おしりは2つ?

太極拳を教えているとどうしても腰からおしりにかけての話が多くなります。

お臍のライン(帯脈)から、脚の付け根の股関節のラインの間、腸や生殖器官が収まっている場所です。

ここは気を練ったり溜めたりする場所で、太極拳や気功を練習する上で最も重要な場所になるのですが、その話はかなり深く、長くなるので、先送り。

今回はそのような身体の内側の話ではなく、筋肉や骨や関節にかかわる身体の外側の話をします。

 

太極拳を練習してかなりたった頃、突然、「あれっ、おしりは2つだ!」と思った瞬間があります。そこでそれまでの小さな疑問が解決。とともに色々なことが頭の中でつながり、嬉しくて一人で思わず笑みをこぼしてしまったことを覚えています。

 

その頃抱いていた疑問とは以下のような 馮志強老師の本にも出てくる言葉。

「人体には主要な関節が18か所ある。それを18球と言う。それらは、両肩、両肘、両手首、両胯(脚の付け根のこと)、両膝、両踵、両臀(おしり)、そして、首、胸、腹、腰である。」

 

『両臀』?両方のおしり?

 

ここで18球について少し説明を加えると・・・

これら18球はボールペンの先のようにクルクル回るべき場所。これらがなめらかに回ることで、つっかえのない円滑な柔らかな動きが可能になります。陳式太極拳特有の『内纏外繞』という絡み付きうねるようなねばっこい動きにも、これら18球の円滑な動きは必至です。

 

両方のおしりが回るとはどんな感じ?

 

この疑問は比較的小さなものでしたが、密かに師父のおしりの動きを観察したり、馮志強老師や他の有名な老師のビデオを見ましたが、何故かみな、ぶかぶかのズボンを履いている!おしりの動きははっきりとは見えません。(その後、武道の世界では、腰や股関節の動きは故意に見せないようにしているという話も聞きました。彼らの胴着がぶかぶかなのもそのためでしょうか?)

 

その後疑問は徐々に薄れ、いつもの様に基本の練習をしていたある日、あれは、『双手揉球』という、汽車ぽっぽのような恰好で右手と左手を交互に回す動功をしていた時でしょうか。ふと、自分のおしりの動きに気づき、ああ、右と左が別々に回っている!と気づいたのでした。

これは目から鱗。そこから、何故、武道の世界で、身体を(左右に)割らなければならないというのか、何故、股裂きなどという非人道的にも聞こえる練習をするのか、お相撲さんの四股の意味、ナンバ歩きの意味、そして何故師父が、時々私のおしりの肉の状態をチェックして、柔らかければ「良い」と言い、力が入ってキュッとしまったおしりは「ダメ」と言っていたのか、それらの意味がずらずらと繋がってきたのでした。

 

おしり(及び腰)は上半身と下半身を分ける場所です。

脚は木で譬えれば根っこにあたります。ここが養分を吸い上げるところ。『力は踵から』と言われる所以です。

足裏から吸い上げた気(力)が脚を通って胴体や腕に伝わる時、大きな関門となるのが、このおしり。右足かかとの力が背中の右半分に達するためには、右おしりがちゃんと右になければなりません。左足を使う時は左おしりを通さなければなりません。

つまり、右おしりと左おしりは別人格を持たなければならなかったのです。

 

マリリン・モンローのモンローウォークは一体何だったのか?おしりを一つにして、くねくねと歩いているということは、身体の可動域が思いっきり制限されていることではないか?根っこがない木、同様ではないか?地に足のつかない動きを自らしていれば、結局行き着くところは・・・などと余計なところにまで頭が回ってしまうのは私の悪い癖。

 

右と左のおしりが独立して動くようになると、身体が背骨の右と左ではっきりと分かれることが分かります。そうなると、背骨を通る気の量が格段と多くなります。尾骨から頚骨に至るまで背骨がきちんと立ち、『中正不偏』という身体の中心軸がすきっと通った状態になります。

 

また、おしりが割れてくると、脚の付け根が、実際には股関節ではなく、お臍のラインあたり(大腰筋の出発点)にあることが分かります。すると、おしりは、ただのぷよぷよとした肉の塊ではなく、強力な筋肉からなる大きな『太もも』だというように感じられます。

馬にはおしりはないんですよねぇ、とある生徒さんがコメントしてくれましたが、まさにその通り。四足動物の歩き方は参考になります。おしりが太もも化しています。ちゃんと左右別々に動いています。

私も室内の教室の時には、生徒さんに四足歩きの練習をさせますが、人によってはこれがとても難しいよう。ヒーヒー言いながらやっていますが、これは私が小中時代にやらされたウサギ跳びに比較するのが申し訳ないくらい、良い練習方法だと思っています。

 

そう言えば、最近、ハンマー投げの室伏選手のことが報道された時に、彼はコーチを変え、筋肉を固めず柔らかい身体を作るような練習をしてきたと言っていました。中でも四足歩きは大事なトレーニング法だったとか。

力を抜いて、筋肉を固めない、というのは太極拳の練習の鉄則。そして四足歩きまでやってるなんて・・・と室伏選手のコーチの教え方に興味を持つとともに、太極拳の練習方法が様々なスポーツに有効利用できることを確信できて内心とても嬉しかったのでした。

 

太極拳の練習の醍醐味の一つは、身体に対する意識が拡大していくこと。今まで意識していなかったことが意識できるようになることです。そして面白いことに、自分が意識できるようになったところまでは、他人のことも見えるようになります。

そう言えば、私も自分のおしりが割れたことに気付いた頃、道で前を歩く人のおしりを見ては、1つか2つか、確認していましたっけ・・・。

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練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

       馮志強老師著

ようせいフォーラム2017プログラム
3月4日(土)にパネリストとして参加しました。
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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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