2022年1月

2022/1/30 <hipはどこ? 18個の球が回る、の意味>

 

   週末のレッスンは私にとっても学びになる。

 生徒さんたちに教えながら実は同時に自分にも同じことを教えている。反復すればするほど定着する。

 

 さて、英語の”HIP”(ヒップ)とはどこのことでしょう?

 

 そんな風に皆に問うことからレッスンを始めてみた。

 ヒップは日本語としてもなんとなく通じる。大体の場所は分かっている。じゃあ、純日本語ならなんて訳すのか?

    

  ヒップ=”お尻”ではない!

  息抜きで時々見ているケビンの英語動画。この回も面白かった。(ちなみに私のお気に入りは黒マスクのかけ君)

  冒頭でケビンが説明しているように、ヒップは骨盤の一番広い部分。体の横にある、という。一番広い部分は大転子の場所。つまり、ヒップは股関節の位置だ。だから、「shake your hips」というようにhipsと複数で使われたりする。(股関節は左右にあるから)

  hipで画像検索してみた。

 日本語でいう”お尻”はヒップも少し含んでいるが、桃尻とか形容される時のお尻は”bottom"とか"buttocks"とかだ。

 

  この英語のhipとbottomの関係は、太極拳で使われる”胯”と”臀”と同じだ。

 すなわち

  hipは胯。股関節、腸骨周辺。骨盤のサイドの骨の部分。

  bottomは臀。ほとんど骨が分からない部分。臀の一番下が坐骨だ。 

(↑https://hobby.dengeki.com/news/1208338/ の図をお借りしました。)

 

 ↑馮老師のテキストにある、人体の18の関節=18の球を書き込んだもの。

 この18個の球が回るように練習する、というのが太極拳。

 上肢に両肩、両肘、両手首、計6個。

 下肢に両胯、両膝、両踝、計6個。

 そして胴体部分に、首、胸、腰、腹、そして両臀部、の計6個。

 合わせて18個、になる。

 

 面白いのは胴体部分。首も胸も腰も腹も、そして左右のお尻も”関節”と捉えられている。ボールベンの先の球のようにするする回るのが理想だ、この”次々と回る”胴体が太極拳の特徴で、胴体を固めて使う空手のようなものと対極的だ。

 実際に套路の中の動作を技として分析してみると、首、胸、腰、腹、胯、臀部と、次々に回転が波動的に連なって動けないと技として成立しないのが分かってくる。波を伝播させていくような体を作るのが内功で、伝播された波は勁として感じられる。

 

 この前テレビを見ていたら、筋トレに凝っていたお笑い芸人が「筋トレをしていたのに病気になった。その時、筋トレしても健康にはならないと気づいた。」と言っていた。

 中国では、古来から「養生法」というものが研究されてきた。どうすれば病気にならず長生きできるか・・・。養生法というのは食と睡眠と運動と休息の4つからできている。どれも大事だ。人は手足がなくても生きていけるが、骨盤がなくなったり、胸がなくなったり、頭がなくなってしまったら生きていくことはできない。すなわち、胴体部は絶対的に必要だ、脳を含めた内臓は胴体部に収められている。五臓六腑を養うのが養生法の基本と言われるのはそのためだ。すなわち、養生法に適した運動は五臓六腑を養うもの。それはに呼吸が大事になる。

 上の芸人が言うように、筋トレでは健康になれない、と言ったのは、それでは内臓を養うことがほとんど期待できないから。胴体の内部に意識をめぐらすような運動が養生法としては適しているだろう。

 

 太極拳のイメージが蛇なのは四肢よりも胴体の動きが重視されるから。といっても、胴体の中の動きは外からはあまり見えない。

 

 套路の中には発勁のできる場所がいくつもあるが、同じ発勁といってもメインで発勁する体の場所が異なったりする。いつもいつも整勁(体全体の力)を使って発勁するわけではない。重心移動でも胯で動くのと、腹で重心移動するのでは動きが変わってくる。その時その時に適切な動き方をするのが武術だから、通り一辺倒にしか動けない、というのでは困る。そういう意味で、套路は24式で基本を学んだら、永久的にそこに止まるのではなく、48式で蹴り技をやり、それから二路に入って足を動かしながら打てるように練習を進めていくべきだと思う。24式だけだと、両足が常に地面に貼りついたまま、左右や前後に行ったり来たりしているだけ。太極拳の真の姿は全く分からないだろう・・・

 

 と、今日も随分生徒さんを引っ張り回していろんなことを教えました。

 胴体の回転についてはまた書きます。

<追記>

 

 上のウルトラマンのフィギュアのサイトでは他にも違うポーズのものが掲載されていました。

 

  ←左のポーズはちょっと中国武術っぽい?

 と思ったら、ポーズの注釈に 「(ウルトラマンに特徴的な)猫背の立ち姿」と書かれてた。

 ふ〜ん、これは猫背なのかなぁ?

←そしたら、こんなポーズも!

 

 ガーン!!

ウルトラマン、こんなにカッコ悪いポーズをとっていたのか? これは猫背だ・・・

 顔が前に出てしまって、首への負担が半端ない!

 

 と思ったけど、おそらくこれはフィギュアで作ったポーズで、フィギュアの背骨の関節の数が少ないためにこうなってしまうのだろう・・・首には7つの椎骨があって全てが関節になるのだけど、フィギュアは首丸ごとでしか使えない・・・上で書いた馮老師の18の球の”球”の意味がここで分かった気がします。首の中にたくさんの関節がないと首自体が”球”となってするする動かない。同様に、胸の中にも、腰の中にも、腹の中にも、胯の中にも、それぞれたくさんの関節があって、胸自体が、腰自体が、”球”のように回る、ということなのだろう・・それだけ回れば、首こり、肩こり、腰痛なんて無縁だろうし、内臓もマッサージされて健康になりそうです。

2022/1/27 <足の『扣』の正体はパー、馬歩・弓歩は”押し伸ばす力”>

 

 以前からよく書けているなぁ〜と感服していたブログがありました。それはバレエのチャコットのサイトに連載している藤野暢央さんの『バレエ・ピラティスによるからだ講座』。

 先週ビデオレッスンで足裏まで気を通すという感覚を教えたかったのだけど、如何せん、身体が硬くて条件が整わない。柔軟体操、ストレッチをするようにアドバイスする一方で、足裏を強くするようなエクササイズを教えた。

 なぜ足裏ストレッチ、グーパーが必要なのか? 

 その生徒さんにはその重要性がまだ分からないのは百も承知。が、一旦、足裏に気が通って開くようになると、その”足”があるか否かで全身が変わってしまうのが明らかになる。足が纏足のようにグーのままだと、身体に気の通り道は作れないだろう。身体のポン(膨張する力)はできない。

 中学や高校の時に英語が大事だ、と言われても、その当時は数学や理科と並ぶ一教科でしかなかった。英語ができればよかった!と気づくのは大人になってから。それは突然くる。もし英語が必要になった時にできる状態にあったなら、世界は一段広がるだろう。必要になった時にできなかったら諦めるか、もしくは、それから頑張るか・・・足の開発はちょっとそんな感じだと思う。後からでも頑張れないこともないけれど、とても苦労する。最初から少しずつ開発していっていれば、それに連動して腰や全身の状態も少しは変わっただろう・・・

 

 そんなことを思いながら、足、足指について検索をしていたら、またまた藤野先生のブログにひっかかってしまった。

https://www.chacott-jp.com/news/useful/lecture/detail001689.html

 

 ふむふむ・・・と読み進めて、ん? と止まる。

 

 

←上の藤野先生のブログから

 

この画像を見てもすぐには理解できなかったのだけど、自分の足でやりながらじっくり画像をたどったら、なんと、この”長いアーチ”が太極拳の足の『扣』では? と気づいた。『扣』はパー(開)だったのだ・・・

 足の指で床を掴むとグーになる。纏足状態だ。身体の中の通路はなくなる。

 やはりパーだ!

 

 と感動して、それでもまだはっきり分からないことがある・・・

 気づいたら、藤野先生のHPを見ていました。

 おっと、新宿御苑の近くのスタジオでピラティスのクラスをやられている!

 早速連絡をとって、昨日、藤野先生のクラスに参加してきたのでした。

 

 太極拳も身体を締めてしまうような動き方が主流になりつつあるのと同様、バレエの世界、ピラティスの世界でも筋肉の使い方を誤解してやっている場合が多々あるようだ。間違えた使い方をしても大会で賞を取ることはできるが、負傷、不具合がついてくる。”開いて使う”というのは身体の中を通路にする、禅的に言えば、竹になる、みたいなことで、無我にも通じる。一生懸命自力で頑張るのは自我の道。自分は通路になる・・・力を通り抜けさせる、これが無我、太極拳なら『無為』の道。身体も通りが良いのが良い身体。便秘や鼻づまり、詰まるのは良くないし、同様に”結び目”ができる(ガンなど)のもよくない。心に詰まりや結び目(怨念 執念みたいなの?)があるのもよくない。

 心がスッとして、身体もスッとしているのがよいだろう・・・

 

 と、余計なことまで考えたが、初めて生で男のバレエダンサーの体を見たのは良かった。やはり足がきれい。足指がスッとしている。体の隅々まで注意が行き届いているというのは武術家以上だ。武術の人の方がも少し雑かなぁ〜。

 慣れない動きをして今日は筋肉痛。膝の隙間を努力で開けて保持する、という練習がかなりきつかった。今日は疲れて放松して立っていたら、自然に昨日の練習でやろうとしていた状態に達してしまった。放松で同じ到達点に達してしまう・・・

 違うアプローチでも目指すところは同じ。違うものを経験すると、自分のやっていることがさらに鮮明になります。とても有意義なレッスンでした。

 

<追加>

 バレエではプリエが基本中の基本。太極拳で馬歩、弓歩が基本なのと同じです。

 プリエについて藤野先生は下のような記事を書かれています。

 https://www.chacott-jp.com/news/useful/lecture/detail001586.html

 

 ここから画像だけお借りしますが

筋肉は

引き縮むか、押し伸ばすか、

それしかない。

 

筋肉によって 

”引き縮む”のが得意なものと

”押し伸ばす”のが得意なもの

がある。

 

それから画像を見ると・・・

なぜ『陰昇陽降』(陰の経絡は昇、陽の経絡は降りる)というのかが納得。


 上を元にすると、プリエ、馬歩、弓歩で重心を下げて行く時は、右の画像の緑のようにするべき。

 

 注意しないと右側の赤色のような力の使い方をしてしまう。

 

 押し伸ばす方を重視。引き縮める方を使わない。

 これを太極拳では、”放松”(余分な力を抜く)の一言で済ましてしまったりするから要注意。

 変な力の抜き方をすると右図の悪い例のようになってしまったりする。力は末端(足裏)に向かって引き抜いてしまうべき(緑の矢印)

2022/1/25 <オンラインの少人数グループレッスンをしてみたい!>

 

   内功、基本功、タントウ功など、太極拳のベースになる功夫のためのオンラインの少人数レッスンをしたいと思っています。

  人数3〜5人程度で定期的(できれば週1ペース)に集まれるようなグループができれば理想的。曜日、時間は参加者の都合を調整して決める予定です。

  1レッスンは1時間から1時間半、料金は1500円から2000円(人数に応じてその範囲で調整)になると思います。

   オンラインレッスンは初めてで上手くできるかどうか分からない、という方のために最初の1回目は無料のオリエーテーションレッスンをします。(設定などが分からなければサポートします。)

  まずはどのくらい参加してくれる方がいるのか?が問題。

  このブログをずっと読んでくださっている遠方の方、私としては是非画面を通じてお会いしたい・・・教えてみたいところです。家の中が狭いというのは皆共通する問題ですが、内功などはそれほどスペースがなくてもできます。画面の中に頭から足まで全部映るようにカメラが設定できれば教えることができます。

 

  もし内功やタントウ功などの練習に興味のある方がいたらお気軽に連絡を下さい。全くの初心者から経験者まで、その人に合ったレッスンができるようにします。(そもそも私は決まり切ったレッスンができなくて、その時にその人に合わせたレッスンしかできませんが。苦笑)

  コロナの時代、人と交わることが少なくなりがちです。オンラインでも仲間を作れれば励みになると思います。私も楽しみに連絡をお待ちしています。

   

   お問い合わせはこちらから→

2022/1/24 <引っ張り合い→開合>

 

   ビデオレッスンの生徒さんへのアドバイスのために撮った動画を公開しました。

 力を抜く、というのは、力を引き抜く、ということ。

 開合の意味とは?

 

2022/1/24 <胆経 その1>

 

  「太極拳を学ぶのに経絡やツボの名前を覚える必要がありますか?」と質問されたことがある。太極拳の練習に経絡やツボが欠かせない、というのは事実。老師達は当然のように中医学の用語を使って説明をする。体操や筋トレに経絡やツボは関係ないだろうが、”気”を扱う太極拳には不可欠だ。そもそもツボ(穴位)は武術の世界で発達したとも言われる。いわゆる、急所、だ。

 

  では、どうやって経絡やツボを覚えるのか?

  答えは簡単。老師が練習中にツボの名前を言ったり、経絡で説明をしたら、その時に覚える! その時にはっきりしなかったり覚えられなかったら、家に帰ってから調べて、自分の体でその場所を確認する。

  百会、肩井、ダン中、命門、環跳、陽陵泉、湧泉、労宮・・・

  最初に聞くのはそんなツボの名前ではないか?

  

  百会は頭頂、肩井は肩、ダン中は胸、命門は腰、環跳は股関節(胯)、陽陵泉は膝、湧泉は足裏、労宮は手のひら

  頭から足裏までの代表中の代表のツボたちだ。

  このうち、百会と命門は督脈、ダン中は任脈上のツボだが、肩井と環跳、陽陵泉の3つは胆経のツボだ。

  まっすぐ立つために、任脈督脈だけではなく胆経を使う、というのが初っ端から要求されているのが分かる。

 

  肩井穴は沈肩をするのに使う。このツボをグッと内側から引き下ろせないと沈肩はできない。が、内側から肩井穴を引きおろすには腹の内気(丹田の気)が必要になる。だから、一番最初はなんとなく肩を下げて胸をほっとなでおろすようにして立って、腹に気が溜まってきたらその気を使って更に肩を引きおろす。引きおろすとさらに丹田の気が増えるからその気で更に肩井穴を引きおろす・・・となっていく。沈肩はできる、できない、の二択ではなく、できるにしてもその程度が功夫の高低を示すことになる。

 

 (また話が逸れそうになったけど)

 そういうわけで、ツボの名前を聞いたり、経絡の名前を聞いてよくわからなければその場で老師に尋ねたり、その日のうちに自分で調べて確認しておく。最初はちんぷんかんぷんでも何度も何度も聞いているうちに覚えるし、それが身体で気の感覚として捉えられるようになると更にはっきりする。鍼灸師は外側から見てツボがどこかを判断するが、太極拳の老師たちは内側の感覚としてツボを知っている・・・でないと”使う”ことはできない。

 

で、胆経の話に戻すと・・・

 

胆経で分かりやすいのは股関節ラインの環跳穴より下だ。

環跳穴、そしてその下の推すととても痛い風市(邪気が溜まる場所)、そして膝下外側にある陽陵泉、を繋いでいくと、足の薬指にラインが通るのが分かるはず。神経の走向とダブっているから、感覚がとてもとりやすい。

 

難しいのは、環跳穴より上の胆経のツボたち。

 

胴体部は左図の通りだが、ジグザグになっていて、取っつきにくい。自分の体の感覚もそこまで達していなかったから長い間手づかずの領域だった。

 

が、最近なんとなく帯脈穴がはっきりしてきた・・・と思ったら、その近辺のツボがつながってきた。

 

腰、胯(股関節)が確かにこの路線のようにつながっている!

この通り繋げば骨盤が立つ!

 

感動的な驚きだった。

私の左右の帯脈穴の位置がズレていてそれを調整したら腰胯のつながりが格段にアップした。発勁がとても自然にできるようになった。

 

脇のツボは太極拳の技でもよく狙う(狙われる)場所。軽く刺されたことがあるから身体に記憶がある。

 股関節の居髎はアンで相手の体勢を崩す時に狙う場所・・・

 

 週末のレッスンでは左の腰と胯にある胆経のツボを一つずつ教えてその線を繋いでいく実験をしてみた。

 

  胆経をつなぐには下の動画の最初のエクササイズが効果的。

  両足を交差すると筋や筋膜が伸びやすく、経絡のラインも分かりやすい。一つ一つツボを確認しながらじわ〜っと伸ばしていく。(効果を感じるにはレッスンでやったような補助が必要かもしれませんが)一応動画を紹介しておきます。(レッスンを受けた生徒さんたちは復習してください。)

  このエクササイズで一気に弓歩の重心移動が見違えるように上手くなった生徒さんがいたのには私も驚きました。

  

2022/1/23 <胆経へのプロローグ>

 

 昨日と今日は難しいのを承知で私が今注意して練習しているものを教えた。

 それは、胆経の腹部、胯(股関節部)のツボを繋いでいくというもの。

 

 私たちは身体を前・後という二方向から見がちだ。”正中線”や”中正”という言葉もその二方向から見て判断することが多い。目はそもそも二次元的。が、ここに側面を加えると本来の三次元の姿が現れる。この”側面”を走るのが胆経だ。耳は三次元的な機能を持っているが、それが身体の側面についていること、胆経に関わっていることは偶然ではないだろう。

 

 練習である程度、任脈督脈、そして膀胱経をつないだら、次第に胆経を念頭に入れた練習を取り入れていくと効果的だ。任脈督脈、膀胱経だけでは腕が繋がらない。腕は胆経を繋ぐことで胴体と一体化する。

 タントウ功は無極から初めて(腕を自然に垂らした状態から初めて)、ある程度丹田に気が溜まったら更に気を静めながら徐々に腕を腹の高さ、へと上げていく。この時、”腕を上げる”という動作は”胆経をつなぐ”ということに他ならない、と最近気づいた。腹に気を沈めて丹田で腕を持ち上げていくと(胴体と腕を一体化させようとすると)、胆経をつなぐ動作になっていくのだ。

 

 (下の画像:baiduでタントウ功を画像検索したもの。上から無極タントウ功、下環タントウ功、中環タントウ功。手を上げれば上げるほど胆経を長くつなぐ必要がある。

 帰国してから昔の生徒さんたちにはしきりに腕と胴体をつなぐための練習を手を変え品を変えやってきている。私自身がこの2年間パリで習得したのは(完全ではないが)まさにそれだった。

 太極拳の中では、技に『肱』(二の腕)という文字が使われているものがあるが、この『肱』こそ、胴体を腕を一体化させる要になる。『肱』が使われて指先末端まで気が通っている人は只者ではない。何かやってきている人だ。逆に言えば、私たち一般人は普通、腕を胴体からぶらぶらさせた状態で使っている。

 

 胆経をつなぐと上半身と下半身が一体化する。結果として腕が胴体とつながる。胆経がとても大事なのは昔から知っていたのだが、その走向がジグザグなのでどこかややこしそうで長い間頭を使ってツボを辿っていくのを怠ってきた。やっとやる気になって一つ一つツボを辿っていったら、なんと、うまくできていること! 師父が、「私たちは筋肉の話はしない。経絡とツボで説明する。」と言うのがよく分かった。ツボをひとつひとつ押さえてつないでいけば、全身が一つになる理想的な身体が出来上がるのだ。経絡図は設計図だ。問題はツボを一つ一つ順番に外さずに引っ掛けていけるか否か・・・(ミシンに糸を通す作業と同じで、順番に引っ掛けるべきところに引っ掛けていかないといけない。一つ飛ばすとしわ寄せがきてしまう・・・)

 

 と、胆経の話は壮大なので、今日は前置きだけで終わり。明日生徒さんたちへの復習資料を作るつもりで続きを書きます。

2022/1/21 <希望に向かって精進する>

 

 「人はどんな希望を抱くのか? 希望が実現しないのはどうしてなのか?」

 ーーー 

 「全く実現不可能な希望は抱かないのです!」「実現しないのはその人の精進(十波羅蜜)に欠けている要素があるためです!」

 

 そんなスマナサーラ 長老の説法を聞いたばかり。

 「こんな年寄りの私が今から司法試験に受かって弁護士になろうなんていう希望を抱く気がないでしょ!!」「もしそんな夢を抱いたとしたら、それは”希望”ではなく”妄想”です!!」

 

 相変わらずユーモアを交えた辛口の説法。そしてズバリと言い当てる。

 

 その条件下において全く実現不可能な希望は抱かない・・・

 確かに。

 私はバレエダンサーに憧れて、来世は太極拳(なんか)ではなくてダンサーになりたい、なんて思ったりしたこともあったけど、それは来世・・・40になってからバレエを初めてもプロのバレエダンサーにはなれないから初めから”希望”したことはない。頑張ればできる可能性が多少でもないと”希望”は抱けない。

 

 さて、昨晩もビデオレッスンをしていたのだが・・・

 私より少し年上の男性。太極拳歴は長い。

 昨年あたりから膝に違和感を覚え太極拳がやりずらくなってきたという。

 立ち姿を見ると太極拳云々以前に、基本的な体の可動域が制限されてしまっているのが分かる。前屈、長座(両足を前に伸ばして座ること)、このあたりが困難。体育座りができなくなるとかなり重症だがこれは辛うじてできる。ただ両手を話してしまうと後ろに引っくり返ってしまう。

 

 これまでたくさんの人達の体を見てきて分かるのは、老化とともに最初に硬くなるのは腰、股関節。太極拳で言えば、中丹田、下丹田の領域。ここが機能しなくなってくると膝がやられる。膝に違和感を覚えた時は自覚がなくても腰や股関節が機能不全になっている。

 腰や股関節、というけれども、実態は背骨だ。腰椎、仙骨、これがターゲットになる。

←https://www.mcdavid.co.jp/sportmed_anatomy/back-waist/

の図に書き込みをしました。

 

 腰椎部分が腰。この腹側(背骨より前の部分)が中丹田。

 

 仙骨部が股関節。この腹側が下丹田。

 

 

太極拳の練習では

まず腰を緩める=中丹田に気を落とす=気のクッションで腰椎にかかる負担を減らす。

 それから中丹田の気を増やして(=タントウ功)、下丹田まで気が届くと股関節が内側から解される(下丹田まで気が届くと瞬時に足裏に気が落ちて足裏が地面に貼りついたり暖かくなったりする。届いたかどうかのメルクマールになります。)。

 

 そしてタントウ功である程度内側から緩めた上で、腰や股関節を回すような動功をして外からも解していく。

 

 それからやっと套路の練習

 

 という、①静功(タントウ功・座禅)=内側から気でほぐす ②動功=筋肉の動きなどで外からほぐす ③套路(太極拳)

 そんなステップだ。

 

 老師レベルになればいきなり③の套路をしてもそれをやりながら①や②を同時にやってしまうこともできるが、そうはいっても実際にはレベルが高くなればなるほど、③よりも②、①を重視するようになったりする。

 

 上のような膝の痛みや腰の痛みで動きが制限されてくると、③の套路を思いっきり楽しむ希望は抱けなくなる。①と②の基本にたちもどる必要がある。基本的な体の可動域をできるだけ取り戻す必要がある。

 

 昨夜の生徒さんの場合は今が瀬戸際。今頑張って前屈や長座、体育座り、ある程度の開脚、ができるようにしないと、今後膝を引きずってさらに体が硬くなり、次第に太極拳を楽しむ希望はなくなってしまうだろう。歩ければいい・・・そんな希望に変わるかもしれない。

 

 最終的には何も希望しないのが苦しまない方法、仏道なのだけど、私たち一般人は全く希望を抱かずに生きることはできない。死ぬ直前まで体に不自由なく動けるというのは実はとても大きな希望だけれども、今、まだその希望を抱ける人はそれに向かって精進すべきだと思う。既にその希望を抱けなくなっている人はその状況下で抱ける希望を抱いて努力すればよいだろう。最終的には身体は必ず壊れるからいつまでも身体に関わり続ける必要はないというのが私個人の考えだが、身体から心、内面の修行に移ったとしてもするにも、希望に向かって精進するのには変わりないだろう。

 

 

 

2022/1/19 <上下相随になるには・・・>

 

  昨日の気づきは私にとって大きな収穫だった。

  これまで、何かおかしい、不自然だなぁ? と思って見てきたもの、それらに共通することがはっきりと分かったからだ。

 

 「腰が開いていないのに股を大きく開いている」

 これが不自然さの理由だった。

 イメージで表すと↓

 左側は股が開いているが腰(上半身)が開いていない身体。上半身が下半身に乗っかっている。上半身と下半身が分断する。

 

 右側は上半身と下半身が一体化した状態。胴体(腰を含んだ上半身)も膨らむ。そして下半身も上半身に入り込んでいる。どこまでが上半身でどこからが下半身かが分からない状態。上下相随といわれる状態。

 

 太極拳で求められているのは言うまでもなく右側。

 丸みのある幼児の体型のようだ。肉はほわっとしている。

 

 左側は筋肉が発達しないと耐えられない形。筋力に頼る形だ。身体はギュッと締まっている(緊張している)。

 

 太極拳は陸上の水泳だ、と馮老師は言っていたが、水中で浮こうとするなら、右のように胴体に空気をいれて膨らませる必要がある。左のように身体に力をいれて締めてしまうと沈んでしまう。

 ↑はAのタイプ。”大会用”のアクロバティックなもの。師父達から見ればこれらはもはや太極拳ではなく、太極拳のポーズを使ったスポーツでしかない。上半身が締まって股だけが大きく開く。筋力が頼りの若者のスポーツ。これを続けると身体に支障が出かねない・・・

 

 ↓Bタイプ。太極拳や八卦掌の師たちは胴体から足までが一体化している。

 

 「太極拳の練習ではまず腰を緩めることから始まる。」そう馮老師のテキストには書いている。

 腰を緩めるから腰に息が入るようになり、腹腰が充実する。さらに息が胯に届くと股関節が内側から開いてくる。

 息(内気)で内側から身体を開くことによって股関節も開く(風船を膨らますのと同じ)。自然な股関節の開き方だ。

 これに対し、息とは無関係で開脚ストレッチばかりすると、上半身と下半身が分断してしまう。

 

 ↓いわゆる肩入れストレッチ

 上段のイチローとその右の女性は胴体に息をいれて胴体全体をストレッチしている。(Bタイプ)

 その下の3枚の画像は息を止めている→胴体を固めてストレッチ。局部しか動かない。全身の一体感がなくなる。(Aタイプ)

2022/1/18 <腰痛の原因は股関節にあり 太極腰 腰胯>

 

   先日会ったアラスカに住む友人から、やはり腰痛が治らない、zoomを繋ぐからレッスンしてほしい、と現地から連絡してきた。

 

 この前は食事の後にほんの少し腰回しを教えた程度だった。あの程度じゃあ、彼女の石のように固くなった腰やお尻は解せないだろう・・・タントウ功も教えた方がよい。いや、そもそも、タントウ功をして丹田に気を沈めた状態で腰回し(動功)をしないと腰をほぐす効果は薄い。タントウ功を教えよう・・・

 そう思ってアラスカとzoomを繋いだ。

 

 タントウ功をさせるにもただ中腰になればいいというものではない。ただ股関節や膝を緩めてしまうとかえって腰に負担がかかる。大事なのは、まず息が腹まで届くようにすること。<①息を腹まで届くようにするために><②股関節や膝を緩める>のだ。

 といっても、初心者の場合は①の感覚を掴むのが難しいから、まず少し股関節や膝を緩めて安静に立って、徐々に(時間をかけて)息が腹に届くのを待つということになるだろう。

 今日は、息を腹に届くとはどういう感覚なのか、丹田というのがどのように作られるのか、というのが体感できるように彼女の呼吸を導いてタントウ功の形を作っていった。

 

 腹に息が届いて丹田が作られた状態。動き(動功や套路)はここから始まる。

 丹田が形成されていない状態で動いても内側から身体をほぐすことはできないし、太極拳にもならない。

 彼女の場合は太極拳には興味がないから、丹田の気を使って体を内側からほぐす、というところを体験してもらおうと導いた。

 

 タントウ功で息を腹まで落として丹田を作り、それから丹田の気と手の労宮のツボを合わせるところまでやれば、その手(労宮穴)を使って動功が効率的にできる。基本の3つの動功(腰回し)をその要領でやるところまで教えた。

 

 が、最後に腰を下げていく双腿昇降功(スクワットのようなもの)を教えた時、彼女の股関節が予想通りとても硬いことが判明。ああ、これじゃあ腰痛はなかなか治らない、

と、いくつかの基本的な股関節のストレッチを教えたのだけど・・・問題は、彼女がそれらのストレッチをとても嫌がるということ。これはできない、これをすると腰が痛い、別のものならできる・・・とか言って彼女の股関節に効きそうなストレッチをことごとく拒絶してきた。できるものをやっても仕方がないのだけど・・・できないから毎日少しずつやらせようとしているのだけど・・・ 相手が友人だと私に強制力が働かない。相手が家族だと教えるのはもっと難しくなる・・・

 

 ということで、友人は、とりあえず、できる腰回しをする、と言って股関節のストレッチは除外してしまった。まず腰をも少しほぐしてから追い追い股関節のストレッチをしていってもよいかも、と私も納得してしまった。

 


 レッスンが終わって、やはり股関節が気になる私。きっと、前回メモに載せたイラストが頭にこびりついていたから。股関節が硬いと腰痛になる。

 

 股関節の硬さと腰痛の関係はいろんな人が指摘している。

 左のイラストのサイト(https://myrevo.jp/fitness/396)では股関節が硬いと骨盤が立たない、という点から説明されていた。

 

また、別のサイト(https://dime.jp/genre/1031474/)では、『腰痛の原因は股関節にあり』と銘打って、腰の痛みは胸腰筋膜にあるセンサーが働くためで、その胸腰筋膜は大臀筋などと繋がっている、ということ等から説明をしている。

 

 探せばその他にも腰痛と股関節の硬さの連関を論じているものがでてくる。

 

 なお、太極拳は拳法の中でも特に腰に特徴がある拳で、中国では『形意拳、八卦歩、太極腰』と言われる(形意拳は拳、八卦掌は歩法、太極拳は腰)。どの拳よりも腰が柔らかくしなやかなのが太極拳。空手と比べるとその違いは明らかだ。

 

 そして思い出したのが、太極拳の練習ではしきりに、”腰、胯、腰、胯” と、腰と胯(kua=ヒップ)が強調されるということ。腰と胯はセットなのだ。

  というのは・・・上の人体のイラストで見ると、胸腰筋膜は腰、大臀筋は胯。つまり、腰を柔らかく使うには、胯が柔らかくなければいけない、つまり、腰と胯はセットにならざるを得ない、ということなのだ(と新たな視点!)。

 

  逆に、胯が柔軟になるには腰が柔らかくなければならないか? というと、そうでなければならないのだけど、特に女性(そして熟練の男性)は腰を開かずに股関節だけを開くようなことができてしまう。ヨガをやりこんで腰痛になるのはそのような場合だろう。つまり、股関節を開く時は一緒に腰を開くように注意をしなければならない。

  この腰と胯の連動、一体化は通常、息、丹田によって行う。だから今日、彼女に息の話を長々としたのだけど・・・消化不良だったよう(苦笑)

  息、そして気、これを通して腰や股関節を開く。このあたりは教え方が難しい。

2022/1/16 <タントウ功の誤解 背骨で立たない 腰で立たない>

 

  タントウ功で腰椎・仙骨・尾骨を一直線にして立とうとしていたら腰が痛くなった、という男性からビデオレッスン依頼のメールをもらい早速ビデオレッスンをした。

 

 その男性はタントウ功に関するよくある勘違いをしていた。

 タントウ功で背骨のS字カーブが減って直線に近くなるのは腹の内気(腹圧)が変わるから。腹の気が増える結果腰椎も後ろに押し出される。まずリラックスして立ち腹まで息が降りて腹が充実してから徐々に腹圧をかけて腰を押し出していく=腰回りを充実させていく、というのが正解。腹の気が増えていないのに腰を一直線にしようとすれば腰椎に過度な負担をかける。

 

 そもそも腹をぺちゃんこにして腰椎を後ろに押し出したような姿勢は腰にとても悪い。

 最近みたサイトの画像をみると、それは一目瞭然。(https://myrevo.jp/fitness/396

 

このサイトでは、<股関節が硬いと骨盤が立たない→腰に負担、ヘルニアやぎっくり腰の原因>

と、股関節を柔らかくする必要性を解いているもの。

 

が、画像内の左側の女性の立ち方でタントウ功をさせるところもなきにしもあらず・・・以前私のところに来た武術の好きな若い男性は鳩尾から腹が凹んでしまっていて身体に不調を訴えていた。それまで習ってきたタントウ校が左の画像の女性のような立ち方だったらしい。

 

画像検索して出てきた左のような立ち方も似ている。(https://ameblo.jp/kikou-nai/entry-12126909171.html)

 

 まあ、この体勢だと後ろにひっくり返るはずだが、それにしても、先に背骨をまっすぐにしてスクワットをしたら上半身は固まってしまい腹筋は鍛えられるかもしれないが腹に弾力のある気のボールが作れない(丹田が作れない)。

 

 この手の太ももブルブル、腹筋も割れるようなタントウ功は少林拳などの外家拳かと思う。

 

 太極拳のタントウ功でよく見かけるのは左の画像のようなものかもしれない(https://amichi-biz.com/tantoukou/)

 

 前から見た図は腹の感じは良さそう・・・(スネがまっすぐでないのが気にかかるけど)

 

 が、横から見ると問題がある。顎が上がってしまって虚霊頂勁になっていないのはここでは無視したとしても、身体が後ろに出すぎていて腰に乗っかりすぎている。そこからお尻を入れているので骨盤が寝てしまっている。結局、上のヘルニアやぎっくり腰の予備軍の姿勢になってしまっているようだ。

 (加えて、これでは膝に負担がかかるのは必至・・・骨盤が寝ているから仕方がないか。)

  一番右に師父のタントウ功の画像を合わせた。

 左から右にいくごとに、腹の気が増えている。腹に気がたまりしっかりすれば腰に乗ることもなくなる。

 

 

 似たような比較は下のジーの動きでも同じようにできる(10/1のメモで使った画像)

 

 一番左のオレンジ色の男性は骨盤が寝ていて腰や背中に乗っている。真ん中の女性はも少し腹側にいる。そして右端の馮老師になると腹側にいる。背中がスッと通り腰が軽い。後ろ足の蹴りが頭頂や手など末端へと貫通している。

 

  腹に気が溜まると上の図で書き込みがされていたように、腹横筋が作動する。このコアマッスルで立てると体幹がしっかりする。呼吸が深くならないとこの腹横筋は起動しない。筋トレでは鍛えられないといわれる筋肉だ。

今回のビデオレッスンではまずその男性の誤解を解くように説明をした。

 

タントウ功(に限らず、人が立つ時)は、背骨や背中で立たないこと。

背骨で立とうとしたり背中(背筋)で立とうとすると腰や股関節、膝を痛める結果になる。

立つのは腹側の空間で立つ。腹腔、丹田、と言われる場所だ。

腰椎が後ろに押し出されるのは腹腔の気が背骨を後ろに押すようになるから。しかし、後ろに押しても、そのカウンターとして腹を前に押し出す圧が働くようになっている。最初は腹が凹んだり、膨らんだり、行ったり来たりするけれども、息が深くなり強くなるにつれて腹の気が背骨を後ろに押してもそれほど腹が凹まなくなる。息を吸っても吐いても腹が膨らんでいるような状態=丹田呼吸、になってくる。

 

具体的にどう練習するかは、シンプルな内功を使って教えてみた。すぐに足裏がとても熱くなりそのうち腹も熱くなって腰に負担をかけないタントウ功の要領が掴めたよう。

 なぜ丹田という概念を使うのか、それは背骨、関節を守るためでもある。息がしっかり腹まで届く、腹がしっかり動く。胃も腸も息を通すことで働きがよくなる。立つ時、歩く時、座る時、しっかり腹に息をいれる、そんな地道な努力を重ね、それが当たり前になるようにしていきたい。

 

 <↓ 陳項老師や劉師父の立ち姿>

 二人とも腹側に立っている。しっかり立っているのに胴体が少し浮かんでいるようにも見えなくもない?腹の空気、気の作用です。日本にはこのように立てる老師を滅多に見かけない。現代中国でも少なくなりました。筋肉に頼った太極拳が主流になりつつあるのかも。

2022/1/15

 

  今日の午前のクラス

 養老のツボ(昨日のメモで紹介したツボ)を押さえたまま腕を動かすと、前腕から二の腕→肩甲骨→腰、すなわち体幹が連動するのを確認してもらう。

 

そのベースには尺骨と上腕骨のつながりがある。

 

これを逆手にとると、右のような擒拿術になる。尺骨に刺激をいれられるツボ(通常は手の甲の薬指と小指の間のツボ)を掴んで相手の手をひねると相手の身体は簡単に崩れてしまう。もし、橈骨側のツボ(例えば親指と人差し指の間の合谷穴など)を掴んで捻っても相手の身体は崩れない。

 

←上腕骨と尺骨でヒジ関節を作るhttp://grit-bb-academy.com/arms/

 

バスケのシュートを安定させるにはなぜ小指側の押しが大事なのか・・・左の図を示すことで理解を促している。

 

自分で一方の腕の尺骨を別の手で握って腕を回して見ると肘が安定して二の腕が一緒に回るのがわかる。肩甲骨も一緒に回る。

それを確かめたあと、握った手を外して自由に腕を動かすと、いかに普段”外して”動かしているかがわかる。

 

ちなみに、上の擒拿の技は、相手が手、前腕から体幹までをつないでいないのが前提。素人だ。もし相手が実践の練習をある程度していれば手を捻られた瞬間にその体幹につながってチャンスーで反擒拿をしてしまうだろう。

手を捻られて身体が崩れるのはこれ以上捻られると肘が折れてしまうから身体を崩さざるを得ないのであり、もし捻られてもそれに応じて内側で身体の形を変えられれば相手の力にうまく対処ができる。

 

 私が一人目の生徒さんに擒拿をかけて身体が崩れてしまうのを体験してもらった後、「もし経を体幹まで繋いでいれば簡単には崩れませんよ、」と言ったら、そのあと、二人目、三人目は私が技をかけようとしてもうまくかからなかった。あれ、どうして? と聞いたら、「先生が経を繋げばいいといったのでそうしました。」と平然と答えた二人。なんと、見よう見まねでそこまでできてしまうのね、と驚いた。

 

  技は実験として使える。これがわかったら、それを日常生活に生かす技を身に付けたいところ。尺骨と橈骨の間の骨間膜はピッと張っておくことで腕の使い勝手がよくなる。肘、肩の連動がとてもよくなる。養老のツボを押すと骨間膜を起動させられるようだ。

 養老穴は文字通り老化に伴う疾患の予防に良いツボだそう。

 上の左の手の甲の図で緑丸で囲った中渚穴が擒拿の時によく掴まれる場所。私も師父にしょっちゅうそこを掴んで捻られて嫌〜な感じがした(苦笑)

 

 尺骨と橈骨のアライメントをきちんと整えると身体全身が整う。腕にねじりがあったり怠さがあるのは女性に多いのでは?と思うが、その調整に養老のツボを押したまま動くのはとても有効だ。

2022/1/14 <今日の練習からもろもろ>

 

 今日は御苑で3人の生徒さんを教えた。彼女達との付き合いは長い。私が不在だった2年間私の帰国を待って戻ってきてくれた生徒さん達は30人ほどだが、その中でも意欲の高いグループに入る人たちだ。

 生徒側が意欲的だとその意欲に引っ張られて教える意欲も高まる。その意欲にまた学ぶ側も応える。そうなると意欲の相乗効果で学びの場がとてもよい気場になる。一人で練習している時には理解できないことが理解できてしまったり、できないようなことができてしまったりする。新境地の体験。教える側も学ぶ側も高揚感を覚えるような充実した時間がもてる。

 こんな贅沢な学びの時間をもてるのは幸せだ。

 私からすれば、そんな私の意欲に応えてくれる生徒さん達に出会えて教えられるのは本当に光栄なことだ。これまで教えながらどれだけ学ばせてもらったことか・・・教えるのが一方通行的だったら面白くないだろう・・・教える、学ぶ、これも陰陽の関係、推手で遊んでいるのと似ているのかもしれない。

 

 今日は3人それぞれにアドバイスをしていったので指摘した点が多岐に渡った。

 少し思い出してみると・・・

 

 ・足首の調整には腓骨筋の走行を使う→土踏まずまでつながる、というのがミソ

 

 ・四股姿勢、もしくはイチローの肩入れストレッチで丹田の気をしっかり腹底に押し込む→体側を含めた体幹が杭のようになって股関節、股が開く(=タントウ功の原理と同じ)

  (気になることがあったので画像検索してみた↓)

やはり、思っていた通り。

 練習の時は生徒さん達に肩を落として腕をつっかえ棒にする、腕を弛ませない、ということを強調したのだけど、案の定、イチローはそうやっているが、検索したほとんどの画像ではそれが甘い。肩入れする前の四股姿勢の出来具合でその後のストレッチの出来具合が決まってしまう。イチローと他の画像の大きな違いは丹田の気を腹底へ沈められているか否か。

 上段右側の男性は全く丹田に気を集めていないので、その後肩入れをしても少ししか肩が入らない。下段の女性は一見肩がたくさん動いているように見えるが、太極拳的に見ると、体幹が連動していないのでとても不自然な肩。イチローは気を沈めることによって、肩に広背筋や腹斜筋、腹横筋など、体幹を連動させてストレッチしている。股関節もその連動によって開いていく。太極拳的な身体の使い方だ。

 両手で太ももを押した姿勢でさらに身体を下げていくと、途中から手が太ももを押す力が減ってしまうかもしれない。そこが気を意識的に沈めるべき課題の場所。息を頑張って通す!息で身体を貫通させる。

 

 ・退歩の練習 退歩はつま先で地面を弾くようにするのだが、この動作が鈍い人はを腹の一番下、恥骨付近の力が弱い。おそらく爪先立ちで歩いたりするのが苦手。爪先立ちで下っ腹に気を溜める練習をする。椅子に座っている時も爪先立ちをしているかのような腹にして腹で立ち上がる。

 

  ・腰の動きが悪い人は中焦と下焦をそれぞれ別々に回す練習をする。適当に”腰”を回すのではなく、分けて回してみる。

  胸椎10番から12番を回す→腰椎1、2番を回す→腰椎3番→腰椎4番(骨盤の上縁の少し下)→腰椎5番→仙骨(も4つに分かれる) ここまで分けて回せれば腰はかなり柔軟だろう

 

  ・養老のツボは腰痛に効く、という動画を見たら、ピンときた。この原理は擒拿での常套手段。尺骨から上腕、肩甲骨、広背筋へ、というつながりを使っている。上腕を通すにも良い方法。動功にも日常生活にも使える。なぜこのツボが腰に届くのか解剖学的な観点から説明した上でこのツボを押したまま動功をしてもらうと皆がその違いに驚く。体幹と手の連動がとても分かりやすい。

 

  ・今日の練習で一人の生徒さんに手首の回転を”ちゃんと”するように厳しく指導したら、”ちゃんと”回転させようとするうちに、手首の回転が肩、身体、と連動して、足首の回転にまで引き抜いてしまった。手から足まで回転が引き抜けるとチャンスー(纏絲)になる。私の生徒さんの中でチャンスーで勁を引き抜いた第一号だと思う。引き抜くにはそれなりの内気の量が必要。彼女はある意味、馬力があるからできたかなぁ。そんなに馬力がない生徒さんの場合は、毎日少しずつ練習して通路を開けていく。開いていれば通すのにそれほど馬力がいらない。通路が狭いところを通すには馬力がいります。

  彼女が引き抜いたところを目撃したのは楽しかった(笑)

2022/1/12

 

  久しぶりに高校時代の同級生と電話で話したら、親の介護で疲れて肩こりは凄いし頭痛もする、自律神経も乱れてあまり眠れなくて困っているとボヤいていた。昔は新体操の選手だった彼女、今では太って身体も硬くなり前屈もできない、という。運動する暇がないらしいが、さすがにこのままではヤバイ・・・「どうしたらええん?」と私に聞いてきた。

 腰痛や肩こりなど問題が筋肉レベルでとどまっっているならまだしも、それが自立神経を乱すほどになってくると問題はやっかいだ。中国で”神医”というのは精神病を含む神経の疾患を治す医者だ、と聞いたことがある。治療がとても難しくなる。

 

 こんなとき気功法は有効だ。大雑把に言うなら、気は神経と筋肉、心と身体を結びつける。気をしっかり通すことで神経の暴走、心身の暴走を免れることができる。反対に、気がしっかり通せていない時は無意識的な脳(神経)の動き、身体の動きになってしまう。忙しさに翻弄されている時は呼吸も浅く気が通らない。充実感のないまま一日が終わってしまい脳には消化不良の残像が残り、体は酸欠状態、寝ても疲れがとれない。こんな毎日が長期間続いたら心身がまいってしまうのも不思議ではない。

 「一日に一回は身体を開けて(ほぐして)息(気)を頭のてっぺんから足まで通すべきだよ。」そう私は彼女に答えた。「でも、どうやってやるん?」

 

 彼女は太極拳には全く関心がない。でもタントウ功と内功はできる、し、ビデオでも教えられる。最初は10分間のタントウ功と内功3〜5種くらいから始めるかなぁ・・・。結局一度ビデオをつないで教えてあげることになった。

 

 昨日はアラスカに半ば移住状態になっている友人と会った。日本に戻ってきたら家の中が寒くて足の指がしもやけのようになった、と言ったのを聞いて私は笑った。実は私もこちらに帰ってきて足の小指がしもやけっぽくなったから。私がこれまで住んだことのあるヨーロッパの国、そして韓国は冬の気温が東京よりもずっと低かったけど家の中はぬくぬくだった。東京の冬の日中の気温が零下になることはめったにないが暖房の設備が中途半端で家の中が寒い。アラスカの冬なんてほんとに寒いだろう・・・と、彼女に尋ねたら「ああ、マイナス40度くらいになるけど、大丈夫よ。家からほとんど出ないし家の中では半袖。」 マイナス40度! 絶句。しかもほとんど日がでない・・・  たくましい!!

 が、帰り際、彼女が私に、歩くと腰骨あたりがとても痛いのだ、と相談してきた。ん? じゃあ、歩いてみて、と言って、彼女の歩く姿をよく見てみた。なるほど、右脚が外回りしている。と、そこからビルの片隅で、歩き方、立ち方のレッスンが始まった。腰骨のあたりが痛いというから大腿筋膜張筋のラインを使うように、と教え、なぜ腰骨が痛くなるのかを理解させた。使えないスジがあると、その他のスジにしわ寄せがくる。彼女の場合は対対筋膜張筋のラインが使えていない。

 そして彼女の身体を触って言った時、腰とお尻が纏足をしたように(?)ギュッと塊のようになっているのに気づいた。ああ、こんなに硬いと細かく腰や股関節(脚)を動かすことができない・・・とその場で指圧マッサージをしてあげた。「痛いけど気持ちいい〜。どこか寝そべってやってほしいなぁ。」そうだろうなぁ・・・

 このくらい硬いと誰かにほぐしてもらった方がてっとり早い。もちろん自分でできる限り放松して腰回しとかでほぐす作業も必要だが、自分一人だとなかなかほぐれなくて次第に諦めてしまうかも。変化、進歩があれば人は諦めずに続けることができる。身体を人に触ってもらうのも身体を解いたり覚醒させる一つの重要な方法。

 結局、時間いっぱい彼女を教えて昨日は別れた。彼女はアラスカに戻ったらレッスンをしてほしい、と言い残して今日アラスカに戻った。

 

 50歳を超えると大なり小なり身体に不具合が出てくる。どうにかしたい、と思う箇所がある。

 

  明後日は医者になった同級生と約5年ぶり会う予定だが、彼女は前回会った時にすでに腰痛がひどく靴下を履くのが大変、と言っていた。その時もカフェで彼女の肩揉みをしてあげたっけ・・・医者は患者の身体をケアするが、必ずしも自分の体をケアしているわけではなさそう・・・今回はどうなっているだろう? 何もしていなかったらひどくなる一方だ・・・

 

  今日は突然一人の生徒さんから尿結石の治療、予防に効果的な気功法、ツボ押しを教えてほしいとメッセージが入った。八段錦の最後のかかと落としが石を砕くのに良いと教わったことがあったのを思い出した。あとは水をたくさん飲む。でもやはり師父に聞いたほうが良いだろう、師父は経験と中医学、気功法の知識からその手の方策はとてもよく知っている。夕方になって聞いたら、まず座禅、そして水をたくさん飲んで尿を溜めて一気に排出する、そして震脚を両足ともども何度か強くやる、とアドバイスをくれた。八段錦のかかと落としより震脚の方が強力!なるほど。師父は「この程度のアドバイスがさっとできなければ太極拳の老師とはいえない」と一言。

 

 身体の不調を訴える人たちに対してさっとアドバイスしなければならない場面も徐々に増えるだろう。震脚を技としてではなく健康法として捉えられるように、太極拳の中の動きはそれぞれ具体的な健康法としての効用がある。それらに気づいていくような練習の仕方も考えていく必要があるかもしれない。

 

 <友人たちの身体を改善するための手順メモ>

 まずホッとして体をほぐす。(ホッとしないと体がほぐれない)=タントウ功→腰回し数種

 それから、気が足りないところに気を充填していく=呼吸法(収功)

 呼吸法と体の動作を合わせて動功 →内功になる

 

 ※ほぐすには筋膜剥がしが良いかなぁ

2022/1/9

 

  今日の練習でも足首、崑崙穴、腓骨筋を使う重要性を知ってもらおうと頑張った。

  (参考:腓骨筋→https://ameblo.jp/imanami-kaibou/entry-12684085660.html

 膀胱経の一部でもあるが、くるぶしを回り込んで足裏を通って親指の方までつながる。

 このスネ後ろの部分でしっかり立てると”踵”が使えるようになる。足の小指が覚醒すると同時に手の小指が覚醒する。套路をする人の手を見ればどのくらい身体を覚醒させているのか概ね検討がつくが、小指はここから繋がっている。

 

 といっても、ここから手の小指まではとても遠くて、途中に何箇所かツボを引っ掛ける必要がある(膀胱経を通す)。今日の練習を見ていると、腰の志室穴を外す人が多いような感じだった。腰のツボを外すと爆発力がでない(発勁ができない)。この腓骨筋に沿った部分(要所としては崑崙穴)を使えないと太極拳の技はすべて不発に終わる・・・ということをいくつかの技を例に示してみた。逆に言えば、ここを通して手までつなげられれば、太極拳の技は真似をすればできてしまう。

 ただ、ここに立って踵を使えるようにし続けるのは至難の技だ。普通の人はこの位置に立つと後ろにのけぞりそうになる。そのくらい崑崙のツボは後方にある。頭で思っているより後ろにあるから、この場所を身体に覚えさせるには絶対に手で触るべきだ。頭で考える位置と実際の位置がズレているのはよくあることで、ペインクリニックはその差異を逆手にとって治療をしている。肘を操るのなら肘がどこにあるのか、脳に正しい位置をインプットさせる必要がある。膝もくるぶしも、からだの至る場所は触って再確認していく。ズレに気づいておく。そのような作業は身体を正確に操るのにとても大事になる。

 

 手で触って確認する。

 手は脳だ。センサーだ。バレエダンサーがバーを握ってレッスンするのも、バーに寄っ掛かるためではなく、バーを握る手のひらのセンサーを使って脳から身体の各部位への神経のつながりを広げていくためだ。だからぎゅ〜っと握ってはいけない。手のひらのセンサーを起動させるような握り方をする。太極拳で拳をギュ〜っと握らないのも同じ理由だ。空拳にすることによって手のひらのセンサーを覚醒させている。(ギュ〜っと握ると身体の中が暗闇になって神経のつながりが分からない)

 気功の上には神功がある、というが、神功とは神経の操作だ。脳の領域だ。腹の丹田は気功の中心となると同様に、脳と手は神功の中心になる。神経だけでは馬力が出ないが、神経に気(エネルギー)が合わさればコントロールの聞いた通った力が出る。

 

 手の力を抜くと腹や下半身に力が出る。

 そんな実験を今日の生徒さん達にやってもらった。

 やり方は簡単、何か手に握って持って(今日は水筒を手に持ってもらった)、徐々に握った手の力を抜いていく、というもの。落とさないようにぎりぎりまで力を抜いていく。もうこれ以上は抜けない、というところで、も少し抜けないか?、そしてまたも少し?・・・と抜いていくと、力が身体の中心部へ移動し、そして下半身、足まで届くのが分かるはず。

 

右のように携帯を持ってやってみてもよい。

用心して少しずつ力を抜いていく・・・

 

そう指示して今日の女性の生徒さん達にやらせたら、皆足に根が生えたようになった。上虚下実の状態だ。大成功! 

が、男性陣に同じ実験をさせたら、なんと、水筒を落としそうになった。なぜ?

手のひらのセンサーが粗雑なのか、徐々に力を抜くことができないのか、よくわからない。なぜ女性陣はできて男性陣はできなかったのか? 今日は時間切れでそれ以上追求できなかった。

 

 私がパリを去る直前、師父が練習の帰りに「今日は手の力をまだ抜けることに気づいた。とても良かった。」と言ったことがあった。私は意味がよくわからなかったので、「ああそうですか。」と相槌をうっただけだったのだが、その後も、あれはどういうことだったのだろう?と気になっていた。 そしてしばらく経った時、套路練習の途中であの師父の言葉を思い出し、私も手(手のひら)の力をもっと抜いてみよう、とやってみた。その時、気づいた。手のの力を(勇気をもって)抜いてみると丹田に気が戻ってくる、充満してくるのだ。丹田の気が充満して足の方に流れると下半身がとても安定する。手の放松は丹田の気を増やす。同様に、どの部分を放松させてもその分丹田の気を増やせるのだが、手は力の入りやすいところでかつ意識的に抜きやすい場所。ここで放松と丹田の関係、上虚下実の関係がはっきりと体験できるだろう。

 

 放松→中心に気が集まる

 が、その一方で、コップを落とさないようにコップを持った手の力を緩めるには、それに見合った中心の力、下半身の力が必要だというのも事実だ。手と中心に通路が開通している必要がある。通路がないのに手を緩めたらコップは落ちてしまう。通路があって中心に力があれば手を緩めてもコップが落ちないのを身体が感覚的に知っているから手を緩めることができる。身体には身体の知恵があるのだ。水たまりを飛び越せるかどうかは飛ぶ前にだいたいわかる。身体ができない、と感じるものは意思で命令してもうまくいかない。身体が安心してできるような環境が必要だ。

 ん?ということは、水筒を落としそうになった今日の男性陣、その問題点は通路が閉じていることだったのかな?手を緩める時に手ばかり気になって、意識を中心、下方へとずらしていく、もしくは内側の視野を大きくすることを忘れていたのかも? 意識は神経や気のさらに上部に位置するもの。意の持ち方で神経や気の状態が変わる・・・来週男性陣に再チャレンジさせてみよう♪

 

2022/1/8

 

  「武術は師がいないと学べない、師と共に過ごしその立ち居振る舞い、息遣いを身を以て知ることが必要だ・・・オンラインでは学べない。」

 そんな声を(久しぶりに)聞いた。そう言えば師父もそんなことをよく言っていた。けど、本当にそうだろうか? 真の武術家になるならまだしも、健康法もしくは武術の体の使い方、呼吸の仕方、気の導引の仕方などは、師が傍にいなくても学ぶことは可能だろう。実際、私のオンラインの生徒さん達は対面レッスンの生徒さん達と比べても勝るとも劣らない進歩をしている。

  

  遠方に住んでいるためにオンラインでしか学べない生徒さん達の熱意はとても高い。田舎にいると東京や大阪に住む人たちの恵まれた環境が羨ましいもの・・・私も田舎で生まれ育ったのでその感覚はよく分かる。田舎で独り学び続けるには相当な熱意がいる。

  が、今は遠方の人と簡単にオンラインで繋がることができる時代。オンラインで何が学べる? と懐疑的な人がいるかもしれないが、実際にレッスンしてみるとかなり細かいところまで見えてしまう。マンツーマンでオンラインレッスンをすると、対面で5人を相手にするよりもその一人のマンツーマンの生徒さんの課題が浮き彫りになる。レッスンはオーダーメイドになる。

  

 実は「武術は師がいないと学べない。」という時の”師”は師弟関係を結んだ師、弟子は内弟子を意味する。教えは一対一、マンツーマンの関係だ。これに対し、一対大勢で教える時は”師”ではなく”先生”になる。先生と生徒の関係だ。先生と生徒の関係では各々の生徒に即した教え方はできない。カリキュラムに沿った教え方になる。武術はカリキュラム的に学べるものではない。オーダーメイドだ。それが学校の勉強とは異なるところだろう。

 

 そういう意味ではマンツーマンのオンラインレッスンは”師弟”でしか教えられないことも教えられたりする。オンラインだから余計に一般の大勢のレッスンでは見せられないものも見せて理解を促したりすることもできる。想像以上に利点は多い。

 が、当然欠点もある。一つは息抜きがないこと。集団レッスンだと適度に息抜きの時間ができる。生徒同士でちょっとした言葉を交わす時間もある。けれどマンツーマン、しかも画面の中通しだと逃げ場がない。

 そしてもう一つは他の生徒さん達と一緒に動く機会がないこと。団体で套路をするのと一人で套路をするのは当然気場が異なる。人数が集まるとそれだけ気場も大きくなる。その気場に包まれて動くと波動が高まる。心身に良い影響がある。たとえ拙い動きでも皆と一緒に動いているだけで気持ちよくなる。”学ぶ”というよりもその場にいることによって得られる心身への効果だ。残念ながらオンラインやマンツーマンではその感覚はあまり得られない。

 

 お決まりの集団レッスンは初心者には良いが、そこから先に進もうとすると壁に当たる。私はスポーツクラブで簡化24式を習い始めたのがこの道に入るきっかけだったが、半年もしたら、もっと深く学びたい、と思うようになった。そのスポーツクラブでは日替わりで北京体育大学出身の先生が教えてくれていたのだけど、その先生達に、「意識の使い方を学びたい」と言ったら、どの先生も、「ここでは無理だ、東京の私たちの武術館に来なさい」という答えだった。当時私は小さい子供がいたから東京まで出ていくことができずがっかりしたものだった。

 

 今の師は質問すればいつでもオンラインで教えてくれる。

 人は現在の環境を最大限に生かすしかない。

 私のオンラインの生徒さん達は私の東京や横浜の生徒さん達のことを羨ましがったりするが、いつでもレッスンに行ける環境にあるとそこまでレッスンに対し意欲的でなくなったりする。ちょっとしたハングリー精神はいつでも必要だろう。いつでも今日が最後の日になり得るのだから。

 

 そして”武術”といってもそのほとんどは身体の操り方の習得。

 そしてその身体の操り方は決して特殊なものではなく人間の身体を最も合理的に使う方法だ。それはどのスポーツでも楽器演奏でも歩き方、立ち居振る舞い、全てに共通するもの。秘伝でもなんでもなく大公開されているものだ。

 太極拳の”技”なるものはそんな合理的な身体の使い方の上に成り立っている。

 すなわち、身体ができていれば、技は学べばできてしまうのだ。(その技をもって本当に戦うのならそれなりの反復練習、実践経験が必要。それはサッカーやテニスなどのスポーツと同じ。)

 逆に言えば、身体の可動域が制限されていたり変な力が入っていたりしたら、技を学んでも技にならない。(師父に技を教えてもらっても技がかからなかった経験は多々ある。その時、ああ、まだこの部分ができていない、身体作りの至っていない部分が判明したりする。)

 そして、基本的な身体作りの仕方はどのスポーツも共通したものがあるし(前屈や開脚などは基本中の基本)、太極拳に特有の功夫の方法は馮老師が公開している。公開されたものは必ずしも師が傍にいなくても練習可能だ。オンラインでも意欲と根気があれば十分に習得できる。逆に対面で練習しても毎日の積み重ねがなければなかなか習得できないだろう。(一週間に一回前屈や開脚をしてもできるようにはならない。毎日欠かさず少しずつやる必要がある。同様に一週間に一回内功をしても身につかない。)

 

<今日のレッスンでの収穫>

  今日のレッスンでは足関節のことを知りたいという要望があったので、いろいろやってみた。試した結果、皆が一番分かり易かったのは腓骨筋を使ったエクササイズ。それによって、いかに自分の足首が”回って”いなかったかを痛感できる。そして、腓骨筋を使えるか否かが『力は踵から』の出来不出来を決める、ということが分かった。ただ、腓骨筋をひっかけて立つには皆一苦労・・・なぜタントウ功が必要になるのか、さらに理解が深まったかも。 明日のレッスンでも教えてみよう♪

 

2022/1/6 <足関節 背屈と底屈に功夫の差が現れる?>

 

  足関節(足首の関節)の重要性は見落とされがちだけど、とても重要だ。私自身、この足関節の調整に随分苦労してきた。が、足関節の調整、矯正はほとんどの人に必要のようだ。生徒さん達や街で見かける人の足関節を観察してみると、足関節のアライメントが正しく可動域を保っている大人は滅多にいない。

  

  足関節が歪んでいる(アライメントが崩れている)、可動域が少ない、ちゃんと回転しない、と気づくのは太極拳の練習がある程度進んでからだと思う。初心者の頃は足関節まで気が回らない。他に意識することがたくさんあるからだ。

  太極拳の練習(タントウ功や内功)で足関節を調整していくには足まで気をおろすことができるのが前提になる。気を下ろすことができずにただ足首、足に体重を乗せてしまうと、足首、足が重さで潰れてしまって足を構成する骨たちのアライメントを調整することができない。そして足に気を落とすにはその上にある胴体のアライメントをある程度修正しておく必要がある。

 

 (例えば、右の写真のように足首が曲がってしまっている(外反している)生徒さんがいた場合、それをどう治していくのか?いきなり足首を治すことはできない。全身をだいたいまっすぐに立たせた上で、腰、股関節から始めていかなければならない。放松して内気をためさせて徐々に息を足まで届かせるような練習を根気よく導く必要がある。導きなしに一人で修正することは不可能だろう・・・)

 

 足関節の問題は足関節だけの問題ではない。上に乗っている胴体の歪みの表れだ。ある程度練習が進んでいれば、足関節を意識的に調整することで股関節や腰など、胴体の調整をすることも可能になる。

 

 足関節をどう調整するかは専門家の話を参照した方が良さそうだ。

 底屈と背屈がしっかりできないと足裏や踵の力を胴体に繋ぐことはできない。太極拳においては致命的な問題になる。

レベルの高い太極拳の老師の足、足関節(足首)をよく見れば、その柔らかさ、可動域の大きさに気づくはずだ。この支えのもとに太極拳が成り立っている。

 

 左は馮老師と王老師。当時はその功夫の差が歴然としていた。

 どこに注目してもその差が見えるのだが、足関節に注目すると

 

 

 

ちゃんとした太極拳の老師の足、足関節(足首)をよく見れば、その柔らかさ、可動域の大きさに気づくはずだ。この支えのもとに太極拳が成り立っている。そういえば、いわゆる修行者の足はとてもしっかりしている。上虚下実になれば足は分厚くしっかりする。頭や胴体の力を抜けるだけの足になっている。逆に言えば、頭や上半身の力を抜く練習をしていれば自然に足はしっかりしてくる。

 

  (足関節の調整はかなりややこしい 参考 https://reha-basic.net/anklerom/

<赤の矢印>

 左の画像は王老師の右膝がつま先を越えて出てしまっている。右の馮老師の膝と足首を繋ぐ脛は地面に垂直。

 →足関節の背屈(フレックス)の差

  王老師の場合は足関節に背屈制限があるため代償措置として膝が前に出てしまう。馮老師は背屈がしっかりできてカチッとはまっている。足首安定。

 

 <青の矢印>

 後足に体重をかけた時の前足の状態。

 左画像の馮老師は太腿前面、脛前面、足首甲側、甲、そしてつま先まで、勁が通っている。これに対し、右画像の王老師は右太腿、脛前面に力がなく、足首から甲、つま先に勁が貫通していない。後ろに体重移動する時に前脚(右脚)の力が抜けてしまっているのはGIF画像で見ると明らか。

  →足関節の底屈(ポワント)の差

 

 足関節の使い方を変えれば当時の王老師の全体的な動きも変わっただろう・・・

 が、足関節の使い方を変えるために、内気が必要になるだろう。

 

 いつものことだが全体と部分は入れ込んでいる・・・部分を集めても全体にはならない

 部分→全体→別の部分→全体→さらに別の部分→全体→・・・→最初の部分→全体・・・

 一巡、二巡、三巡・・・そんな練習の仕方になる。

 

 

 ともあれ足関節の調整はかなりややこしいです。私もまだ勉強中。例えばこのブログを見ると、自分の背屈が甘いのに気づくかもしれません。https://reha-basic.net/anklerom/ 

 

 

 

2022/1/5 <血海穴から足首のフレックス、股関節の回転、圧腿へ>

 

  血海穴の動画を見た生徒さんから質問があった。

 「そもそも私の膝は体重を支えているようなもので動く感じがしません。血海穴を膝として意識したら動くどころか固定されてしまいました。血海穴を膝として使う、というのはどういうことですか?」

  

  膝が固定されてしまうとしたら、股関節に問題がある。股関節が起動していないのだろう。そう思って短い文章でコメントをしようかと考えたのだが、やはり質問に答えるにはこの生徒さんの体の使い方を見て、股関節の使い方を個別に指導する必要があるだろうと思い早速単発のビデオレッスンを組んだ。

  いざビデオレッスンをしてみると・・・

  ん? 股関節も問題だが、それよりも足首のフレックスが気になる。

  足首のフレックスができていない、ということは、足首で経が分断してしまっているということだ。”足首のフレックス”は”踵を出す”ということとイコールだ。踵を出せなければ踵の力(反発力)は使えない。踵は股関節にダイレクトに力を伝達する。踵の力が使えなければ胴体の反発力は得られない・・・生徒さんを導きながらそんなことを確認した。

 

  生徒さんには足首のフレックスの仕方を細かく指導。それからそれを元にして、足首を回すことを教えた。足首回しは足首の後ろ側の力を使えるかがポイント。普通の人は、足首を回しているようで、足の甲側の足首部分だけを行ったり来たりさせていたりすることが多い。ちゃんと回せれば股関節の回転もついてくる。回転を、前、右、後ろ、左、というように4方向に分けて、それぞれの箇所で止めてみると、ちゃんと回っているかどうかが確認できる。うまく回っていないところは股関節との連動が切れているところ。そこを指摘したあとは股関節の回転を指導した。

  それは最終的には圧腿に集約されていったのだが・・・(このあたりの流れは文章で説明しづらいので省略)

 

  結局、この足首の回転と股関節の回転の連動、というのが血海穴を膝として使う効用だった・・・そうはっきり分かったのはその一人の生徒さんを教えた後。嬉しかったのは、その生徒さんも足首の回転が目の鱗でとても嬉しがっていたということだ。教える方も学ぶ方も、得ることのあるレッスンはとても楽しい。

  

  足首のフレックスの重要性についてまとめる必要があるなぁ。

  質問歓迎します。

  

2022/1/2 <血海穴を使う効用ー続き 螺旋勁・纏糸勁へ>

 

 12/28の動画「血海穴を膝として使う効用』(https://youtu.be/xHRYB5YH2fk)の補足説明の続き。

 

 動画の中では、<血海穴を使うVS使わない> を、③前屈、④屈伸、⑤両足を開いた状態、⑥重心移動、⑦両足を開いて腰を落とした状態、で比較した。

 

 ③前屈では、太腿を内旋させて血海穴を使うことにより上半身と下半身が分断されずに丸くなることができる。実はこれは、全身に逆チャンスーをかけたに等しい。これに対し、太腿を内旋をさせずにそのまま前屈させると身体は”折れた”ようになる。上半身と下半身は分断される。

 

 ④屈伸においても、太腿を内旋させて血海穴を使うことにより足裏に反発力がでる。内旋させずにただ膝を折り曲げた場合とは足裏の感覚、全身のつながり感が全く違う。この場合も全身に逆チャンスーがかかっている。このまま足裏でピョンピョン飛べるはず→本来、うさぎ跳びはこうやってやるべきでは? 膝を折った状態でうさぎ跳びをすれば膝が痛むのは当たり前だと分かる。

 

 前屈と屈伸の実験で、明らかに上半身と下半身の繋がり方が違う、と分かればしめたもの。ここから螺旋勁、纏糸勁が太極拳だけでなく合理的な身体の使い方として本来内在しているのだと気づく可能性がある。成長とともに筋肉で体を分断させてしまうような体の使い方に慣れてしまっただけだと。こわばってしまった体を本来の伸びのある体にするにはチャンスー、螺旋勁が必要・・・ただ直線的にストレッチしても伸びないだろうと。

 

 そして

 ⑤両足を開いた状態、⑥重心移動、⑦両足を開いて腰を落とした状態、というのは結局、弓歩での違いを見せているにすぎない。ポイントとしては、

 

 ・両足を左右や前後に開いた時には、両脚は外旋させつつ内旋している / 内旋させつつ外旋しているということ。内旋と外旋が拮抗状態になることで膝がつま先の向きと揃う。

 

 ・血海穴を使ったまま弓歩を深くしていくと、股間(裆)が開いていく(開かざるを得ない)。使わなければ、裆は広がらず膝がつま先より前に突き出ていくようになる。→円裆にはチャンスーが必要。纏糸や螺旋勁をかけずにただ股を広げても円裆にはならない(尖裆や裆になってしまう)。

 

 ・弓歩の重心移動の際、前脚だけではなく後脚も血海穴を維持すれば自然に後ろ足が地面を蹴るようになる(反発力が得られるようになる。というのは、後脚にも螺旋・纏糸勁がかかるから。後脚にそのような勁がないと足は死んでしまう。→『力は踵から』の前提としてその脚の螺旋・纏糸勁が必要

 

 

  動画では締めくくりをしなかったが、改めて締めくくると、血海穴を使おうとする練習は螺旋勁・纏糸勁を使わせようとする試みだということ。体感できれば太極拳の面白さが倍増するはずだ。

  (なお、動画を見て真似をしただけでは分からない場合、単発のビデオレッスンでアドバイス、コーチをすることもできます。お問い合わせから連絡を下さい。)

 

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『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

   馮志強老師著

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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