2015年6月

2015/6/28 <纏糸勁の練習を始める>

 

今週は纏糸(チャンスー、纏:巻き付く)の練習を試みた。

纏糸勁によって腰部(腹を含む)の力を手足の末端まで伝えるようにする。

順纏は腰隙の腹側から起こり内から外へ、逆纏は腰隙の背側から起り外から内へ。手の指先に向けて、足指の末端に向けて、いずれも腰(丹田を含む)から力が伝わっていく原理。

これを可能にするには末端に届くだけの丹田における気のプールがなければならないが・・・。

 

ある程度丹田に気が溜まってきたら纏糸勁の練習をする、というのが順序のよう。

纏糸勁を練習するにはいささか時期尚早、という気もしつつ、練習に取り入れてみた。

 

太極環はメビウスの輪だ、という言い方もある。

メビウスの輪は平面の輪に見えて実は立体だが、太極拳の腕の動きをとってみても単に平面上に円を書いているようで実はメビウスの輪のように立体になっている。なだらかなスロープ。それを引き伸ばしていくと肩から指先に向けて包帯をグルグル巻いていくような螺旋の線が現れる。これが纏糸・・・。

と、頭で考えているだけでとても面白かったりする。

 

人間の身体は本当にうまくできていると思うが、腕一つとっても肩、肘、手首などの関節の付き方は絶妙。決して真っ直ぐ並んでいるわけではない。纏糸をかけて使うと関節に余計な負担をかけることなく少ない力で多くの力が出せる。テニスやゴルフなどの場だけでなく、重いスーパーの荷物を持つとき、包丁を使うとき、歯磨きをするとき、パソコンを打つ時、ピアノを弾くとき・・・・至るところで応用可能な動きのよう。脚の纏糸はきっと歩行や走法、ジャンプや、そして多分ピアノのペダルの踏み方にも応用できるはず。

 

纏糸については私自身、やっと真剣に取り組み始めた段階。

意識的にやってみると、普段の腰回しがすべて纏糸勁の練習になっていたことに気づいたりする。

知らないでやっていたにしても、意識してやってみると僅かな誤差に気づき調整が可能になる。

また面白い練習ができそう・・・。


まずは一般的な手の順纏と逆纏の定義から。

生徒さんから質問があったので、下に『陳式太極拳』顧留馨著から説明図を載せます。

実線が順纏(”人差し指が内から外向きに翻る”とこの本では書いていたが、ごく一般的には”小指が力を導く”と言われる:小指が他の4本の指を引っ張って動けるその範囲内が順、という意味に私は解している)、破線が逆纏(”人差し指が外から内向きに翻る”、”親指が力を導く”)。

頭の体操にもなるかしら?

2015/6/23

 

 久しぶりに公園で練習をしたら、またまた一人盛り上がって時間超過。

 まだ続けようとする私に生徒さんから「もう3時間なんですけど・・・」と言われはっとする。

 屋外では時計もないしすぐにやり過ぎてしまう。

 健康増進目的で来ているのに、練習であまりにも疲れさせてしまうのは良くなかったなぁ、と帰り道、しきりに反省。


 ちょっぴりローになって家の近くまで戻ってきた時に掲示板(仲間のページ)へ新たな投稿があったことを知った。最近めっきり仲間のページへの投稿が減っていたから、なんだろう?、と文面を見てビックリ。心臓がドキドキしてしまった。

 

 以下がその投稿の文面。

 

「楊文笏老師は、陳照奎先師に15年習った人でした。
練習は非常に厳しく、毎回両足をガクガクさせながら自転車で帰ったものでした。
映像の新架一路は、そのころの記憶を甦らせてくれます。」

 

 え~っ、とあの楊老師に学んでいた人がいるの~?!

 楊老師について学べたということが羨ましいのもあるけれど、今の中国とは違って、名利に目もくれずひたすら功夫を積み技を研鑽することに心血を注ぐ武術家達が健在だったあの当時の中国を体験しているのが本当に羨ましく思う。今では太極拳は健康法として見られがちだが、恐らく太極拳の武術家達にとっては功夫と技の取得が目的で健康法としての側面はそれほど重視していなかったのではないかと思ったりする。寝食忘れて打ち込む・・・(もちろん食べて寝なければ功夫はつかないが)・・・と、入れ込む、一つのことだけに向かっていく姿は個人的に大好きな生き方。

 

 楊文笏老師について調べてもあまり多くの情報は見つからない。

 唯一見つけたのが、陈照奎老師に拳を学んだ状況を弟子に語ったのを後に弟子が文字に起こしたもの。もし中国が読めるならこちらを参照して下さい。

    http://taiji.baike.com/article-21263.html

        (私はこれを読んで陈照奎老師の中架式、低架式の練習に対する考え方などが分かった。)


 楊老師についてはこんな記述もあった。

  http://blog.sina.com.cn/s/blog_47319dbe0101iu1h.html

  (この文章を読むと、あの眼差しから察せられるように、身体だけでなく精神、その内側も修練度が高いのが分かる。)

 

 投稿して下さった方(きっと”老師”だと思います)、楊老師との練習について何かまだありましたら、ぜひお話を聞かせて下さい。投稿を楽しみにしています。

 

 

 

 

2015/6/19 <胴体で動くお手本、腰捌き>


ドルフィンのように胴体で動くのが本当の太極拳・・・。


ちょうど生徒さんがある動画を紹介してくれていた。

陳発科の息子の陳照奎の弟子、楊文笏という先生のものだ。

同じ陳式とはいえ私が学んでいる馮志強先生のものとは流派が違うが、武術としての太極拳は本来こんな感じだったのだろうと思う。伝わるところによると、楊老師は生前、外に伝わった太極拳(馮志強老師、陳少旺老師のものも含む)はほとんどが大衆の養生目的の”太極操”(体操)になってしまった、と言っていたそう。


この時代の人は映像のせいか服装のせいか、なんだか品があるように見える。

ちょっと石原裕次郎に似てたりして、イケメン?個人的にはかなり惹かれる老師(容貌が好み?)。


と、実はこの感じは馮志強老師の若い頃(といっても50代?)の雰囲気にも似ていたりする。

楊老師の動画の下に馮志強老師の二路の動画を貼り付けます。


服装と体格が似ているが、見なければならないのは腰とお尻のあたり。

どっしり、しっかり、柔軟、弾力、機敏、・・・・日本人にはあまり馴染みのない腰捌きかも。

2015/6/18 <胴体で動く>

 

生徒さんから肉離れを起こしてしばらく練習ができたくなったという連絡があった。しばらく家でゴロゴロしています、ということだったが、ゴロゴロできるくらいならゴロゴロしながら鍛錬してはどうだろうか?と私が時折参照している中国の汤鸿鑫老師の3D教材の一つを思い出した。

 

これに関連して、本当の太極拳と偽の太極拳の差を示すある小話がある。

昔ある中国の老師は弟子の手足を縛って川に落とした。ほとんどの弟子は溺死したが一人うまく生き残った弟子がいた。なぜ一人だけ残ったのか?それは、溺死した弟子は手足を使って泳ぐことしか知らなかったが、生き残った弟子は”豚泳ぎ(海豚=イルカ)”を知っていたからだという。

本当の太極拳とはそういうもの。四肢ではなく胴体!老師はそれを教えたということだ。

 

陸上でドルフィンのように太極拳をする・・・。そんな太極拳愛好者の団体演武があったらすごいなぁ~。

 

ということで、下のデモ動画を見てみて下さい。(言葉が分からなくても映像で大体のところは分かると思います。)


2015/6/15 


先週一週間の練習を振り返って気づいたこと、教えたことのメモ。

詳しい説明は省略(文章にするのがますます大変になってきたかも)。


1.引き続き裆(ダン・股)に気を付ける。

 ・ダンは下から見ても円くつくる。骨盤底筋のストレッチ=会陰を引き上げることが必要。

 ・前から見て円いだけでは『圆裆』とは言えない。お尻側から見てもダンは円くなければならない→左右のお尻を桃のように割らなければダメ。お尻をギュッと締めるなんてあり得ない話。臀部は放松し肛門は引き上げる。

 ・左右の重心移動は脚で移動するのではなく、ダンで移動する(会陰の引き上げで移動する)。この要領は両足を比較的広く開いてしゃがみ、片方の足から片方の足へ移動するときに両手を地面につき、脚ではなく手の力で地面を這うように重心移動するようにすると分かりやすい(多少苦しいかもしれないが我慢)。

 正確には重心移動は腰で行う(右腰⇔左腰)。ダンで行うと脚ではなく腰で重心移動することになる。


2.首の正しい位置を見つけるコツはしゃがんで尾骨から頭頂までが弓上につながる位置を探すとよい(頭は猫じゃらしの穂のてっぺんのようになる。ちょっとした錘。)

 実際のところ、首とそれ以下の背骨をつなぐのは相当な練習が必要。首の筋肉を松したまま真っ直ぐ立てるには尾骨から頭頂が弓状になる感覚が得られる、即ち、気が背骨を貫通する感覚が必要(それほど虚領頂勁は難しいということ)。練習中に何度も直してもらうことによって身体が道筋を覚えて気が通りやすくなるようにする。


3.隠れたつま先立ち

 足裏がすべて地面についていても(踵に重心を乗せていたとしても)、そこにはいつも”つま先立ち”の要領が入っている。

 タントウ功の時の足の形は土踏まずが上がって足の甲、裏ともに引き伸ばされて長くなったようになっている。(足指を固定した上で)足裏の筋をマックスまで引き伸ばすと踵が自然に浮いて来る。このまま、足裏→踵→アキレス腱とつないでいくとつま先立ちになってくる。タントウ功は踵が浮かないギリギリで立っている(浮かないようにかえって重石をかけている)が、いつでもスタートを切れる(足裏で地面を蹴れる)ようになっていることがとても大事な要領(ここがタントウ功を成功させるか否かの分かれ道かも)。

 タントウ功は気功法ではなく力功(筋肉を鍛える)だと言う人もいるが、それはひとえにやり方の違い。太ももの前側の筋肉をガチガチに固めるような立ち方では素早く動いたりジャンプすることはできない。馬や猫などはつま先立ちで歩いているが、地面をよく蹴るためには足裏を脚の一節として使うことが必要。またつま先立ち(踵をあげた状態)の方が腰の動きが断然スムーズ。

 バレエダンサーがなぜトウで立つようになったのか、そこには不便さを上回る長所があるようだ。

 太極拳は第一路で力を抜き平らにスムーズに動く練習をするが、それは第二路の素早く力強く動き、跳んだり跳ねたりという動きへの準備にもなっている。所謂健康体操系の太極拳は第一路を簡単にしたもので、ただゆっくり平面上を動くだけで第二路へ橋渡しをするような構造にはなっていないようだ。

 歳をとると次第に走ることも少なくなるが、それだけではなく、つま先立ちもしなければスキップもしない、ジャンプはあり得ない、脚を振り上げることなんて無理、という状態になってくる。

太極拳の練習の目標(理想)が子供の頃の身体の状態に戻っていくことだとすると、次第につま先立ちやジャンプができるような老人になっていく、ということになったりするのかしら?

 歳をとってもスキップできる、したくなるような人生を歩めたらどんなにいいだろう・・・。



 今週の練習で教えたことはまだまだたくさんあったはずだが(そうそう、順缠 逆缠の話、身体の動きを止めて中で丹田だけを回す、そんなこともあった)、つま先立ちの話題が個人的にはショックに近い気づきだったので、それを書いていたら他のことを書く気がなくなってしまいました。 

 つま先立ちで立たせて会陰の引き上がる感覚をつかませてから徐々に踵を降ろさせていく、というのもお尻に重心の下がりがちな女性達には効果的なよう。もう少し実験、研究してみます。




2015/6/14


テレビ放送を見逃した、見てみたかった、という声が案外あるので、アップされている動画のリンク先を紹介します。(いつ削除されるか分かりません。)いずれも番組後半10分程度です。


腰を回すことを幾分誇張し過ぎた感があるのと、やはり、北川流、というのはちょっと問題。


第1回目

http://video.fc2.com/content/20150601uv9a2LYp/&tk=TkRBd016UXlNekU9


第2回目

http://video.fc2.com/content/20150609wVgkLsk4/&otag=1&tk=TXpNd01UY3lOakU9



2015/6/9 <第二回目の放映から 円を描く、腰が回る>


 昨日第二回目のテレビ放送があった。前もって編集されたものを見ていないので私自身どんな仕上がりになっているのか、ドキドキしながら見ていた。


 第一回目にも増して口数が多く、ほんと、おしゃべりだなぁ、と呆れてしまう。

 早口だし、テンポは速いし、いつもこの調子だとしたら生徒さんは消化不良になっても仕方がない。


 ・・・と、反省点はいろいろあるのだが、それは一先ず置いておいて、さて、今回の制作側の意図は、套路の型を使って身体の不調を治す、ということだった。腰痛に良い型、足腰の強化に良い型、肩こりに良い型・・・という感じで、それぞれ型を紹介してほしいという。

 が、実は、私はこれまでそんな風に太極拳の動作をそんな風に症状別に分解して考えたことはなかった。套路では、どう気が通るのか、気の通る路線、という点を主に分析し、具体的な症状に対応した練習は内功で行う、というスタイルでやってきた。


 腰痛なら腰回しの内功がたくさんある。高血圧なら降気洗臓功がある。でも24式や48式の型の中で腰痛に効く動作はどれ?と聞かれると困ってしまう。それはひとえに”やり方”によるなぁ、と思った。同じ動作でもやり方によっては腰に良いし、やり方を間違えれば腰を痛めてしまう。これは心臓病でも腎臓病でも膝の痛みでも頭痛でも、どんな症状でも同じこと。

 太極拳の中のどの動作でも、やり方が合っていればどの症状に対しても良い効果があるし、やり方が間違っていればどの動作でも逆効果になったりする。


 腰痛によい動きはこれ、と決めてしまうと理解はしやすいのだが、実は腰は腰だけで独立して存在しているのではなく、身体の一部として存在する。すると腰痛を治すためには身体の他の部分の力(往々にして腹の力)をつけたり、姿勢を変えたり、呼吸の仕方を変えたり、と他の部分を連動して変えていかなければならなくなる。だから全体的に動くことによって、徐々にパーツパーツのつながりを調整し、徐々に理想的な状態に近づけていく、という作業をすることになる。

 (イメージ的にはルービックキューブのようなもの?この色をこの位置に持ってきたい、と思っても一つ動かすと連動して他の部分も動いてしまうので、目的を達成するためにかなり迂回ルートをとらなければならない。全部の面をそれぞれ同色でそろえるためにはかなりの頭脳労働が必要。これに対し、身体の場合は身体の知恵があるべき状態に調整していってくれる、そのような身体の知恵が出てくるように頭が余計な手出しをしないようにする、という作業をする。)

 このあたりの考え方が西洋医学と中医学の大きな違いだと思うところ。


 そして太極拳の正しい”やり方”を考える上で大事なのがあの太極図。太極拳の成り立ちから言って、あの陰陽図、太極図なしには太極拳はあり得ない。

 そしてあの図の大きな特徴は、円。○。丸。

 全てが円い。円運動をする。

 中心が動けば波紋が広がるように周辺も動く。中心(丹田)が少し動いただけで周辺(手足)はたくさん動く。中心が動かなければ周辺も動かない(動けない)。

だから太極拳では中心(丹田)のある腰(帯脈)を非常に大事にする。

 腰は全ての動きの主宰、丹田を活きたものにするには腰は柔らかく力がなくてはいけない。

 強張った固い腰では丹田を練ったり動かすことができない。

 腰が自由自在に回る(縦横、斜め、前後)のは太極拳の核心ともいえる。

 つまり、太極拳の套路はどこをとっても腰が柔らかく回らなければならないのだから、どこをとっても腰に良い動きになるはず。


 けれども、日本で一般的に目にする健康法としての太極拳は背中を棒のように固くして中腰姿勢をとっている。とても腰が回っているとは思えない。超マスタークラスの老師は外形的な腰は動かさずに腰の中、内側の気を回すことができるが、それは相当功夫を積んだ人のできる技。一般の練功者は外の腰も動かしてまず柔らかく使えるようにしなければ、丹田で動くという段階には到底達することができないと思う。

 

 太極拳を練習していると至る所に矛盾点があり、その二つの間の矛盾をどうにか解消しようとする中で新たな力が出てくることが分かる。

 タントウ功の姿勢で苦労するのが含胸と松胯という相反する二つの要領だが、太極拳の要求する立身中正と丹田、腰の回転も相反する側面がある。腰を自由自在に使う(動きの速さ、自由度が高まる)と中正が崩れ、中正を保つと腰が固まってしまう。

 腰の機敏さと中正、どちらから教えるか?

 この点、簡単に太極拳を練習しようとする場合は、まず真っ直ぐ立つ、中正、から教えていくことになるようだ。(というのは腰の動きには丹田の動き、身体の内側への意識が含まれるから、これを教えるのは老師側としても骨が折れるから?若しくは丹田や内側の動きには弟子にしか教えない要領もあるから、ここは一般的には公開しないまま太極拳が広まったのかもしれない。武術として太極拳を学べば実践には腰の機敏さが不可欠なのは自明の理だと思うけど。)

 中国でも、まず腰の動き、機敏さを重視し、後から中正を要求していく、という教え方はだんだん少なくなってきている。


 ということで、テレビ番組では制作側の意図もあって必要以上に腰の回転を誇張したきらいもあるけれど、腰の動きをどのくらい外に見せるかはその場に応じて決めればよいので、いつも動けるような腰にはしておかなければならない。師父や私は道を歩いているときも内側で微妙に腰回しをしていたりする。腰を回し続けていれば腰は固まらないし硬くならない。

 




2015/6/4 <腰、胯、裆、 裆の力


 しばらく本当の意味での練習メモを書いていなかった。

  先週あたりから、『裆』に注目した練習をしている。

太極拳では『圆裆』とか『腰裆勁』という時に使われている言葉だ。


 裆(dang ダン)は日本語で”股”と訳されるが、それ以上深く考えたことがなかった。が、最近太極拳関連の文献で腰裆勁について調べていたら、その裆、つまり日本語の股、という意味が私が思っていたのと微妙にズレがあることを発見。

 改めてこのあたりをしっかり理解しようと整理したところ。


 太極拳での練習で中核になるのは腰部。丹田はこの部分にある。

パーツに分けると、腰、胯(クア)、 裆(ダン)。

 太極拳でいう『腰』は骨盤上縁と肋骨に挟まれた部分(日本語の所謂腰よりも上の位置にある)。

『胯』は骨盤から腰椎、仙骨、尾骨の背骨部分を取り除いて、右左に分けたもの。よって、右胯と左胯という二つの胯がある。

そして『裆』は俗に会陰部、と呼ばれるが、右胯と左胯に挟まれた帯状の股間部。排尿部から肛門までの一帯。骨盤底筋部分。会陰はその中央にある。


 裆で動く、裆で力を出せる、というようにするのが太極拳の特徴。

 右足と左足の間に裆がある。左右の重心移動の時も、左足→裆→右足、と移動しなければならない。裆を素通りしていては丹田の力、胴体の力がうまく使えない。これが『圆裆』でなければならない所以。


 裆と腰の関係、裆の形、要領についても様々あるが、そのあたりはもし書ければ次回に。

2015/6/1 <第一回目の放映を終えて、傷めない練習>


 第一回目の放映終了。

 自分の姿を見るのは気恥ずかしいが、まあ、こんなもの。

 制作側がうまく編集してくれていてほっとした。


 北川流、なんていうのはあり得ないのだが、きっと巷の太極拳しかみたことのない制作側の人達からすると、北川流?、と映ったのだろう。

 制作側の意図は家で手軽にできる健康法として太極拳を紹介したいということだったのだが、太極拳はそんなに簡単ではない。

 「腰痛解消によい動きとか、肩こりや膝の痛み、その他症状別に”効く”動きを紹介して下さい。」と頼まれたのだが、実に多くの太極拳の先生方が膝や股関節を痛めて手術までしている現状を知っている私としては、「そんなに簡単ではないですよ~。」と言わざるを得なかった。


 なぜ太極拳をして膝や股関節を壊す人が多いのか?腰痛を酷くしたり、はたまた痔になったりする危険性もある。一生懸命やればやるほど、本来の健康法がスポーツ化してしまい、怪我が多くなってしまう。


 太極拳は人と競い合うものではなく自分を見つめるもの。

 まずは自分の姿勢(立つ、中腰、しゃがむ、片足重心を含めて)を正しくするために相当な力を注がなければならない。姿勢が正しくなければどんな練習をしてもどこかに負荷をかけてしまう。

 そして身体の可動域を広げること。可動域が狭いと正しい姿勢がとれない。

 可動域を広げるためにはすべての関節が回るようにしなければならない。太極拳の基本の動功が回すものばかりなのはその意味がある。どのような動作においても18の球(関節)がすべて一緒に回るような身体であれば理想的だ(18の球:首、胸、腹、腰、左右の臀、左右の肩、肘、手首、股関節、膝、足首)。


 今日の番組の中でも言ったが、”しゃがめる”ということは正しい姿勢のメルクマールだ。

 そして、番組では言わなかったが、どんな姿勢でも、その姿勢のまま膝が回るかどうか、というのも正しい姿勢のメルクマールになると思う。もし膝が回せないような状態で立っていたら、膝が前に出過ぎている証拠。すぐに重心を後ろに移さなければならない。膝が前にでた状態で太極拳をすると必ずと言っていいほど膝に問題が出てくるのでこの要領は守らなければならない。


 しゃがむ時に膝からしゃがんでしまう大人がほとんど。

 幼児の場合はお尻(股関節)からしゃがんでお尻を上げて立ち上がってくる。膝は前に出ない(太ももの前の筋肉が発達していないから骨の折りたたみでしゃがんだり立ち上がったりせざるを得ない)。

 しゃがむ練習は不可欠だが、これを太ももの筋トレ、所謂スクワット化してはいけない。

 それには股関節や腰の柔軟性が必要になる。


 番組の最後で披身捶の動作を使って腰をほぐす、ということをやったが、これも初心者には無理では?

 左右の重心移動にしか見えないなかで腰が回るなんて無理!、と一緒に番組を見ていた娘が隣でコメントしてくれた。

 太極図は円運動の図。太極拳は全て円運動で成り立っている。直線に見えたとしてもそれは楕円が究極まで伸びたもの(弧線が伸びたもの)。

 左右の重心移動では膝は回転している(披身捶なら内旋)。膝の屈伸で重心移動していては膝を壊すのは時間の問題。屈伸に見えても実は関節は回転している。回転させていれば関節は痛まないだろう。(関節は二つの骨の連結点。回転させるためには二つの骨の間に隙間をとらなければならない。隙間があれば骨どうしが擦り合わされる心配がない。)

 また、中腰状態で身体を支えている大きな力は骨盤底筋だから、会陰や肛門は引き上げていなくてはならない。この力が弱くても膝に負担をかけるし、引き上げがないなかで腹に気を落とし続ければ力がなくなるばかりか痔にもなりかねない。


 太極拳には様々な流派があるが、このあたりの要領は同じ。

 一度要領を身に着けてしまえばあとは随分”お手軽”になるはず。

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『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

   馮志強老師著

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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