ではお尻がくっつしてしぼんでしまう。どっしり座れるのはどちらか、違いを確認してください。)


 

  

  仙骨は後ろ(背中側)から入れるのではなくて、内側から引っ張って入れる感じですね。命門を開けるのも同様です。

  結局、丹田を使って脊椎を操作する、ということです。

  マイケルジャクソン、ポー!でお尻が入ると下腹が張るけれど、ただ後ろからお尻を押してお尻を入れるとお腹が凹む。前者ではお尻は割れるが、後者ではお尻がくっつしてしぼんでしまう。どっしり座れるのはどちらか、違いを確認してください。

 

  下の図に違いを示してみました。背骨は前から推す。すなわち、丹田、腹圧で操作します。背筋では押しません(硬くなります)。また、背骨で立つことはありません。背骨の前側に中心軸が通るようになります。

  意識を背中側から内側に向けようとした時点で意識は外に出てしまう。

  意識は内側から外向きに使う。そうしないと気が通せないし感覚もとれない。

  当たり前といえば当たり前なのだけど、自身の経験からすると無意識で後ろ側に意識を回していることがしばしばあります。これは要注意です。

 

<後記>動画をよく見ると、マイケルジャクソン・ポーの時、王子は手を股の中まで(会陰部まで)差し込んでいます。股の前を前に出しているのではありません。

 このようにすると、坐骨は残って、その全部の会陰部から恥骨までの骨盤底筋が広がる感じになります。つまり、园裆。

    マイケルジャクソン・ポーは园裆を作る技だと気づきました。

  くれぐれも坐骨まで前に引き出しませんように。坐骨は立てたまま。

 

2022/5/24 <スネを見る?>

 

 スネを見る? 本当にスネを見ているわけではないにしても目線は足元まで包み込む。

目は意。目が達することは意が達すること。

 頭を天頂に掲げていなければならない、と思い込みすぎて下半身に目線が及ばなくなる。上半身が箱のように固まってしまうのはあまりにも”型”に気を取られすぎているからだろう。

 

 実際、活きた太極拳の動きを見ると目の動きも活きているのが分かる。頭頂を失わずに足元まで目線を落とせるのは体幹(肋骨)が柔らかいから。

 これまで気づいていませんでした・・・

 「イチローの肩入れストレッチ、は肩入れじゃない。スネを見ている」と言う、腰の王子の「スネはまっすぐでスネ〜 体操」で気づいた事実。(肩を動かさず)スネを見ようとしたら嫌でも肋骨が動かなきゃならない。太極拳の「含胸」は胸郭を動かすための要領だったのだ。胸郭が柔らかく動けば、頂勁を失わずに(頭頂を失わずに)目線を広範囲に広げることができる。胸郭が動けばしゃがむのも楽々だ。

<以下、検証>

 

←大鵬の土俵入り

下を向いてる

 

 

 

 

 

↓冒頭の「金刚捣推」の一時停止画像

左は師父の動き。

やはり下を見ている。

 

上の馮老師は目が手よりも先を進んでいる。眼法が徹底している。

 

上の女性たちは習った通り(セオリー通り)なのだろうが、胴体が固まってしまって股座が開かず前太もも、膝に乗ってしまっている。太極拳の大会でいい評価を受けたとしても臨機応変な動きが必要な実践、日常生活での動作には発展しない。

 

 

一度、しっかり下を向いてしゃがんでみて、そのしゃがみやすさが体感できたら、徐々に頭を上げていってそれでも同じようにしゃがむにはどこをどうしなければならないのか、それに気づけば練習の仕方が変わるはず。

 

2022/5/20

 

  最近は腰の王子の動画を見たりセミナーを受けて見たり。体の動きについての研究を極めている王子の話はストンと太極拳の動きに落とし込める。師父が言っていたことはこういうことだったのか、と、王子の説明で分かることもしばしばだ。

 

  例えば今日見たのは肋骨で手を使うお話。

 拭き掃除を手だけでやればかさかさ、肩甲骨からすれば少し摩擦が出る。が、肋骨から圧をかければ・・・

  これは太極拳で手が重くなる原理だ。私くらいのレベルでも、手を合わせるとなぜこんなに重いのか、密着するのか、と男性生徒さんからも不思議がられる。

 実際、推手で手を合わせた時(搭手)、相手の手(腕)に重さがあると、最初からもう敵わない、と分かってしまう。

 手が重くてベタ〜っとした感触になるのは、「放松して気を下に降ろしているから。」と説明したりするけれども、もっとフィジカルな言い方をすれば、より体幹部に近い部位の筋肉まで総動員しているから、ということなのかもしれない。

 

 上の王子の動画ではバイオリンを例に出しているが、ピアノでも同じだろう。腕で弾いている人は一般的、肩甲骨を使っていれば上手な方、もし肋骨まで使えていたらとても微妙な音が出せて、かつ、指の器用さがさらに増すだろう。

 

 太極拳だと筋肉の話はせずに、その内側にある内気、もしくは経絡やツボで説明をする。

肋骨が使える、というのは、下部肋骨なら中丹田、胸より上の肋骨なら「含胸」をきちんとすれば使えるようになる。肋骨を動かす意識がなくとも、内側の気を使うことで肋骨が動いてしまう。

 逆に言えば、「含胸」ができないと上部肋骨は動かないし、中丹田の気を鳩尾まで広げられないと下部肋骨は動かない。

 けど、王子のメソッドでは、肋骨を動かそうとするうちにいつの間にか「含胸」や中丹田の気を使えるようになるのかもしれない。

 

 肩甲骨を動かす時も、肩甲骨の裏側(肩甲骨と肋骨の隙間)から動かす必要がある。同様に、肋骨を動かすには、肋骨よりも内側に意識を置いて肋骨を動かす必要がある。動かせない時は、その”内側”に意識をとれないからだ。が、頑張って動かそうとしているうちに内側に神経が伸びて動かせるようになったりする。それにも訓練が必要だ。

 (私は耳が動かせないけど、耳が動かせる人は耳の内側から耳を動かすような通路を持っているはず。私が耳を動かそうとすると意識が耳の周りを巡ってしまい耳の内側に入り込めない。これに対して、人差し指を動かそうとするとすぐに人差し指の内側に意識が入って内側から人差し指を動かすことができる。)

 

 全身が一つの気で繋がってしまっていたら、手を動かそうとしたら肋骨が動いてしまってるだろう・・・

2022/5/16 <マスクの中を涼しく保つ呼吸>

  

   メモが追いつかない。

 忘れないうちに一つ。息の話。

 この前、ハミングとリップロールのことを書いたけれども、その延長線上にある話。

 

 暑くなってくるとマスクがやっかいだ。

 パリの夏は湿気が低いので何も感じずに過ごしていたが、こっちは湿気が多くてマスクの中がこもる。4月に入ってからマスクに覆われた鼻の周辺の皮膚がムレて赤くなってしまった。人がいない場所ではマスクをズラすことにした。

 ムレない夏用のマスクをいろいろ購入して試しているが、ちゃんとウィルスを遮断するようなマスクはやはり暑い。スースーするマスクは見せかけマスクでマスクの意味はない・・・

 

 と、この前、マスクをつけて道を歩きながらリップロールに挑戦していたが、マスクをつけているとうまくできない。よけいマスクの中が湿っぽくなってしまった。どうしたらマスクの中を涼しく保てるのかしら? と、マスクの中が暑くならないように気をつけて息をしてみた。

 「鼻から吸って鼻から出せばよいのでは?」

 鼻から吸うのは簡単。

 問題は鼻から出す時。

 マスクをしていると、鼻から息を出す、というのが普段よりずっと厳密になる。口の息が混ざるとマスクの中の温度が上がってしまう。

 鼻だけで吐くにはかなり注意深く息を細く長く保たなければならない。丹田(腹)の溜めがかなり必要・・・・ん?これは丹田呼吸? 

 ほとんど息をしていないかのような息になっている。

 鼻から吸って、鼻から吐こうとすると、吸いながら吐いているよう。逆に、鼻から吸う時も吐きながらすっているよう。

 やはり丹田呼吸だ。

 丹田呼吸の時は、鼻だけの呼吸になっているのだと初めて気づいたのでした。

 

 それからマスクを外して、鼻から吸って鼻から吐いたら、鼻から吐いた息の中に喉からの息が混ざってしまっているのが分かってしまった。喉からの息が鼻から出ると丹田は起動しない。喉からの息を混ぜずに、ただ鼻からだけの涼しい気を鼻から出そうとするといやでも丹田が必要になる。

 なんて面白い!

 気配を消す時の呼吸だ。

 感覚的には、眉間から股間までの長い距離を息が入ったり来たりするようだ。

 

 実際に体の中で何が起こっているのか厳密なことは分からないが、きっと横隔膜と骨盤底筋が動くのだろう。

 この息をすると、頭がはっきりして体がスッキリする。

 そんなことなら、マスクをつけた時はこの息をすればいいじゃん、と思うのだが、急いでいたり犬を連れていたりするとなかなか落ち着いて鼻から涼しい息を出すことができない。やはり、落ち着いて気を鎮める必要があります。

 

 マスクの中を涼しく保つような呼吸を試してみると普段気づかないことに気づくかも。オススメです。

  

2022/5/12 <胸から腕を使う>

 

   腕の付け根は胸鎖関節、あるいは胸骨。

 

 練習では、まず肘が使えるように練習する。肘が落ちないようにする、ということだ。師父は肘の”ポン”と表現する。肘を張ったように使う感じだ。肘が落ちてしまうと二の腕が使えない。肩も使えない。腕が胴体から離れてしまう。『墜肘』というのはその張った肘をほんの少し下向きに墜落させる、ということだ。前提として肘が張れなければならない。

 

 肘が起動すれば自ずから肩が起動する。

 腕を胸から使う、というのは、その先の話だ。

 師父は何度か私に両手を広げさせて、手と胸の関係を教えてくれた。

(←https://hochi.news/articles/20180723-OHT1T50293.html)

私の大好きな池江璃花子選手が両手を広げた姿。

そこに三本のラインを引きました。

喉のラインが親指、その下が中指、一番下のラインが小指ライン。

 任脈上のツボで言えば、親指は天突、中指は華蓋、小指はだん中。(この3つのツボはよく使う大事なツボな。指もそれらのツボと対応させて覚えると簡単。)

 

 こんな風にならってきたことが腰の王子の動画でさらに理論的に説明されていた(といっても冗談いっぱいだが)。↓の動画


 

 いつものことだが、腰の王子の説明を聞くと、師父が教えてくれたこと、しゃべっていたことがよく理解できる。ああ、そういうことだったのか〜、とその時にわからなかったこと、テキトーに聞いていたこと、見ていたことが、はっきりくっきりとするのだ。

 

 最近ブログの整理をして見たこの画像もその例。胸から腕を回している馮老師と肩から回している弟子との違い。これは体幹力の違いとしても現れてくる。

     一般的な太極拳の老師は肩から腕を使っているのが今の太極拳界の現状。套路だけ練習していても胸から腕を使うようにはならないだろう。内功や推手(形式的でない本当に推し合う推手)の練習が必要だ。

 

  胸から腕を使うのは少し前に紹介した護身術でも同じだ。

  そして日常生活でもその癖をつけるべき・・・と私も手を使う時に意識的に行うことを心がけるようにした次第。

  実際、胸から腕を使っている人の仕草は自然で美しい。そんな動きに私は惹きつけられる。

 ホロビッツの姿勢は太極拳の大師のようだと昔から思っていた。虚霊頂勁で身体が放松している。お尻がどっしり。そして腕は真ん中からついている・・・肩がない。胸からの動きだ。

  ランランは頭が前に出て猫背気味。お尻のどっしり感がない。肘が使えないのもそのためかも。が、肘から先が非常に器用だ。中村紘子氏は今見ると肩が上がって腕の筋肉で弾いているよう。ピアニストも胸から弾ける人はそんなに数は多くないようだ。

 

  そして仕草といえばお茶。気になって裏千家の前家元、千玄室のお点前を見たら、あ〜、ドキッとする動きだ。これも一般的な師範の動きと比べると差が歴然とする。違いは、片や胸から、片や肩から。動きの柔らかさが全く違う。

  上の千玄室の柄杓を置く手の動きが感動的で、普通の人はどうやっているのだろう?と見たのが右側の女師範の動き。千玄室が柄杓を収める時、腕は動いても上体は立ったままだが、女師範の動きを見ると、腕と一緒に上体がお辞儀している。千玄室の動きは胸の内側の動きだ。

  お茶を点てる時も、千玄室のブルブルは胸、体の内側から始まっている。だから指先にしっかりと力がある。女師範は腕だけで茶筅を回しているから手首が硬直している。飲んでみたいのはやはり元家元の点てたお茶かなぁ。掻き回しているのではなく、練ってるよう・・・ 片や、心から、片や、丁寧に・・・丁寧にやっても必ずしも心からやっているわけではない、というのが面白い。

 

  これらの画像を見ていくと、胸から腕にするにも、やはり正しい姿勢、上虚下実、沈肩や含胸が必要。ただ、私たちが本当に心を込めて何かを捧げもつ時、知らず知らずにそのような仕草になっているように思うのだ。心を込めて歯ブラシを持って、心をこめてブラッシングしたら、きっと胸から使うことができる、のでは?試してみよう♪ 

2022/5/10 <ハミングとリップロール>

 

  頭部の”虚”の感覚は、「頭が上から紐で吊られているように」といったイメージだけでは得られないだろう。内側からのアプローチ=息が必要だ。

  私は昔「頂勁」の感覚を得るために、サッカーのヘディングをイメージして内気を操作してみたことがあったが、それでは頭に血が上ってしまって決して”虚”にはならなかった。

『虚霊頂勁』・・・虚(そして霊:機敏に動く様)であってしかも頭頂まで勁が達している、とはどのような状態なのだろう?

 

 本当は、タントウ功や套路を練習している時にそうなってしまっていた、というのが正道なのだろうが、首から上の要領については声楽家たちがものすごく研究をしている。彼らの知恵、テクニックを借りるのも有益だと思う。

 

 実際、私はある一本の動画を見て、一連の謎が解けた。

 なぜ腹の丹田を上丹田よりも先に作る必要があるのか、なぜ上丹田(頭部)には軽く涼しい気が(息)が入るのか、端的に言えば、腹と頭にある気の関係、だ。

 そんな理屈に関心がなくても、一度下の動画を見ながらエクササイズをしてみると、息の扱いが今よりもレベルアップするはずだ。

 

 

 力を抜いて〜リラックス〜

 

 鼻から吸って鼻から出す〜

 鼻から吸って口から出す〜 決して力まない

 それから、その調子で声を出す〜 ハミング〜 鼻を響かせる〜

 そして、リップロール、唇を合わせてブルブルブルブル〜〜〜

 

 あれっ?ブルブルができない? 子供の時あんなに簡単にやっていたのに。

 と、最初の1回目、私は焦ったのでした。

 それから動画を見ながら先生の動きを真似る・・・この動画の先生は寛容そう。ゆったりとしたテンポも好きだ・・・

  なんとなくできるようになって一安心。

 

 それからしばらくは道を歩いている時にリップロールを練習したのでした。ちょうどパリがコロナでロックダウンの頃。マスクをつけてリップロールはし辛い。けど、しばらくは気づいたらやっていました。

 

 気づくかしら? リップロールをするには、腹に息を押し込まなければならない。腹に息を押し込むのと同時に軽い気が唇の方に上がる。へぇ〜っと面白くて、何度も確かめていました。これが、気を下に一寸下げると三尺上がる、とかいうちょっと中国的な誇張の入った表現の示唆している現象の一端に違いないと。

 

 ともあれ、ハミングとリップロールがオススメです。特にリップロール。リップロールができれば、涼しい息、頭の中の空間、そして頭の位置も分かってしまう。目立って奥から開いて瞬きなくなります。上丹田は覚醒の場だ。。。

 

 

 

 

2022/5/7 <立ち方から頭の「虚」へ>

 

 「正しい立ち方とはどういう感じですか?」とある生徒さんが聞いてきた。なんと壮大な質問! 簡単に答えたら、自然な立ち方、だろうけど、その”自然な立ち方”がどんなものかはなかなか掴めない。自然、ニュートラル、になるために日々努力するのがこの練習。。。

 

 と、答えに詰まってしまったら、「バレエダンサーの立ち方は正しいですか?」と彼女が質問を変えてきた。一般的に見て、舞台上で見せるバレエダンサーの立ち方は”自然”だとは言えない。骨や筋肉でしっかり立っていて硬い感じがする。あれがお手本ではないだろう・・ なら、子供の立ち方を見たらよいのでは? 街にはなかなかお手本になるような立ち姿の人はいない。身近なお手本は子供達だ。それも小学校に入る前あたり。幼稚園生くらいが外れが少ない。その頃の子供達が列をなして歩いていると私はず〜っと見入ってしまう。体のことが全く気になっていない、そんな時代。しっかり立っているけれど決して踏ん張らず、骨が分からないくらい柔らかい。

 そして私が見入ってしまうのはあの首筋から後頭部にかけてのライン。頭がクルンと前回転してうなじがスッと伸びている。(←左の画像参照 はhttps://renbi.com/blog/entry-11392)

 

 首と背中の境目がない。というか、背中からすっとそのまま首になっている様。これが大人にはない。

 

 以前、劉師父に対面した私の生徒さんが、師父の頭のつき方が子供のそれのようだった、とコメントしていたが、確かに、師父の背中から頭にかけてのラインは子供に似ている。肩こりや首こりと無縁、というのも頷ける。

 

左の画像はイチローが高校球児に教えている場面だが、イチローのスッと伸びた立ち方を見てから球児達と見ると、その差が歴然となる。

 自然にスッと立てていると、頭(頭蓋骨の上半分:脳の部分)がフワッと乗っているような感じになる。これが「虚霊頂勁」の「虚」の感じだ。

  脳の部分は涼しく開いた感じになるのがよい。

  逆に、脳の部分が熱く詰まった感じになると、血管が詰まったり切れたりしってしまうから要注意だ。

 

  上の上段の画像はスッと”伸びて”立っている例。これに対し下段の画像は、普通に見かける大人の真っ直ぐ。下に落ちている(たるんでいる)ために、上段の画像のような上下の伸び(引っ張り合い)がない。足が地面を踏んづけてしまうため、気が地下へと抜け切らない。すると頭も「実」になる。頭が「虚」になるには、気を下に流してしまう必要がある。

 

  トランポリンで飛んで跳ね返る時には頭に衝撃はないと思うが、もし、コンクリートの床で飛んで跳ね返ろうとすると頭に多少衝撃が来るだろう。

 頭が「虚」になるには、体のクッション=身体中の関節のクッションが必要だ。そのために脱力の練習をする。股関節やひざ関節だけを緩めても脱力にはならない。関節数が多いのは胴体(80数個とか)。全てを満遍なく脱力できると体のクッションができるのだろう・・・

 

  立ち姿全てを調整するには随分時間と努力が必要・・・ということで、立ち姿について質問をしてきた生徒さんが、「仕事をして頭がいつも重いのですが、それをどうにかする方法はありますか?」と質問を変えてきた。脳の中に涼しい息を入れると良いのでは? とその後は頭部に特化した話になりました。続きはまた後日。

2022/5/3 <肩関節は脱臼しやすい>

 

 肩に関係する関節を一つ一つ見ていくのは面白いけれど生徒さんたちに説明するとややこしくなる。

 要は、”ちゃんと使える”ようになればいいのだから・・・と思い出したのが、肩関節は非常に脱臼しやすい、という事実。

 

←https://www.jnj.co.jp/jjmkk/general/dislocationより

 

小さなお皿(肩甲骨の関節窩)に大きな球(上腕の関節球)。

腕を思いっきり引っ張られたらすぐに腕が抜けそうな構造だ。

股関節のハマり具合とは全く違う・・・

 

そう、だから、腕を使う時の鉄則は、”外れないように使う”ということ。

引っ張られてもそう簡単に外れないような状態にしておく。これが「沈肩」だ。

 

もしこんな風に両手を引っ張られたら? それも全力で。

 

両腕は引っ張られるにつれ肩の高さへと上がっていくだろう。

そしてもし両腕が両肩の高さで水平になってしまったら・・・ほとんど八つ裂き状態。逃げられなくなる。

https://www.jet-kravmaga.com/20180710-3/

 

そしてこの体勢も然り。

ここんなふうに引っ張られて、こんな風に逃げようとしたら、腰を落としている分相手に負荷を与えられるが、肩の脱臼かそのまま引き摺られるか。引っ張られた自分は何もできない。

 

このような時はどのように外すのか?

まずは相手に逆らわず身体を相手の方に近づけて肘を折りたたむのだ。この画像の出所である護身術のサイトに説明されているとおりだ。

ちなみに、そのような外し技は混元太極拳24式の第3式懒扎衣の中に入っている。

←この右手の逆チャンスーから順チャンスーになるところで肘を相手の腕に入れ込む。

その時大事なのが、自分の体を相手の懐に入れ込むこと。恐れずに自分の体を相手に密着させていくことだ。

肘(上腕)には自分の体がもれなくついてくる、それを体にインプットさせておかないと技はかからない。

相手に体を近づけることで腋が使えて肘技が決まる。相手から体を遠ざければ腕を引っ張られて脱臼しやすい状態になる。(この技は実地で教わらないと分からないかなぁ。私は何度も師父にやってもらってそれでも自分ではできなかったが、ある時、自分の生徒さんに腕を引っ張ってもらったらなんなくできてしまった。できる時は頭を使わずにできるようになってしまうのかも。)

 

 ともあれ、常に”イヤイヤ”の腕(胸から腕が生えている)であれば、引っ張られたら体が寄って行ってしまうだろう。技をかけるのはそれからだ。

 解剖学的には胸鎖関節から腕が始まる。感覚的には胸。というのは、胸鎖関節を使うにしても含胸が必要だから。「含胸」は腕を胸にいれこみ脱臼させないようにするような役割がある。

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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